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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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70.邪龍の痕(ルヴィニ視点)


 祭壇からさらに奥へと進んでいくと、地下へと続く回廊にたどり着く。

 下を除くが明かりがないため、深さは全く確認できない。


 落ちていた石を手に取り、落とす。


「1……2……3………………10……11」


 コツン

 地面に落ちた音が聞こえる。

 

「かなり深いね。ここが最深部かな」

「……だが、ここ以外は目ぼしい施設は最初の祭壇の間とその隣にあった異様な遺体処理場。……書庫などもない。簡易なベッドなどはあったが人が住んでいるようにも見えん。一体、何を目的にしている」

「書物は神殿からの入口に色々あったよ。研究は神殿でやってる可能性のが高いね。住むように見えないのは、人ではないから食事などもしないのかもね」

「……行くのか?」

「ここで待つ?」

「いや……この目で確認する必要がある」


 松明を使い、ゆっくりと降りていく。

 螺旋状に階段が続いていたが、途切れた。


 ここから先、梯子のような物が設置されているが、暗い中でこれを下りていくのは危険な可能性がある。


 ここまでに人は排除し、もういないことは確認しているが、オブシディアンはいきなり現れることも可能ではある。警戒は怠らずに、周囲の確認をする。


 さらに下から溢れている異様な魔力。

 穢れも酷いのか、カライスの顔色も悪い。


「梯子を使うのは危険かな。スマラクト、ここで聖獣使える?」

「……大丈夫だと思うが」


 しかし、スマラクトの聖獣を召喚すると、首を振って嫌がった。

 どうやら、聖獣にとっても耐えられない穢れらしい。


「ルヴィニ。その前に、一度、浄化をしよう。このままだと倒れるぞ」

「サフィロス。追いついたの? 倒れるって?」

「さあな。下から感じるのは前に感じた人ではない気配だが……穢れも酷い。このまま行けばカライスは倒れる」

「わかった。任せるよ」

「可能なら、照らしてくれ。多少でも、見えた方がマシだからな」

「はいはい」


 火の球を無数に出して、一定間隔で地下の方へと配置していく。

 だいぶ降りてきたつもりだったが、まだ、半分くらいの位置か。先は長い。


「浄化……ふむ、ミオは軽々使うと言ってたが、かなり魔力を消費するな」

「サフィロスに浄化する素養がないだけでしょ。ミオは神器を使って、かなり広範囲に展開できてたよ」

「あ、でも、すごく楽になりましたよ!」


 サフィロスが杖に魔力を込めると空気が軽くなった。確かに、暗くて視認できなかったが、穢れは酷かったらしい。

 かなり疲労を見せていたカライスが、元気になっている。


「……一気に下まで降りるか?」

「それが良さそうだよね。僕とスマラクトが先行する。いいよね?」

「ああ。安全を確保してから、迎えをくれ」


 スマラクトの聖獣を召喚してもらい、その背に乗って降りていく。

 ゆっくりと降りながら、暗いところが無いようにと火の玉を追加していく。


「ここまで、あの神官どもが日参するとは思えないな」

「あの豚どもがするわけないでしょ。ただ、赤い石も呪詛の種も、あれから生み出されたんだろうね」


 目の前には大きな岩の塊のように見える魔力を帯びた物体。

 その表面は、鱗が一面にびっしりと覆われている。


 触れると魔力を吸い上げようとするので、すぐに手を放す。

 冷たく固い感触だったが、振れた箇所だけ僕の魔力のせいか、赤く変わっている。


「……形状はあってるな」

「ほら、ここだけ鱗も剥がされているし、中から血を出すためなのか、管も埋め込まれてるよ」

「……生きている、のか? これが邪龍?」

「さあ? 僕も見たことはないし、ミオならわかるかもしれないけど」


 この世界に伝わる知識ではこんなものは存在しない。

 ただ、鱗の形状は呪詛の種の形であるし、鱗の下の部分からも何かを抽出した後がある。


