いつもきみのそばに・・・ 〜愛海 篇〜
しつこくども。
いつきみは今回舞輝の親友愛海のお話です。
取ってつけたような話しでごめんなさいね。
つじつま合わないこともおそらく出てくると思いますが、作者は健忘症ということでよろしくお願いします。
いつもきみのそばに・・・〜愛海 篇〜
いつのきみのそばに・・・を見てくれてありがとう!
今回は、あたし大谷愛海の恋のお話をしようと思うの。
始まりは、ある日届いた1通の手紙からだった・・・。
あたしは、県内に通う高校2年生。
クラスメイトの舞輝・暁子・千春の4人で、大ファンのs-winのレギュラー番組にダンスをビデオ投稿したんだよね。
それが、見事に予選通過!
決勝大会に出ることになったの。
大好きな廉くんに会えると思ったら、なんとしてでも出なきゃって思って、嫌がる千春と舞輝を無理やり巻き込んで、収録に向けて練習を始めたの。
いちを、悪いと思ってるのよ・・・(汗)
嫌がる二人にOK言わせたし。
で・も!
生で廉くんに会えるんだよ!
ファンならずぇったい行くでしょ?
風邪をひこうが、盲腸になろうが一生で一度しかないかもしれないこのチャンス!
逃したくなかったんだよね。
まぁ、練習で何度か衝突はあったものの、無事収録までに仕上がることができの。
本番当日。
リハの前にストレッチしていると、スタッフが「おはようございまーす!」って言ったの。
あたしたちが最後のはずなのに、誰だろ?って見たら目の前にs-wingがいるじゃん!
生廉くん・真人・拓・達弥!
もう、失神寸前で大興奮だったんだから!
しかもね、芸能人だからってお高くとまっていなくて、とってもフレンドリーに話しかけてくれたの!
あたしが想像したまんまの廉くんだった!
自分たちのリハの後、s-wingのリハが見れて更に大興奮。収録が終わって、あたし思い切ってサインと握手お願いしてみたんだ。
もう、だめもとで聞いてみた。
でもね、いいよって!
優しい笑顔の廉くんの周りがキラキラしている。
廉くんは、にこっと笑って握手とサインをしてくれたんだぁ。
廉くんの手。
おっきくてスラァッとした指なの。
ボッって顔が熱くなっちゃった。
「そうだ!」
廉くんがね、突然言ってあたしの耳に顔を近づけてきたの。
廉くんの顔ドアップにドキドキ(汗)
小声でね、
「この後、一緒に食事でもしない?18時に***ってお店で待ってるからみんなでおいでよ。」
だって!
はいっ!って思わず返事しちゃったけど・・・。
やっぱ芸能人ってこんなもんなのかなぁ?
軽いっていうか・・・。
廉くんは舞輝たちにも「みんなできてね!」って言ってる。
みんなと一緒ならなんとかなるか!
廉くんと食事ができるんだもん、こんなチャンス滅多にないよ!
でも、ちゃんとみんなと話し合わなきゃね!
テレビ局の前で輪になって会議が始まった。
芸能人との食事に千春が心配そう。
当たり前だよね・・・。
「もち行くでしょ?」
興奮気味の暁子。
彼女もs-wingファンなんだ。
あたしも暁子に便乗して乗り気。
「確かに、あたしたちにもあとでねっていってたけど・・・。」
千春はあくまで乗り気でない感じだった。
「行くだけ行ってみれば?」
って、舞輝が珍しく意見したの!
舞輝は、中学からの親友なんだ。
17歳にしては、若干複雑な失恋がきっかけで、最強の人見知りで冷めた子になっちゃったんだよね。
そんな舞輝が、あたし以外に唯一心を開いたのが暁子と千春。
舞輝が言った一言でみんなが納得して行くことになったんだ。
なのにね!
「じゃぁ、決まったことであたしは帰るよ。」
舞輝ったら駅に向かって歩き出したの。
だから、あたし舞輝の腕掴んで引き止めたよ。
そしたら、千春も参戦してくれたの。
「冷静に見れる舞輝が必要!」って。
千春、結構キツイこと言うの(笑)。
千春の真剣な説得に舞輝も降参してみんなで行くことになったわけ!
っていうか・・・
『この二人、かなり乗り気だから興奮してなにやらかすかわからない。』
って千春の言葉がややひっかかるけど?
まぁ、そんなこんなで時間まで少しあったから、みんなで時間つぶしてから廉くんに言われた場所に行ったの。
でもね、そこはとても高そうなお店だったの。
うちらのお財布事情じゃとてもとても・・・。
呆然としてると、廉くんが入り口に出てきたの。
「なんだ、来てたんじゃん!入りなよ。」
廉くん、あたしたちのこと迎えいれてくれたんだ。
廉くんの私服もかっこいい!
つい見とれちゃう。
したら、千春が、
「あたしたち、そんなにお金持ってないんです、今日はこれで失礼します。」
って・・・。
ホントに帰るの?
暁子も残念そう。
仕方ないよね・・・こんな高そうなお店じゃ。
「誘ったのはこっちだから、ごちそうするよ!」
って、廉くんが言ってくれたの!
やったぁ!
そこはね、綺麗な焼肉屋さん。
座敷になっている個室に入ると、他のメンバーが「待ってたよ!」と、迎えてくれた。
席に着くと廉くんが、
「ごめんな、俺の安易なひらめきで誘っちゃったから、緊張させたよな?」
って謝ってきたんだ。
「いえ!とんでもないです、嬉しかったですから。」
あたし慌てちゃった。
そんなこと言われると思わなかったから。
各々に頼んだソフトドリンクで乾杯して芸能人との食事会が始まった。
話しは廉くんから切り出してきた。
「昔っから仲がいいの?」
「高校に入ってからの親友です!」
「愛海ちゃんがムードメーカーだね!」
テレビで見るいつもの廉様スマイルで言った。
「そんなこと・・・」
テレながら言ってるけど、こうみえて失神寸前なんだから!
