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幕間「魔王の目的」

三章ですね

 




「主様、目標の殲滅を完了しました」

「ご苦労様。みんな休んでていいよ」

「はっ」


 自身の影に溶けるように消えていく灰色の髪の女の子を見送って、視線を上げる。

 視界にうつるのは粒子になって消えていく一つの巨体。

 そして、次々とぼくの影の中へと消えていく獣達。

 唯一残った人影がぼくへ迫る。


「やー、ははは。ホントに助かったよ、ありがとう」

「その運の良さを別の事に生かして欲しいね」

「あ、その眼は勘弁、しっぽ萎れる」


 駆け寄って来たのは猫耳尻尾を生やした軽装の女の子。

 萌黄色のショートカットで、背中に長弓を背負ったプレイヤー。

 彼女の空気を読まない救援要請に気づいてしまったばっかりに、こんな所まで来る羽目になってしまった。


「あ、これ約束のレアアイテムね。西側って攻略進んでないとは思ってたけど、地下にこんなダンジョンがあったんだねー」

「……なにこれ。ウィンドチョーカー、Agi強化のアクセサリーね。これに免じて今回の事は許してあげるよ」


 受け取ったアイテムをインベントリに放り込み、改めて今いる空間を見回す。

 森の奥に立つ小屋にあった地下への入り口から続いていた空洞。そこから枝分かれするように伸びていた洞窟を進んだ先でこの広い空間にたどり着いた。

 道中と今いる空洞の所々に墓標が乱立していて、出てくるモンスターは全てがスケルトン系。

 僕とは違い、彼女の使っている武器は刺突、物理属性の普通の弓矢だったから相性は最悪だった事が伺えるので救援要請を出したのも頷けはする。

 しかし、わざわざ足を伸ばす必要があったかと言われると、微妙な所だ。


「そんじゃ、ぼくは戻るよ」

「あ、まってまって。魔王様、指名手配の三人組捜してるって言ってなかった?」

「その呼び方を認めた覚えはないよ、迷子さん? で、何か知ってるの?」

「迷子は……否定できないね。話を戻しまして、知ってる知ってる。ボスから隠れてる時に三人組のイエロープレイヤーが奥の通路に行くの見たのよ。な、ぜ、か! 奥の通路に入った直後にボスに攻撃していって、その通路封鎖していきやがりましたんですけどね!」

