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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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66.ヴェントゥス・レガリア


 その後、アイオ様とジェイドが帰ってきたのは、5時間後だった。

 二人ともすっきりした顔で帰ってきたので、特に危険はなかったらしい。


「無事でよかったです。けがは?」

「うん。でも、あっさり送り出したのに、危ないと思ってたってこと?」

「二人揃った時点で、ノアが出てくることもあり得るかなとは思ってました」

「は?」

「はい?」


 二人がばっとこちらを振り返った。

 やはりその可能性はわかってなかったらしい。


「見つかっていないので、可能性でしたけど」

「目撃情報はこちらに向かっているという話はあったがな。そのために、ここの警護を強めている」


 スマラ殿下が補足した。

 風側もしっかりとノアの行方はある程度は追っていたらしい。把握している情報を淡々と伝えてくれた。


 ただ、その報告に二人が顔を顰めた。

 アイオ様は殿下のこと苦手なんだっけ? 特にそんな情報は無かったと思うのだけど。


「スマラクト……なぜ、ここにいるのですか」

「お前を迎えに来た。二日後には水側が神殿に突入予定だそうだ。急いで戻る必要がある。神器は?」

「ふんっ、ここにありますよ」

「ああ。よくやった。少し借りていいか?」

「なんです? 手柄を奪う気ですか?」

「……そんなつもりはない」


 ジェイドがぴくぴくと眉を上げながら、殿下に渡した。

 それをじっと確認してから、ぽいっと私の方に投げてきたので、慌てて受け取る。


「何をするつもりです!」

「……少し落ち着け。必要なことだろう?」


 殿下が私の方をじっと見る。

 こくりと頷き、杖に魔力を込めてみる。



『まさか、導き手が二人いるとは……』

「ヴェントゥス・レガリア?」


 アクア・レガリアと対面したような神秘的な場所ではあるが、目の前に現れた姿は違う。

 私ではなく、ノアの幼い姿だった。いや、ノアというよりも、ゲームの主人公の幼い頃だ。


 何て言うか、精神が違うというのはやはり大きい。姿は幼げなのに、どこか神聖な美しさがある。


「……三度目の世界の改変を挑むため、あなたの記憶をいただきたい」

『相すまぬ。渡してしもうた』

「……ノアに?」

『再び、あの者が挑むのだと思うてな』


 遅かった。

 ノアがこちらに向かっていた目的は、ヴェントゥス・レガリア本体ではなく、記憶だったのか。


『渡した後に触れたのは、そこにおる二人じゃが……いるか?』


 ジェイドとスマラ殿下の今回の記憶か。

 それだけ手に入れても、対策できるような知識を得ることは無さそう。


 それなら、過去を知ってしまうのも、申し訳ない。

 隠しておきたいプライベートとかもあるはずだ。


 アイオ様にアクア・レガリアを触らせてしまい、彼の記憶を継承してしまったのは申し訳ないことをしたとは思ってる。

 ここで殿下やジェイドの記憶はいらない。


「不要です」

『……あの者、ルクス・レガリアの記憶も継承しておる。これくらいしか、伝えられぬ。誠に迂闊であった』


 ルクス……光の神器か。

 光の使者がノア寄りだったことを考えれば、あり得ない話ではない。


 すでに、光の国の中枢と良好な関係を築いている。……いや、操っている可能性もあるから良好とは言わないかもしれけれど。


 ただ、私の知るかぎり、闇の神子様達と行動をしていたのに、どういうことだろう?


