表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/124

使命と指名と神命と?





「アンデッドって……お母様が言ってた奴だよね? 確か、死霊術師の準備が整ったらって」

「ええ、その筈です。今の方は……西からでしたね」

「ミラさん、一旦聖区に戻りましょう。今外に出るよりも様子をみた方がよさそうです」

「そうだね、勝手に動かない方がよさそうだ……聖区に戻るよ」


 都合よく停まっていた乗り合い馬車に駆け込んで、西へ向かう。

 王都の外側から内側へと避難する人々と、外へと駆けていく人々。

 兵士らしき獣人や冒険者、中には聖職者の格好をした人達までが入り交じって門へと移動していくのを眺める。


「インフォメーションですね、ワールドクエスト:不死者の行軍。条件達成により本格的に開始……今からゲーム内で三時間後に開始で、それから三日の間アンデッドが王都に攻めてきます。で、プレイヤーは住人と協力して王都を防衛しろって事みたいです。で、三日後にボスの率いる本隊が西から来るので、それまでにアンデッドの数をいかに減らしておけるか……ですね」

「防衛に失敗したらどうなるかはあまり考えたくはありませんが、おそらくは多数の犠牲者が出るでしょう。王都の中には力の無い者も多数いますから、一匹たりとも通さない覚悟で望むべきかと」

「ミラさんとスヴィータさんは聖女様へ報告と説明をお願いします。ぼくは先に西へ行って状況を確認しつつ掲示板で呼び掛けますんで」

「わかった。お母様に報告したら私達もすぐに向かうよ」

「気乗りはしませんが、お嬢様の対アンデッドの実績は確かですからね」


 西へたどり着いた馬車から飛び降り、とーまくんと別れて聖区へ駆け込む。

 既にこちらの方でも確認されているのか、心なしか人の出入りが激しく、慌ただしく外へ駆けていく人とすれ違う。

 途中でシスターを呼び止め、ノアさんの居場所を尋ねると、オウルさんの部屋へ居ると聞いて急いで向かう。


「……お母様!」

「ああ、ミラちゃん! よかった、まだ王都にいたのね」

「失礼します、お二方。ご存じかとは思いますが、緊急事態でございます」

「アンデッドの事ですね、思ったよりも随分と早い……スヴィータ、何かわかりましたか?」

「はい、ダイアリーに記された情報をお伝えします」


 私はノアさんへ、スヴィータはオウルさんへ、それぞれ情報を伝える。

 ワールドクエスト……住民の間ではどういう扱いになるのかは知らないが、そういう物としてきちんと理解して貰えるようで安心する。

 報告を終えれば次はどうするかの話し合いになるのだけれど、この場所には私は不要だろうから先に行ったとーまくんを追いかける旨をノアさんに言った。


「ダメ……と言いたいけれど、今回ばかりは仕方ないわね。ミラちゃん、きちんと祭服を着て行きなさい。アリエティスの聖女として、次期聖女ミラ・ムフロンにアンデッドからの王都防衛を命じます」

「承りました」

「でも、貴女が出るのは門前までです。決して、敵の軍勢に突っ込むような事はしないように」

「……はい」


「スヴィータ、いいえ、現時刻を以て貴女を正式に次期聖女付きの神殿騎士として任命します。そして神殿騎士スヴィータ、神殿騎士トーマは次期聖女ミラ・ムフロンの守護を命じると共に、神剣を貸与する事とします」

「騎士トーマと共に、謹んで拝命致します」

「西以外の各門へは神殿と国から兵を出します。最も戦闘が激化するであろう西へは、こちらからも戦力を出しますが主な力になるのは組合へ依頼になるでしょう」


「メサル、ティム、サビク、ミラちゃんをお願いね。ミラちゃん、スヴィータと騎士トーマの側を離れないように。それと、アンデッドだけではなくて、他の獣人にも気をつけて」

「ん……わかった。私が担うのは支援と、最終防衛ラインの構築で、いいんだよね」

「ええ。こちらから出す神官達の士気もミラちゃんが居たら高く保てると思うわ。ポーションや霊薬も渡しておくから、こちらの準備が整うまで、お願いね」


「それじゃあ、馬車は用意させてあるから……騎士スヴィータは騎士トーマの分の神剣も受け取って現場へ向かいなさい」

「ミラちゃんも、部屋に戻って少し休んでから支度して行きなさいね。支給する装備は部屋に持っていかせるわ」

「……それじゃあ、行ってきます」

「気をつけてね、ミラちゃん」



 ノアさん達の居た部屋を後にして、私の部屋まで移動してからスヴィータと別れる。

 部屋に入れば、ソファテーブルの側に幾つかの木箱が床に置かれ、テーブルの上には布でくるまれた細長い包みが一つ。

 先に祭服に着替え、ヴェールにミトラを着けて腰に短剣を提げる。

 

