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護衛と稲妻とやべーやつ

これ11話で収まるのかわからなくなってきた





 組合内で依頼の詳細やらを詰めて契約書等を作り、準備を済ませ、チベットスナギツネみたいな表情のカグラさんに見送られて街を出た。

 他にも護衛をとは思ったものの、メイファちゃん、ランファちゃん、みそぎちゃんは三人全員が同一のクランメンバーらしく。

 連携の障害になるやら、他人は信用できないやらと。三人全員の意見が一致し、カグラさんの反対を蹴り飛ばして彼女ら三人が護衛につくことになった。

 クランっていうのは冒険者同士が集まって作る小組織のようなものらしい。

 そういえばプレイヤーにもクランシステムが開放されたとかインフォメーションがあった気がするね。

 詳しいことはとーま君にでも聞いてみようかな。



「地下墓地なのー。ぼっちの墓地なのー」

『うっにー』

『ぴっぴー』


「ええと、聖女様」

「ミラで良いですよ、ランファちゃん。メイファちゃんも」

「では、ミラ様。組合でも説明しましたが、森の入り口付近で一度、我々の力量をお見せしておこうと思います」

「ランは前衛、ボクは遊撃、みそぎは後衛でやってます。ミラ様の手を煩わせるつもりはないのですが、一応、確認しておいて欲しいです」

「わかりました。こちらとしても助かります」


 うにとサビクを尻尾に乗っけたみそぎちゃんが先頭を歩き、その後ろをメイファちゃんとランファちゃんに左右を挟まれて私が歩く。

 森までの道中は他のプレイヤーもちらほら見えるので特に危険がある訳でもなくすんなりと進み、そろそろ目的の森にたどり着く直前でランファちゃんが提案する。

 なお、途中で絡んでくるモンスターはいるにはいたが、それらは全てみそぎちゃんが適当に放った魔法で蹴散らされていた。


 改めて、彼女らの姿を改める。


 白く、肩下までの髪。小さなサイドテールに黒いリボンを巻いて、頭には猫耳が二つ。

 膝丈スカートのミニメイド服に身を包んだ女の子がメイファちゃん。

 スヴィータのようなクラシックなロングスカートのメイド服以外を見るのは新鮮で、これはこれで可愛いと思う。


 反対に黒く、腰まである長髪に、メイファちゃんとは逆がわに同じく小さなサイドテールと黒いリボンの猫耳少女。

 黒い着物に割烹着姿で、背中に巨大な剣を背負ったのがランファちゃん。

 そんな彼女はメイファちゃんの双子の妹で、二人とも十四歳。


 そして最後に、巫女服狐幼女のみそぎちゃん十歳。

 カグラさんの義娘で、このクランのリーダー。

 三人は王都にある王立の魔法学園の生徒で、みそぎちゃんは飛び級している同級生なんだとか。

 自称ではなく、本当に天才美少女ふぉっくすだった。


 普段は学園の寮で生活していて、今日は卒業前の試験として組合の依頼を受けに来ていたらしい。

 みそぎちゃん曰く、かーさまに会うとスキンシップがうっとおしいの、とのこと。

 私には自分から甘えに行っているように見えたけど……あ、私が居たからだったなら申し訳ない事をしたかもしれない。


「みそぎ!」

「の?」

『う?』

『ぴ?』


 メイファちゃんがみそぎちゃんを呼び止め、全員で立ち止まる。

 目の前には鬱蒼と広がる木々の群れ。目的地の西の森。

 北の森とは違って木々の密度が高く、薄暗く、鬱屈とした雰囲気をかもしている。


「なんなの? さっさと行かないの?」

「やっぱり話聞いてなかったのか……森に入る前に、ボク達の戦うところをミラ様に見てもらうよ」

「なの、わかったの。ミラねーさまにかっこいいとこ見せるの」

「そういえば、この森にはどんなモンスターが生息しているのですか?」

「主に虫系と、猪や狼、熊といった動物系のモンスターが多いですね。場所によってはアンデッドも発生します」

「ミラねーさま、かたっくるしいのは嫌なの、ふつーに話してほしいの」

『さんせー!』

『ぴー!』

『う?』

『この子達は……まったく』


 虫か……虫かあ。

 普通の虫なら平気だけど、でかいのは嫌だなあとか思ってしまうね。

 なのーと突っ込んできたみそぎちゃんを受け止めつつ、森の表面を視線で巡る。

 流石に、モンスターって言うくらいだから手のひらサイズの虫ではないだろう。


「みそぎちゃん、ミラ様になんてことを!」

「そうだぞみそぎ、羨ましい、ボクだって……うん、冗談だよ、ラン、冗談だって」

「まあ、ずっと敬語も疲れるしいいか。という訳で改めてよろしく、メイファちゃん、ランファちゃん、君達も普通に話してくれていいからね」

