表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/73

62.合流、これから


 翌日、アイオ様の体調は心配ではあるが、ゆっくりと休める場所へと移動することになった。


 二日後にはシャーナンの町についた。

 町と言っているけど、人口や規模は村だろう。子ども達の笑い声や昼食を作っているいいにおいがしている。長閑な村の奥に立派な屋敷がある。


 風の大陸内にあって、どことなく和を連想させる町並みだった。


「ゆっくりと町見てなよ。先にアイオを休ませて、報告してくる」


 アイオ様を肩で支えつつ、村の中心の館へと入っていくルヴィニを見送った。


 時間が出来た。

 町を見てろと言われたが、少し悩みシャーナンの町から少し外れた小高い丘にある大樹の方へと向かう。



「う~ん……いい景色だね」


 丘の上から長閑な町を見る。


 私の知るゲームの内容では、この丘からかつて町があったはずの廃墟を見下すカライスちゃんのスチル。

 水の神子……サフィロスの死後に放棄された町。


「この先、ここはどうなるのかな」


 アクア・レガリアから得た過去の情報。

 この記録は、今回だけじゃなく、一度目と二度目もある。


 神器は神の干渉を受けずに、自分に触れた者の全ての体験を記憶する。

 ただ、触れた者だけであるため、一度目と二度目の差異についても、そこまで詳しい情報はなかった。


 一度目にはこの神器をカライスちゃんが触れている。ゲームと似たような場面もあった。

 二度目は、水龍の記憶とルヴィニが死ぬ直前の記憶。その後は、基本的にはずっとあの場で眠っていた。


 サフィロスが死なずに、ルヴィニと共に教団のアジトを潰して……その後は風の大陸に留まるとは思えない。ここには戻ってこないだろう。


 結局、この場は私の知っている景色になってしまうのだろか。

 未来を変えようとして、失われるものがある。


 元々失われるものでもあったり、本来の犠牲とは違う人であったり……思うように変わらないこともあるのだろう。



「こんなところにいたのか」

「サフィロス……うん。考えるにはここがいいかなと思って」


 失われる景色を見ておきたかった。

 水の国の面影を残しているこの小さな町を。


「何かあるのかい?」

「ふふっ……ルヴィニから聞いてるかもしれないけど、この杖って私の知る情報が見れるんだ」

「ああ、聞いてる」

「これが私が知るシャーナンの町だった場所」


 大辞典の機能で、未来のカライスちゃんのスチルを見せる。


「カライスか、美人に育つな……視線の先の廃墟がここか」

「そう……まあ、他の風の国の都市もぼろぼろだし、下手すれば水の大陸と同じで滅ぶんだけどさ」

「そうか。もっと早くこれを見せてれば、考えも変わったかもしれないぞ?」

「これを見せたのは、私なりの覚悟のため。……暗殺を阻止しても、この町は失われるかもしれない。……風の国にいられない状態になるように私が導いた結果、形は違っても失われる」


 覚悟を決め、杖をしまい、立ち上がってサフィロスを見る。

 サフィロスも真剣な表情をする。


「水の神子、サフィロス様に申し上げます」

「聞こう」

「教団に取り込まれた刺客は、先代水の神子、アイオ様の兄であり、闇の神子の従者であったオブシディアン、そしてカライスの姉である元神官となります」


 私の言葉に少し嘲るように笑った。

 今まで、私には見せなかった表情だ。


 ああ、でも、少し怒ってるかな。


「もう一度聞くが、神子である私を倒せるのか?」

「……過去に二度、貴方を殺したのはルヴィニ。刺客達によりルヴィニが敵の手に落ちて、それを止めるための相打ちという名の自殺だったよ」


 一度目は、カライスちゃんが操られた姉の死体に無防備となり、それを庇った上で、先代に殺された。多分、ゲームのシナリオもこちらだろう。

 二度目は、先代と水龍と戦う中で、オブシディアンがカライスちゃんを狙って現れ、無理して庇って致命傷を負った。


 どちらにしろ、カライスちゃんを見捨てられないあたりがルヴィニらしい。しかも、枷は外していなかった。


 サフィロスの瞳が揺れた。

 ルヴィニと違い、考えなかったのだろうか?


