表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の部屋が異界のハーレム待合室になった件~鏡から来た少女たちと始まるドタバタ同居生活~  作者: きたみ詩亜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

【第1話】 「鏡から落ちてきた少女」

 高校二年の春。

 俺――朝倉 恒一は、一人暮らしをしている。


 両親は海外赴任。

 残された俺は、ワンルームのアパートで自由な生活……のはずだった。


「……自由って、もっと楽なものじゃなかったっけ」


 朝、ネクタイを締めながら、ため息をつく。


 部屋の隅には、前の住人が置いていった古い姿見。


「今日も変わらず、普通の日……」


 そう言いかけて、言葉が止まった。


 鏡の表面が、ゆらっと歪んだ。


「……え?」


 水面みたいに、揺れている。


 目をこすっても、揺れは消えない。


「いやいや、ホラー展開いらないから」


 そっと、指で触れる。


 ひんやりした感触――のはずが。


 ぬるっ。


「うわっ」


 次の瞬間。


「きゃあっ!?」


 女の子の悲鳴と同時に、何かが飛び出してきた。


 どんっ。


 柔らかい衝撃。


 俺は後ろに倒れ、床に仰向けになる。


 その上に、女の子がのしかかっていた。


「……ち、近くない?」


「それは、こちらの台詞です!」


 顔が近い。


 近すぎる。


 銀色の髪が、俺の頬に当たる。


「ちょっと、降りてくれる?」


「……あっ!」


 慌てて起き上がろうとして、足を滑らせる。


 今度は俺が、少女の上に倒れた。


「わっ!」


「すまん!」


 手をついた先が、なんか柔らかい。


「……それ、どこ触ってますか?」


「誤解だ! 事故だ!」


「事故にしては、位置が……」


「やめろ、言語化するな!」


 慌てて離れる。


◆◆◆◆


 とりあえず、落ち着くために床に座る。


 少女は、俺の部屋をきょろきょろ見回している。


「……ここは、どこですか?」


「俺の部屋」


「……異界?」


「東京都内です」


「……聞いたことありません」


 どう見ても、日本人じゃない。


 服も、ファンタジー寄りだ。


「あなたは?」


「朝倉。朝倉 恒一」


「……リュシアです」


「どうして、鏡から?」


「……歩いてたら、鏡が光って」


「歩いてたら鏡が光る世界なの?」


「たまにあります」


「嫌な文化だな」


◆◆◆◆


 昼。


 冷蔵庫から、食パンを出す。


「……これは?」


「パン」


「……食べられる?」


「信用なさすぎだろ」


 トースターで焼く。


 匂いが広がる。


 リュシアは、そっとかじった。


「……あつ」


「だから言っただろ」


「……でも、おいしいです」


「感想、素直だな」


 牛乳を出すと、警戒する。


「……白い液体」


「怪しく言うな」


「……生き物?」


「ただの牛乳!」


◆◆◆◆


 午後。


 シャワーを浴びようとしたら、背後から声がした。


「……それは、何をする場所ですか?」


「風呂」


「……水場?」


「身体洗うところ」


「……一緒に?」


「入らない!」


「……なぜ?」


「説明が難しい!」


 タオルを取ろうとして、振り向く。


 リュシアが、ドアのすぐ外にいる。


「……見えます」


「見えるな!」


 勢いよく閉める。


「……文明、難しい」


「距離感覚えろ!」


◆◆◆◆


 夕方。


 姿見を調べる。


 叩いても、光らない。


「なんで、昨日だけだったんだろ」


「……門は、不安定です」


「門って言うな」


「……通路?」


「それもやめろ」


 リュシアは、少し不安そうに言った。


「……帰れなかったら」


「調べる。ちゃんと調べる」


「……一緒に?」


「一緒に」


 少し安心した顔をする。


◆◆◆◆


 夜。


 布団を二つ並べる。


「……床、硬いです」


「文句言うな」


「……近くで寝ても?」


「だめ」


「……距離、短い方が安心です」


「俺が安心できない」


 電気を消す。


 暗闇。


「……朝倉」


「なに」


「……落ちてきたとき、怖かったです」


「……そりゃそうだろ」


「……でも、あなたの顔が最初に見えました」


「それ、どう反応すればいいんだ」


 そのとき。


 姿見が、淡く光った。


「……え?」


 光が強くなる。


「……また開きました」


「いや、今日はもう十分なんだけど!」


 次の瞬間。


「いたた……」


 黒髪の少女が、鏡から転がり出てきた。


 巫女服っぽい格好。


「……ここは、どちらでしょうか」


 俺は天井を見る。


「……一人暮らし、向いてないかもしれない」


 銀髪の少女と、巫女服の少女が並んで首をかしげる。


 こうして俺の部屋は。


 異界の待合室になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