食事も済んで、廉くんが中庭に出ようって言ったから、みんなで出てみることにしたの。
みんなで出てったはずなんだけど、気づいたらバラバラに分かれてて廉くんと二人だった。
「ホント、軽はずみなこと言ってごめんな。」
廉くん、反省顔。
「そんな、気にしないでください。」
「芸能人は軽いって思われたくないんだ。」
子犬みたいにシュンとする廉くん。
確かにあたしも思ったよ。
芸能人って軽いのかなって。
「じゃぁ、なんであたしたちを食事に誘ったんですか?」
「愛海ちゃんにもう一度会いたかったんだ。」
「あたしですか・・・」
「うん・・・もっと仲良くなりたいって。」
そりゃ、あたしだって憧れの廉くんと仲良くなりたいけど・・・。
廉くん頭をくしゃくしゃってして、
「友達からお願いできませんか!」
「えぇ!????」
廉くん手をあたしの前にズンと出してきた。
うそぉぉぉぉぉ!
「あ、あの・・・よろしくお願いします。」
あたしは廉くんの手を握った。
今わかったよ。
廉くんは違うって。
悪い人じゃないって。
ケータイの番号とメールアドレスを交換して、お部屋に戻ったんだ。
なんとね!
舞輝と達弥さんが一緒に戻ってきたの!
舞輝、人間不信プラス男不信でもあるわけ。
そんな舞輝が達弥さんと一緒にいたの?
でもね、達弥さんは舞輝に気があるっぽいんだ。
食事中。
ふとあたしの視界に入った達弥さんがみつめる先が・・・。
舞輝だったの。
黙々と食べ続ける舞輝をにこにこしながら見ていたの。
黙々と食べる舞輝に突っ込んでみたけど、舞輝だから(笑)
シカトされた。
「やっとご飯食べれたね!おいしい?」
達弥さんが舞輝に話しかけてる。
「ほっといてください。」
なのに舞輝ってば冷たく返してたし。
もう〜舞輝はぁ!
おもわず、「舞輝!」って睨んだけどやっぱりシカト。
一方、冷たくされてもにこにこしている達弥さん。
達弥さんは舞輝に気がある!ってあたしは思ったんだよね。
それを裏付けることがあったの!
そう遅くない時間に解散になったから、っていうかね!
「若い子をあんまり遅くまで連れまわしたくないから解散!」
って廉くんがそう言ったの!
すごい大人って感じ!
今時いないんじゃない?
てか、話しずれちゃった(笑)
このあたしの興奮を舞輝に延々聞いてもらってから帰宅したの。
そんで、早速廉くんにメール。
とっても楽しかったです!って。
したら、廉くんからすぐ返事があって、
【今から電話しても平気?】
って!
もちろんです!ってメールをすると、すぐに着信が入って。
「達弥さん、舞輝に気があるっぽいって感じませんでした?」
「達弥は、舞輝ちゃんに惚れてるよ。あいつにしては珍しく自分から番号とメアド聞いたみたいだし。」
「そうなんですか?舞輝なんも言ってなかった。」
「達弥、あんまり自分から人を好きになることないんだ。」
「なんでですか?」
「よくは聞いてないけど、昔、すげぇ好きだった子に振られたらしい。それ以来、自分から好きになった子いないみたい。何人か彼女いたけど、向こうから告ってきたから付き合うみたいな。長く続くわけがないよな。」
「そうだったんですか。なんか、応援したくなっちゃいました。」
舞輝のこともあるし。
もし、達弥さんが舞輝を変えることが出来たら・・・。
「俺は応援するつもりだけどね!」
「あたしも!」
結局・・・
朝の4時まで話しちゃって・・・・
だって、話したいことたくさんありすぎて時間が経つの早いんだもん。
廉くんもこんな時間までごめんって。
あたしも学校だったけど、廉くんも仕事でさぁ。
あたしは遅刻すればいいけど、廉くんはそうにはいかないもんね。
“売れっ子人気アイドル”だし。
その売れっ子アイドルに気に入られた、あたし。
廉くんは一番人気あるんだよ!
そんな人とこうしてご飯食べて、メールして電話して。
夢じゃないよね・・・?
廉くんの話しじゃ、達弥さんはやっぱり舞輝に気があるらしい!
そう思って、舞輝に突いてみたんだよね。
みんなも驚いて、舞輝に問いただしたからかなぁ?
次の日から学校こなくなっちゃたんだよね。
もう、早1週間。
舞輝にメールしても、電話しても応答なし。
家に行ってみたけど、ダンスに行ってるって舞輝のママが。
その夜、廉くんから着信があって。
「愛海ちゃん、元気ないね。」
廉くんあたしのテンションの低さでわかったらしく。
「舞輝がもう、1週間学校来てなくて。なんかあったのかなぁ?」
「達弥に聞いてみようか?今日さ、達弥に舞輝ちゃんとどう?って聞いたらメールはしてるって言ってたし。」
あたしや千春たちのメールはかえさないのに?
達弥さんに返してるんだ・・・
なんかちょっとヤキモチ。
「ちょっと待ってて!」
廉くん電話を切ると、数分後またかかってきた。
「ごめん、たまに返ってくるだけだったみたい。学校のことはなんも聞いてないって。」
だよね!
安心したぁ。
ん?
達弥さんとたくさんメールしてるほうが、舞輝にとってはいいのか?
あたしにとっても喜ばしいこと?
いいのいいの!
今はいいの!
でもね、とうとう2週間にたったの。
「こないねぇ〜」
なんてお昼休みに言ってると、舞輝が好物の牛丼持って教室に現れたの!
話しを聞くと、オーディションに受けるために踊りこみしていたらしい。
舞輝って、もともと自分のことをあまり話さないんだぁ。
でも、すっごい心配してんだからぁ(涙)
見事合格して、夏に舞台に立つんだって!
ともあれ、舞輝が元気に学校きてくれてよかった。
ブゥゥゥゥゥゥ〜。
ん?
ブゥゥゥゥゥゥゥ〜
ケータイ?
あたしのだ!
なんと、廉くんから。
【もしもし?愛海ちゃん?】
「もしもし!どうしたんですか?こんな時間に廉くんから電話してくるなんて。」
【今日、仕事で愛海ちゃん達の学校のそばまで来てたんだ。授業終わったらドライブにでも行かない?】
「近くにいるんですか?」
【外みてごらん】
あたし猛ダッシュで廊下に出たの。
すると塀に横付けしたワンボックスカーから廉くんが手を振ってる!