「……へえ?」


 話を聞くとこうだ。

 目の前の彼女は相変わらず道に迷ってうろうろしてたらいつの間にかこの地下墓地にいた。

 なんとかスケルトンを倒しながら出口を探しているとこの大空洞と言う名の巨大な墓場を発見。

 雑魚が出ないから意気揚々と真っ直ぐに突っ切ろうとして中央辺りを通りすぎたところで進行方向へボス登場、とっさに隠れて発覚は免れたと。

 で、ボスに発覚はしていないのでこのまま隠れてやり過ごそうかなー等と考えていたら、三人組が空洞に登場。

 あとは彼女の言った通りで、その三人組は奥の通路に逃げ込む際にボスに攻撃、発覚フラグが立って出口が封鎖。

 空洞の中央に陣取ったボスと行き止まりに挟まれる形になって、どうしようも無くなったと。


「それなら、予定は変更するしかないか。本当に、タイミングが悪いね」

「私も連れてってね魔王様! 一人で置いてかれたらラピスちゃん死んじゃう!」

「別にいいけどさ。ついてくるならついてくるで、勝手にうろうろしないでね?」

「もっちろん、お役に立ちますとも! あ、さっきのボスのドロップもいる?」

「君属性スキル無いからこんなことになってるんじゃないの? ドロップはいらない」

「てへぺろ!」


 話ながらたどり着いたのは、入り口とは正反対の方向にある、塞がれていた奥へと進むための通路。

 人が三人並んで歩ける程度の幅しかない横穴で、灯りなどもない暗闇が広がっている。

 至るところに墓標があるのは変わらず、不気味な雰囲気を醸し出していた。


「先に行って、殲滅しておいで。三人組のプレイヤー見つけたら足止めよろしく」

「我らにお任せください……行けっ!」


 先程引っ込めたばかりだが、使ってなんぼの従魔達だ。

 影から溢れだした無数の影が次々と通路の奥へと消えていき、戦闘音が響き出す。

 獣の咆哮に、骨が砕ける音と金属音。

 数分待つ。


「相変わらずえぐいよね、魔王様のスキル」

「そう言うけど、君は君でえぐいスキル持ってるでしょ」

「まあねー。けど、私のスキルは空が見えてないと使えないからさっ」

「主様、三人のプレイヤーを発見致しました」


 影の中から現れるのは灰色の髪の女の子。

 現れるなりぼくの目の前で跪き、一言告げて頭を下げた。

 頭の上のピンと立った耳と、大きく振られている尻尾が彼女の今の感情を代弁しているようだ。

 意訳すると、ほめてほめてー、かな。


「ご苦労様。それじゃあ、行こうか」

「そういえばさ、魔王様。本来の探し物は見つけたの?」

「君ね、ベータ除いたらまだ初日もいいとこだよ? そう簡単に見つかったら苦労しないよ」

「まあ、それはそうなんだけどね。私の方もそれっぽい情報は無し、知り合った聖女様も知らないみたいだったし」

「聖女でも知らないのか……やっぱり、聖都に辿り着かないとヒントすら見当たらないのかな」


 一切の気配が無くなった道を、一列になって進む。

 先頭には灰色の髪の女の子を、真ん中にラピスを挟んで殿にぼく。


「私は記憶取ってないからわかんないけどさ、そんなにしてまで探したい物なの?」

「まあ、そればっかりは記憶持ち……ぼくにしかわからないだろうね」

「神様の世界に続く門なんて、本当にあるのかな」

「ある。あってもらわなくちゃ困る」


 先頭を行く灰色の髪の女の子の先導に従い歩いて行く。

 リポップしたモンスターはぼくの影から飛び出した獣が屠り、噛み砕いて行く。

 その度に目の前を行く少女が過剰に反応するのは見ていて面白いが、いい加減慣れたらどうなんだろうとも思う。


 彼女はぼくの協力者だ。

 すこし特殊な生産スキルを持つ彼女。普通では手に入らない、彼女が欲する素材をぼくは用意できる。

 素材を提供する代わりに、彼女はぼくの為に情報を集めて渡す。

 時たまこうやって迷子になるのを助けるのも、もう一度や二度ではなくて定期的に発生する恒例行事。

 表向きには、ただの一ベータプレイヤーどうしで通してあるが。


「そんじゃ、次からは聖都方面を中心に情報集めてみるねっ」

「よろしく。ぼくは攻略進めるの少し遅れると思うから、任せるよ」

「あ、例の新人さん? 魔王様のリアフレ?」

「まあ、そんなところだね」


 今頃彼女は何をしているのだろうか。

 あの人の事だから、また何か妙な事に巻き込まれたりしてそうだなあ。

 アリエティス様の聖女ともいつの間にか仲良くなってて、ヴェールまで貰っていたくらいだし。

 もしかしたら、彼女がぼくの求めている情報を仕入れてくれるかもしれないとも期待してしまう。

 記憶持ち同士の詮索は無用っていうのは、理解しているし徹底するつもりではあるけれど。

