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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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67.水の神子 (サフィロス視点)


 ミオとアイオと別れて、一週間。

 漸く、風の国の首都ショウドウに到着した。


 変わりはないか調べる必要があると思ったが、早々に風の神子からの使者がやってきたため、服を整え、ルヴィニと共に王城へと向かうことになった。


「サフィロス……おかしな気配が増えてる気がするのは、僕の気のせい?」

「いや……どうする? 軽く調べに行くなら止めないが」

「ふぅん? 今はいいよ。別行動は避けた方がいい。カライスはどうする?」

「少し、町を調べてきます。ルヴィニ様が言うのも……穢れが少し気になるので」

「何かあったら、すぐに王城に。無茶はするな」

「はい! ありがとうございます」


 カライスも自分で調べたいというので許可を出す。

 一応、カライスには護衛を何人か付けた。町中でいきなりドンパチを始めない限り、問題が起きることも無いだろう。

 カライスはミオの影響か、主体的な行動もするようになり成長が著しい。


 神殿と教団のアジト方向に嫌な穢れがあることも事実。

 放置して出掛けるスマラクトに文句を言いたいところだが、あいつは穢れに疎いからな。



 ルヴィニと共に王城へ向かい、案内される。


「待たせたね」


 案内をされたのは豪奢な造りの迎賓館の一室だった。

 出迎えたのは王太子。私が席に座り、その斜め後ろにルヴィニとカライスが立った。


「すまないね。父王もすぐに来るとは思うが、しばし、私で我慢してほしい。実はスマラクトも不在でね。対応出来る者がいなくてね」

「ああ。魔力の位置で把握している。そちらはどこまで聞いている?」

「神殿内から教団のアジトへ向かう道があること。教団は潰さなくてはいけないこと。戦力が足りないため、水側が補強のために一度引き上げたこと。これくらいだね」


 最低限の内容は知っているようだ。

 だが、詳細……現在の動きまでは把握していない。


「こちらはすぐにでも突入と考えていたが、肝心のスマラクトがいない。水側だけですることになるが?」

「出来る事なら、待ってほしい。おそらく、明日か明後日には戻るはずだ」

「ああ。明日の午後には着くだろう。だが、魔力を消費して移動しているから、明日では戦力にはならない」


 スマラクトはな。魔力を温存しているジェイドが活躍できる場にはなる。

 言葉にはしないが、王太子は深く息を吐いた。


 スマラクトはジェイドに手柄を与えるためにも、気にしていないようだが……私とルヴィニが危険と判断した敵に対し、あの未熟者で足りると考えてるならスマラクトの評価を下げる必要すらある。


「……承知した。では、私を連れて行ってくれ。風側が見届ける者がいないようでは、流石にまずい」

「足手まといは勘弁してくれるかな? 余裕があるわけじゃない」

「ルヴィニ。気持ちはわかるが、今は口を出すな」


 手を上げて、静止をすると後ろに控えていたルヴィニは頭を下げて黙る。


「王は居ずとも、王太子。あなたがいる以上は正式な場だ。護衛が口をだしてすまないな」

「いや……普段は代理権のある方だと承知している。ルヴィニ殿にも自由に話してもらって構わない。すまない。こちらの戦力予想が誤っているようだね」

「現在把握している戦力だが、先代水の神子、先日殺された水の神官、そして闇の神子の従者。こいつは直接対峙した従者たちから神子と遜色ないという」

「……神子二人と、上級の者が一人。そういうことかな?」


 王太子の問いに対し、ルヴィニが「発言を」と許可を求めてきたので、王太子に視線を送る。

 深く頷き、許可が出たので、ルヴィニに許可を出す。


「死体を何らかの方法で生きているように動かしているからね。人格はあるみたいだけど、痛覚がない。怯んだりもしない。通常の対人戦と考えると相手に読まれて手痛い反撃を受ける。魔力が低く、訓練が足りない者はそれだけで足手まといになる」

「……スマラクトとジェイドを待っていただくことは?」

「代わりにこちらが風の神殿の者を殺す許可をもらいたい。教団内部にいる者は当然だが、隠れている者達も排除する必要があるからな」

「許可しよう……本来、こちらがすべきことですが、していただけると?」

「必要でしょ? お飾りにもなれない神子が口出して、なあなあにする未来しか見えないしね」


 ルヴィニの言葉に苦笑する。

 王太子も頭が痛いというようにこめかみに手を置いた。


 何もなかったのだからと、罪を問わない。風の神子がそれをやる人だという認識が共通している。


 あっさりと神殿の者に問題があるならば、殺す許可を出すあたり、対立は覚悟している。判断は悪くないな。


「その方のことなんだが……神子と神殿の様子がおかしい。何か知っていたら、教えてくれないか?」

「だろうな。私達が先触れもなく、王城に直接現れたのもそれが原因だ。宿に付いた途端に離宮に来るようにと命じてきたのでな。話を聞くなら王城で、王がいる前だと伝えてここにきた」


