第4話 ータケルー
登校時間は8時30分まで。今は8時15分。ダッシュで漕げばギリギリ間に合う。
俺は、ギアを一番上に設定して、自転車にまたがった。
(あー…、今日は会えないだろうな。いつもより遅れたしなー…。)
沈んだ気持ちと共に、遅刻を免れたい一心で、全力で生け垣を駆け抜けた…。
と、その時。
生け垣を抜けるか、抜けないかのすんでの所で左から人影が見えた。慌ててブレーキをかける。
キキィーーーーーーーーー
そして、コケた。
「ってえ〜!」
転んだ拍子に生け垣に頬を擦ったようだ。ジンジンして、手袋を脱いで触ると軽く血がついていた。
「まじかよ…。」
と、その時である。
「だ、大丈夫?」
女性の声が聞こえた。
顔を上げると、なんと彼女だった。頭がパニックになり、顔が熱くなる。これじゃあ、余計に血が出るじゃんかよ。
(な、な、何か言った方がいいのか?でも、何を?てか、俺コケてるし。めっちゃ恥ずいじゃんかよ。)
ぐるぐるぐるぐる考えて固まっていると、彼女が何かを差し出してきた。
「あの、良かったら、これ、使って?顔、血が出てるし。」
「え?あ?あ、、、ありがとう…ございます。」
受け取って見ると、それは小さい子供に使うような、小さな小さなポケットティッシュだった。可愛いウサギの柄のパッケージが俺を見つめている。
「それじゃあ。」
と、彼女は子供と一緒に自転車で過ぎ去って行った…。
尻もちをついたままの俺は、手についた血と、もらったポケットティッシュを何度も見比べていた。
慌てて、彼女が過ぎ去った先を見ると、彼女の姿は、もう、見えなくなっていた。




