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頓服薬

 ある日急に、頭の中で声がしたの。

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」

 とても驚いて、怖くて、側にいた夫に聞いたの。

「ねえ、いま死ねって言わなかった。」

「死ねなんて、言うわけがないだろ。」

 それからは滅茶滅茶。殺されるって恐怖に四六時中うちに閉じこもって。夫が病院に電話してわたしは無理矢理入院させられた。

 それでもわたしは愛されていたわ。夫は毎日のように病院に来てくれて。長い時間わたしに寄り添ってくれた。

 退院後は二人で協力しあって生きてきた。家事も夫が負担してくれた。悲しみは病気だけ。二人の間に落ちる影のように。

 ある日気が付いた。夫は、わたしにすぐ頓服薬を飲ませる。ちょっと相談に乗って欲しいとき、不安なんだよと言って薬をわたしに飲ませる。

 わたしのことが面倒くさいのかしら。そう思うときもある。だけれどわたしたちは愛し合っているから。あの入院だってそう。わたしのためだったの分かってる。あのままではわたしは閉じこもったまま廃人になっていた。

 でも不安なの。最近あなた、一人ででかけてゆく。楽しそうに。ええそりゃあ、あなたにだって一人の時間は必要よ。

 頓服薬をお飲み。そう。不安なら、飲むしかない。頓服薬を。耐えられないのなら。

 いつかあなたはわたしを捨てて行ってしまうのだわ。いいえ気のせいよ。息抜きがしたいだけなのよ。

 頓服薬を。








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