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密談と劇薬とレア素材




「それで、本当に大丈夫なんですか、ミラちゃん?」

「うん、まあ、大丈夫と言えば大丈夫だよ、メリアリスさん」


 気絶したノアさんはベッドに寝かせ、私の私室に移り。

 メリアリスさんと向かい合ってソファーへ腰掛け話す。

 メサルやティムが居ないのが気になっているのだが、メリアリスさんのスピリア……ありすも居ないところを見ると、三人で遊びに行ったりしているのだろう。

 サビクも含めれば四人……匹かな?

 うにはその辺わちゃわちゃしていた。メイドもよろしくな手際でお茶やらが用意されていくのは最早ホラーに近いね。


「本当に驚いたんですよ? 突然ミラちゃんの反応が消えたと思って慌てて駆けつけたら元に戻ってて、片腕が無くなってるんだもの……あ、反応が無くなったっていうのは護り手のスキルであって、私がずっとサーチしてたとかそんなんじゃないですよ」

「あはは……うん、不思議空間って言ってわかるかな。星空が広がる空間なんだけど、いきなりそこに喚ばれて即戦闘。で、勝ったのはいいんだけど、まさか対天使用の刀で斬り落とされるとは思わなかったかな」


 一応、私がプレイヤーであることや聖女であること、色々とばれてしまっているし、ついでに言えば私の……精霊の導き手の為に存在してきた一族であるメリアリスさんには一通り話した。

 導き手と護り手の関係についてはオウルさん達にも伝えてあり、メリアリスさんは正式にこの聖区に滞在している……そもそも、聖女ではあるからその権利は元々持っていると言えるのだが。


