表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/73

63.導き手として


 サフィロスが立ち去ってから、ゆっくりと館へと向かう。


「ミオ! 遅いっ!」

「え? カライスちゃん?」

「ほら、こっち!」


 ぐいぐいと引っ張られ、部屋に案内されるとあっという間に着替えさせられ、化粧を施され、いきなり謁見するための場に案内された。


 カライスちゃんの説明だと、すでにこの町にいるお偉方が集まっているという。

 町には光、土の人達も使者、各国の神殿の人も暮らしている。謁見の場に招待し、その中で行うらしい。


 上座にいるサフィロスは狩衣を身に付け、何故か仮面をつけている。さらに言えば、肩には白と青の体毛をしたフェレットが乗っている。多分、新たに手に入れた聖獣だろう。


 ルヴィニもアイオ様も同じように狩衣を身に付け、左右に侍っている。

 いや、アイオ様はまだ完全には回復していないのか、顔色が悪い。


 厳かな雰囲気の中、サフィロスが言葉を発する。


「今代の導き手よ、古の盟約が成されることに言祝ぎを。よくぞ参られた。今代の水の神子、サフィロスと申す」

「……神よりこの世界を救うべく使わされました、ミオと申します。今代、多くの苦難に満ちた時代。わたくしだけではなく、もう一人、使わされており、それでも道は険しく遠くあります。わたくしの目的は世界を救うこと。邪龍の討伐をすべく、どうか水の神子様のお力をお貸しいただきたい」


 正式な場、もっとちゃんと言っておいてほしい。

 脇で各国の使者が驚いてる。導き手が二人という事実をこの場で表明したから当然だろうけど。


 光の国の使者は顔を真っ赤にして睨んでいる。

 やはり、あちらの認める導き手はノアなのだろう。


 風の国の使者は目を瞑っている。先日のショウドウにて導き手が何をしたのか、報告はあるようだ。こちらに感情を示さないようにしている。


 土の国は面白そうに口角を上げている。まだ、様子見だろう。ただ、二人いるなら、どちらに付くのかも、政治的に大事だろう。


 私がこの世界を去っている期間でも、この宣言は有効となる。

 そこらへんはサフィロスの手腕は流石というしかない。


 出来るだけ厳かに、内心の緊張を隠して……見せつける必要がある。


「水の象徴たる神器アクア・レガリアをお持ちしました。邪龍を復活しようと目論む教団を潰すべく、ご活用いただきたい」

「遥か昔、古の時代には、導き手より神器を授かったと聞き及ぶ。私の代で再び、導き手様の手ずから渡されたことは望外の喜び。この力をミオ、貴方のために使うことをお約束する」


 うん。めちゃくちゃ煽ってるね。

 私が直接、神子に神器を渡すことに意味を持たせた。


 サフィロスが近付いてきて、私と共に、杖を掲げた。

 光輝きながら水の粒が周囲に浮いて、虹色に輝いている。神秘的な光景だろう。


 サフィロスが光魔法と水魔法を展開して作っている。演出が素晴らしい。

 ただ、事前に言っておいて欲しい。これで、私が上手く対応できなかったら台無しになってしまう。

 ぼろが出なくて、本当に良かった。



「ふぅ……終わった」


 サフィロ スに杖を預けた後、カライスちゃんの案内で控室に戻った。


「ミオ。各国の使者から面会を求められてますけど?」

「いや、いや、いや……カライスちゃん、けろっと言うことじゃないよ。私、頑張ったからね、もう無理」

「いつもの数倍凛々しかったから大丈夫、もう一仕事」

「いや、無理無理」


 うん。それ、普段は駄目ってこと?

