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折れた刀と姫と一致団結

なんでこうなってるのか自分でもようわからん。主に後半





 ワールドクエストの更新を告げるアナウンスと、目の前に浮かぶ豪華な骸骨モンスターの告げた言葉。

 それらに若干の思考リソースを奪われている間にも時間は過ぎる。

 こちらの返答を聞くつもりはないのか、骸骨……地底王国の死霊術師の影を中心に無数のスケルトンが地面から這い出てくるのは中々に不気味で、カタカタと骨と骨がぶつかる音が響く。

最前列で盾を構えるバリーさん、その左右を固めるメロディアさんとシエルさん。

 その後方にとーまくんとラピスさんの弓使いが陣取り、そのさらに後方に私と、スヴィータ。

 ちらりと隣のメイドに視線をやって、後悔した。


「……詩乃、さん?」

「初太刀・燕返し」


 ぶおん、と。

 スヴィータの抜刀と共に突風が吹き抜けヴェールを揺らし、反射的に押さえてしまう。

 次に聞こえたのはダン、とも。ドカン、とも聞こえる轟音。

 顔を上げた先には地面が思いっきり踏み切ったように抉れていて、流れるように視界は移る。

 月を背に浮かぶ死霊術師の片腕が両断されていて、振り抜いた刀の刃を返してそのまま大上段に構えたまま空を駆けるメイドの姿。


『おや、ワタシの腕が……はて、はて?』

「二の太刀・羆落とし(ヒグマオトシ)


 死霊術師が身を捻ると共に、縦一文字に一閃が走る。

 跳躍からの、勢いをつけた頭から抜けるような打ち落とし。

 放たれた一撃は避けられ、地面へと落ちる。

 落ちた先には蠢く骸骨の群れ。

 骨の海を断って斬撃が走る。


「とーまくん!」

「……はい! バリー、ラピス、メロディアさん、シエルさん! 一旦立て直します、スヴィータの援護はぼくとラピスでやりますから、こっちに戦力を回せるか連絡しつつ回復を!」

「わかった、拠点組への通達は任せろ! あの骨どもは頼む!」

「前線組にボスモンター出現の報告と、援軍の要請を行いますね」

「聖女様の護衛は、任せて」

「うはー、こっちに来て正解だったかも! ていうかボスが乗り込んでくるとか流石ASOクオリティ! 運営は禿げろ!」


「終の太刀・秘剣」


 スヴィータにも声をかけようとスケルトンの群れのど真ん中、死霊術師の足元にいるであろう彼女の姿を探して、確かに声が届いた。

 魔力感知で見えたのは、周囲の魔力が物凄い勢いで減っていき、その全てが一点へと集中していく光景。

 

「餓竜点睛」


 魔力を奪われて崩れ落ちていくスケルトン達の中から放たれたのは更なる一閃。

 今度は横一文字に、空を断つように放たれた漆黒の斬撃。

 それは周囲の魔力を吸い上げながら死霊術師に迫り、その場にいる全員の視線を釘付けにしながら空中で大爆発を引き起こした。


「……メイド長、騎士団長より強いのでは」

「し、神剣って、凄いんですね……?」

「あれは、神剣の力ではない。おそらく、本人の技能」

「まじですか……」

「まじです」


 隣に来ていたシエルさんとそんな軽口を叩くほどに、驚きが勝る。

 なんというか、このゲームをはじめてから一番驚いているのが今かもしれない。

 空の一部を爆煙が包むなか、真っ二つに折れた刀を手に歩いてくるスヴィータの姿が視界に映る。

 彼女の表情は抜け落ちたようになにも表しておらず、完全な無表情で。

 表情の代わりに感情を表しているのは腰から伸び広げられた蝙蝠の翼で、それが一度大きく羽ばたき風を起こせば彼女の姿が掻き消えて、次の瞬間には私の前へ。


「……スヴィータ、もしかして怒っていますか?」

「お見苦しい姿をお見せしてしまいました、申し訳ありません」

「刀、折れてしまったのですね」

「五百年、共に在ったものです。主を護る為に散ったのであれば、本望でしょう」

「手、怪我してる。出して」

「申し訳ありません」


 右手にはほぼ根本から折れた刀の柄を。

 左手には折れた刃をそのまま握って戻ってきたスヴィータ。

 大事そうに折れた刃を鞘に収め、蓋をするように柄も収めた彼女の手を取り、ヒールをかける。


「……残念、まだ動いてる」

「手応えはあったのですが、届いていませんでしたか」


 シエルさんの言葉に顔を上げる。

 爆煙が晴れ、再び月明かりが戦場を照らす。

 若干ローブが焼け落ち、しかし切り落とされた筈の片腕を何事もなかったかのように動かす死霊術師の姿を確かめる。

 頭上に見えるHPゲージは全部で五本、それの一番上の一本の七割程が赤に埋まっているのが見えた。


『随分な挨拶だね、メイドの躾はしておくべきだと思うのだが? 何か気に障る事でも言ったかな? 君達脆弱な生者からすれば、とても、とても簡単で、割りのよく、最も失うものの無い、最良の、提案だと思うのだが?』