 大方の狙いはわかっているが、神子が暴走していることについてはスマラクトは伝えていないようだな。


「それは、失礼した。神子同士であっても許されることではないだろう。神殿も様子がおかしいのに、伯母上もか」

「神子殿の要因は簡単だ。私はこの地に来てから、魔力封じを受けていても、出来る範囲で大陸に魔力を送っていた。神子の務めとしてな。それをカライスが裁判のために捕らえられたところから止めた。もう半月以上になるか。彼女は自分一人で魔力を大陸に送りたくないらしい」

「……意味が解らないんだが? 神子がやるべきことだろう? どういうことだ?」


 怪訝そうに問うてくる王太子に苦笑する。

 魔力を送ることについて、神殿の管轄と判断し、王家が介入してこなかったことがよくわかる。


「そうだな。簡単に説明するが、大陸中に均一に魔力を流し込むのが神子の役割とされている。この数値を仮に500としよう。500あれば、邪龍は封印されている。500をきれば、穢れとして大陸から邪龍の気が漏れ出てしまう」

「内容は知っているが、数値は知らなかったな」

「仮と言ってるだろう? 数値は見える物でもないがわかりやすくするためだ。一般人の魔力は10以下、初級と呼ばれる者は100~300程度だろう。上級と言われる者は600以上……だが、600の者が500送り続けるというのは常に走らされてるようなものだ。続かない……神子であるなら800が求められる。そうでないと息切れするだろう?」

「だが、神器で補完すればいいのでは?」


 多少、不足しているなら、年に一度の儀式で全体に送ることでも何とかなるだろう。

 だが、そうではない。もう、足りていない量を誤魔化せない段階だった。


「単純に彼女では足りないんだ。神子となった時点では知らないが、今はもう上級を保てているかもあやしい。バレない様に、神殿とも協力して負担をこちらにばかり押し付けていた。それでも、私も出来る限りのことはしていた。居候でもあるし、私の民もこの地に住まうからだ」

「……知らなかったが、感謝しよう。神子としての在位が長いのは、貴方が支えていてくれたおかげということだな」

「感謝は不要だ。先ほど言った通り、私は止めた。今まで、楽をしていたが大陸全体に自分一人で魔力を送ろうとして気付いたのだろう。半分程度しか、魔力を送れない自分に」


 王太子ががばっとこちらに向けたので、頷く。

 10年以上楽をしていたため、すでに神子として必要になる能力が無くなってることに気付かなかった。


「神子の在位は平均しても10年から15年。それ以上の期間もたないんだよね。普通の神子なら。まあ、高魔力の候補が数人いて、互いに支えているとか? そもそもが規格外の魔力の持ち主なら別だけどね」

