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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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65.風の通り道


 5日後。

 オリオンを走らせた先は大陸の西側。神の山とも言われている大きな美しい山の中腹、そこに風の神器を祀る場所がある。


 ただ、予定外のことが起きた。


「えっと、何してるの? ジェイド君」

「こちらが聞きたいですよ」


 憎々し気に私を見ているのは風の神子候補のジェイドだった。

 う~ん。アイオ様も困ったように声をかけたが、喧嘩腰に返された。


「なぜ、ここにいるんです? 脱獄したあなた達が」

「ノアの動きが気になったので。神器がちゃんとここに安置されているかを確認に。あなたは?」

「僕はっ、同じですよっ! あの女に取り込まれれば、ほいほいと明け渡す可能性もあるからですね!」


 正しくはある。

 それで飛び出てきたのは青臭いけれど。


「じゃあ、お先に失礼しますね。オリオン」

「まっ、待ちなさい! 僕も乗せなさい」

「いや、3人は無理だから」

「なら、そっちも降りるべきでしょう! ……話もあります」

「え? 私にはない。アイオも、だよね?」

「う~ん。僕もジェイド君と話したかったとこはあるかな。あの人のことで」


 アイオ様の言葉に息を一つ吐いて、オリオンから降りる。

 ノアの件で積もる話があるのであれば、好きにしてもらおう。


「ありがとう、ミオさん」

「いいですよ」


 ノアの件があったせいか、ジェイドとアイオ様はお互いの気持ちがわかるのか、仲が良い。互いに情報交換をしているのを見守り、終わったところで声をかけた。


「それで、ジェイド。わざわざ『逃げるな』と忠告してあげたのに、なんで、教団との決戦前にこんなとこに来てるの?」

「なっ! 逃げてません」

「じゃあ、許可貰ってるんだね?」

「……いいえ」


 立場がわかってない。

 後ろ盾だった神殿を叩き潰して、生まれ変わる風の国。その場にいることが最低限の次代の条件なのに。


「はぁ……自分の立場、あれだけ言ってもわからないの?」

「……わかってますよ。だから、神器を取りに来たんです。僕が使うことで、次の神子とわからせるために」


 発想は悪くないのかもしれないけど。

 間に合わないことを考慮してるのだろうか? ジェイドが連れているのはどうみても普通の馬。これではショウドウに戻るまでに1週間近くかかる可能性がある。


 象徴として、問題が起きたときに対処できることが望まれる立場だからこそ、迂闊な動きはよろしくない。


「あのね、ジェイド君。サフィロス様は多分……あの方は他人の事情を考慮して、待つとかそんなことしないよ?」

「そもそも、それで待たせる場合、水側に借りが出来る状態だからね。自分の国の内部で、不祥事起こして、水の助力で解決するのに、さらに相手が有利になるかもしれない時間を与えるのは愚考……長年保護してきたとはいえ、無理を強いていたことも踏まえると、甘いよ」

「そんなこと……あり得るんですか?」

「だから、甘い! いや、本当に国を背負う神子になりたいなら、国同士の政治考えなよ」


 14歳。確かに、まだ成長できるのだろうけど。

 これ、次代もお飾りにするという神殿の意向というのなら、徹底的に王家が介入して教育のし直しが必須だろうな……厳しい。


 送り届けるとして……間に合う? オリオンで三人乗りは厳しい。

 どうするか、悩んでいるとふわっと私の頬に触れるように風が吹いた。


「そのお子様と話をしても無駄ですね。先に進みましょう」

「いや、目的が一緒なら……」

「一緒には無理ですね。私にも立場が出来てしまったので」

「ぼ、僕がいないとそちらは賊となることも……」

「承知していますが?」


 私が切り捨てるように言い切ると、唇を噛んで悔しそうに俯くジェイド。

 アイオ様は私とジェイドを交互に見た後、私に向き直った。


「ミオさん。ぼくに杖、貸してくれる?」

「……考えを聞いてから判断します」

「ぼくは彼の気持ちわかるよ。挽回したくて、でも、実力差はうまらない。だから、神器を求めた……ノアの件があるからこそ、失敗できないからこそ、他に力を求める。力を貸してあげたい。それに賊となるのも駄目だと思う。だから、僕が彼と行ってくるよ」


