第十一話
無事に三日間の撮影が終わり百合たちは茨城県へ帰って行った。しかし、不思議な男が何かを隠しているようだ。
茨城県へ帰ってきた三人。アイリーンの両親がまた短期間の出張へ行くことが帰りの電車でわかったアイリーン、輝はまた五十嵐家に泊まりにくるか尋ねアイリーンは頷いて五十嵐家に向かった。
玄関を開けると梨穂が部屋から出て来て、玄関までやってきた。
梨穂「おかえりなさい」
秋が部屋の襖を開けて顔を出した。百合たちが帰って来たことに気づき、一緒の部屋にいる春に声をかけ二人はジャンプをしながら帰ってきた三人の方に走っていった。
秋&春「おかえり!」
三人は顔を見合わせながら家に帰って来た実感が湧き笑いながら梨穂たちにお土産を渡した。輝はお手伝いさんたちにもお土産を渡しに行き、百合たちは部屋に入り畳に座った。
アイリーン「疲れた〜 東京の圧がすごかった」
百合「本当だよ。でも楽しかったから損したことはないね」二人は笑いながら机にお土産の余りやスマホを置きテレビをつけた。ちょうどニュースで海の異常現象が報道されていた。二人はお土産のお菓子を食べながらニュースを見た。
テレビ「昨日の夜に始まり横浜周辺の海岸付近で深海魚と見られる個体が何匹も打ち上がっていることがわかりました……」
百合「昨日の夜って私たちが行った場所……」
アイリーン「本当だ、今SNS見たら東京を中心に何ヶ国で異常現象が相次いでるみたい」
百合(何が起こってるの……?)真剣な顔をした。
ガラガラ《玄関の扉を引く音》
凛「今帰りました。」
二人が声のする方を向いて襖を引くとそこには百合の両親がいた。和服姿の綺麗な女性とその後ろにいる二十歳後半に見える男性、彼が百合たちの父親だ。同じく着物姿の白い髪で黄色い瞳を持つ。凛は百合たちを見つけると京都のお土産を渡して京都の話しをした。
凛「人が多かったんだけど写真(風景)とか綺麗に撮れたのよ、それに抹茶のお菓子とかやっぱり美味しかったわ〜 まぁ、和服姿なのもあって外国人から一緒に写真どうかって声かけられて少し大変だったけど楽しかったし外国人の人とも楽しく会話できてよかった。やっぱりカップルの人も多くて、着物借りて観光してる人も結構いたのよ」すごい楽しそうに話す。
秋春「うん?」秋春がアイリーンがいることに気がついて声をかける。
秋春「久しぶりだな。背かなり大きくなったか?」
アイリーン「うん 久しぶりです」アイリーンは笑顔で言った。秋春はその笑顔を見て微笑みながら凛とその場を去った、入れ違いに輝がお土産を二人に渡して言った。
輝「玄関近いから一彩にも渡しておいてくれ、俺はもう寝る」あくびをしながら言った。
百合「輝も眠そうだしアリー一緒に行く?」
アイリーン「ごめん 私も眠くなってきちゃったから一人でもいい?」目を擦りながら百合の方を向き言った
百合「いいよ〜戻って来たら起こすからお風呂の前に少し休んで」
アイリーン「あいがとう」あくびをしながら言った。
現在の時刻は午前の2時ちょうどで強い風が吹いていた。冷たい風が百合の顔にあたって、上を見ると暗く厚い雲が早い速度で流れていた百合は眉を狭め目を細くしながら雨が降ると思い歩いていた足を少し早めながら一彩がいる蔵へ向かった。蔵に着いた瞬間に雨が降りギリギリ濡れずに一彩にお土産を渡すことができた。家に帰ろうとする時、一彩が蔵にある傘を渡して百合に持たせた。蔵の外に出ると強い雨で視界が悪く少し歩いただけで方角がわからなくなってしまった。周りを見渡すが特徴的な建物も雨のせいで見つけることができなかった。
百合はその瞬間、妙な不安感を覚えた。雨のせいで周りが見にくいのもあるが歩けど歩けどいくらなんでも一向に家どころかたくさんある蔵の一つも目に入らないのだ。百合は見知らぬ地に一人取り残されたような不安感に襲われ震えが止まらなかった。その時、遠くに一つだけ大きな影を薄っすらと見つけた、百合は影の方へ走り一つの倉庫に辿り着いた。見上げるとかなり古い壁で鍵がついていた。雨宿りをしようと倉庫の周りを見てみると一つ小さめの引き戸がついていた、百合はそこから倉庫に入ろうと引き戸を力一杯引き戸を開けた。背を低くして倉庫の中に入った。全身が寒さで震えながら中を見ると古い木の机のようなものがあった、湿気のせいなのか木が腐り欠けていたりしていた。百合は他に何かあるかと周りを見渡すと同じく木でできた箱が置いてあった箱を開けると一冊の本が入っていた。百合は本を取ったその時、倉庫の入り口の外から何か重いものが落ちる音がした、百合は本を持ちながら開かないはずの扉を押した。押した瞬間重くギィーとした音が倉庫の中に響いた。
鍵がかかっているはずの扉が開いたのだ。
百合は扉が開いた時、全身の血の気が一気に引きその場から動けなくなった動けない百合とは逆に音を立てながら扉は開く。まるでそこに人がいて倉庫の扉を開けるように見える、扉が全開になると百合は目の前を見ていた。雨が降っていて倉庫の中にも雨の音が反響しているはずなのに百合の体には心臓の鼓動しか聞こえない。目の前の雨を見ていると薄っすらと何かが見える木でも大きな岩でもなく明らかに人の形をしていた。本来なら黒っぽく見えるはずの影が沸騰した湯気のような白い人影が見えた。白い人影は徐々に大きくなり百合の方へ歩いているのがわかった、瞬きが異常な速さで起こった、しかし近づくたびに瞬きの速さも遅くなった。目を瞑るとただ怖さと心臓の音だけが聞こえ目を開くと目の前の奇妙な人影が脳に取り憑かれたようにその影しか見れなくなった。全身の力が抜けたことにも気づかず手から本がストンと床に叩き落ちた。それと同時に白い人影が何もなかったように消えた。消える一瞬だけ百合は白い人影が何か言おうと口を開けるのを目に焼き付けたことがわかった。消えたと同時に百合は一彩がいる蔵から少し歩いたところにいた。傘を刺したままその場で立ち尽くしていた。一彩が蔵から出て声をかける。
一彩「おい!どうした?」
一彩が声をかけたと同時に百合は一彩の方へ顔を向けた。一彩の顔を見ると膝から崩れてその場にしゃがみ込んだ手が自然と顔を覆い指の隙間から目だけが見えた。




