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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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71.風の神殿の終焉


 ルヴィニ達と別れ、神殿の掌握をする部隊についていく。

 神殿は各国の文化とはまた別の系統だ。そこが、別の存在として人々から信仰を集めている。


 これから、信仰を破壊する。失敗は出来ない。

 風の国の変革と共に、古い基盤の象徴として、神殿を贄とする。


「鐘を鳴らしなさい。緊急招集の鐘を」

「は? しかし……」

「今すぐに。急ぎなさい」


 神官長が神殿に入るなり、命令したことに戸惑う神官。

 それでも、有無を言わさぬ神官長の命令に従い、カランカランと大きな鐘の音が神殿内に響く。


「これはこれは、何をしているのですかな、神官長」

「副神官長……貴様のせいで!」


 鐘が鳴り響く中、神官達が集まってくる。

 王太子が率いる軍の一部はすでに地下へと向かい通路を塞いでいる。入口も同様。


 逃げ場を塞いでいるが、相手は追い詰められたとは思っていないらしい。

 悠々と部下たちを連れて現れたのは副神官長だった。


 ちらっと王太子に視線を送るとこくりと頷いた。


「手を上げ、頭の後ろに組み、そのまま地面に伏せろ。良いというまで動くな」

「ははっ、王太子殿下! ここは神殿です。王であろうとそのような命令は許されないですよ」

「副神官長の言う通りです! 神官長もなぜ、従っているのですか! 王家は不可侵を破るつもりか!」


 集まってきた神官が抗議をし、誰一人として地面に伏せる者はいない。

 

 いきなりやってきて、犯罪者として捕まれと言われて従う人はいない。


 しかし、副神官長は煽り方が上手い。

 元から王家に対する反感が神官長に向けさせたいのだろう。


「ジェイド、作戦通りに……」

「……正気ですか? 駄目だったら……」

「正当性を主張する必要がある。ここではっきりとさせないと、泥沼になり、神官を全員殺すことすらあり得る。説明はされたよね? 王家や身内である神官長が手を出すことは厳しい。ジェイドがやるか、私がやるか……」


 神子様が勧誘されたことは隠そうとしても隠せない。

 それならば勧誘した者を断罪し、騙された被害者としての身内として、ジェイドが鉈を振るう方がいい。

 そのために事前に神官達が指示に従わない場合の作戦は伝えてある。


「何故僕がそんなことをしなくてはいけないんですか?」

「出来ないならいい」

「あ、まって……ミオさんがやると、その色々問題も……」

「必要なことなら、泥をかぶる覚悟はあるから」


 アイオ様が心配してくれるけど、服をひん剥いて、痴女扱いされようと。

 この場でやるのは私かジェイドしかない。


 リストに名前が載っていた集団。短時間だけど、様子を見る限り、副神官長が狙い目かな。

 私が副神官長に向かって歩き出そうとした瞬間、腕を掴まれて後ろに後退することになった。


「何?」

「……僕がやります」


 ジェイドの風魔法が副神官長を襲う。

 普段、目にかけている神子候補からの攻撃に驚いて、防御もせずに風に包まれる。

 しっかりと制御していて、副神官長の服だけが切り刻まれる。


「背中が見えるように、拘束をお願いします」

「あ、ああ……承知した」


 王太子の護衛に指示をするとすぐに神官達に見えるように拘束してくれた。

 背中には邪龍の紋、さらに中心には赤い石が埋め込まれている。


 教団の紋くらいは、彫っていると思っていた。

 ただ、すでに石を取り込んでいるとは、予想外だった。


 ごくりと唾を呑む。


 いや、神殿内で思想を広げるには効果的かもしれないけど。

 一瞬、迷ったけど、これを活用するしかない。


「ジェイド。もう一度、警告を」

「……手を上げなさい。そのまま、膝をついて、地面に伏しなさい」


 小声で伝えるとゆっくりと言葉を紡いだ

 ジェイドの言葉に戸惑いつつ、神官たちががやがやと騒いでいる。


「風の神殿に所属する神官に告げます。今、貴方方には反逆罪の容疑がかかっています」


 私の言葉にしーんと静まり返る。

 反逆罪という言葉に、漸く、自分達が集められたことへの怒りが戸惑いに変わった。


 逆らう場合は攻撃を辞さないという脅しのために、手に炎を灯して、攻撃するという威嚇をする。

 意図を察したのか、軍の人達も剣を抜いて、目の前に掲げて、重たい雰囲気を醸し出す。


「もう一度、言います。貴方方には反逆罪の容疑がかかっています。今すぐ、手を上げて投降しない場合、反逆者として処断します」

「貴様っ、おい、私を助けろ!」

「そこにいる副神官長の背を見れば、一目瞭然でしょう。彼は神官でありながら、邪龍教団の帰依し、邪龍を信奉する紋を体に刻んだ反逆者です。また、他にも上層部の一部も邪龍を崇拝し、風の神子様すら騙していたことが発覚しています。よって、神殿全体に嫌疑がかかっています。全員、地面に伏しなさい」