 思うだけなら、タダだろう。


「主様、あちらに」

「ん、結構近かったね。組合で暴れる度胸がある程の勇者なのに、案外弱っちいのかな?」

「魔王様からしたら多分殆どのプレイヤーが弱いと思いまーす」

「今すぐデスルーラする?」

「サー、私は何も言っていませんです、サー!」



 辿り着くのは行き止まり、袋小路らしき小部屋の前。

 部屋と言っても扉があるわけでもなく、モンスター達から逃げてきて狭い入り口を利用して籠城してたってところかな。

 部屋に入れば、モンスターの代わりにぼくの獣達が取り囲んでいる光景が広がっている。

 部屋の壁際には三人のプレイヤー。

 剣士と、弓使いと、杖持ちの魔術師。

 頭上にはイエロープレイヤーを示すアイコンと、冒険者組合と神殿、王国全てからの指名手配。

 国からの指名手配って事は、脱獄までやったみたいだね、こいつら。

 まず間違いなく、彼女の言っていた三人組だろう。


「お、おいあんた達! ちょうどよかった、助けてくれ!」

「スケルトンに追い詰められたと思ったら今度は見たことない狼のモンスターに取り囲まれてんだよ!」

「襲ってこねーけど、部屋からも出られねぇ! 礼はするから、頼むよ!」


 ラピスを後ろに下がらせ、灰色の髪の女の子を連れて前に出る。

 背中に背負った弓を外して、魔力で編んだ矢をつがえて。

 狙いをつければ、矢が空を切る。


「ぐぇっ」

「……へ?」

「……は?」


 弓使いの額を撃ち抜き、そのまま即死。

 光の粒子になって消えていくのを見て、残り二人の動きが止まる。

 続けて矢を射る。魔術師の首から上が消える。粒子になって消える。


「悪いけど、犯罪者を助ける義理はない。そもそも、ぼくの最優先の獲物なんだよね、君たち。」

「うわー、えっぐ。躊躇いなくヘッドショットとか、魔王様えっぐ」

「は? 魔王? なんで魔王が俺らを狙うんだよ!? あんたになんもしてねぇだろ!」

「答える必要も無いね。来世では、まっとうに生きる事をお薦めするよ……ヴォルフ、やれ」

「仰せのままに!」


 傍らに控えていた灰色の女の子が飛び出し、それに続くように周囲を囲んでいた狼達が残った剣士へと飛び掛かって行く。

 最後に彼が何か叫んでいたようだが、聞く必要も無い。

 彼が生きて帰る事はないし、粒子になって消えた後は三人仲良く指名手配プレイヤー用の牢獄へと死に戻りしている事だろう

 弓を仕舞い、踵を返す。


「そんじゃ、出ようか。このダンジョンの攻略もしてみたい気もするけど、足手まといがいるからね」

「魔王様ひっどい!? あ、まって置いてかないでまた変なとこ行って迷いたくない!」


 来た道を戻って、迷子の子猫を連れて地下墓地を出る。

 入り口の小屋だけマップにマーキングしておいて、従魔達に露払いをさせながら王都へ帰還する。


「ねーねー魔王様、あえて聞いて来なかったこと聞いていい?」

「その魔王様呼びをやめるなら、内容次第で答えてあげてもいいよ」

「そんじゃ、改めてトーマくん。神界に続く門みっけてさ、その後はどうすんの?」


 なんだ、そんな事か。


「まあ、君の事は信用してるし、口外もしないだろうし……教えてあげてもいいよ」

「教えてくれたら依頼されてる装備、お安くしますよん?」

「別に、値引きなんかいらないけどさ」


 西門を避けて、南門に移動してから王都の門をくぐる。

 後ろから追いかけてくる少女へ振り向きながら、従魔達を影へと呼び戻す。


「門を見っけたら、か。門を見っけたら、二度と向こうから物質界に干渉できないように、跡形もなく破壊する。いくつあるのかは知らないけど、残さず全部。こっちの世界から、二度と誰も拐わせないように、拐われないように、徹底的に」

「えーと。それって……神様とか聖都とか、色々と敵に回します発言してない? うわー、絶対漏らせないわ……聞かなきゃよかった!」

「まあ、ぼくって魔王様らしいし?」


 改めて目的を整理してみると、確かに魔王っぽいかもね。

 神界へ続く門があるのはわかっている。

 記憶の中のあの人を連れ去った奴の顔も、覚えている。


 何があっても、見つけてみせる。

 

 その為にもやっぱり、聖都へ入る手段の確立が当面の目的かな?







別視点はプロローグとかの本編外部分のみの予定です。

本編は常に鏡華さんです。


たぶん

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[一言] トーマくん魔王様だったのか…!
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