 カライスちゃんの前では、大人の女性として尊敬できるお姉様のように振舞ってるはずなのにな。


「じらしておけばいいよ。勿体ぶっておけば、あっちから貢物でも用意するからさ」


 ルヴィニが部屋に入ってきた。

 さっさと着替えたらしいルヴィニはいつもの恰好だった。ルヴィニの言葉をそのまま受け取るなら、会うのは確定らしい。ただ、今じゃないというだけ。

 そういう政治的な動きは苦手なんだけど。


 表舞台に立つのは失敗したか……それでも、ノアを野放しにするよりはマシだと信じたい。


「カライス。サフィロスを手伝ってやってよ。一人じゃ脱げないみたいだから」

「わかりました」


 カライスちゃんが部屋を出ていった。

 ルヴィニがやれやれと椅子に腰かけたので、対面に椅子を持ってきて、私も座る。


「ルヴィニが手伝ってあげればいいのでは?」

「逃げてきたに決まってるでしょ。あれ、絹だから皺付きやすいから、煩いんだよね。それにやっておきたいこともあるし」


 まあ、わかるような、わからないような。

 あれだけ立派な服の取扱いは大変そうだ。人手不足で、女中さんとかいないみたいだしね。


「ミオ。杖、出して」

「うん?」


 突然、ルヴィニが手を出してきた。

 よくわからないけど、杖をルヴィニに渡す。


「他国の者との挨拶は必須。多分、これも身分証明として求められるからね」


 確かに。神から与えられた杖は、神器と似たデザインになっている。

 導き手を名乗る以上、見せる必要があるかもしれない。


「きみのことは信じてるよ……“Φωτιά”(火よ)」

「え? あ、火の魔石」


 ルヴィニが杖の魔石部分にキスすると、いつの間にか持っていた大きな火の魔石が杖の魔石に吸い込まれていく。


 大きな魔石の横、青く光る小さな魔石の横に、赤く光る魔石が追加された。


「これでよし。見るものが見れば、火の加護を得てるのもわかるでしょ」

「いや、大丈夫? ルヴィニ、火の民たちを離れてから長いんじゃないの?」

「そうだね。でも、火の民であることは変わらないよ。枷も外したし、危険が去ったら一度顔を出してくるよ」


 危険が去ったらという言葉に頷く。

 独断専行で、火側がこちらについていると思われるのはまずいと思ったけど。ちゃんと説明に行くつもりなら、他国への牽制にこの石を利用させてもらおう。


「癪ではあるけどね。アイオ」

「うん、ミオさん。僕もいいかな?」

「いや、体調は!?」


 アイオ様がいつの間にか部屋にいた。

 ルヴィニがぽいっと私の杖をアイオ様に投げる。


「だいぶ回復したよ。……Προσφέρω τη δύναμή μου(我が力を捧げる)……Για τον κόσμο(世界のために)、Προστασία από το σκοτάδι(闇の加護を)…………Τα πάντα μου(僕の全てを)……Με έναν οδηγό (導き手と共に)」


 サフィロスやルヴィニが持っていた魔石よりは少し小さいけれど、それでも立派な闇の魔石が杖へと吸収されていく。


 ふらっとしたアイオ様を慌てて支える。


「ごめんね……ありがとう」


 アイオ様を備え付けの椅子に座らせ、水を渡す。


「鍛え方が足りないかな。この程度で倒れるのは駄目だね」

「いや、スパルタ過ぎだから。でも、大丈夫なの?」

「うん、情けなくてごめん……でも、ちゃんと回復してるから、明日には一緒にいけるよ」


 うん? なんで私に言うの?

 ルヴィニ達とショウドウへと向かうんじゃないの?


「ああ、ミオ。アイオはきみについていくって」

「え?」

「兄さんを止めたい……きっと、ミオさんを狙うと思うから。それに、足手まといは必要ないって」


 いや。

 多分、オブシディアンにこっちに来る手段ない。


 オブシディアンが私の魔力を探知できるとは思わないし、空間転移も一度行ったことのある場所でないと移動できない。


 私を追う可能性はかなり低い。


 ルヴィニがアイオ様を足手まといとは思っていないのは知っている。ただ、回復していないことも事実ではあるけど。


 でも、ちらっとルヴィニを見たら、断るのは許さないとばかりに圧のある笑顔をしている。


 二人がじっとこちらを見ている。

 頷きたくはない。どちらかと言えば、主力を送り込むのであればアイオ様もショウドウに向かってもらいたい。


「戦力は分散するべきじゃない」

「過剰戦力。言っておくけど、僕とサフィロスがいて、あっちにはスマラクトも待機してる。アイオの出番はないし、そもそもが完全には回復していない。あと、本人はきみと行くと言ってるしね」

「お願い……カライスがお姉さんと決着をつけるなら、僕も兄さんを止めたいんだ」


 数秒の沈黙。

 ルヴィニの言うことは正しいのだろう。ルヴィニ一人でも戦えていた。そこにサフィロスがいて、スマラクト殿下の力を借りれるなら、アイオ様がいなくても十分だろう。


 ルヴィニを見ると早く返事をしろと背面に書かれているような圧力がある。

 その圧力に屈するように、ゆっくりと頷いた。


「わ、わかった」



 その後、風の文官と土の使者との面会をした。

 社交辞令と共に、ルヴィニの言う通り、特産品や魔石に混じって宝石とかを貢物として贈られた。


 風の文官からは、スマラクト殿下からの手紙と、殿下が用意したというアクセサリーもあったのだけど、そっちはサフィロスとルヴィニに取り上げられた。


 申し訳ないので、手紙を書いて、スマラクト殿下に渡してくれるようにお願いをしておいた。


「導き手殿。我が国へもお越しいただけるか?」

「時が来れば……しかし、今は風の大陸の膿を除去しなくてはなりません。どうか、土の神子様にも、身辺の警戒をお伝えください。教団の影はすでに、土の大陸にも及んでいます」


 土の国には、行きたいけれどその余裕があるかはわからない。

 ただ、危険があることだけは伝えておく。


「なぜ、滅んだ水との連携を? 火と闇の加護もあるようですが……」

「逆ですよ。滅ぼしてしまえば、邪龍と戦う六柱の一つを失う。邪龍教団はそれを狙い、数か月前には水の神官と多くの護衛を失ってしまった。神子様が参加していれば……これ以上は、本当に水の力を失います」


 含みを持たせておく。

 すでに、風の大陸内で暗躍する存在がいる。この情報だけでも土側には価値がある。


「なるほど……国がないからこそ、先んじなくてはまずい状態だったと。では、先ほどの言ですが、土の大陸も穢れが生じやすくなり、不安が募っております。導き手様はどのようにお考えを?」

「教団側の動きですが、狡猾に、その影響力を増やしております。近年のオアシスの枯れや雨が降らない水不足は何も天候だけではないかと。水の神子様の存在は、土の国へと影響があるでしょう」


 砂漠の国である土の国では、水は生命線。

 先代の水の神子の暗躍により、水自体が穢れを纏うような未来にしない。それだけでも、土の国の生存率も上がるはず。


 もう一人の導き手であるノアについても、言葉を求めていたけれど、こちらは黙秘。今は迂闊なことは言わない。

 ノアの方が力が強い。そして、あちらに会えば、惑わされる可能性は高い。

 だからこそ、詳細な情報は伝えることはしなかった。


 光の国とは面会をしなかった。あちらが求めずに、立ち去ったらしい。

 私を導き手とは認めないという意志だろう。


 すでに、ノア側という判断でいいだろう。いずれは、こちらも動かなくてはいけないが、今ではない。


 ノアにも伝わるから、今後に不安は残るけれど。

 サフィロスのおかげで、伝手は出来た。これだけでも、次に繋がる成果だろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