『ミラちゃん、メッセージが来てるよ。ウンエーさんから』

「うん? ウンエー?」

『ダイアリーに表示するね』


 浮いていた黒い本が私の目の前まで移動して、頁を開く。

 表示されたのはゲームのメッセージ機能。

 フレンドとか知り合い同士でやり取りができるアレなのだが、私の知り合いにウンエーとか言う名前のプレイヤーは存在していない筈である。


 差出人:ASO運営

 突然のご連絡失礼致します、アニマスピリアオンラインワールドクエスト担当統括AIです。


 プレイヤー名:ミラ様。

 貴女様のプレイスタイル、現在の状況等を把握した上で、このメールをお送りしており、同時に運営サイドからの依頼と言う事になります。

 全体アナウンスでお知らせした通り、これより三日後のワールドクエスト:不死者の行軍にて。

 最終防衛目標を次期聖女:ミラ・ムフロンを指定する許可を願いたくご連絡させていただきました。


 もし許可いただけるのでしたら、このメールに対し許可か不許可を記載の上、ゲーム内時間での翌日までにご返信いただければ幸いです。

 また、返信の内容に関わらず、この件については他言無用にてお願い致します。



 ……なんだろうなあ、これ。


「ウンエーってやっぱり運営なのか……二人はどう思う?」

『んー、よくわかんないけど、ティムはおっけーしてもいいと思う』

『神託……と考えると、お受けすれば何か利益がありそうではありますが、そのぶんミラ様の危険が増すでしょう。しかし、この言い方ですと、ミラ様が受けなかった場合、他の方がこの役目を負う事になるのでしょうか』

「そうだね……わざわざ次期聖女って書いてあるくらいだし、下手したらノアさんか、王女様が目標何て事になる可能性があるね」


 しかし、このメール肝心なことが何も書いてないんだよね……許可か不許可の連絡だけを求めてて、私が何をすればいいかとかが書いていない。

 クエストのネタバレ防止と言われればそれまでなんだけど、当人からしたら判断に困ってしまう

 しかも猶予時間はほぼ無いようなもので、クエストが始まるのも何もかもが突発にもほどがある。


「お待たせしました、お嬢様。すぐにでも出られます」

「ん、わかった。少し待ってね、スヴィータ」


 部屋の扉が開いてスヴィータが姿を見せる。

 彼女の装備は普段の紺と白のメイド服ではなく、全体的に白を基調とした物に変わっていた。

 そして腰の刀が二本に増えていて、腕と足は銀色のガントレットとグリーブに包まれている。


「随分と変わったんだね」

「メイド服でなければ締まりませんので、特別に用意していただきました」

「うん、よく似合ってるよ……うん、こっちも準備オッケー」

「馬車は回してあります」

「よし、急ごう」

「ダー」


 部屋に置いてあった木箱の中身は各種ポーションや素材等々。

 細長い包みの方は中身を確認する時間も惜しいのでそのままインベントリへと放り込む。

 スヴィータを連れて部屋を出て、再びの馬車で聖区を出る。


「……許可して、返信っと」

『ミラ様、そんなにすぐに決めてよろしいのですか?』

「ま、なるようになるさ……これまでみたいに、これからもね」


 例のメールに返信して、ダイアリーを閉じる。

 このイベントで益々NPCのフリに磨きがかかりそうだし、そう考えれば別に悪いことでもない。

 実際にはプレイヤーで死ぬことはないんだし、他の住人が指定されるくらいなら私が受けた方がいいっていうのもあるからね。


「スヴィータ、今日明日の予定は何もなかったね?」

「はい、問題ありません。何か連絡があればこちらに転送されます」

「たまには一日ゲームに費やしてみるのもいいよねー」

「食事休憩はしていただきますよ、お嬢様」

「それは勿論」


 聖区から西門へはそう遠くない。

 馬車から降りた先にはとーまくんとカグラさんが待っていて。

 その二人の背後には、次々と門の外へと駆けていく人達で溢れる光景があった。






イベントはいつも唐突

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