【学校終わったらみんなで出ておいでよ!】
あたしが放課後待てますか!
「あとでと言わず、今から行きます!」
電話切って教室に戻って千春たちに小声で報告。
暁子は行く気満々で、すぐに準備を始めていた。
あたしは舞輝にも同じことを話したの。
したら舞輝は、
「いってらっしゃい」
伏せったまま手振ってる。
だと思った。
達弥さんもいんのに連れて行かないあたしじゃないわよ!
「あんたもくるの!(怒)」
寝てる舞輝を無理矢理引っ張ってったの。
抵抗しても動じない。
あたしに引っ張られるまま廉くんの車に乗り込んだの。
廉くん、サボってでてきたこと心配してたけど、とにかく出発。
一時間のドライブで着いた所は海浜公園。
各々にバラけて散歩をしたり海で遊んだり。
あたしは廉くんと波打ち際でおしゃべり。
「寒くない?」
「はい。」
「ホントに大丈夫だったのか?学校。」
「わかりません(笑)でも、たまにはいいんじゃないですか?」
「今日は許す!俺達もそうだったし。舞輝ちゃん学校きたんだね!よかったね。」
あたしは舞輝が舞台のオーディションを受けるために休んでいたことを話した。
「愛海ちゃんは優しい子だね。友達のこと本気で心配して。」
「舞輝は特に付き合い長いし、舞輝は、あんまり人に心開かないから、1週間も2週間も学校こないと、なんかあったじゃないかって思っちゃうの。」
「そうなんだ。でも、舞輝ちゃんにとって愛海ちゃんは必要不可欠だと思うな。なんだかんだで愛海ちゃんについてきてるじゃん。収録も、今日も。」
「無理やりですけどね。」
「でも、愛海ちゃんから離れないでいるじゃないか。愛海ちゃんのこの明るさは、舞輝ちゃんのためにしてるのかと思うくらいだよ。」
確かにそう・・・
舞輝に笑ってほしくてわざとバカやってる。
「だから、俺の前では無理しなくていいよ。」
え?
「愛海ちゃんにだって落ち込むときだって、泣きたいときだってあるだろ?そんなときは俺が聞いてあげるよ!」
「ありがとう。」
廉くん、ホントに優しい。
軽い気持ちで言ってないってわかるよ。
ファンから“好きな人”に変わっていいですか?
真人さんが鬼ごっこしようって言ってきて、仲間に入った。
向こうでは、達弥さんが舞輝に付き合って(舞輝は頼んでないとか言いそうだけど。)海を見ている。
達弥さんファイト!
廉くんが無邪気な顔ではしゃいでいる。
廉くん、ありがと。
大好き!
廉くんからのその後のメールで、達弥さんが舞輝に本気らしいことを教えてくれた。
舞輝はどうなんだろう?
あたしは、舞輝が心配なんだ。
舞輝の持ってるトラウマ。
実はね、舞輝は15歳で妊娠して、そのときの彼と婚約していたの。
あたしはもちろん祝福したよ!
でもね、あるとき泣きながら舞輝が家に来たの。
「舞輝?どうしたの?」
「俊太(シュンタ」)・・・・出てっちゃった・・・・」
旦那さんになる予定だった俊太が、重荷に耐えらんなくなって逃げちゃったの。
その数日後、他の女連れて歩いている俊太を追っかけたときにお腹に激痛が走って、そのまま救急車で運ばれて流産してしまった。
病室で舞輝が
「重いのは俊太だけじゃないのに・・・あたしだって、お腹が大きくなればなるほど、責任ってもんが重くのしかかってきて。何度もおろすほうがよかったのかなって。でも、あたしには無理だよ。殺すことできなかった。」
15歳の舞輝にも俊太にも、この出来事は安易なことで重荷だった。
俊太はいい、逃げればいいのだから。
でも、舞輝は?
お腹にいる生命を一人で抱えていかなければならない。
もちろん、舞輝は一人でもやっていくって言ったと思う。
その裏腹にある不安は?
俊太と舞輝の子供なのに、なんで舞輝だけが抱えていかなくてはならないのか。
退院後、舞輝が家に遊びに来たとき、
「お腹も軽くなったことだし、またダンス戻ることにした。」
そう言ってる舞輝に笑顔がなかった。
舞輝の大好きはダンス。
踊っているときの舞輝は舞輝じゃない。
学校にいる舞輝とは別人になる。
舞輝は、あの出来事を忘れ去りたいかのように踊りに明け暮れていた。
だからね、高校に入るように舞輝に説得したの。
「しばらく人にかかわりたくない。」
って舞輝が言うから、あたしもいる今の学校薦めたの。
女子高だし。
男いないしね!
舞輝の顔に笑顔が戻ってくることはなかったけど、クラスに馴染むこともなかったけど、こうしていつも舞輝とみんなでつるんでられるのが楽しかった。
舞輝には・・・できたらまた恋して欲しい。
でも、今の舞輝なら嫌だったら「嫌(怒)」っていうと思うんだよね。
本人に聞こうとしても、お昼ご飯食べたら、昼寝しちゃうし。
行きも帰りも部活の関係で一緒にならないし。
人のことばかり!って思っているでしょ?
あたしもそう思う!
でも、これでも切ないとか、苦しいとかあるんだよ。
だって相手は芸能人だよ!
忙しいし、メールだって一日一通。
来ないときだってあるし。
来ないと、やっぱあたしなんか・・・って思って。
ファンの立場で言わせてもらえば、彼女なんていたら凄いショックだもん。
だから、ファンに申し訳ないっていうか。
だいたい廉くんの彼女じゃないじゃない?
やっぱ不安だよ・・・。
好きな人が芸能人。
壁が厚い気がするな。
そんなときに、また舞輝ったらやらかしてくれて!
高校2年を最後に学校辞めるって!
しかも、先生だけ知ってて修了式のあとのホームルームで初めて聞いたの。
確かに、やけに今日はよく笑うなって思ってたけど。
お別れなんて・・・思いもしなかったよ。
放課後・・・静まり返った教室で舞輝はあたしたちに話してくれたの。
あたしたちは黙って舞輝の話しを聞いた。
舞輝が全て話し終えると、あたし堪えきれなくなって
「何も黙ってなくたっていいじゃない(怒)」
猛抗議したの。
「ごめん。もうすぐお別れだねって、そんな話ししたくなくて。」
舞輝の気持ちもわかるけどぉ!
