暇つぶし短編②(黒焦げウルトラマン)
哀れウルトラマン、黒焦げになります。
ウルトラマンの撮影現場。収録終盤、いつもの戦闘シーンが始まる。ところが今回、いきなりバルタン星人の強烈な回し蹴りがこめかみにヒットしウルトラマンが脳震とうを起こす。「打ち合わせと違うじゃん」、手をクロスさせてその意思をバルタン星人に伝えた。
ところが肘が若干傾いたことでクロスが十時の形に。その瞬間、強烈なスペシウム光線がバルタン星人の体を直撃。苦悶の表情を浮かべながら倒れるバルタン。
ウルトラマンの頭が真っ白になる。「マズイ、時間が余る。どうしたらいい?」 カメラは回り続けている。冷酷なプロデューサーは撮影続行を指示。
何かやらねばならない、焦るウルトラマン。タップダンス、ムーンウオーク、阿波踊り、しかし現場には冷めたムード。全然受けない。パニックに陥るウルトラマン。
そのときバルタン星人の意識が回復した。一命をとりとめたのである。バルタンは突然のスぺシウム光線攻撃に怒りを爆発させ、呑気に阿波踊りをしているウルトラマンの片腕を右手のハサミでザックリ切り落とした。「痛い、痛い」、大量の出血とともに苦悶の表情を浮かべるウルトラマン。しかし撮影スタッフは知らん顔。カメラは回り続けている。
怒りの収まらないバルタン星人はどこからか一斗缶
を持ち出し中に入っている灯油をウルトラマンの全身にぶっかけた。そして火を放った。一気に燃え上がる炎。火だるまになるM78星雲からの使者。「熱い、熱い、苦しい、助けてくれ」心の中で叫ぶ。
それを見てほくそ笑むバルタン星人。
黙々と撮影を続けるスタッフ。
炎の中でのたうち回っていたウルトラマンの動きが止まり、体が崩れ落ちる。ようやく炎の勢いが止まる。そこに残るは判別不能な黒焦げの物体。
撮影終了。あちこちから「お疲れ様」の声。
最後にプロデューサーが言う。
「みなさんでウルトラマンのご冥福を祈りしましょう。残念ながら本作でシリーズは終了となります」
撮影中断すればよかったのに。ウルトラマンの冥福を祈りましょう。