「にゅふー」

「敬語って疲れるもんね、流石ミラ様……痛い、ラン、痛い!」

「はあ……申し訳ありません、ミラ様」

「構わないよ。私としても普通に話してくれたほうが嬉しい」

「ミラ様がそう言うのでしたら……わかりました。みそぎちゃん、メイファちゃん、それでも節度をもってくださいね?」

「みそぎはせつどをもってるの」

「全く説得力がないから言ってるんです!」


 なんていうか、楽しい三人組だよね。

 しっかりもののランファちゃんが纏め役というか、お母さんと言うか。

 笑顔だけど目が笑ってない、たまにスヴィータが見せるような表情を浮かべながらメイファちゃんの耳を引っ張っている。

 で、メイファちゃんは猫っていうより、忠犬っていうイメージだよね。

 今もぶんぶんと尻尾を振ってるような幻覚が見え……実際に尻尾振りまくってるけど、猫も尻尾振るんだね。

 一人称がボクっていうのも可愛いね。


「まあまあ、ラン。そろそろ仕事に戻ろう。丁度いい感じに接近してるのがいるよ」

「……了解。それではミラ様、相手にはよりますがおそらく危険はないと思います。万一そちらに向かうようであっても、みそぎちゃんが控えていますので」

「ミラねーさまは後ろでどーんと構えてくれたらいいの。ふりかかるひのこはみそぎたちが消し飛ばすの」

「森から複数接近。数は四、五、六? ラン、少し様子がおかしい」

「少し、離れて様子を見ましょう。メイファちゃん、周囲に他の冒険者は?」

「居ない。敵数十一、前方に十と、その後方から大きな一……追いかけられてるみたいだよ」

「なるほど」


 全員で移動し、森から五十メートルほどの距離を取って様子を伺う中、ズシン、と。

 一歩踏み出したランファちゃんの背中から巨剣が地面に落ちる。

 それを片手で掴み持ち上げ、まるで重さを感じていないかのように軽々と肩に担いで構える猫耳少女。

 それを合図と見たのかみそぎちゃんが私の側にちょこちょことやってきて、どこから取り出したのかシンプルな両手杖を取り出し、両手で握る。

 先端に小さな宝石がついているだけのシンプルなもので、柄は木製のようだ。


「先行して狼が四、遅れて猪かな、二。三はゴブリンだね、これは脅威じゃない。残る一は……熊だね、最後の大物は、もう少し寄らないとわからない」

「こちらを襲ってくる可能性は?」

「どれも興奮しているみたいだから、処理した方がいい」

「それじゃあみそぎちゃん、狼が見えたら魔法をお願いね。できれば後続にダメージを与えつつ、森に被害を出さないので」

「注文がおおいの。距離があるからあまり強いのは使えないけどいいの?」

「狼と、可能なら猪を処理できればいいですよ。雑魚に時間を使いたくないので」

「わかったの。みそぎにまかせるの」


 ピリピリとした空気が肌を刺す。

 複数のモンスターが森からこちらに向けて真っ直ぐ走って来ているようで、森から飛び出してくる勢いのようだ。

 どうやって察知しているのか気になるところだけど、私もいつでも動けるように二本の短剣を鞘から引き抜き両手に握る。


「来るよ」

「ざひょーこてい、じゅつしきてんかい。いちばんからさんばんまでてんかい、いつでもいけるのー」

「討ち洩らしと熊を迅速に処理、大物に備えます。いつもどおり、私が前に。メイファちゃんはみそぎちゃんとミラ様の側に」

「了解、こっちは任せて。みそぎ、合図したらよろしく」

「なのー」


 ランファちゃんがクラウチングスタートのように姿勢を下げて、片手を地面に添える。

 巨大な剣は肩に担いだまま腰を浮かせ、彼女の足と剣には稲妻が走る。

 いつでも飛び出せるぞと言わんばかりに、バチバチと紫電が弾けている。


「あれは雷迅装なの。えんちゃんとのひとつで、みそぎが考えたの。かみなりぞくせーの魔力でしんたいのーりょくをぞーふくしつつ、武器にもかみなりぞくせーをふよするの」

「解説はいいけど、みそぎ、あと五、四、三」

「なの」

「二、一、今!」

「じゅつしきかいほー、いちばんからさんばんまでれんぞくてんかいなの。ひょーそーらんがー」


 木々の隙間から飛び出したのは、メイファちゃんが告げた通りの数の狼。

 そして、ばっちりのタイミングで狼達を襲ったのは地面から突き出る大量の氷の槍衾。

 狼達が飛び出してきた地点を囲むように三ヶ所から生えた氷の槍達。

 突然のそれに狼達は真っ直ぐ頭から突っ込み、即死する。

 その後すぐ飛び出してきた猪も氷の槍に突っ込み重症を負いその場に倒れ、ゴブリン達も現れたが足の遅さが幸いしたのか突っ込む前に立ち止まっていた。