すると、千春が、
「あたしは応援するよ!寂しくなっちゃうけど、友達辞めるわけじゃないんだし。」
って言ったの。
そうだけどさぁ・・・・。
「それにさぁ、あのTMCの予科生でしょ?あんな有名な劇団に入ったなんて鼻高いし!」
暁子まで・・。
二人とも、あえて精一杯明るく振舞ってるのかもしれない。
あたしが一番寂しいのを知っているから。
「ありがと。」
舞輝は、二人に言った。
「愛海、愛海はなんかないの?舞輝が一番応援して欲しいのは、愛海なんじゃない?」
あたしの背中を擦りながら千春が言った。
「舞台があるときに呼んでよね。」
「うん。」
「連絡してこなかったら許さないんだから。」
「うん、わかった。必ずする。」
あたしそのまま黙っちゃった。
「愛海?」
「ん?」
「ありがと!」
舞輝が笑顔を見せた。
やっぱ笑ってるほうが舞輝だよ・・・
帰りの電車の中で、ようやく聞くことができたんだ。
「ねぇ、舞輝。」
「ん?」
「達弥さんってこのこと・・・」
「知らないよ。愛海達に言わないで達弥さんに言うと思う?」
そりゃそうだ。
舞輝はそういう子だもん。
「思ったんだけど、達弥さんって舞輝のこと好きなんだと思う。」
「知ってる。」
意外な舞輝の返答にあたしびっくりだったよ。
達弥さんいつの間に・・・。
「知ってるって?」
「海にドライブ行ったときに言われた。」
「ホントに?返事は?してないよね・・・」
舞輝が言うわけがない。
「言ってない。」
「達弥さんなら、大丈夫だと思う。ネガティブに考えないで進んでみてもいいと思う。誰でもいいってわけじゃないんだよ、でも、いい機会だし・・・」
「愛海、ありがと。心配してくれてるんでしょ?俊太のこと。」
あたしの言葉を遮って舞輝は言った。
「・・・うん。」
「もう、俊太のことは平気だよ。たださ・・・」
「同じことを繰り返すのが怖い。」
「うん、そう。」
舞輝はため息をついてシートに寄りかかった。
わかってるよ、舞輝。
舞輝がどんだけ傷ついてるか。
『恋』がどんだけ怖いか。
でも、自分で切り開いていかないと先に進まないよ・・・。
舞輝が劇団の寮に入るまでのわずかな時間で、あたしたちは旅行に行ったり遊びに行ってプリクラをたくさん撮った。
4人でつるむ最後の思い出作り。
そして、舞輝はあたしたちに見送られて東京へ出発した。
3年生に進級したあたしたちは、早速進路。
あたしは迷ってんだぁ。
進学か就職か。
大学行くなら、踊りをもっと学びたい。
それが駄目なら就職だよね。
大学行けば、好きな勉強も出来て、まだまだ遊ぼうと思えば遊べるよね。
就職したら、時間に追われて好きなこともできなくなる。
ん〜。あたし的に進学なんだけど、ママやパパがOKするか。
夕食のとき、思い切ってママとパパに話してみたの。
したら、あっさりOK!
なんでだと思う?
「舞輝ちゃん有名な劇団に入ったんだろ?いいなぁって思ってさぁ!はっはっはっはっは。」
だそうです・・・
単に自分の子もそうならねぇかなぁ?って思ってる親バカです。
でも!OKもらったんだし、それに向けてお勉強するのみ!
夏休みから予備校通いだしたんだ!
そして夏は、舞輝の初舞台!
実は7月から始まってるんだって。
でも地方公演なんだとか。
メインの東京公演が8月で、みんなで行くんだ。
廉くん経由で達弥さんが是非一緒にって言うから、舞輝に内緒でチケット余分にお願いしたんだ。
きっと喜ぶよね!
ちなみに、廉くんとは順調です!
今度遊ぼうね!って言いながらまだ叶ってないの。
仕方ないよね。
廉くんはアイドルだから。
でも、急かしたりしないの。
重く感じてほしくないから。
友達から!って言われても友達から恋人になったわけでも、縁が切れたわけでもない。
電話で話して、メールしてるだけで十分だよね。
忙しくてメールが来ないと、正直不安になるよ。
忙しいんだろうってわかってても、もうメールも電話も来ないんじゃないかなって思ったり。
毎日送るメールうざいかな?
疲れてるのに文章長かったかな?
まだかな・・・
まだかな・・・
来ないなぁ・・・(涙)
ってね。
セツナイヨ・・・
廉くんに会いたいな・・・。
早く、舞輝の舞台見に行く日になんないかな。
待ち遠しいよ。
「ねぇ、舞輝から手紙来たよ!」
チケットとチラシと手紙が昨日届いたの!
早速、学校に持ってってみんなに見せたんだ。
「これが舞輝?」
チラシに写ってる衣装を着た舞輝を見て千春が指差した。
「そだよ!」
「全然感じが違うような・・・」
暁子も半信半疑。
「学校で見てる舞輝しか知らないからね。」
「会場で待ってます!だって。楽しみ!」
千春、自分のチケット握って嬉しそう。
でもね、ホントに驚くのはこれから。
観劇当日。
開場したロビーであたしたち3人はすでに集まっていた。
「お待たせ!」
入り口から手を上げてこっちに向ってくるのは、廉くんと達弥さん。
久しぶりに会う廉くん。
元気そう!
思わずニヤケちゃう(笑)
「間に合ってよかった!パンフ買ったの、席で見ようよ!」
全員着席して、パンフを一枚一枚めくっていく。
「あ、舞輝!」
あたしが指さすと、みんな絶句したの。
そこには、今までに見たことのない舞輝が写っていた。
衣装を身に着けた舞輝。
素顔の舞輝。
なんだか嬉しい。
あたしの大好きな舞輝がここにいる。
さらにびっくりしたのは、開演してから。
舞台を観にきたのだから当たり前だけど、舞輝が歌って、踊って、演技をしている。
いつも教室にいたあの時の舞輝じゃない。
発表会でみた別人の舞輝とはまた違う。
こんな生き生きした舞輝をあたし以外誰も見たことがなかったの。
カーテンコールでは、出演者に声援を贈ってる人がいたんだ。
あたしたちも舞輝に声援を贈ろうって話し合って。
そして、舞輝が登場!