『すまぬ』

「いえ、二人いる方がイレギュラーですので、仕方ないかと。お聞きしますが、ウンブラ・レガリアは? 彼女は闇の神子様とも懇意にしていたようですが」

『……否。光のルクスのみである』

「ありがとうございます、それだけでも十分助かりました」


 儚げに笑ったヴェントゥス・レガリアはやはり、ノアよりもゲーム主人公に近い。

 ほとんど接触していないはずなのに、そんな風に笑わないだろうという確信がある。

 お礼を言って、頭を下げると目が眩むほどの光に包まれた。



 三人がじっとこちらを不思議そうに見ていた。


「何か?」

「……いや」

「えっと、ミオさん。大丈夫?」

「ふんっ、ぼけっと口を開けて間抜け面でしたよ」


 先ほど二人が戻ったので追加でくべた薪が、結構燃え広がっている。

 どうやら、一瞬とは言えない……三人が不審に思うくらいにはヴェントゥス・レガリアと話をしていたらしい。


 もしかしたら、アクア・レガリアの時もそうだったのかもしれない。ルヴィニが誤魔化しただけで、実は結構な時間経ってたのかも。


「返すよ。ありがとう」

「ふんっ……何が目的だったか知りませんが、風の秘宝ですからね! 本来、触れることすら許され……何ですか?」


 ジェイドに神器を返すが、そんなに変な顔をしていただろうか。


「スマラ殿下。至急、サフィロスとルヴィニに伝えることが出来たのですが、手紙を渡してもらうことは可能ですか?」

「ほう……直接、伝えたらどうだ? お前たちも一緒に運ぶことは造作もない」


 それは助かるが……貸し借りを作ること自体が、今は余りよろしくない。

 風側と協力体制を作った場合に、私がいなくなった後にサフィロスが負担するようでは困る。


「何を伝えるのか、こちらにも情報を。それでチャラでどうだ?」

「いいんですか?」

「それくらいにしないと、断るつもりだろう……少しはこちらの厚意も受け取れ」

「では、ありがたく……先を越されました。ノアはすでにヴェントゥス・レガリアに触れる機会があったようです」

「なんだと!?」

「何ですって!?」


 殿下とジェイドが形相を変えて、こちらを見てくるが事実だ。

 

「アクア・レガリアの記憶を継承したので、ヴェントゥス・レガリアも。そう考えてここに来たのですが、ノアが持っていったようです。すでに、ルクス・レガリアの記憶もあちらに」


 これについては、仕方ない。

 神器も自身に触れた物の記憶は読み取れるが、他から世界の知識を得ることは出来ない。そういう点では、ヴェントゥス・レガリアは導き手に知識を与える行為は間違ってない。


「ルヴィニ達に伝える必要があるので、お願いできます?」

「ああ……いや、だが、まて……そんなことが?」


 私の内容に殿下は考え込んでいる。冷静に努めようとしているが、混乱しているようだ。


 私もノアの知識、7年で退化してないことが気になってはいたけど。

 神器によるものだとしたら、納得できる部分もある。ある意味、大辞典の内容よりも細かいこの世界の情報を知り得ることになる。


 光の大陸はポーション制作なども活発だし、世界の中心を名乗る国他の大陸からも輸入品が多い。得た知識は、大きいのかもしれない。


 世界を救うためには、わからないけれど。


 ただ、幸いにも、ウンブラ・レガリアはノアの手には落ちていない。

 そういえば、3人で挑むときに神器を持っていなかった。


 理由はわからないけど……私としては、助かったとしか言えない。


「導き手の力か?」

「ええ、まあ……すみませんが、ノアの行方とかはわかりません。ただ、すでにここには来ているというだけです」

「いや、十分だ。食事をしたら、出発しよう」

「ま、待ちなさい。今ので、納得できる訳がないでしょう!」


 ジェイドがうるさいが、無視をして、用意をしていたナスの肉詰めを焼き始める。ついでにトマトソースで煮込んだ方も温め直す。


「ジェイド。諦めろ。その程度の情報共有しかできないほど、風側は礼を失している」

「ですが!」

「正直、自分の国で手一杯で他の国に首を突っ込める状態ではないんだから、黙っとけとしか思わないですけどね」

「ミオさん……ジェイド君嫌いなの?」

「いえ、別に……」


 大好きなゲームだし、アイオ様が一番だけど、カライスちゃんだって好きだし。攻略対象がそこまで憎いという訳ではない。


 ただ、彼にとって思い通りにならない人間がいてもいいだろう。成長につながるかもしれない。

 決して、私が嫌ってる訳じゃない。面倒で若干うざいなと思ってるだけで。


「神器を使えば、余裕も……」

「神殿の権威をかなり削ぐことになる。おそらく、協力が出来なくなる分、穢れの対処は俺とお前で国中を周る。その間にも、政治の問題が浮上するだろう。余裕が出来るとは思わない」


 ジェイドの言葉を遮り、殿下が説明する。

 悔しそうに俯いているが、問題が山積み状態なのが風の国の現状だからね。


「えっと……とりあえず、食べない?」


 アイオ様が焦げないようにひっくり返しつつ、ジェイドにお皿を渡している。

 う~ん。何がそんなに仲良くなるきっかけだったのだろう。


 殿下にも盛り付けて、お皿を渡し食事にする。



 戻る予定はなかったのだけど……ショウドウへ。間に合うのだろうか。




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