「対天使用の刀……今はミラちゃんが持ってるんだよね?」

「うん。ただ、私が振るうのは無理だし、彼女はとある人に渡して欲しいって言ってたから、そうするつもりだよ」

「天津代白亜毘売だっけ。あのとき襲ってきたドラゴンゾンビがそうなんだよね?」


 メリアリスさんの問いに頷き、肘から先の無い左腕を見やる。

 刀の事とかは色々と教えてはくれたんだけど、彼女自身の事については殆ど何も教えてくれずに目覚めてしまって、頭の中にもやもやが残る結果に終わったのが悔やまれる。

 理由も、何もわからないけれど、あの竜が言っていた、我が主、アリエティスと呼ぶ言葉。

 そして、彼女の使った見覚えのある刀術。

 天津代白亜毘売は私のお母様の関係者で、そして……彼女の半身であると言う、私も良く知る人物の事。


 彼女の記憶の事は聞いていなかったけれど……まさか、私の記憶にも関係しているなんて誰が想像するだろうか。

 同じく彼女が口にしていた同胞と言うのはわからないが、一度、あの人とは話をしてみなければならないだろう。

 預かりものを渡す必要もあるからね。



「ああ、そうだ、メリアリスさん。これ、何かわかる?」

「……? 綺麗だね、宝石?」

「うん、元私の腕」

「へ?」


 話のついでに思い出したので、インベントリからとあるアイテムを取り出し、メリアリスさんに見せてみる。

 野球ボール程度の大きさの、白く輝く真球の宝石。

 銀竜に斬り落とされた筈の腕があった場所に残されていたものだ。

 アイテムの名称は天魔の光輝石。

 鑑定してみても名称しかわからず、銀竜が持っておけと言うので持って帰ってきた不思議アイテムだ。


「……ミラちゃん、これ、他に見せた人は?」

「いないね」

「絶対に、他人に見せちゃ駄目だよ。出来れば、オウル閣下にも」

「どういうこと?」


 天魔の光輝石を鑑定したのであろうメリアリスさんが真剣な顔になり、私の手元に返される。

 言われるがままインベントリへ収納し、それを見届けたメリアリスさんが頷いてから、一呼吸置いて口を開く。


「ゲーム的に言うなら、素材アイテム。ただし、最高級の……というか、こんなタイミングで手に入っていいようなレベルの物じゃない、ハイエンド級のレア素材」

「……ニュアンスからなんか凄いってのはわかるかな?」

「ミラちゃん、もしかしてこういうゲームって」

「初めてだよ。というか、ゲーム自体殆どやったこともないね」

「だからか……色々と納得した。ミラちゃんは私と同じタイプなんだね、それじゃあ……そうですね」


 どうやらとっても凄いアイテムらしい。

 唇に指を添えて黙ってしまったメリアリスさんの頭のうさぎ耳を眺めながら、彼女の言葉を待つ。

 部屋の中に静寂が満ちる中、十数秒程の後に、メリアリスさんが顔を上げて口を開く。


「天使とか、銀竜とかの情報が殆ど無いので推測にしかならないんですけど……多分、そのアイテムは神器を造る為の素材だと思います」

「神器の?」

「はい。神殿が人造神器……神剣を造って、騎士に貸与しているのは知ってますよね?」

「うん。見たこともある」

「昔見た資料で読んだことがあるの。人造神器を造る為の核になる素材が、天魔石と呼ばれているそうです」

「天魔石」


 天魔石と、天魔の光輝石。

 うん、全く無関係じゃなさそうっていうか、完全に上位互換に見えるね。


「天魔石は魔石の一種なんですが……入手方法は不明。その詳細については神殿でも秘中の秘で、神剣の製造方法も秘匿されています」

「ふむ……?」

「ミラちゃんは、マルキダエル……でしたよね?」

「ああ。天使の階級でも最上位の、熾天使だね」

「……あくまで、推測です。最上位天使の腕が結晶……アイテムに変化、魔石になった物が天魔の光輝石だとします。そして、天魔石との名称の差違から、少なくとも二つはランクが上でしょうね」


 神剣の性能は、見たことがあるからよく知っている。

 魔力を込めるだけで、無数の魔力の矢を放ち、降り注がせ、それだけで軍隊すらも制圧できるのではないのだろうかと言う物だった。

 神殿騎士とは抑止力で、主に手帳持ち……プレイヤーに対しての戦力で、当然そのプレイヤーを圧倒する為の装備が、神剣で。

 本来、ゲームのプレイヤーというのはレベルを上げて、スキルを習得し、凄まじい速度で成長していく存在。

 それすらも圧倒し、制圧するための兵器と言ってもいいのが神剣で。

 それらは、天魔石と呼ばれるアイテムから製造されている……らしいと。


「あー、うん。天魔石の情報の信憑性については?」

「昔潰した貴族の家にあった資料だから、たぶん、間違いないと思うよ」

「……潰した貴族については聞かないでおくね」


 メリアリスさんの仮説が正しいなら、確かにこれは表には出せないアイテムだなあと納得してしまうね。

 実際に神器が製造出来るのかどうかは置いておいて……その、コレの入手方法が、問題なのである。

 メリアリスさんが言いたいのも、おそらくはそれだろう。

 左腕に触れて、背筋の悪寒を振り払う。


「ジェミア様に聞いてみないとわからないから、今はまだ何も言えないけれど……気をつけてね、ミラちゃん」

「そうだね。私も、お父様に聞いてみた方が、いいのかな」

「……あの方には、接触は控えた方がいいと思う。表に名前を出せないし、もしもの時に言い訳が出来なくなるから」

「わかった。……なんか、巻き込んじゃったね」

「私はミラちゃんの護り手だし、同じ双子座の聖女だからね、どんどん巻き込んでくれていいんだよ。とりあえず、この件については私に任せて、ミラちゃんは誰にも言ったり見せたりしないようにね」


 メリアリスさんの言葉に強く頷いて、拳を握る。

 なんとなくで見せたものが、まさか劇薬になるとは思っていなかった。

 これがオウルさんや、他の神殿関係者だったのならどうなっていたのか全く予想が出来なくて、冷や汗が流れる。

 こくり、と。

 喉を通りすぎた息が音を立てて、落ちていった。


「うん、やっぱり昨日は簡単な報告だけにして正解だったね。一応、禊ちゃんや火影姉妹達には勝手に話したりしないように言ってあるから大丈夫だとは思うんだけど」

「オウルさん達に、どこまで話すか、決めておいたほうがいいんだよね?」

「うん。その腕についての説明も考えると……天津代白亜毘売の事は隠せそうもないね」


 それから、メリアリスさんと二人で密談を交わす。

 一応、聖女の私室でもあるから盗み聞きなどの心配はないのだが、さらに念を入れてメリアリスさんの使える結界の魔法も使用した。

 なお、聖女であるメリアリスさんや次期聖女の私は聖区内での魔法の行使等は許可されており、問題なく使用できるようになっていると言うのを知ったのはつい最近の事である。

 さらに念を入れて、テーブルを挟んだ向かい合わせではなくソファに隣り合って座り、顔を寄せあってお話をした。


 そんな、楽しいようで楽しめない秘密の会話時間は応急修理をした寝室への扉が再び吹き飛ぶ音で中断し、気絶から復活したノアさんの乱入によって終わりを迎えた。


「……ミラちゃん! ミラちゃんの腕が無いっていう悪夢を見たの! あれ、夢よね?」

「現実だよ、お母様?」

「……ふぅ」

「また!?」


 ノアさんには悪いが思わず噴き出してしまったメリアリスさんと笑いあい、お母様の元へと駆け寄った。




爆弾製造器(トラブルホイホイ)

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― 新着の感想 ―
[一言] ノアさんがリスキルされてるwww 他のメンバーの反応も楽しみですね、あとメリアリスさんのお姉ちゃんっぷりがとてもかわいくて好きです
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