「じゅつしきついか、はじけるの」


 みそぎちゃんがパチンと指を鳴らす。

 それと同時に三つの槍衾の根本が爆発し、氷の槍が飛散する。

 まだ息のあった猪やゴブリンを貫き、木々へとぶつかり砕けて消える。


 一度発動した魔法に新しい魔法を追加するなんてできるんだね。

 それとも、天才美少女ふぉっくすなみそぎちゃんだけにできる芸当なのだろうか。

 ちらりとメイファちゃんを見ても平然としているし、きっとこれが平常なのだろう。

 メイファちゃんの耳がぴこぴこと動き、森を睨む眼差しが細く、険しい物に変わる。


「ラン、カマキリだ」

「それは、少し厄介ですね」

「うへえ、なの」

「蟷螂?」


 バキバキと木々が音を立てて倒れ、巨体が姿を見せる。

 いつか戦った熊さんより一回り大きい真っ黒な熊。


『ミラ様、装備を変えた方がよろしいかと』

『できれば、黒いほーがいいかもー?』

『ぴー』

『うーにー!』


 ダイアリーインメサルが手元に浮かびそう告げて、ティムも続く。

 いつのまにやらみそぎちゃんの所から戻ってきていたサビクとうにまでが森を睨んで声を上げる。

 あの熊、そんなに強いのだろうか。


『あの熊ではありません。注意すべきは……』


 熊の姿が現れたにも関わらずなぎ倒される森の木々たち。

 そして、姿を見せた熊の腹からは巨大な刃が生えていて、ゆっくりと宙へ浮かんでいく。

 同時に見上げた先にあるのはカマキリと言うには少し大きすぎる真っ赤なモンスター。

 体高四メートル近くはありそうな、異形の化け物。


「うわぁ……なんか、凄いの来ちゃった?」

「ぶらっどまんてぃすなの。普段は大森林の奥の奥にいるようなやべーやつなの」

「やべーやつなんだ」

「だいぶやべーやつなの」


 やべーやつらしい。

 胴体から伸びる腕の先の鎌で串刺しにされた熊が投げ捨てられて、地面を転がってゆく。

 獲物を補食するでもなく投げ捨てたカマキリが四本の足で地面を掴み身体を起こす。

 腕の鎌は現実のカマキリがもっているものではなく、鋭い刃……例えるならば、ギロチンのような。

 足としての役割を捨てて、モノを切り裂き突き刺す事に特化した形状のそれを掲げて、真っ直ぐ私たちに頭を向けている。


「どうする、ラン」

「逃げようと背中を見せたらバッサリいかれるでしょうね。迎撃して討伐、もしくは撃退します」

「前に仕留めたのより大きいけど、いける?」

「厳しいですが、退く訳には行きません。むしろ、チャンスです」

「チャンス?」


 メイファちゃんが、ランファちゃんと同じように四肢に稲妻を纏って並ぶ。

 腕を垂らした彼女の指先からキラキラと光を反射する何かが垂れている。

 雰囲気的に、アレとの戦闘は避けられそうにないらしい。


「はい、チャンスです。ここで見事にあれを倒して、ミラ様を守り、実力を認めてもらい、卒業後の就職を確かなものにするチャンスです!」

「成る程、その手があったか。流石ランだね!」

「なの、ねーさまにえいきゅーしゅーしょくするの。ふつつかものですがよろしくたのむの」

「うん、何の話かな?」


 この子たち、唐突に雰囲気をぶち壊さないと気が済まないのだろうか。

 そしてみそぎちゃん、永久就職の意味わかってる?

 お嫁さんっていうか妹とか娘枠だと思うよ、君。


「私が前で受けます、メイファちゃんはサポートを。みそぎちゃんは火力支援をお願いします。ミラ様も可能でしたら、回復等お任せしてもいいですか?」

「了解。とりあえず支援は準備しておくね」

「さっきの雑魚はこれから逃げてたんだろうけど……なんでこんなのが奥から出てきたんだろう。そんな報告なかったと思うけど」

「めーふぁ、かんがえるのはあとなの」

「そうです。メイファちゃん、みそぎちゃん、ミラ様。とりあえず一合当てたら、隙を見て森に入ります。障害物が多い方が有利ですからね」


 ランファちゃんの言葉を最後に、全員で頷いてから前を見る。

 少しでも木々を盾にするのには賛成だ。

 ブレスを詠唱して準備をし、何時でも走れるようにしておこう。


「なの、ねーさま早着替えなの?」

「びっくりした?」

「なの」


 ダイアリーの機能を使って、護服から聖女の祭服へ。

 黒いのは流石に人前で着るのはまだ抵抗があるから、白い方だけど。


「……来るよ!」


 視線の先。巨大なカマキリが翅を広げ、その巨体を浮かべる光景があった。




 





FOE

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