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うにと報酬と金色毛玉

みじかめ

 



「そういえばさ、お母様。レキシファー……この間の死霊術師の拠点の地下墓地って、どうなったの?」

「神殿から人を派遣して、浄化自体は終わっているわよ。とはいえ自然の魔力溜まりになっているし、墓地っていう環境も相まってそのうちまたアンデッドが現れるとは思うけれど」

「その地下墓地に行ってみたいんだけど、大丈夫かな?」


 ぶらうにー……もう、うにでいいか。

 うにが淹れてくれたお茶を飲みつつ背後のノアさんへ問うてみた。

 それに、レキシファーが遺した最後の言葉も気になるし。

 冠を持ってそこに行けば何かが知れるかもしれないからね。


「んー、行きたいって言うなら止めはしないけれど、西の森は危険だからそこだけ不安かしら。騎士トーマもスヴィータもいないし……そうね、組合で護衛を雇ってから行くなら許可しましょう。神殿はまだごたごたしていて動かせる人材がいないから、カグラに頼んでおくわ」


 ひょいと脇の下に手を差し込まれ、膝からおろされてノアさんの隣に腰が落ちる。

 すんなりと許可が出たのはいいのだが、やはり単独行動は許されないらしい。

 色々とスキルを試すのはまた今度になりそうかな。


「それじゃあ、出掛ける前にこの間の働きに対する報酬とかその他諸々を渡しておくわね」

「ほえ?」


 ノアさんがパチンと指を鳴らして待つこと数秒。

 部屋の外に大量の気配が現れ、ノックの後に扉が開く。

 そこにいたのはシスター達で、手にはそれぞれ大小様々な箱や袋を持って部屋に入ってきた。


『う!』

『ぴ!』

『えー、なになにー?』

『何かの祝い事でしょうか?』


 ぞろぞろと入ってきたシスター達がうにを目にして一瞬固まったが、すぐに我にかえって手にした荷物を扉の脇のスペースへと置き、積み重ねて行く。

 箱だったり袋だったり色んな物が積まれていくのを眺めること数分。

 ひっきりなしに部屋を出ては入ってきてを繰り返すシスター達により部屋の片隅には荷物の山が形成されて、最後にノアさんに直接手渡された二つの荷物を最後にしてシスター達は扉の向こうへと静かに消えて行った。

 何人かは部屋の外に留まっているが、それはいつもの事なので気にしない。


 メサルとティム、サビクにうにーズが興味深そうに荷物の山へ飛んでいくのを見送り、ノアさんを見上げる。


「これは、神殿からの報酬です」


 と、ノアさんからまずは革袋を渡される。

 受け取ったそれはずしりと重く、中からはジャラジャラと音が聞こえるのを見るにコインかなにかが詰まっているのだろう。

 とりあえずインベントリに仕舞うと、視界の隅におかしな桁の金額のリアが加算されたというログが表示されたが、今は気にしないでおく。


「で、こっちはオウルからの贈り物よ。次期聖女としての初仕事の成功おめでとうって言ってたわ」

「……羽根?」


 手渡されたのは小さな箱で、入っていたのは黒くて長い、艶やかな一本の羽根。

 よくよく見れば髪飾りに加工されているようで、手に持って光に透かしてみれば、ほんのりと輝く不思議な羽根だ。

 この羽根、どこかで見たことあるような?


「オウル自身の羽根で作った髪飾りよ、それ。一種の勲章のようなものね。しかも髪飾りへの加工は彼女が手ずからやった特別製」

「……過剰評価しすぎじゃないかなあ?」


 ひょいと髪飾りがノアさんに浚われ、ノアさんの手はそのまま私の頭部へ。

 ノアさんに貰った髪飾りの隣に添えるように、オウルさんの羽根飾りが私の髪に。

 枢機卿猊下の羽根で作られたお手製の髪飾りって、見る人が見たらとんでもないことになるんじゃ……ああ、それが目的なのかもしれないね。

 ……変な効果とかついてないか後で確認しとこう。


「ええと、オウル様にはお礼のお手紙とか書いた方がいいかな?」

「必要ないわよ。本来なら必要なかったのにオウルがゴリ押ししただけだし。あ、あそこの荷物の山は他の神殿関係者や王家を始めに国の貴族連中達からの貢ぎ物よ。いらなかったら捨てちゃっていいからね」

