第十八話
倉庫に近づいてみると扉には南京錠がかかっていて開かない状態だった。
(そういえば電車の中で輝が小さな金庫を蔵に置いたって言ってたな・・・蔵と倉庫の違いってなんだ……)
一彩は倉庫を一周した。
すると、自分の膝より下に小さな入り口があることに気づいた。木でできており引き戸になっていた。鍵はかかっていないが開けようとした時、鍵がかかっていないのにも関わらず力を入れてやっと開いた。
開いた引き戸は小柄な人が少ししゃがんでやっと入れる大きさだ。
一彩「アイリーンここ試しに通れるか?」
一彩の身長では入ることができないのでアイリーンに頼んで中を見てもらうことにした。アイリーンも身長は少し高い方だが、なんとか通れる大きさだったので中に入った。
中に入ると埃っぽく、見た感じ長年封鎖されていたようだ。あるのは木でできて机と箱があった、しかしどちらも腐っていた。流石に長い時間この中にいたら気持ち悪くなる空気だった。アイリーンは早々と外に出た。
一彩「早いな、中に何かあったか?」
「流石に埃っぽいから詳しくは調べられなかったよ」
調べるにしても換気をしないと調べられないことがわかり南京錠の鍵を探すことにした。
鍵は秋春の部屋やじじちゃが使っている部屋、使っていない鍵は物置にしている蔵のどこかに置いてある。
「最初は蔵から探してみよう」
一彩「そうだな、秋春さんの部屋は入るが大変だし、今はやめて置いた方がいいな」
しかし、問題があった。
物置にしている蔵は二十個ほどあり、どこに置いてあるのすらわかっていないので探すのが大変だった。
それでも、やるしかなかった。使っていない鍵を二人が持っているとも考えられなかったから。
二人は最初に倉庫に近い蔵に行った。
中には着物や晴れ着が何個かあって、装飾品などもあった。蔵の扉を閉めて、隅々まで見たが見つかったのは箱に入った何枚もの羽織っぽいものとボロボロの服があった。
他の蔵へも行ってみたが鍵は見つからなかった。
気づいたら日が落ちていて、二人は家へ戻った。
家に入ってもお手伝いさんたちも頑張って笑顔を作っている感じがした。アイリーンは自室に戻り、一彩は夜食を持って蔵へ戻った。
畳に寝そべり、天井を見ていた。最初に入った蔵のことを思い出していた。
(あの蔵、立派な着物なんかがあったのになんで、つぎはぎの着物もあったんだろ)
「まぁ、会社の人が練習で使ったんだろ」
(それにしても古かったな)
考えていると襖が静かに開いた。
じじちゃが心配そうな顔で部屋の外にいた。
じじちゃ「すみません、夜遅くに」
「うん 入って入って」
襖を閉めて、座布団に座ったじじちゃ
じじちゃ「アイリーンさん、今、五十嵐家は百合様が倒れてしまい、皆不安定な状況になっています。アイリーンさんは家にお戻りになってください」
一瞬、ここから追い出されてしまうと思ってしまった。なんで、そう思ったのかは自分でもわからなかった。でも、じじちゃの顔を見て思った。
(小さい頃、百合が私の気持ちを汲み取ってくれた時みたいに今はじじちゃのために行動しよう)
「わかった、すぐに戻れるように準備はしておくから」
そう言うとじじちゃは安堵の表情になった。人の安心した顔ってこんなにも嬉しいことだったんだなと私は感じた。
《翌朝》
荷物を持ち家へ帰ろうとして、門を出ると車とじじちゃが待っていた。家へは歩いて二十分くらいだから歩いて帰れる距離なのに不思議に思っているとじじちゃが車のドアを開けて乗るように促した。
乗ると隣に一彩も乗っていた。
「なんでいるの」ポカンとして言った。
一彩「じじちゃに昨日の夜、アイリーンに異能があるって言ったら大事な話があるから明日の朝、車に乗ってくれって言われた」
走ってる車の中でじじちゃに驚くながら言った。
「じじちゃも異能のこと知ってたんだ・・・」
じじちゃ「まぁ 旦那様も異能力者なので」照れくさそうに言った。
一彩「それでなんで、俺たちを乗せたの」
窓の外を見ると家とは違う方へ進んでいることに気づいた。
「じじちゃ、道がちが・・・」
ルームミラーを見ると真剣な顔でハンドルを握って車を走らせていた。
車は茨城から千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、滋賀を通り京都へ入った。
京都の宿に着き、荷物を預けた。一彩も私も混乱しているが一彩は冷静にじじちゃについて行った。
じじちゃ「すみませんいきなり連れて来てしまって、ですがまずこの店に入ってください」
店は着物の他に大正の服がある店だった。
店の内装を見ているとじじちゃは奥にいる老人に話しかけた、老人は私たちの方を見ながらじじちゃの話を聞いている。老人は椅子から立ち上がり杖をつきながら奥の方へ入って行った。
じじちゃ「一彩さんは奥の方でアイリーンさんは二階の方で採寸をして来てもらいます」
一彩もなんでだと言う顔をしていた。
言われるがままに採寸をして、一階に降りた。一彩はすでに採寸を終えて店内に戻っていた、老人は時間がかかると言って私たちは京都の街へ出かけた。
団子や八橋、京料理を食べた。ちょっとした観光スポットへも行った。最初はよくわからなかった。暗い顔で食べ歩いていたら。
じじちゃ「楽しい時に楽しまないともったいなですよ」
ハッとしてじじちゃの方を見た。
それは昔、百合が私に言ってくれた言葉だった。確かに百合がここにいたら言うだろうなと思う。
一彩「百合、助けるんだろ。今楽しんで見つけたら全力で倒すために感情は楽しいにしておこう今は」
確かにこれはじじちゃなりに私たちを励ましているのかもしれない。
空手の大会で緊張していた時に百合が笑わせてくれたことがあった。たくさん笑ったら緊張がなくなって、いつもみたいに楽しく空手ができた。
全力を出すなら楽しんだ方がいいのかもしれない、もちろん真剣な時は全力でやる。




