第5話 下級生と一線を越える?
*ガールズラブ&微エロがあります
『それにしても……お嬢様、よろしかったのですか?絵美様をお招きして……』
(かまわないわよ。覚悟は決めたから! )
『気にしてるのは、我らの正体が怪しまれるのでは、と思ってるのですが……』
(四十雀が黙ってればいいのよ! 見た目、鳥なんだからさ)
『なんだか絵美様が来られるのが嬉しそうですな……。
まあ、ご友人が増えるのは良い事です』
(え、絵美ちゃんは……な、何でもない……)
何だか落ち着かない千秋に対し、四十雀は何も言わなかった。
彼女の中で、絵美がただの『獲物』から、『絵美ちゃん』になった事に気がついたからだ。
『私はお嬢様を応援してますよ。
たとえリリス様がサキュバスとしてはダメだっておっしゃっても……』
いそいそと部活に行く千秋の後ろ姿を見送り、そっと四十雀は呟いた。
***
「よ——し。これで今日は終わるかあ。みんな、お疲れ——」
ようやく部活も終わりに近づき、和美が号令をかける。
みんな思い思いに、スポーツドリンクを飲んだり、友達と他愛のない話をしていたりしていた。
万年幽霊部員の千秋にとっては、今日の練習はとてもキツく感じた。
レシーブの練習だけでも百本以上はしただろうか。
(痛いなあ……腰張っちゃったよ……。ちゃんと運動しなきゃな……)
「千秋先輩ぃ!」
千秋がずっと腰をさすっていると、絵美が小走りしてやってきた。
その様子は、何だかリスが駆け寄ってくるようで可愛く感じた。
「ちょっと腰が痛くて……。ごめんね。すぐ行くから」
「え?大丈夫ですか、千秋先輩‥‥」
心配そうに絵美は千秋の腰を撫でた。
(……あ……)
ついピクンと身体が反応してしまう。
ほんのちょっとだけ触れられただけなのに……。
(私、どうしちゃったんだろ……。
佳之くんに触れられた時より感じちゃうなんて……
絵美ちゃんを意識しすぎよ、きっとそうに違いない……)
「千秋ぃ。今日、帰りにマクドかミスドに行かない? バイトないんでしょ?」
「あ、か、和美……。 いや、ちょっと今日は……ね……絵美ちゃん」
「そ、そうなんですよ——、部長。
ちょっと千秋先輩には勉強をいろいろ教わってて……」
「ふ〜ん……。そっか。なら仕方ないかな……」
いつもと違って、なんか歯切れの悪い千秋と絵美。
ここ数日の千秋と絵美の様子はなんかおかしい。
確かにそう和美は感じていたのだ。
千秋とは高校に入ってからの付き合いだ。
学校一きれいで勉強もスポーツもできる千秋。
そんな彼女が時折見せる、儚げなところや少し暗い影……。
少しズレたところや、年頃の女の子らしい輝く笑顔……。
そんな千秋が和美は大好きだ。
でもここ数日は、絵美と2人で何か秘密にしているようで、和美は心の中が何かモヤモヤしていた。
羨ましいというわけでもない。
とにかく絵美と話している千秋を見るのが辛かったのだ。
さっきのように妙にベタベタする絵美と、それを隠すようにしている千秋を見てると、何だか胸の奥がチクチクする。
(……ずるい……絵美ばっかり……)
絵美と楽しそうに話している千秋を見つめながら、そう和美は呟いた。
***
すっかり日も落ちて、絵美と千秋は2人でスーパーに来ていた。
もちろん、一緒に夕食を作るためだ。
「絵美ちゃん。このお肉でいいかな?」
「あ、千秋先輩。こっちの方が安いですよ」
スーパーではすっかり絵美が主導権を握っていた。
千秋はスーパーにはあまり来ない。
カップ麺の特売日とか卵大安売りの時しか用事がなかったのだ。
それに比べ、絵美は自分んちの家事もこなしているようで、手際よく買い物カゴに食材を入れていく。
ボーイッシュな外見とは裏腹な家庭的なところ……。
知らなかった絵美のそんな側面を知り、何だか千秋は心が暖かくなった。
***
「あ。ここよ。絵美ちゃん」
千秋は住宅街にある一軒の古びたアパートの前に立ち止まった。
「え?ここが……?」
「そ。あそこが私の部屋よ。びっくりした?」
「え、ええ」
鉄製の外階段が軋み、歩くたびにカツカツと靴の音が響く。
「びっくりしました……。千秋先輩……。
ご両親が海外にいて、貧乏だっては聞いてたけど……」
階段を上がりながら、目をまん丸にして驚いている絵美。
そんな彼女の様子を見て、千秋は少し恥ずかしく思った。
部屋の鍵をガチャと千秋が開けると、そこには6畳間と狭いキッチンがあった。
「あ! 何? あの鳥、可愛いっ!」
頬部分が白い小鳥を見つけると、絵美は一目散にその鳥を捕まえようとした。
『お、お嬢様、お助けを〜』
(ふん! 大人しく絵美ちゃんに捕まって愛玩されなさい!)
