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曇り空

その日は少し強い雨が降り出したためまだ昼間の内早めに放牧を切り上げての一家団欒を楽しんでいた。


・・・もちろん神殿勤めのオーストは不在であったが。



ドンドンッ!!


「私は神官長のアムイというものだがシェーラという娘がここに居るはずだな!」


ドアを激しく叩く音と怒号。


「娘に聞きたい事があってここの神官オーストを引き連れやってきた。開けろ!」


「オースト!?」


「は、はい!今すぐ開けます」


「・・・神官長様」


中に居た4人はとまどいながらも主人がドアを開ける。



水しぶきを飛ばしながら入ってくる6人の男達。オーストは一番後から入ってきた。


一番最初に入ってきた上質の服を来た男が屋内を見回しながら言う


「シェーラというのはお前だな」


「お前は風の精霊が視えるそうだが間違いないか?お前が異教の魔女だという村人からの通達があったのだが」


・・・その質問に家族はハッとする(異端審問?!)


「シェーラ!」少し慌てて叫んでしまうイデ。


「はい。その通りです」


・・・しかしシェーラは自然に、問い掛けた本人が呆然とするくらいあっけないくらい普通にそう答えた。


「風だけじゃなくて花や土、火や水の精霊達とも仲良くしてます」


「・・・う、うむ。ではお前は自らを邪教の魔女だと認めるのだな」神官長が問う。


「魔女なんかじゃありません。あたしはこの地の神様しか知りませんし崇めてもいません。」


「しかし精霊を視、それを使うのは邪教徒の証」


「彼等は普通に見えるし話だって出来る。ちゃんと存在しているわ」


「それが邪教の教えだと言ってるのだ!」  


バジーッンッ・・・・ドタギャタタタッ・・・


殴られ飛ばされた先の椅子ごと倒れこむシェーラ。

イデ達はほかの神官達に睨まれ動くこともできない。


「もう良い。他にも怪しげな事をやっていないか吐かせる。連れて行け!」


「はい」



「オースト、お前は今晩はここに残っていろ。家族と話もあるだろうしな。」


「・・・はい・・・。」


俯いたまま答えるオースト。


3人の男達に抱えられ連れて行かれるシェーラを青い顔しながら見送る事しか出来なかった。



「イデ・・・済まない。」


どのくらい空白の時が流れただろうか・・・オーストが倒れた椅子やテーブルを直しながらおもむろに口を開いた。


「以前から噂はあったんだ。上手く上に話がいかないように抑えてたつもりだったんだが・・・・」悔しそうに言う。


「・・・・・・」イデは表情も言葉もなく自分の部屋に戻ってしまった。何がなんだか分からなかった。。。。



「シェーラは・・・あの子はどうなるんだ」やっと一息ついて息子に聞く農場主。



「・・・分からない。シェーラは賢い・・・でもだからこそ間違った事が嫌いで頑固な一面もあるから・・・」


「だからあらかじめこうなった場合に上手く誤魔化せとは言えなかった。」


「・・・」


黙り込む一同


そして何が出来るわけでもなく無事を祈ることだけしかできない夜は更けていった。




そして明くる日・・・イデは部屋から出てこなかった。家族は心配したがオーストが代わりに農場の仕事を手伝い、傍目からは何も変っていないように思えた。




もう日が沈むかという時刻・・・・・


「邪教の徒である魔女シェーラの処刑を明日夕刻行う」というお触れが村中に出された。


そこには農場の仕事をやりながらでは・・・いや、あのシェーラを知っている人間にとっては到底有り得ない罪状がいくつも付け加えられていた。

村中に衝撃が走ったがそれでも大した混乱も起きずに次の日を迎える。




トントンッ。


「イデ、起きてるだろ?」


「・・・」


オーストがイデの部屋にやってきていた。



「イデ・・・シェーラの処刑が決まった・・・・明日だ」



「!!!」


ドアを開けるイデ・・・・その顔は明らかに寝ていないと分かる焦燥しきった顔であった。


「・・・イデ・・・・」言葉を選ぶオースト。



「神官戦士の一人である俺なら頼み込めば面会くらいは許されると思うんだが・・・・」


「・・・」


「済まない、イデ・・・・俺にはもうこのくらいしか・・・」


「・・・」


「・・・明日は意地でも連れて行く。辛いだろうが最後に顔くらいは見ておいたほうが良いと思う。」


「・・・」


「・・・」


「・・・・シェーラの殺されるところを見ろって言うのか・・・」


「・・・あぁ。さっき使いが来てそれがシェーラの望みでもあるそうだ。」



「・・・な・・・」



「それに『村人、関係者は絶対に来る事』だそうだ・・・行かなかったら同罪にされる恐れがある。」


「・・・・そこまで・・」



「・・・あぁ。俺がここに残されたのにもここの人間の監視の意味もあるだろうが・・・・俺は家族を守りたい。・・・・シェーラはついに守れそうもないが・・・イデ・・・お前を。」


・・・


「・・・・・分かった。じゃ、明日」


「あぁ・・明日。」


部屋を出、ドアを閉める間際に一言「本当に済まない。だが・・・はやまるな・・・・今はまだ・・・・」


「?!・・・・」




その日は昼間の内は晴れていたが太陽が傾くに従って雲が多くなっていた。



処刑場には村の内外の人間が集まり押し寄せてきていた。

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