第一章 突然の召喚
夜の帳が降りる路地を進み、行き交う人達が少し途絶えた辺りで、私は我慢していた涙を零した。
後から後から流れ落ちてくるは私の抱える荷物に降り注いでいく。
声を噛み殺し、涙だけを流す私はその場所で異質だったと思う。
だけど、涙を流さずには居られなかったんだ。
そんな時・・・・・それは起こった。
私の周囲を渦巻くように風が吹き始めた。
突然の事に、涙もびっくりしてそりゃ止まりました。
その風は私を包み込んで視界を奪っていく。
突然出来た風の柱の中に巻き込まれた私はパニック状態に陥った。
「えっ? なにこれ!」
竜巻に巻き込まれた?
ちょっとちょっと、待ってよ。
焦る私を他所に風は私の体を浮き上げる。
収縮した光が空から注ぎ始め、それが次第に大きく広がった瞬間、あまりの眩しさに目を瞑った私が再び目を開けた時には、真っ黒な何もない場所へと放り出された後だった。
「はっ?」
ここどこだ。
真っ暗でとても寂しいその場所に私一人だけがポツンと存在している。
いや、マジで勘弁して。
ここどこよ!
人間はパニックし過ぎるとやたらと冷静になるらしく、頭からすーっと冷えていく。
何もない暗い空間に落とされ、距離感さえも掴めない。
周囲はとにかく暗い闇なんだよ。
あの竜巻が何だったのかとか、この暗闇は何なのかとか、一杯疑問が浮かぶも、何一つ解決策なんて思いつかない。
ラノベ大好きな私でも、こんな状態は読んだ覚えがない。
異世界転移、亜空間、あるいはマンホールの中?
最後のは・・・うん、ないな。
ここから出られなかったらどうしよう。
不安が湧いてくる。
食べ物とか、トイレとか、お風呂とかどーすんのよ。
不安になりつつも、現実的な考えが浮かんだ自分に笑い漏れたれた時、それは聞こえた。
「・・・わ・・・わが・・・・・・・・つ・・・・我が番よ」
最初は聞こえづらかった声が次第に鮮明に聞こえてくる。
番? なんじゃそりゃ。
少しハスキーな所謂イケボイスなんだけど、聞き覚えないからこわいんだけど。
「・・・・さ、さぁ・・・光の中へ」
光の中って、ここ真っ暗なんですよ。
目を凝らして暗闇を睨みつけていると、竜巻の中で見たような小さな光が生まれ、それが次第に大きくなっていった。
それはすぐに人一人が入れるぐらいの大きさまで育った。
もう、ますます怪しさしかない。
普通はここには飛び込まないと思うよ。