 がたがたと怯えた表情で地面に伏し始める。

 ただ、膝をついて頭を抱えている者がいる。


「地面に伏さなかった者から拘束。一人ずつ尋問をしろ!」


 王太子殿下が目ざとく指示を出して、怪しい者を先に拘束していく。


「なぜ! 何故だっ! こんなことは許されない! ジェイド様! 貴方は騙されて……」

「はぁ……じゃあ、わかりやすく人ではないことを理解してもらおうか」


 まだ、拘束が完了していない状態だからこそ、動揺している。

 ここで、はっきりと副神官長を貶め、神殿が悪いことを自覚してもらわないといけない。


「王太子殿下……許可をいただきたいのですが」

「ミオ殿? まだ、何か?」

「徹底的に潰すために……副神官長が化け物であるとこの場で見せても?」

「……お願いするよ」


 護衛の一人に剣を借りる。

 重い――持ったことがないこともだけど、覚悟も足りない。


「……っ」


 剣を構えて、胸――心臓を突き刺す。

 血が飛び出て、当たりがざわざわと沸き立つ。


「許さんっ! 貴様っ、許さんからな! 顔を覚えたぞ!!」

「心臓を刺しても死なないんですね?」

「だから、どうした! 私は選ばれたのだ! 不死として、邪龍様のために!!」

「世界を滅ぼす邪龍に与するなら、世界の敵です。その家族も含め、あなた以外の関係者が死んでも、自分だけが生きると?」

「そうだ! 私は選ばれたのだからな!」


 異様な光景。死なずに唾と血を吐きながら私を罵る副神官長に辺りは静まり返る。


「ミオ殿……もう、皆、理解しただろう」


 王太子がゆっくりとこちらに近づいてきたのを確認し、頷く。


「……〈浄化〉」


 杖を使い、魔力を叩き込む。

 苦しみ始めた副神官長。

 抵抗するように暴れようとするが、次第に動きが弱まっていく。


 背中に埋め込まれた赤い石がぱりんと砕けると同時に、倒れて動かなくなった。

 赤い石が割れた瞬間に黒い靄のようなモノが副神官長の体から出たが、すぐにかき消された。


 しんっと静まり返る。

 誰もが、顔を引きつらせ、恐怖を浮かべている。


「さて、全ての神官に告げる。これから一人一人聴取を行う。大人しく従わぬ場合、保障はしない――連れていけ」


 王太子の命令で、まずは副神官長とともに現れた神官達を引っ立てようとした軍人がばたっと倒れる。

 その隙に、拘束が緩み逃げ出そうとする神官。


 魔力が揺れた。その先に――見知った男がいた。


「困るな~。神官って良い魔力の補給源なんだよね? 邪魔しないでくれるかな~」

「オブシディアン……こっちに来たんだ?」


 ちらっと王太子に目配せをすると護衛と共に後ろに下がる。


「わざわざミオちゃんに会いに来たんだよ。嬉しいでしょ?」


 歪んだ笑顔を浮かべながら、ゆっくりとした歩調で近づいてくる。

 アイオ様が私の前に立つけれど、ここは神官達を拘束している場で戦いには向かない。


 さらに、ジェイドや王太子もいるため、守らなくてはいけない人が多い。


「……ジェイド。神官達を含め、避難して。すぐに」

「捕らえるのでは?」

「神官たちは捕らえるよ。でも、ここにいたら死ぬでしょ……早く! 殿下! 急ぎ避難を!」


 神官たちよりも前に立ち、結界を張る。

 オブシディアンの攻撃ではすぐに壊れてしまうのは承知しているけど、時間を稼ぐ必要がある。


 神官の誘導をさせて、ジェイドをこの場から逃がしておく。

 王太子殿下は、神官とは別に……今すぐにでも安全な場所へと。


「僕が……いいよね?」

「はい、サポートします」


 アイオ様が剣を構える。

 狙いが私であるなら……逃げる時間は作れるだろう。




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