するとね、すごい声援が上がったの。
「舞輝ちゃーん!」
って。
圧倒されながらも、あたしたちも精一杯声を出して舞輝を呼んだよ。
客席に笑顔で手を振る舞輝。
舞輝が笑顔だよ!
あたしたちにも気づいてくれて、大きく手を振ってくれたの。
興奮冷めないまま終演。
物足りなかったぁ!
終演後、あたしたちが向うのは楽屋。
そこには既に出待ちをする人でごった返してた。
掻き分けて入り口に向うと、「誰の知り合いだろ?」って、羨ましそうに見てくる人たち。
ちょっとだけ鼻が高いな♪
途中、廉くんに気づいた人で少しざわついたけど、なんとか楽屋口に入って回避したの。
人気アイドルの廉くん知らない女の子なんていないもんね。
舞輝に言われた通り、受付で舞輝を呼んでもらうと、5分くらいして舞輝が出てきた。
「舞輝ぃ〜!」
あたしたち、駆け寄って舞輝に抱きついちゃった。
だって久しぶりなんだもん!
「みんな来てくれてありがとう!」
舞輝も一緒になって飛び跳ねて。
4人ではしゃいでいると、舞輝の動きがピタッと止まった。
達弥さんに気づいたみたい。
舞輝があたしの顔を驚いた顔で見るから、
「驚かそうと思って、内緒で呼んじゃった。」
あたし、ペロッと舌を出して言うと、舞輝は慌てて達弥さんたちの方に挨拶に行った。
とりあえずご飯食べに行こうって言って舞輝を支度させに楽屋に戻すと、
「舞輝が明るくなってる・・・。」
って暁子が言ったの。
ホントに・・・
よく笑ってる。
「あれがホントの舞輝なのかもよ?」
千春が暁子に言った。
「中学のときから知ってるけど、昔はもっと笑ってたよ。」
あたしは思い出すように言った。
30分くらいで舞輝が支度を済ませて、楽屋から出てきたの。
でもね、あたしたちたちと楽屋口から出ると、
「舞輝ちゃんが出てきた!」
って、大騒ぎ。
握手・サイン・写真と次から次に求められて、エレベーターに乗り込むまで30分もかかったの!
凄い!舞輝って人気あんだね。
やっぱ友達として鼻高いよ!
顔色ひとつ変えないで笑顔で応える舞輝にも関心しちゃった。
いつも無愛想なのにね(笑)
エレベーターの扉がしまった途端、全員で「はぁ〜」って疲れ果ててた(笑)。
「俺達も捉まっちゃうとこんなもんだよな?」
廉くんが達弥さんに振った。
「そうだよ。気にすることないよ!」
達弥さんも気にしてない模様。
さすが、アイドル!
でも、廉くんも嫌な顔ひとつせずに、ファンの女の子に握手したりするんだよね・・・。
ダメ駄目!
何贅沢なこと言ってんのよ!
仕方ないじゃない!
あたしたちが向ったところは、あたしと廉くんのお勧めのレストラン。
たまたま劇場付近のレストランでお気に入りのお店が廉くんもよく行くとこだったの!
凄い偶然でしょ?
食事をしながら、近況報告したり、随分盛り上がったんだよ。
一段落したところで、あたし行動に出たんだ。
「あっ、あたしこれから用あるんだよね。悪いけど帰るね!」
すると、「あたしも。」って、千春や暁子も支度を始めた。
実はね、達弥さんと舞輝を二人っきりにしよう作戦!なのです。
3人で一芝居うったのよ!
舞輝も一緒に帰るって席を立つから、
「舞輝はまだいなよ。せっかく達弥さんに久々に会えたんだから!。」
「でもぉ・・・」って言う舞輝に、あたしたちは「じゃぁ〜ねぇ〜」ってさっさと退散。
あらかじめメールで作戦を廉くんにも伝えてあったから、後から店出てきあたしたちの後追っかけてきた。
「なんて言って出て来たんですか?」
「駅まで送ってくるって言って!」
廉くんも楽しそう!
「ねぇ、あたしたちはこれからどうする?」
あたしが聞くと、千春と暁子ったらニヤけて、
「あたしたちは2人で渋谷に遊びに行くの。」
「えぇ!あたしは?」
「やぁね、愛海には廉君がいるじゃない!」
完全にはめられた。
暁子も千春も二人で作戦立ててた模様。
「廉くんだって、予定あるかもしれないじゃない!」
とりあえず抗議してみた。
だってそんな図々しいことできないじゃん!
「俺はこの後予定ないけど?」
うそぉ!
「ほら!廉くん、愛海お願いしますね!」
二人はそう言うと、駅に向かって行っちゃったの。
そんな、心の準備がぁぁぁぁぁ!
「どっか行こうか?」
廉くんが優しい笑みで言う。
「はい。」
とりあえず、千春と暁子に感謝しないとね!
念願の廉くんとのデートだもん。
「あんまり遅くなれないよな?映画でも観ようか?」
「あたし、門限ないです。」
「でも、ダメ。」
シュン・・・
ちょっとがっかりしてると、頭に廉くんの大きな手が。
見上げると、
「また遊べばいいじゃん!」
廉君スマイルで頭ナデナデ。
そんなことされたら、キュンってなっちゃう。
期待しちゃうよ・・・。
「うん。」
「映画でいい?」
「はい!」
今は、廉くんとの時間を楽しもう。
大好きな廉くんとの時間を。
また、いつ会えるかわからないもんね!
廉くんと、映画館へ行って、一番最新の映画を見ることにしたの。
おっきいポップコーン持って席に。
「映画見るならこんくらいでかくなきゃ!」
だって(笑)
見た映画はラブコメディー。
笑いあり、涙ありで忙しかった。
笑って涙が出てきたかと思えば、今度はジーンとしちゃって涙。
結局泣きっぱなしだったわけ(笑)
廉くんも一緒になって泣いてんだよ!
