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番外編2 はじめての薬師ギルド 1

 番外編1の続き。After本編より前のほうの時系列の話です。

 


薬師(くすし)ギルド?」


 修太の言葉を聞いて、グレイは酒の入ったグラスを持ったまま、けげんそうな声を出した。カツンとグラスをテーブルに置き、話し合う姿勢をとる。


「お前には充分な財産があるだろ。体が弱いのに、なんでわざわざ働きたがるんだ? 奇特(きとく)な奴だな」

「だって、家にいると退屈なんだ。俺はサーシャのおかげで、薬草の見極めはできるし、簡単な薬くらいなら家でも作れるだろ。でも、薬を扱うには薬師ギルドに入らないといけないって聞いたから」

「誰に?」

「冒険者ギルドの職員さん」


 修太の答えを聞いて、グレイが舌打ちした。


「あいつら、余計なことを」

「なんで嫌そうにするんだ?」


 てっきり好きにしろと返ってくると思っていたから、修太は不思議でたまらない。


「お前の薬草の知識が、普通かもしくは物知らずなほうだったら、俺だって何も言わねえよ。サーシャがろくに考えずに、神竜(しんりゅう)としてつちかってきた知識を叩きこんだせいで、お前もケイも、常識がずれてる」

「そう?」

「前に、貴重な薬草を売って、大騒ぎになったのを忘れたのか? しばらく商人と薬師に付きまとわられた」

「そうだっけ?」


 確かに、人々がすごいと騒いでいたのは覚えているが、トラブルになった記憶が無い。


「どこで採ってきたのかと問う奴らに、お前が森としか答えなかったから、あきらめたんだろ」

「えー? だって、森じゃん」

「だから、あの連中は詳細が聞きたかったんだろ」

「木陰とか、岩陰とかだよ。なんかその辺」

「森を見回せば、どこも木陰か岩陰だ」


 グレイがうんざりしたように溜息をついて、酒をあおる。修太は首を傾げる。歩いていたら、なんとなく見つけるだけだから、そうとしか言いようがないのだ。


「歩き回ってたら、目にとまるだろ。それで、()むだけだしな。狙って採りに行ったことがないから、何がそんなにすごいのか分かんないよ」


 修太としては、たまたま見つけた良い薬草を売っただけだ。


「でもさ、父さんの理屈だと、サーシャの知識が常識からずれてるんだろ? 俺が薬師ギルドで勉強したら、常識を知ることができていいじゃんか」

「どういうことだ」

「薬師ギルドに入ったら、新入りはまずは〈青〉ランク以上の人に師事するんだよ。で、〈黄〉になったら、店を持てるんだ。それで、店で扱える薬の種類は、ランクと関係するんだって話だぜ」

「……なるほどな。そういうことなら、構わんか」


 グレイも思うところがあったらしい。

 若干、渋々といった感じながら、納得を見せた。


「それじゃあ、さっそく薬師ギルドに行っていい?」

「ギルド前までは一緒に行く」

「中にも同行するって言うかと思った」

「薬師はくさいから好かん」


 グレイは酒瓶に蓋をして、グラスを台所の流しに持っていった。修太は自室に行き、横掛け(かばん)と財布を取ってきた。旅人の指輪があるから手ぶらでもいいのだが、旅人の指輪がツェルンディエーラの古代遺産だと、分かる人には分かるので、目を付けられないためのカモフラージュだ。

 筆記具も入れてあることを確認し、フードをしっかり目深へ引き下ろす。

 武器を手にしたグレイとともに玄関に行くと、すでにコウが扉の前でお座りしていた。




 薬師ギルドの建物は、ギルドと役場が集まっている広場にある。

 緑に塗られた壁をよく見ると、石に草花が彫り込まれている。薬瓶が描かれている看板だけでなく、この彫り込みも薬師ギルドの目印だ。

 この建物は、一階の出入り口は少し奥まった所にある。アーケードみたいに、出入り口の正面に、広々とした屋根部分があるのだ。その下、入口の傍らに荷馬車がとめられ、商人が荷物を出し入れしているのを見るに、突然のスコールに備えて、商品が濡れないようにする工夫なのかもしれない。

 出入り口の扉は、ステンドグラスがはまった両開きのものだ。


「冒険者ギルドにいるから、終わったら来いよ」

「分かった、ありがとう」


 グレイに礼を言うと、グレイは心配していたわりにはあっさりした足取りで去っていく。修太はコウに話しかける。


「コウ、ここで待っててくれるか」

「ワゥッ」


 嫌そうに、コウは鼻に皺を寄せて鳴く。


「だってここ、薬を扱ってるんだぞ。動物が出入りするのは迷惑だと思うんだよ。お前が綺麗好きなのは知ってるけど」


 修太が困っているのは分かるのか、コウは不承不承という態度で、壁沿いの脇に移動した。そのまま日陰で()せをする。

 あからさまにすねているので、修太は苦笑を浮かべる。


「ごめんって。後で美味い肉でも買ってやるから」


 コウはじぃっと修太を見つめ、しかたないなあと言いたげに吠えた。


「ワフッ」


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