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いっちょやってみっか!

拙者は小笠原ゆしなり…。


この世界、異世界(メタリアトラス)に転移した転移者の1人でござる。何故こんな状態になったのか…、それを語るには15分程遡るでござる。



拙者は冷房をガンガンかけた室内で炬燵に入り、ミカンを食べつつ録画した忠臣蔵を見ていたでござる。すると…こう…ぼんやりとして意識を失い。目が覚めたら密林(ジャングル)の中に佇んでいたのでござる。


辺りを見渡すと見慣れた我が家の家具は消え失せ、代わりに遠慮する気配の無い草や樹木が生い茂っていたでござる。右手にはガンガンに冷えた剥きかけの蜜柑がひとつ握られていた…のでござる。


拙者は、ちょんまげ頭に(かみしも)、脇に模造刀を抱えた完全武装のコスプレのまま異世界(メタリアトラス)に転移してしまったようでござる。何故転移したってのが分かるって?そりゃ拙者を呼びつけた奴と記憶を共有してるからだでござる!全く困ったものでござる。


拙者を呼びつけた奴が言うには、拙者はこの世界(メタリアトラス)の魔王を倒して欲しいとの事で呼ばれたらしいでござるが、召喚者から5,000km離れた芭蕉に間違って召喚されたらしいでござる。召喚するだけでも迷惑なんだが重ねて失敗するとは非常に迷惑な奴でござる。


拙者は魔王を倒す力として、精霊を使(ファミ)(リア)として召喚者から授かったらしいでござる。今もその精霊を通して交信しているらしいでござる。この世界(メタリアトラス)の知識もある程度は精霊を通して入ってくるでござる。全く便利な召喚術でござるな。


はぁ、迎えが到着するまでに1ヵ月以上かかるらしいでござる…。それまで蜜柑1つでは…飢え死んでしまうでござる。




「おい、相棒。相棒の見てるものや聞いている音、こちらでは把握しているぜ?可愛子ちゃん」


この頭で鳴り響くよくわかんない声の主ははるか彼方にいる拙者の使(ファミ)(リア)のサハギヌプリンスでござる。別に王子でもなんでもないらしいでござる。ややこしいでござる。


「おい、相棒~つれねぇじゃねぇか~へっへっへ~」


「いいから早く迎えに来るでござる!」


一人言、人が見ればまさに一人言を言いつつ密林を当てもなく歩いていく。



密林とは言ったもので、まさしく密林。木が絡み合うように密集しており、召喚地点から抜ける道がなかった。まぁ、切り開かれた森ならともかく原生林ならこんな事もあるだろう。つまり…閉じ込められていた。


「どうすれば良いでござるか?」


「サハギヌは陸の事はわかんねぇぜ!へっへっへ」


「気色悪い笑いかたするなでござる!」


完全に行く当てを失った拙者は唯一の大の字で眠れる程の空間…召喚地点に倒れ込み、辺りを観察した。10m程の高さの天然の屋根、木々の隙間から木漏れ日は漏れているが、どうにも薄暗い。



四方3mも歩けば牢獄の鉄格子のように密集して絡まり合う木々に阻まれて抜け出るを叶わず。かといって木登りしようとも(かみしも)が邪魔で登れない。第一登っても檻の外側に行けそうな場所はないし、そもそも行った先も檻になってたら同じ事の繰り返しだし、落ちて怪我でもしたら目も当てられない。


地面は木の根っこがうねるばかりで土すら見えない。落ち葉は何処に行くんだ落ち葉は…。


「なぁ、相棒のその格好は元の世界の格好だよな?動きづらくないか?」


「コスプレだよ、コスプレ。拙者は今はまだ売れないユーチューバーだが、いつかはきっとスターになるでござる!」


「いいから脱げよ相棒」


「殺す」


「地がでてんぞ、相棒。さっさと脱がないと動きようがねぇぞ」


「うるさいでござる!」



「なぁ、相棒」



「何でござるか!」



「そこ、多分魔物出るぞ」






「は?」



魔物…?いや、歩かなければエンカウントしないんじゃないか?モンスターって空間に突然湧いてくるの!?


「いや、多分だが、そこは落ち葉がないだろ?不自然だってさっき気付いたよな?その不自然さを納得できる説を俺様は3つ知っている。1つ目は誰かが掃除している。これはないだろ?あったとしても怖いだろ?。ああ、さておき、2つ目はモンスターの仕業だ。葉喰蛇ってのがいる。人間見たら食って掛かってくるがそれ以外は草食の大人しい蛇だ。夜になると…出てくる。3つ目は…お前は幻覚を見ている。そのうちのどれだと思う?…いや、問い直そう。どっちなら良いと思う?」


「どっちも嫌でござる」


「だよなぁ、でも、それ現実なんだぜ」


「現実の拙者は蜜柑を食べつつ忠臣蔵を見ていたでござる」



ふと、何かの気配の方向を見渡すと、隙間から人間の目が覗いている。



やばい、目があってしまったでござる。


「これは1番目の説でござるか…?」


そんな独り言を呟き、その目の主を観察する。


その目の主は、始めは警戒の色もあったような気もするが、何となくこちらを害するような気はない…様な気がする。…でござる。


目の主は拙者にも分かる様な言葉で質問した。どうやら女の子の様でござる。


「あなた何処から来たの?」


「せ…拙者はこの異世界(メタリアトラス)とは違う世界(ザ・ワールド)から召喚されて来たでござる」


「ああ、召喚地点ミスね」


「召喚地点ミス?」


「地中とか、空の上とか、時々エラいところに召喚される勇者がいるのよね。あなたラッキーよ。たまたまこの辺は※かべのなかにいる※が出来ない特別な空間になってるから、召喚される者は地上に召喚されるの。多分他の場所だったら一生土の中よ」


「おい、お前らはそんなミスやらかしたのでござるか?」


「あー、相棒を召喚した町長って奴は『すまんのぅ』と言ってるぞ」


「もし会う事があればヴン殴ると伝えてくれでござる」


「あいよ、」


彼女?ははたから見て一人言を言う拙者に話しかける。



「でもまぁ、土の中でも石の中でも、一緒かもね。ここ、牢獄の中だし。どのみち貴方ここから生きて出られる可能性は…殆ど無いわよ?」


「は?」


…続く。


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