いいね、こういうデート。
ポップコーンで喉が渇いちゃったみたいで、お茶しにカフェに入ったんだ。
頼んだアイスコーヒー一気飲み。
どんだけ喉渇いてたの?
グラスを空にすると満足気に「ぷはぁ〜」って。
「ぷっ」
あたし思わず吹き出しちゃった。
「何?そんなに面白かった?」
「面白かった。どんだけ喉渇いてたんだろって。」
「すんごく乾いてた。ポップコーン、口の水分みんな持ってちゃうんだぜ。」
「あはははははは」
「愛海ちゃん、笑いすぎ。」
それでも腹抱えて笑ってるあたし。
「まぁ、いいや。楽しそうだから。」
廉くんが微笑んだ。
「すみません。つぼに入っちゃって。」
「また、デートしたいね。」
「そうですね!」
さっきも廉くん言ってたよね?
『また遊べばいいじゃん!』って。
ホントにデートしてくれるのかな?
期待していいの?
廉くんが駅まで送ってくれて、そこでお別れ。
「またメールするね!」
廉くんが手を振った。
あたしも手を振って、改札を通った。
舞輝もうまくやってるかな?
舞輝ってよりも、達弥さんが頑張んないと。
達弥さんに会えて嬉しそうだった!と、思う(笑)
数日後、廉くんのドラマ出演が決まったの!
喜ばしいことなんだけど・・・。
また忙しくなっちゃうな・・・。
レギュラー番組も何本も持ってて、ただでさえ忙しいのに。
あ〜ぁ。
たまにくる着信や、メールで廉くんを知っていくわけだけど。
知れば知るほど、廉くんが遠い存在に思えてきたんだ。
廉くんが好きなこと。
廉くんの価値観。
廉くんの趣味。
あたし、ダンスと歌以外に趣味もとりえもないから・・・。
ひとつでも共通のがあれば、また会話も楽しいんだろうな。
そぉ考えると、なんにも知らないファンでいるほうが楽だったかも。
だって、テレビの中の廉くんみて、勝手気ままに妄想膨らませれるでしょ?
ホントの廉くんなんて知らないんだから。
こんな人であんな人で!
白馬に乗った王子様!みたいな人!
って、勝手に人柄まで妄想しちゃって。
切ないとか・・・苦しいとか・・・ないよね。
季節は秋後半。
肌寒い温度から、いよいよコート羽織るくらいにまで冷え込んできた。
事件があったんだ。
あたしに!ではなく、舞輝たちに。
達弥さんがスクープされたんだ。
『熱愛発覚』で。
あたし、びっくり仰天だったよ!
廉くんから連絡あって知ったんだけど。
急いでコンビニ行って雑誌見たら、写ってるのは間違いなく舞輝じゃない。
どういうこと?
舞輝が知ったら、また舞輝壊れちゃう。
また廉くんから着信が。
【今、達弥に連絡取れたよ。】
「なんだったんです?」
【潔白らしい。詳しくはまだ話せないらしいんだ。】
違う・・・よかった。
これなら舞輝が知っても大丈夫かも。
【舞輝ちゃんに連絡とってもらえないか?そんで、違うこと伝えて欲しいんだ。】
「達弥さんから言えばいいじゃないですか。」
【それがさ・・・もう知っちゃってたみたいで、弁解する前に電話切られたみたい。】
あちゃ〜。
舞輝の傷、抉ったことになる。
今頃、泣いてるかもしれない。
近くに居れば・・・今すぐ行って抱きしめてあげられるのに。
「多分、無理だと思います。でも、やってみますね。」
【頼むよ。達弥、すげぇ落ち込んでて。】
「でしょうね。でも、きっと舞輝はもっと落ち込んでます。」
あたし、そのまま電話切って、すぐに舞輝に電話したの。
プルルルルルルル・・・・
出ない・・・。
出るわけがないよ。
これでわかったこと。
舞輝落ち込んでている。
舞輝は達弥さんに恋している。
廉くんに時間がかかりそうってメールで伝えて、舞輝に電話し続けた。電源が切られてようと。
舞輝のことを心配しつつも、あたしには、高校生活最後の学祭があったんだ。
この学祭でダンス部最後のステージがあるの。
後輩に振り付けを教えて、メインの3年の振り付けを考えて・・・。
頭ん中パニックさ!
振り付け考えるのに煮詰まっているとき、なんとなく舞輝に電話入れてみた。
【もしもし。】
出た!
「もしもし?元気?」
【ごめんね、たくさん電話くれてたのに・・・気持ち落ち着かなくて。】
「うん、わかるよ。」
【達弥さん、たくさん電話くれるんだ。メールも。】
「舞輝。あたしも忙しくて、廉くんに連絡してないからわからないけど、達弥さんは違うって言ってるんだって。詳しいことはまだ話せないらしいけど。」
【そっか。でもごめん無理だ。】
「わかってるよ。でも、信じてあげて。」
舞輝から返事はなかった。
「舞輝?」
【そう!冬公演に出演決まったの!】
無理やり話しを変えてきた。
そうとう落ち込んでるんだ・・・。
「ホント?おめでとう!また見に行くからね。」
【うん。愛海がくるなら、頑張らなきゃ。】
トーンは変わらず低いけど、喜んでるってわかった。
「あたしも、学祭が月末にあるんだ。」
【随分遅くない?】
「なんかね。作者の都合で。」
【ほう。随分だね。】
どうもすみません・・・by 作者。
「うちらの振り付けで煮詰まってて。」
【そっか。】
「でも、舞輝と話すと湧いて来るんだよ。」
【念を送ってるから。】
そのトーンで冗談を言う。
【月末じゃ、多分いけないな。学祭。愛海のダンス見たかった。】
「残念。」
【卒業式、行けたら行くよ。みんなでお祝いしよ。】
その夜は、進路の話しとかたくさんした。
体育大に舞踊専攻希望だって言ったら、
「愛海にぴったりだよ!頑張って受かって。」
って!
