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ある晴れた春の日

『シェーラ!!俺は!!神を殺す!!』

雨の中男は叫んだ





ある温暖な気候の地域の半島部、その牧草地帯にその少年と少女は住んでいた。

少年と少女は親の顔も産まれた場所も分からない孤児であったが、この村の同じ農場主である夫婦に引き取られたのである。

黒髪に黒目の少年の名はイデ、赤毛混じりの茶髪に鳶色の目の少女はシェーラといった。二人は面識はなかったのだが、お互い孤児でもあったことからすぐに打ち解けた。


・・・・何日か先に引き取られていたシェーラがたまにお姉さんぶっていたが。


また、この農場主にはオーストという彼等より4歳年上の男の子が居たが面倒見が良く人当たりが良かったのでまるで3人は本当の兄(姉)弟のように育った。

朝は太陽が昇るより早く起きなければならなかったが羊達家畜の面倒を見るのは楽しかったし、遊べる時には海に潜ったり草原を駆け回ったりした。


学問所に通う様になってもそれは変わることはなかった。


そんな穏やかな年月が過ぎイデは学問所にて次世代の学者と囁かれ、シェーラはその長い髪と聡明さから村外でも噂されるようになっていた。そんな14歳の春。



農場から少し離れた白や黄色の花が咲き乱れる岬。



「気持ち良い!ほら、風達も楽しそうに踊ってる!」


「うーん、やっぱり俺には見えないけどほんと良い風だね」


「イデも気に入られてるんだから見えてもおかしくないはずなのにね」



シェーラには昔から他人には、普通の人には見えない自然のものの声や姿を捉えられるという不思議な能力があった。


「うーん・・俺はすぐ顔とか口に出しちゃうから見えない方が良いよ。あの廃墟みたいな目には会いたくないし」少し自嘲気味に言う。


彼等の眼下、農場から岬まで来る間に朽ち果てた神殿があった。


異教徒根絶の際に中に居た人間共々打ち壊されたその神殿は今でも見せしめの為の処刑場として使われているので常時の見張りこそ居ないものの兵士の見回りはあるはずであった。



『大地の愛娘』シェーラの能力を知ったイデの学問の師は彼女をそう呼んだ。だが、当然それを周囲に知られるわけにはいかないと忠告もした。


(シェーラはどうも考えてるのか考えてないのかあぶなかっしい所があるんだよな)

(イデも見聞き出来たらもっと楽しく過ごせるかもしれないのに)


二人はいつからかお互いに恋心を抱くようになっていた。


「あ、イデは15歳になったらどうするの?」


ここでは15歳になったら大人と認められ農地と家を持つ事が許されるが他の職業に就く事も国外に出る事もこの年齢から許可されていた。


「ん。あと3年だね。アリストテレス先生みたいになりたいから見聞を広める為旅に出て世界を周ってみたい」


「アリストテレス『先生』?本当にイデは今の先生より昔の人の方を尊敬してるのねぇ」半ば呆れた様に言うシェーラ。


「い、いや先生も尊敬してるにはしてるけど。今勉強してる多くの書物はやっぱりアリストテレス先生が書いたのが大部分だからさ」慌てて弁解するイデ。


「でも、それなら学問所の基礎作って書物だって大勢の信奉者だって居るアリストクレス先生は?」我ながらいじわるな質問だと思いつつ聞いてみる。



「うん。アリストテレス先生の先生であるプラトン先生の方が尊敬できるって人多いけど・・・・なんとなく合わないっていうか・・・」


「ふふっ。合う合わないってイデらしい」その予想通りの答えを聞いて笑うシェーラ。


「・・・シェーラはどうするの?」


「え?」


突然聞かれてびっくりする


「いや、だから15歳になったら、さ・・・」


「うん。あたしはこのまま農場に居て父さんや母さんを助けてあげたいな」

少し寂しそうに続けるシェーラ


「ほら、オースト兄さんも神殿に入ってから帰る回数減っちゃったし。・・・それに神官って言っても戦士だし。」



「そうだな。・・・オーストも人を殺す事あるんだろうな。殺される事も。」


「うん。」


彼等の義兄であるオーストは神殿に勤めていた。まだ神殿の警備にあたっているはずだが剣の腕前とその頭の良さから何年かすれば神官長になるのも夢ではないだろうと言われていた。



「・・・ああぁ!ちょっと沈んじゃったか。羊達もお腹一杯になったろうしそろそろ帰ろう!」


「そうね。私たちにはまだ先の話だしね」

立ち上がる二人。


「そうだよ!まだ1年近くもあるんだから。何かやりたい事出て来るかもしれないし何があるか分からない」


笑って言うイデ。


「そうね!そうよね、何か他に面白い事や楽しいと思える事があるかもしれないしね」

気持ちに区切りを付けて羊を集める為に動き出す。



しかしその『何か』は突然最悪な形でやってくることになる。

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