 困った顔をしつつもアイオ様の瞳は真剣だった。

 まあ、及第点。自分で考えて、責任を取るくらいの覚悟はしているのだろう。


 それでもジェイドに肩入れしたいのであれば止める理由もない。

 しかし、なんだろう。原作に比べるとこの二人、仲良くなってるな。


「ぼくもね、怖かったから。自分が自分ではなくなる恐怖に……もういないから、安心ってならないよ……前に進むために、必要だと思った気持ちわかる」

「……ええ。神器に頼らないといけないのは無力ですが……もう、失態を晒さないために必要だと……」

「はぁ……私は山登りに疲れたので、ここで休みます。杖はお貸ししますから、どうぞ。でも、アイオ様にですから、それに渡すのは許しません」

「失礼なっ! それとはなんですか!!」


 ぷんすこしているジェイドを無視して、アイオ様に杖を渡す。

 多分、ジェイドがいれば、アイオ様の心象も悪くなることはない。それに、二人で行かせた方が良さそう。

 気持ちを整理する時間も必要だろう。私が風側と神器を手に入れに行ったという状況を作るよりは、観測者に徹した方がいい気がする。


 ジェイドは神器を持ち帰るつもりのようだし、私が触れる機会は作れるはず。

 私とジェイドは言い争いしか起き無さそうだしね。


「ありがとう。でも、一人で大丈夫?」

「ご心配なく。風の大陸内は魔獣も出ないから危険はないです」


 問題が無いのは別の理由もあるけれど。

 そのことは伝えずに、にこりと微笑む。

 アイオ様は少し迷いつつも、オリオンを呼び出してジェイドと共に、先へ向かった。


 二人の姿が見えなくなったところで、びゅんっとさっきよりも強い風が一瞬吹いた。


「良かったんですか?」

「久しいな。ミオ」


 先程、頬撫でた風が吹いた方向からゆったりと現れたスマラクト殿下を確認して声をかけた。


「はい、スマラ殿下。もう一度会えるとは思っていませんでした」

「また会いましょうと言ったのはお前の方だろう」


 また会いたいと思ったのは本当のことだ。

 ただ、今回のミッション内でもう一度会うのは難しいなと考えていただけで。


「よくわかったな。ジェイドを行かせろという意図が」

「まさか……わかりませんよ。ただ、人為的な……私を送りだした風と同じだと気付いたから、話をしようと思っただけです。そのために、二人に席を外してもらいました」

「いい判断だ……あいつらは?」

「サフィロスとルヴィニはショウドウに向かってますよ。日数的には二日後には着くかと」

「俺を待つと思うか?」

「いいえ」


 今、先代水の神子に痛手を負わせている状態。

 だけど、あれは人ではない。どれくらいで回復するかわからない。


 教団の戦力を潰すと同時に、政治的にも振舞う。

 迅速に対応をするにあたり、殿下がいないというだけで


「スマラ殿下から見たあの二人は、ゆっくりと待っているような愚鈍な判断をしてくれる人ですか?」

「はっ……あり得んな」


 なんだか、眉間に皺寄せて悪そうな顔で笑ってるあたり、よく理解している。

 悪友という感じだよね。二人も何だかんだと殿下のこと評価してるしね。


「それで、そんな中でジェイドを追いかけてきた理由は?」

「お前には未熟に見えるだろうがな。神器が必要なことは事実だ。水側が協力を断ち、魔力を送ることを止めた。神子である伯母上では足りない」

「う~ん。それで、神器で補充すると」


 必要ではあるだろう。

 ただ、許可なく飛び出してるなら、駄目だろうけど。


「水側が導き手から神器を授与されたことでも意見が出ていてな」

「情報早いですね。もう広まってるんですか?」

「わざわざ他国に牽制しておいて、広まらないはずがないだろう。おそらく、光の国経由であの女にも伝わるだろう」

「覚悟は出来ましたよ。色々あったので」

「……そうか。見ないうちに成長したらしいな」


 おや。珍しい微笑みを見た。

 少しはにかむ様な笑いだった。普段の威厳のある表情とは違う。


「今のところ、風側と協調するつもりはないですね」

「残念だ。父上と兄上は乗り気だったんだがな。上層部もノアの件をなかったことにしたいという思惑もあるだろうが」

「でしょうね」


 ノアに洗脳されたという事実のもみ消しのためには、私を導き手としておいた方がいいんだろうけどさ。

 カライスちゃんの裁判で、明らかに導き手の証言っていう記録が残っている。

さっさと二人いることと、私側についたことで偽の導き手に騙されたと喧伝したいのだろうけど。


「とりあえず、今日はここで野宿になると思うので、準備しましょうか」

「追いかけないのか?」

「二人で大丈夫だと思います。私が行っても面倒なことになりそうなので」

「だろうな。神殿の者が待ち構えてるだろう」


 風側に政治利用されるのを許す気はない。

 少なくとも、神子の代替わりが成されるまでは……成されても、ジェイドだと、どうしようかなと思うけど。


「ジェイドが成長すれば、考えますよ」

「……俺なら?」

「現状、その余裕があるんですか?」

「ないな。神殿と伯母上の切り離し、魔力の安定供給。ジェイドを立てない数年で立て直せるか……5年後には間に合わせる」

「ええ、期待してます」


 邪龍復活には風側を立て直すのを間に合わせてくれるらしい。

 それはありがたいけどね。


「ノアの動きが気になるところではあるんですけどね」

「……いると思うのか?」

「正直、わかりません。私と彼女はイレギュラーな存在ですしね。ただ、あの二人に執着する可能性はありますね」

「それで、良く行かせる決断を選べるな」

「彼らには成長してもらわなくてはいけないんですよ……そして、まだ惑わされるなら――決断が必要ですから」


 光の大陸に帰るような膨大な魔力使用は確認していないとサフィロスは言った。

 なら、まだこの大陸にいる。


 大陸で何をするか。

 目的が世界を救うための戦力集めなら、ジェイドを再び惑わすか、神器を入手するか。


 ずっとこの世界にいて、アドバイスをし続けることは出来ない。

 自分で考えて進んでもらう。再び、傷つくことになっても。


 アイオ様が心配ではあるけれど……着いてくるといったのも、ジェイドと二人で行くと決めたのもアイオ様だから。見届けよう。


 

「対処できると思います。アイオ様も成長したけど、ジェイドも急激に魔力が上がったように感じたので……だから、信じて、ここで食事の用意でもします」

「手伝うことはあるか?」

「いえ。大丈夫です。あ、食べれないものとかあります?」

「ピ……いや、大丈夫だ」

「わかりました。じゃあ、ついでに、ジェイドの嫌いなものとかわかります?」

「……ナスだったか?」

「わかりました。じゃあ、ナスの肉詰めにしておきます。ピーマンは肉詰めじゃなくて細かく刻んでおきますよ」

「あ、ああ……入れないという選択肢はないか」

「アレルギーなら出さないですけど、好き嫌いなら食べましょうか」


 アイオ様達が戻るまでは時間がある。

 ゆっくりと準備する時間はあるので、多少手間がかかっても問題ない。


 二人を信じて、待ちますか。

 



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