表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

雨の中



・・・



そして夕刻。



太陽が沈むと同時に雨が散り始め・・・・・



それでも処刑場の人だかりはすごいものになっていた。


やがて縄で縛られたシェーラと4人の神官が歩み来た。



「ここに魔女であり神に逆らった罪人シェーラの処刑を行う」


一人が宣言し


・・・それはいともあっけなく。



2人の神官の持つ槍に体を貫かれシェーラは逝った。



「イデ、ごめんね」  ただ一言だけを残して。




「魔女の処刑はこれにて終わった。生き返ってきても大丈夫なようにしばらくこのままの状態で置いておく。」


「神の意思に従いこれからも日々の生活を送るように」


そう宣言して神官は解散を命じた。



イデは・・・・神官戦士として刑場に上がっていたオーストも無表情であった。


オーストはまだこの地に残ることを命じられ共に帰路につく。



「やっと清々したよ」


「これで魔女に脅かされる事もないんだね」


「あのまま成長していたらどうなっていたことか」


「危うく騙されるとこだったぜ」



  村人達のそんな声が聞こえてきた。


(以前から噂はあったんだ)


オーストの言葉がイデの脳裏に蘇る。


「・・・くっ」 何かがイデの中で爆ぜた気がした。



「イデ、気にしないで行こう」やはり無表情でオーストは言い足を進ませた。



「シェーラちゃんが魔女だなんてありっこないのにね」


「イデも可愛そうに」


「何かあったら言っておくれな」


農場に戻るとそんな話し声が聞こえてきた。


入り口で泣いている奥さんに近所の心ある村人達が(少なくとも噂し合っていた人間達とは違ったのでそう思えた)

話しかけていたのである。


イデとオーストは軽く会釈だけして中に入っていった。  やはり表情は硬かったが。


「でもね、神と同格の神官長様に逆らうなんてのはもってのほかだよ」


扉を閉める間際にそんな言葉が聞こえてきた。


その日の夜・・・いつもより少し遅い夕食時



本格的に降り出した雨の音と食器の音だけが響いていた。


「ねぇ・・・?」イデが突然口を開く。

注目する一同。


「『神』って何?『神』って誰の事?」


・・・オーストはぎょっとする。


「そりゃここで神様って言ったら神殿長様かね・・・いややっぱり神殿長様しか居ないよねぇ」当たり前のように答える母親。


「そりゃそうだろう」続く父親。


「神殿長様って人間じゃないんだ」

最新の学問・・倫理や哲学を習っていると自負するイデにはどうも納得がいかない気がしたので更に問い掛ける。


「そりゃ神殿に御住みになって全部を束ねられるんだから人間じゃないだろう」


「・・・ふぅ~ん」


そこで会話が終わるかと思ったのだが母親が余計な一言を。



「あの子だって・・・シェーラだって神に逆らわなければこんな目には・・・・」

「おい!」


父親が止めるが遅い。


「!!」ガッタッン!椅子を倒し立ち上がるイデ。


そしてそのまま外へ飛び出していく。


「イデ!!」後を追うオースト。




イデの中で『何かが』生まれていた。止め様も無い何かが。




処刑場へ向かう。


シェーラは雨の中2本の槍に貫かれたそのままの姿で放置されていた。


綺麗だった長髪もべったりとしてしまい顔を覆い隠している。


どんな表情で死んだか分からなくなっていたのは幸いだったかもしれない・・・・・誰にとってか、は分からないが。



シェーラの前に立つイデ。もう生まれた気持ちは止められない。


「シェーラ!!」


「シェーラ!!・・・これをやったのが神だと言うのなら!!」


「こんなのが神の所業だと言うのなら!!」雨の中叫ぶ。



「俺は・・・俺は神を殺す!!!」 


シェーラの亡骸を前に誓う。



「シェーラ!!俺は神を殺す!!」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