舞輝の話しはね、
仲良しの男友達ができて、大分異性と話せるようになったこと。
その3人でよくつるんでること。
ちょっと寂しいけど、舞輝が変わっていってることはとても嬉しい。
向こうでまた一人になっちゃうんじゃないかって心配だったんだ。
「翔っていうんだけど、達弥さんと会った帰りに雨が降り出して傘持って駅まで迎えに来てくれてたんだ。そんとき、男と会ってただろ?っていうから、多分・・・好きな人って言った。」
舞輝の口から達弥さんは“好きな人”と出た。
「舞輝・・・」
「だからね、落ち着くまで時間かかりそうなの。心配かけてごめんね。」
「いいよ。」
もしかしたら・・・
舞輝は、また傷つく前に終わらせようとしてるかもしれない。
あたしは、達弥さんが違うと言ってることを受け入れるまでに時間がかかるほうで事は進んでほしいものだが・・・・。
恋ってなかなかうまくはいかないもんだ。
ちょっと時間が遅くなったけど、廉くんに報告しなきゃ。
プルルルルルル・・・
少しすると、もしもしって声が。
「廉くん?遅くにごめんなさい、今平気?」
「ごめん、充電がないんだ。」
ちょっと切りたそうな感じ。
充電がないんじゃしょうがない。
「ごめん、舞輝のことだったんだけど、明日の朝メールするね。おやすみ。」
「おやすみ。」
少し・・・いや、かなり寂しいかも。
もう・・・寝よう。
朝起きると、廉くんからメールが入っていた。
『さっきはごめん。
ここんとこスケジュール詰まっててろくに充電できてないんだ。
落ち着いたら、遊びに行こうね!』
落ち着いたらか・・・。
いつ落ち着くんだろう?
落ち着く日なんてあるんだろうか・・・?
落ち着く日なんてなかなかやってこなかった。
芸能界のことなんてよくわかんないけど、ドラマ1クール終わるまでスケジュール詰め詰めなんだって。
レギュラー番組も持ってるし。
きっと疲れてんだろうな・・・
頑張ってしか言うこと出来ないけど・・・。
彼女じゃないけど・・・彼の近いとこにいる女の子。
微妙だ・・・。
彼女じゃないから、わがまま言えない。
嫌われたくないから、我慢する。
無理すんなて言ってくれたけど・・・無理しちゃうよ。
廉くんから久しぶりに着信がきたかと思えば、達弥さんからの伝言だった。
舞輝の舞台観に行くなら一緒にって。
舞輝と話すきっかけを作ってくれないかって。
舞輝のためなら!
だけど・・・それだけ?
いくら忙しいからって、それだけで電話切られちゃうのは心細いよ。
結局、また自分のことより人のことになっちゃった。
達弥さんと日にちを決めて、二人で劇場へ行った。
終演後、楽屋に行くと、舞輝はアカデミーの人たちと盛り上がっていた。
多分・・・舞輝に抱きついてる男の子が翔くんだと思う。それみて達弥さん買い物あるからって出て行っちゃったの。
駅前の喫茶店でって。
これってヤキモチだよね。
舞輝と駅前の喫茶店で待ち合わせて、一人達弥さんと舞輝の到着を待つ。
その間・・・ホントは舞輝たちのこと考えてる場合じゃないんだよ。
廉君から全然連絡こなくなっちゃったの。
忙しいって達弥さんも言ってるけど。
もう、廉君から卒業しようかな。
「お待たせ!」
舞輝が到着。
達弥さんどこまで買い物行ってるの?
舞輝をみると、自分のことより舞輝のことになっちゃう。
達弥さんとは連絡とってないって言う。
もう、いいんだって。
いくない!
って言おうとしたら、「よくないよ」って達弥さんようやく来た。
舞輝に仲直りするんだよって言ってお店をでた。
“ありがとう”
なんて言われても・・・
廉君・・・会いたいよ。
その夜、舞輝から電話があって仲直りしたって報告がきた。
素直に嬉しい。
舞輝には頑張ってほしいから。
なんで・・・あたし人のことばっかで、自分のこと聞いてもらわないんだろ?
一人で抱えて・・・答えがみつかんなかったら終わりにしちゃう。
でも、あたしには“受験”ってのがありますから!
廉くんのことは受験が終わってから・・・っていうよりも、受験勉強で紛らわせたい。
正直、ギリギリだったんだ。
おかげで受かっちゃったよ。
廉くんとは連絡取ってない。
あたしからメールしないとホントにメールしてこないのね。
あたしって廉くんの何?
もう、どうでもよくなってきた。
千春や暁子も進路が無事決まって、卒業式まで遊びまくった。
カラオケ行ったり、1泊2日で旅行に行ったり!
舞輝も誘ったけど、春休みってないんだって。
卒業式。
式のあと、校門のあたりで舞輝を待ち伏せ。
その後お祝いしにみんなで食事に行くんだ!
多分マック(笑)
キョロキョロしてる舞輝を発見!
「あっ、舞輝だ。行くよ・・・せぇーの!」
で、3人で舞輝に抱きついた。
また感じが変わったように思えた。
達弥さんとうまくいってるってことかな?
案の定、高校生といったらファーストフード!
最寄駅前のお店でお祝い。
今日はちょっと贅沢にアップルパイつけた♪
お祝いだから(笑)
「千春はどこに進学?」
「あたしは、保育の専門。」
「暁子は?」
「あたしはアパレルに就職。」
「みんなぴったしじゃん。おめでとう!」
「愛海は舞輝と同じダンスの勉強するんでしょ?」
千春には未だにみちの世界らしい。
「愛海とあたしのじゃえらくちがうんじゃない?愛海が入ったの舞踊専攻でしょ?ただ踊ってるってわけじゃないんじゃない?」
「そうだよ。」
「ねぇ、最近愛海の口から“廉くん”って聞かない。」
「え?」
「そういえば・・・」
千春も暁子も散々あたしのお惚気聞かされてたからなぁ。
「なんかあった?」
舞輝まで心配そうにする。
「なんもないよ!いたって順調です。ただね、廉くん忙しいみたい。ドラマにでたりしてたから。」
「廉くんは歌って踊ってるほうがいい!」
暁子が言ったの。
あたしもそう思う。
俳優やってる廉くん、今注目浴びてるけど、みんなと踊って歌ってる廉くんのがかっこいい。
「めずらしく反論しないのね。」
千春、目をパチクリ。
「だって、あたしもそう思うんだもん・・・」
「まぁ、狂ってるファンより安心だ。」
暁子がポテトをつまみながら言った。
“ファン”
トイレに立ったとき、廉君から着信があったの。
【久しぶり。元気?】
「うん。」
【メールも電話もできなくてごめんな。】
「忙しいんだから・・・」
【愛海ちゃんも忙しかったの?あんまりメール来ないから。】
電話の向こうでノックする音が聞こえたの。
廉くん、ちょっと待っててって言って受話器押さえたんだと思う。
でも、聞こえちゃったんだよね。
「れんー!今日はどこいくぅ?早く支度してよ。下で待ってるからね。」
「うん。今行くから。」
って。
相手は女の人で間違いない。
どこに行くの?
