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鞠つき唄

作者: 月夜鴉

ぽん、と踏みしめられた地に鞠が跳ねるのが見えた。

父親らしき男がそれを拾ってやってまだ幼い少女に手渡した。


少女はにこにこと笑って歓声をあげながら鞠をつく。


あんたがたどこさ

肥後さ

肥後どこさ

熊本さ

熊本どこさ

仙波さ

仙波山には狸がおってさ

それを猟師が鉄砲で撃ってさ

煮てさ

焼いてさ

喰ってさ

それを木の葉でちょいと隠せ――・・・




鞠が妙な方向に跳ねて見えなくなった。

少女は悲しげな顔をして男に何事か言う。そしてこちらを指差した。


不意に視界が暗転し、ごろん、と視界が逆転する。額を地面にひどく打ち付けたのを感じた。


茶色の地面から“私”は男の手によってすくい上げられ、手渡された少女のほっそりした指先が“私”の頬を撫でた。

少女の鈴を転がすような声音が鞠つき唄を奏でる。


少女の手のひらと地面を何往復も行き来した。

十何往復もしたころ、それまで周期的に上下していた視界が横にぶれた。

藪に突っ込み頬を細い枝で引っ掻く。枝葉の間から男に話しかける幼い少女が見えた。



「ねぇお父さま、また鞠がどこかにいってしまったの。新しいのが欲しいわ。そう・・・あの頭がいいわ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 好きなジャンルの雰囲気で面白かったです。 頭とか首とかって、それだけでおどろおどろしい素材なのに、 より上手く使われていると思います。 今後も頑張って下さい。
2012/12/28 17:32 退会済み
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