 折れた刀をインベントリに仕舞い、もう一本の刀……神剣を抜くスヴィータ。

 元の刀より若干短く、刀身が白く淡く輝く反りのある刀だった。

 バリーさんやメロディアさん、とーまくんにラピスさんも我に返って連絡を済ませ、ボスの様子を伺っている。

 陣形は最初のまま、いつでも動けるぞとそれぞれがとーまくんとアイコンタクトを交わしている。

 シエルさんが一歩踏み出し、声を上げた。


「あなた、名前は? 地底王国の死霊術師なんて名前じゃ、ないんでしょ」

『次は、アナタですか? 名前、名前ね、名前ですか。名乗ってもいい、名乗ってもいいのですけれど、人に名前を尋ねるのなら、なんとやらと言うのでは?』

「……一理ある。では、私から、名乗ろう」


 シエルさんがかぶっていたフードの胸の辺りを掴み、一気に引き抜き脱ぎ捨てる。

 真っ先に視線を奪ったのは金色の髪。

 頭に生える耳と、先が黒い尻尾。

 ドレスアーマーと言えばいいのだろうか。

 スカートと、身体のラインにそって散りばめられた白銀の部分鎧と、グリーブにガントレット。

 たてがみを思わせる長い金髪が重力に引かれるように落ちて、キラキラ光る。


「レオニス王国第一王女。レオリシェルテ・レオニス」


 彼女の足元に魔法陣。

 レオリシェルテと名乗ったその人が真っ直ぐに手を伸ばせば地面が隆起し、土が岩へ、岩が鉄へ、鉄が剣へと姿を変えて、その手のひらにおさまって。

 引き抜き、切っ先は死霊術師に向かう。


「この世全ての悪を断つ、(つるぎ)なり」


「だ、第一王女殿下……?」

「ええと、レフィリア様の、お姉さま?」


 展開が怒涛すぎて理解がまだ追い付かないのだが大丈夫だろうか。

 うちのメイドがなんか凄い技を連発したり、敵のボスが私を寄越せと言ってきたり、挙げ句のはてには迎撃戦のメンバーの中に王国のお姫様が混じっていたとかもう何が何やら。


「レフィが、世話になったと聞いた。ありがとう、お礼は後日正式に。今は、アレを仕留める」

「……微力ながら、お供しましょう」

「なんか、ここにいるメンバーだけでも勝てる気がしてきますね……ふふふ」

「お嬢様、思考停止にはまだ早いですよ?」


『これは、これは。レフィリア姫の姉君がこんなところに居るとは、驚きだ! うむ、しかし、いかんせん、良くない。ああ、ワタシの名前でしたね……ワタシは、レキシファーと申しますよ、お姫様。生憎、名乗る姓は持ち合わせていないので悪しからず。他に質問はありますかな?』

「……ある。何故レフィ、レフィリアを襲った? 偶然とは思えない」

『ああ、そのような事でしたら、隠すほどでもないですから、教えましょうとも。勿論、偶然などではありませんとも、もう少しと言うところで、そこの娘に邪魔されてしまいましたが、むしろ僥倖でしたね!』


 死霊術師の視線が私に向く。

 得体の知れない悪寒が背中を撫で上げ、一歩下がってしまう。

 レオリシェルテさんとスヴィータが視線を遮るように私を背中で隠す。


『実に、実に素晴らしい。神威を携え、我が身を犠牲に王女を逃がし、その力続く限りワタシの傀儡を浄化し続けた真の聖女! レフィリア姫も捨てがたいですが、あの時からワタシの眼に映るのはアナタだけですよ、ミラ・ムフロン!』


「……成る程、よくわかった」

「ええ。実に、度し難い」


 ええと。

 つまり、どういう事でしょうか。


「騎士トーマ、仕事ですよ!」

「ええ、そのようですね、ええ。本当に、ええ」

「こいつは、随分やべぇボスがいたもんだな」

「……不潔です!」

「うっは、ラピスちゃんドン引き」


 うじゃうじゃとレキシファーの影からスケルトンが現れ始める。

 スヴィータが奪い尽くした空気中の魔力が元に戻ったからか、スケルトンの召喚にはインターバルが必要なのかはわからないが、赤く光る眼差しが次々と増えていく。


『それでは、改めて答えを聞きましょうか? その娘を寄越しなさい、ええ、決して悪いようにはしません。大事に大事に、永遠にその姿のままの不死者にして、花嫁として世界が続く限り愛でて差し上げますとも! 国と、娘一人と、秤にかけるまでもないでしょう?』


 私を囲むようにバリーさん、メロディアさん、ラピスさん、レオリシェルテさん……長いからやっぱりシエルさんで。そしてとーまくん、スヴィータが集まり、それぞれの武器を構える。

 各々が私を見る。そしてレキシファーを見て、また私を見る。

 見回した仲間達の表情はスヴィータのように抜け落ちていって、なんだか恐怖を感じた。

 そして、各々が声を張り上げる。


「ネクロマンサーじゃなくて、ただのロリコンじゃねえか! 国とか関係なくてめーは今潰しとくわ!」

「不潔です! こんな小さな子を……私が、守ります!」

「きもい! まじきもい! ネクロリコンマンサー滅ぶべし!」

「レフィも、ミラも、渡さない。ここで、断つ!」

「神剣抜刀、ザ・ナンバーオブザビーストもフルで使います、スヴィータさん、パテリ渡しますんで後はよろしく」

「任されました。残りの奥義も出しきるつもりで、アレは滅ぼす事と致しましょう」


「……愛の告白と受け取ってもいいのかな、あれ」

『ミラ様、あれは害虫です。耳を傾けてはいけません、いいえ、眼で見るのもお控えください』

『ミラちゃんはティムのだし! あげないもん!』

『ぴしゃー!』


 シリアスなのか、ギャグなのか、もうわかんないねこれ。

 帰って寝たい。






シエルさんがアリシエルだと思っていた人は正直に挙手。




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