「や、流石に捨てるのはまずいと思う」


 ノアさんと一緒に立ち上がり、二つの荷物タワーに歩み寄る。

 その中から一つ手に取れば差出人の名前とメッセージカードがついていて、中身に関しての説明は無かった。

 差出人に関しても当然知らない名前で、開けてもいいのか悩むところだ。


「そっちが日持ちしないお菓子類、こっちが物品や服とか、宝石とかね」

『う!』

『ぴ!』

『おかし!』


 お菓子と聞いて三匹程が目を輝かせてそちらの荷物タワーへ群がって行く。

 ティムはメサルにタックルされていたが、サビクとうには無事たどり着いてから振り返り、私を見上げる。

 仕方ないなと、メサルとティムを回収してからそちらへ向かう。

 サビクとうにが特に興味を示していた箱を手に取り、差出人の名前を見る。


「御劔神楽……ミツルギカグラ?」

「カグラからの荷物ね。貰っておきなさい……まあ、この荷物全てミラちゃんのだから、こう言うのも変なのだけど」


 サビクを乗せたうにがぴょんぴょん弾みながら……うにって弾むんだ。弾みながらついてくるのを横目に、ソファに戻る。

 テーブルに箱を置けばサビクとうにがテーブルの上に着地し、メサルとティムも箱に寄って来た。


 三匹の視線に急かされるように、ささっと包装を解いて箱を空ける。

 中に入っていたのはまんまるい、仕切りのある箱に詰めこまれた和菓子の数々。

 この世界、和菓子もあるんだなあとか思いつつ一つ手に取って見る。

 どうみてもお饅頭だね。


『ぴ! ちょ、だい!』

「蛇にお饅頭って食べさせて大丈夫なのかな……」


 指でサビクの口に入るくらいにちぎって目の前に差し出してみる。

 ぴょんと跳ねると同時にお饅頭に大きく口をあけて飛びついて、そのまま丸のみにし始めた……それ味とかわかるのかいサビクさん。


『う!』

「はいはい、みんなで分けておいで?」

『にー!』


 順番待ちをしていたうにが目を輝かせて元気に鳴く。

 十六個入りの饅頭のうち八個程をうにに渡してやると、仲間達のところへぴょんぴょんと弾んで行った。

 ……ブラウニーはあからさまな報酬を与えたらいけないって言うけど、どうやら彼らには関係ないらしい。


「箱を開けない限りは魔法で保存されてるから、気が向いた時にでも開けて見てみるといいわ。カグラへの連絡も向かわせたし、行くならいつでも大丈夫よ、ミラちゃん」

「いつのまに……さっき運び入れた時か。ありがとう、お母様。まあ、急ぎでも無いからお昼過ぎてからにするよ」


 ゲーム内の時間で現在は昼前。

 ちぎった饅頭をさらにティムとメサルにも分けて、残りを口に放り込む。

 しっとりとした餡の甘味がとても好ましく、カグラさんには後で直接お礼を言っておくことにしよう。


「それじゃあミラちゃん、久し振りに一緒に昼食はどうかしら?」

「願ってもないよ。実は少し、期待してたんだ」


 残ったお饅頭をインベントリに放り込み、ノアさんの申し出に二つ返事でこたえて見せる。

 部屋の外で足音が響き離れて行くのはきっと、待機していたシスターがお昼の用意を伝えに行ったのだろう。


 それからはまた暫くノアさんと談笑し、着替えてから食堂へ。

 妙に気合いの入った昼食で、直前に食堂へ乱入してきたオウルさんも加えてみんなでいただいた。

 その時に髪飾りのお礼を言ったら感極まったように喜んでいたよ。


 昼食を終えればまた部屋に戻って、ゆっくりと食休み。

 うに達は私の部屋に完全に居着くつもりのようだったので好きにさせる事にしたけれど、なぜかてのひらサイズの小さなうにが私の頭の上に居座り、ついてくるようになった。

 うに同士でなにかうにうに言っていたけれど、何を話してたんだろうね。

 あと、食後にうに達のことをオウルさんに話したら卒倒して運ばれて行ったのも補足しておく。


 食休みを終えた後はいつもの格好に着替え、ノアさんとオウルさんに見送られながら聖区を出た。

 ノアさん達は組合まで馬車を出そうかと言ってくれたが、王都の様子も見たいし歩いて行くと断って中央へ。

 特に代わり映えのしない王都を歩き、たまにすれ違う人達と挨拶を交わす。

 もう完全に私の事は知れ渡っているようで、中には握手を求めてくる人や子供の頭を撫でて欲しいと言う人達のお願いを聞いていると思いの外時間がかかってしまった。


 そんなこんなでようやくいつもの広場へたどり着き、一息つく。

 あともう少しで組合に到着するかなと思いつつ、何となく視線を流したところで視界に気になるものを見つけて足が止まる。

 なんだろう、あれ。


『ミラちゃん、どしたのー?』

『ミラ様?』

『うに?』

『ぴ?』


 なんと表現すればいいのだろうか。

 広場の外周の木々の間に、大きな金色の毛玉が鎮座していた。

 他の人は気にした様子もなく往来し、私にだけ見えているような感覚を受けつつそれへと歩み寄ってみる。


『……なんですか、あれは』

『もふもふだー!』


 メサル達も気付いたらしく、頭の上でうにが跳ねる。

 毛玉の正体を確かめようとかなり近くまで近付いた。

 かすかにゆらゆらと揺れているそれは私の身長ほどではないが、抱えられる程には大きくて。

 先端が少し白くなっていて、どこかで見たことのある色味だ。

 手を伸ばしてみるか迷っていると、首に巻き付いていたサビクが肩から腕を伝って、跳び跳ねた。


『うー?』

『ぴ!』


 サビクが私の腕から跳んで、毛玉に飛び込んでしまう。

 ぴょこんと毛玉の中から頭を出したサビク。

 危ない物だったらどうするのかと、慌ててサビクを回収したところで毛玉から何かが聞こえた。


「……た、の」

「うん?」

「おなか……すいたの……」


 毛玉が喋った。

 回り込んでみる。

 訂正、毛玉だと思っていたのは、地面にうずくまった、小さな狐の女の子だった。


「ぶしはくわねどたかようじ、なの」

「いやそれは今使う言葉じゃないと思うよ?」






 

 

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