『ぐへ!首が締まる……チョークチョーク!反則ですって!』
(四十雀、大人しくお縄になれよ!絵美ちゃんのためだ)
『ちょっと酷いです……お嬢様‥‥。うう。
絵美様と私め、どっちが大切ですか?』
(もちろん、絵美ちゃんに決まってる!)
『あうう……』
暴れていた四十雀は、ようやく絵美の手の平に大人しく収まった。
(四十雀、大人しく絵美ちゃんの肩に止まってなさい!)
『ええぇ〜』
主人の言う通り、四十雀は大人しく絵美の肩にそっと止まった。
「可愛い〜。この鳥、とっても懐いてますね、千秋先輩!」
四十雀の頭を撫でながら、ぱあっと笑顔を見せる絵美。
ドキっ!
その笑顔を見た瞬間、千秋の胸の奥がキュンと音を立てる。
(ああ、どうして……?
どうしてこんなにドキドキするの? 私、何だか変……)
千秋は動揺を知られまいと、ごくごく普通に絵美に声をかける。
「じゃ、遅くなると悪いからご飯の支度しましょ?」
「はい!千秋先輩」
***
手際よくテキパキと野菜や肉を切っていく絵美。
その様子に千秋はうっとりとしてしまっていた。
(なんて家庭的なんだろう……。私にはできないなあ。羨ましい……)
羨望の眼差しで見つめられていることに、絵美は何となくくすぐったさを感じた。
絵美からしてみたら、千秋こそ手の届かない人だったから……。
「……千秋先輩、この人参、そこのピーラーで皮を取ってくれます?」
「え、ええ。これね……」
千秋はピーラーを手に取り、おもむろに人参の皮を剥き始めた。
「きゃ!」
料理が苦手な千秋は、うかつにもピーラーで指を切ってしまった。
「あ!千秋先輩、だ、大丈夫ですか?」
絵美は思わず、千秋の人差し指を口に咥えて吸いはじめた。
「あ……絵美ちゃん……そ、それは……」
絵美の舌が指に絡み、舐められ吸われている……。
サキュバスの血液は最強の催淫作用を持っている。
その上、その血を摂取したものは永久に主人に従うハメになるのだ。
その血を、今、絵美が舐めているのだ。
「そ、それ……ダメだから……絵美ちゃん……」
「……先輩……千秋さん……。ん……」
彼女の舌の動きは段々と淫靡なものになってきた。
そして指を舌で舐めながら、上目遣いで絵美は千秋を潤んだ瞳で見つめた。
少年のようなボーイッシュな髪とキリッとした美しさ。
濡れてキラキラと輝くきれいな瞳。
半開きになって、ぬらぬらとしている薄桃色の肉厚の唇……。
そんな絵美の表情を見てると、千秋も蕩けてしまいそうになる。
「はぁはぁ……千秋先輩が……好きっ!もう我慢できない!」
絵美は千秋を押し倒すと、制服の中に手を入れてきた。
そして細い指が、千秋の胸の一番感じるところと、太腿の内側に触れてくる。
「——っ!」
そのまま絵美の濡れた唇が迫ってくると、千秋の中で何かが弾けた。