「……スマラクトが、ジェイドが勝手に神器を取りに行ったことを咎めなかったのは……」

「私が送らない以上、スマラクトとジェイドが負担するからだろうな。なに、神子が200,スマラクトとジェイドで150ずつ送れば、当面は凌げる」

「さっさと神子を変えた方が早い気もするけどね」


 私が風の魔法も使えるため、魔力を流すことに問題がなかったせいもあるが。

 私の方が魔力を送っていたからな。ミオも地図で確認して、おかしいと感じるくらいには魔力の円が二つになっていた。


 私が半分以上を支えている時点で、この国は限界だった。

 それでも、重い腰を上げずにいたのは――私の甘さだ。


 再び、大陸が滅ぶ光景を見たくはなかった。


「……封じられていて、300も送れると?」

「私は化け物らしいからな。まあ、封じられた後すぐに水の大陸が滅んでいるから、何とも言えないが」



 私が神子となったのは生まれて間もない頃だったらしい。

 母が私を産んですぐに亡くなり、神子の座が空位になった。


 候補だったのは母の弟であるアルヴァだったが、満場一致で私になったという。

 それほどまでの圧倒的な魔力だった。数値では当時から1000を超えているだろう。


 だが、私が成長し、自分の意志を持ち始めると、水の上層部も厄介だと感じるようになる。魔力が高いからこそ、自分達にも危険が及ぶと。


 そのために、封じる手段を講じた。

 それがルヴィニだった。

 火の神子の甥であり、わずか3歳にして魔力覚醒をしてしまい、その事故でルヴィニの両親が死ぬと、火の上層部でも扱いに困っていた。


 火の神子が自分の子に神子を継がせたいという思いもあり、人身御供としてルヴィニは水の大陸に預けられ、共に枷を嵌められた。私が5歳、ルヴィニが4歳の頃だ。


 枷により足りなくなった分の魔力をアルヴァが担い、権力を分散させる狙いもあったようだが、水の大陸は滅んだ。

 あっけなく。枷を嵌められて、僅か、1年足らずで。


 いまだに、忘れることはできない。

 幼かった。

 大人の言うままに従った。


 そのせいで、失われたモノは大きすぎた。


「この地に来たときには枷をしてなかったようだが?」

「風側はそこを警戒するべきだったな。水側の意思で外すことが出来る状態と認識していなかっただろう」


 先代の風の神官長を抱き込み、当時いた私の側近があたかも風の神殿が封じたように装った。


「話がずれたが、風の神子は単独で私に会い、今まで通り魔力を送る様に言うはずだ。だが、その気はない」

「足りるという判断、ですね?」

「今、風側で魔力が一番あるのはスマラクトだがな。あいつ一人に任せると5年後の邪龍討伐に支障をきたす可能性もある。それなら、神子としての名誉をジェイドにやり、二人で余力を作って貰った方が世界のためだ」


 風側としては揉めるだろう。

 だが、神子を使い捨てにするくらいなら、高い者同士で補った方がマシだ。


 王太子の方でも判断に迷っている。


「すまぬ。遅くなったな」

「いや、構わない。風王、忙しい中すまないな」

「水の神子よ。何やら、揉めているようだが」

「経緯は王太子に伝えておいた。詳細はそっちから聞いてくれ。明日、スマラクトが戻ったら、作戦を開始するつもりだ。風の神子とは会う気はない」

「……待ってもらえるならありがたい。スマラは貴殿は待たないと言っていたが」

「スマラクトだけなら待たなかったんだがな……うちの導き手を連れているようだ」


 魔力を辿れば、ミオとアイオもスマラクトと一緒にいる。

 それならば、多少の手柄をジェイドに渡してでも待つ価値はある。


「お二方に問いたい。ミオ殿のいう未来、あり得ることでしょうか?」


 王太子の言葉にルヴィニに視線を送ると、頷いて話し始めた。


「僕はありえたと思うよ? ミオとアイオがいたから、僕も無事だったけど。サフィロスの魔力をたっぷり吸い上げた水龍と、先代水の神子とオブシディアン。カライスを連れてる状態で、争ったら僕は死んでいた。サフィロスはさらに僕も加えた3人と水龍と戦うなら、半分は道連れにしても、全ては厳しいだろうしね……僕らの死後、風の大陸が滅ぶと聞いても納得するよ」


 ルヴィニの言葉に、王は力強く頷いた。

 示唆されたことは受け止め、滅ばぬようにと動く決意が見えた。


 それならば、希望も与えておくか。


「私はミオが切り開く未来も見てみたい。邪龍を封印するではなく、討伐すると言い切る導き手だ。成功すれば、神子という制度も不要になる。神子でなく自由に、そんな未来があるならな」


 私一人活かせば世界は救える。そういう表現はしなかった。

 ただ、本気で邪龍討伐のために戦力を整えようとしていることも理解できた。

 その未来を見てみたい。


「世界を救う。そのための下地を整えるためにも、この地から出ていく。風のことは風がやってくれ。厄介なのが光と闇の大陸で動いているからな」

「土の大陸も危うそうだしね。せっかくだから、僕も里帰りして神子になってくるよ」


 ルヴィニも軽い口調で言い切った。

 火の神子を凌ぐ実力があることは間違いがない。多少揉めても、神子としての地位を奪ってくるのだろう。


「ははっ、それは良い! 長く、この国にお二方を縛り付けたが、世界のために旅立たれるなら目出度い。今までの協力に感謝を、これからの旅路に祝福を!」

「我が国も出遅れる訳にはいかないね。神子を変え、立て直しをはかろう。立て直しが出来たら、是非、ミオ殿の旗下に加えてほしいところだね」

「ああ、ありがとう、風王。王太子も。風の国が一丸となってミオを推すなら、一考しよう。だが、安易に権威だけを利用しようとしている連中がいる限り、あの子は水だけの導き手だ」

「その通りだ。今、旗下となるのは難しいと理解しているよ。だが、希望は見えた。ありがとう」


 王太子が深々と頭を下げた。

 ミオが言うには、5年後にはこちらが王となっている。


 その片鱗は確かにあるようだ。これからの手腕に期待する価値はありそうだ。



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