嵐の前の
「イデ・・・・・聞いたぞ・・・」
「!!」
気がつかなかったのだがオーストが追い付いて来ていた。
後ろに見慣れない二人の兵士を従えて。
「・・・イデ・・・・」剣を抜くオースト
(・・・・はは・・・気持ちで逆らった途端にこれか・・)なんかどうでも良くなった。
「イデ・・・・今の発言・・・聞くまでもないと思うが本心か・・・変わる余地はないか」
「・・・・あぁ・・・分かるだろ?」澄んだ目で答えるイデ。(シェーラもこんな感じだったのかな)などと思いつつ。
「そうか・・・・理解した。」
剣を抜いたまま歩み寄ってくるオースト。
ずっとそれを見ているイデ。
「・・・・」
・・・剣を収めるオースト。
そしてスッと膝をつきその剣をイデに捧げる形をとる。
「??・・・オースト?」これは騎士の礼・・・イデが知る限りそれは臣下の契りを結ぶ時に行う礼法のはずであった。
「イデ。これからはその目的の為共に歩む事をここに誓う」剣を捧げたまましっかりとした口調で言う。
「なっ!・・・オースト!!」
二人の兵士の前なのである。
正気の沙汰とは思えなかった。
「ここに居る二人も同じ神官戦士で俺と同じ学問所で学んだ仲だ。・・・イデ、お前ともな」
「ここの警備につけられたが今のこの国はおかしい」一人はホラティウスだと名乗りながら言った。
「国政のあり方をなんとか変えたいと願っている」もう一人はアントニウスと名乗った。
「計画はある程度できているんだ。実は後一人神殿長のそばに入り込める人間が欲しかったんだ」真剣に言う。
「仲間になってくれないか。国を変えるきっかけを作れればそれで良いんだ。」
「・・・・」
イデには信じられなかった。仮にも神官である。
が、「この村に敵は居ない。ここから新しい国を作ることも考えている・・・こんな残虐な行為が許されない国を。」
その言葉でイデの心は決まった。
「分かった。でもこの儀式はやめよう・・・・・兄さん。」
イデがオーストを兄と呼ぶのはずいぶん久しぶりであったが自然と言葉をつむいでいた。
「でも、一つだけ約束して欲しい・・・・」
この時からイデは神殿の衛士になる事を目標に15歳になるまで学問は最低限にし、それよりも剣術に励むようになる。
時には夜にこの刑場で稽古をつけてもらいながら・・・・・。