「サフィロス、どう思う?」

「亡骸の一部、だろうな。封印されている以上、亡骸ではないのかもしれんが……切り離された邪龍の一部、用済みのな」


 遅れて到着したサフィロスに確認するが、これが何かは断定はできないようだ。

 ただ、用済みという判断は気になる。


「……どういうことだ? 用済み? これだけの異様な魔力を持つ物体だぞ?」

「いや、本来の力を失いつつあるように感じる。それでも穢れを発生する原因でもあるから、破壊するしかない」

「だよね。まあ、オブシディアンはこれを放置してミオの元に行ったからね。あいつにとって守るべきものではないってことは、用済みでもおかしくないかな」


 行動指針において、邪龍の命令に絶対であるなら……これを守るはずだ。

 オブシディアンはあっさりとミオの方が危険と断じて、姿を消した。


 破壊するのは当然だけど、これを捨てても代わりがあるのか……。


「本体は別にあるかもな」


 サフィロスの言葉に深く息を吐きだす。

 代わりではなく、これすらも切り離した一部の可能性か。


「周囲を確認する。問題が無ければ、破壊しよう」


 僕は周囲を明るくして、危険なものや他の痕跡がないかを調べる。

 サフィロスは岩を、スマラクトはここまでの道中の見落としがないかを調べる。


 目ぼしい効果はなかった。


「そっちはどう?」

「この鱗自体は、呪詛の種と変わらない性質のようだな」

「上級の魔法でないと鱗自体を破壊できない?」

「3人でやれば、何とかなるだろう。魔力の圧で消し飛ばす、単純明快だな」

「……大丈夫なのか?」

「吸収や反射されないように高火力で潰すってことだよ。わかりやすいでしょ。カライスは下がってて」

「は、はい」

「スマラクト。気負わなくても、足りない分は私が補強しよう」

「……ふん」


 三方に別れ、魔力を溜める。


「行くよ……“φωτιά”(火よ)」

「ああ……“άνεμος”(風よ)」

「“νερό”(水よ)」

「「「“Καταστρέψτε το”(破壊しろ)」」」


 タイミングを合わせて、全ての魔力を使い切る覚悟で放出する。

 長くもなく、短くもない時間が過ぎ、立っていることすら辛くなり座り込む。


 目の前にあった邪龍の痕跡は消えた。

 少し遠くでは地面に倒れ込み、ぜぇぜぇと息を乱して苦し気なスマラクトと、その様子に心配そうに駆け寄って水を渡しているカライス。


 一人、まだ余裕がありそうに、岩があった場所の地面を確認しているサフィロス。


「ああ、もう……くたくたなんだけど」

「……同じく」

「えっと、大丈夫ですか?」

「魔力を消耗し過ぎただけだ。死ぬわけじゃない」


 サフィロスを睨むが、あっさりと受け流された。

 こっちが疲労困憊だというのに、良い笑顔で笑うサフィロスに腹が立つ。一人だけ、魔力に余裕があるらしい。


 そう思った瞬間、サフィロスの笑顔が崩れ、泣きそうな顔になる。

 その様子に驚き、疲れた体に鞭を撃って近づく。


「やれやれ……薄情なもんだな」

「何が?」


 サフィロスがぼそっと呟いた。掠れた声で、絞り出すように。

 ただ、その意味がわからずに質問したが、緩く首を振って、再び流された。


「いや、何でもない。ここの狂った魔力による磁場も解消された。上に戻ろう。スマラクト」

「……少し休ませろ」

「構わないが、こんな場所にいつまでもいたくはないだろう?」


 それは事実ではある。

 ただ、この疲労状態で情けない姿を他に見せたくはない。

 それはスマラクトもだろう。


「カライス。二人にポーションを飲ませろ。まだ、全部終わった訳じゃないだろうからな。後始末をしないとな」

「は、はい! えっと、ルヴィニ様……」

「うん、もらうよ」

「……ああ」


 きつい体に無理やり魔力を回復させるポーションを飲み干す。


「行こう」

「……ああ」


 再び、スマラクトの聖獣に乗って上へと戻る。

 神殿側はどうなっただろうか。



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