打ち上げ?
その子とは遊びに行って、あたしとは会ってくれないの?
もう限界だった・・・・
【もしもし?ごめんな。】
「うん。大丈夫、早くいきなよ。女の子のとこ。」
【え?】
「忙しいんだもんね。あたし、次会えるの楽しみにしてたんだけど、順番待ちだって知らなくて・・・待ちくたびれちゃった。もう、メールも電話もしないから。」
【愛海ちゃんっ!】
「じゃぁね。」
電話を切った。
そうだよね・・・夢見させてくれただけだよね。
本気になっちゃったあたしバカだ。
泣くわけにはいかない。
舞輝たちが心配する。
特に舞輝には心配かけたくない。
舞輝が知ったらきっと必死になると思う。
「愛海?」
ハッとして振り返ると、舞輝が立っていた。
「大丈夫?ぼけぇっとして。」
「うん。」
なんか感じていたかもしれない。
でも、なんも聞いてこなかった。
みんなと別れて、電車に乗った。
後輩や舞輝にもらった花束はもう元気なくしてる。
あたしもそうだ。
シオシオになっちゃったよ。
早く家に帰って泣こ。
おもいっきり。
きっと明日には吹っ切れる・・・はず。
駅の改札を出ると、あたしの前に誰かが立ちふさいだ。
てっきり改札通りたいんだと思って。
「すみませ・・・」
立ちふさがってたのは、キャップを深くかぶった廉くんだった。
「おかえり。」
「なんでここに・・・」
「もう、メールも電話もしないなんて言うから。」
「・・・・」
「来て。」
「れん・・・」
あたしの手を掴んで歩き始めた。
廉くんの手の温もりがあたしの心臓をフル稼働させた。
「どこ行くの?」
「いいから。」
引っ張られるままについていくと、突然ピタッと止まった。
「ここで待ってて。」
って廉くんは花屋に入っていった。
あたしに花でも買ってくれるのかしら。
数分しておっきな花束持って廉くんが出てきた。
「これ、あげる。」
「え?」
「卒業式だったんだろ?」
「うん」
「おめでとう。」
「ありがとう。」
おっきな花を抱えると、廉くんは微笑んだ。
「やっぱり似合う。愛海ちゃんがたくさんの花に囲まれたらきっとかわいいんじゃないかって思って。」
「そうかな・・・みんなに言ってるんじゃないの?」
思わず、ふてくされた言葉が出てきた。
「さっきの怒ってるんだよな?ごめん・・・・」
「謝んなくていいよ。あたし、廉くんの彼女じゃないし。勝手に廉くんと会える日待ってただけだから。」
「愛海・・・」
廉くんがあたしのコートを掴んで引き寄せた。
あたしのこと“愛海”って・・・
「俺・・・自信なくてさ。愛海ちゃんにはもっとふさわしい人がいるんじゃないかって。」
「何・・・言ってんの?」
「いつも一緒にいてやれないからさ。寂しいのに、寂しいって言わない気がすんだ。大丈夫だよって言って。でも、大丈夫じゃなくなったらどっか行っちゃうんじゃないかって思った。だから今の関係でいいのかもしれないって思ったんだ。」
意味がよくわかんなかった。
「俺、勝手だよな・・・他の奴とのほうが幸せかもって思ってるのに、メールで繋がっていればまだ自分のことみてもらえてるってどっかで安心してたんだ。ホントにもうメールも電話もしないからって言われたら、いてもたってもいらんなくなった。自分の前から愛海ちゃんがいなくなることにがやっぱ耐えらんなかった。」
廉くんバカだよ・・・
「ホント勝手だね・・・あたしの幸せ勝手に決めないでよ。自分からは滅多にメールしてこないくせに、メールないからって忙しいのか聞いてきて。他の奴のがあたしにふさわしいとか言って、離れたらやっぱ耐えらんないって。結局あたしって廉くんのなんなの?メル友?女友達?あたし、よっぽど今のが辛い。不安だよ。」
目にいっぱい涙がたまっちゃってた。
「ごめん。なるべく一緒にいれるようにするよ。会えないときは必ず連絡する。だから、俺の彼女になってくれませんか?好きなんだ。」
ホントに?
あたしのこと好きって・・・
あたし、これからも廉くんのこと好きでいていいの?
「もっと早く言ってよ。バカっ」
「ごめん。」
「あたしも廉くんが大好きです。これからも廉くんのこと好きでいていいの?」
「いいに決まってんじゃん!でも、俺のが愛海ちゃんのこと好きだな。」
「あたしのが廉くんのこと好きだよ。」
「俺だって!」
「あたし!」
大きな花束は、あたしと廉くんに挟まれて少しぺしゃんこになっちゃってたけど、きっと許してくれるよね!
「ねぇ、愛海って呼んでいい?」
「さっき言ってたじゃん!」
「さっきはつい・・・」
「許す!」
廉くんと、お家までの短い道のりをデート。
しっかり手をつないで。
番外編
「そういえば、あの女の子のこといいの?」
「え?あぁ、姉貴?」
アネキ?
「おねぇさん?」
「うん、旦那と喧嘩して俺んち来たんだ。憂さ晴らしに付き合うのマジ大変でさぁ。」
ミステイクっ!
てっきり彼女か女友達かなんかだと思ってた。
「そ、そうだったんだ。ごめん・・・なんか勘違いしてたみたい。」
頭にポンッと手が乗っかった。
「嬉しかったけど。ヤキモチ。」
ニヒっと意地悪な顔して言う。
「や、ヤキモチなんかじゃないもん!」
終わり
今回書き方変えてみますた。
いつきみ・・・いつまで続くんやれ。