 いや、多分、その答えは出ていたけど、そうならないことを願っていた。

 それに、私が混乱させるように、他の神子を殺してしまうと言ったから。サフィロスにとっては、死への恐怖や自分がしてしまうかもしれないことが辛かったのだろう。


 私の勘違いで、ミスリードしていたことも含めて、サフィロスに嫌われても仕方ないことをした。


「未来の事実から、間違った知識を与えてしまったこと、悪いとは思ってる。恨んでくれてもいい。ただ、もう一度言うよ。死を選ばないで欲しい」


 神子様に伝えたかったこと。

 これだけは間違っていない。だから、もう一度伝える。


 仲が壊れてしまったとしても……。


「ごめん……返すよ」


 服の下に隠しても首のかけていた、水の神子の代理権限を持っている魔石。

 外して、サフィロスに渡そうとするが、首を振って断られた。


「……いや、最初は驚いたけどな。私ではないということには途中から気づいていた。そのことは怒っていない」


 サフィロスの声が少し震えている。

 そのまま、右手で持ちながら、じっとサフィロスを見る。


 何か言いたそうに、でも、言葉にならないのか、戸惑っている。

 そのまま、サフィロスが言葉にするのを待つ。


「……どう思った?」


 真剣な瞳のサフィロス。

 その問いが何を指すのか、わからなかった。


「私が死ぬと……君は確信した。違うか?」

「うん……」


 私が知った未来で、死を選んだサフィロスのことを聞きたいのだろう。

 多分、彼は今もなお、ルヴィニが死んでしまっても、生きると言い切れないのだろう。


 ただ、それを許すわけにはいかない。


「二人とも、何ていうか、らしいなって。この真相を知って、納得したよ。だって、ルヴィニだったら、枷で封じられていれば倒せた。足手まといがいて、多数を敵に回したらね……サフィロスは、仕方ないかなって。滅びた大陸の神子としてあるだけが求められ、唯一の理解者が死んで、もう無理だったのかなって」


 軽く、ただ、自分の感想のみを述べる。

 それを選んでしまった気持ちもわかる。


 それに、ルヴィニもあんなに神子様、サフィロスを第一にする言動をしておいて、他の子を見捨てられずに死んでしまったのはだめだろうとも思うから。


「無責任だと詰らないのか?」

「う~ん。でもさ、私は良かったと思ってしまった。私の知る未来では二人はいない。でも、二人が、ルヴィニが教団の手先ではなかった。だから、ルヴィニが死んだ後に罪を犯さなくてよかったと思ってしまったかな。それに、サフィロスは兎と同じで、寂しいと死んじゃいそうって納得した」


 私が和服アレンジした服装をしているだけで、私に好感を持った。

 ただ、それ以外にも多分、神子であるサフィロスではなく、個人であるサフィロスと接していたこと。それも、彼にとっては救いだったのだろう。


「私はこの世界の人間じゃない。だから、神子様が背負うものの意味を正しく理解はしていないと思う。未来の候補たちも、自分で手一杯の未熟者ばかりだったし。でもね、サフィロスが今まで頑張ってきたことは事実だし、支えが無くても同じように頑張れないのは仕方ないかなって……この世界の人からしたら、怒りそうだけど」


 一瞬、驚いて言葉が詰まった。

 私の肩にサフィロスが頭を置いた。


 今までも距離感は近かったけれど。

 抱きしめるでもなく、ただ、項垂れ肩に頭を置いているサフィロス。


 しばらく、そのまま動かずに、好きにさせておく。

 ルヴィニが何て説明したのかはわからないけれど……それでも、精神的には自分の死、大事な友人で家族であるルヴィニの死、自分の母である先代や部下であるカライスちゃんの姉の存在。一人で受け止めるには重いのだろう。


 私が好き勝手に戦力として、役目を押し付けていることもある。

 だから、サフィロスがどうするか、結論が出るまでは好きにさせておこう。



 サフィロスはしばらくそのまま肩に頭を置いていた。

 ただ、顔を上げた時には、先程までの揺れている覚悟を決めた瞳をしていた。


「別行動を希望するんだったな」

「二人が共に行動していれば、暗殺されることはない。そう思いたいけど、足手纏いが二人いればそうもいかないからね」

「……カライスはこっちか。甘やかさないんだな」

「戦力がいる。彼女がこのまま緩やかな成長では、困る。私の知る未来で、彼女が水の神子としての務めを果たしたように。そのレベルまで成長するためには……必要でしょ」


 12歳の少女に姉の死体と戦えという非道であっても……。

 今更、知らない頃には戻れない。教えるように言ったのに、実際にはその姿を見ないままに、終わってしまったら成長に繋がらない。


 酷いことをさせると思う。

 ある意味、ルヴィニ達のように何も知らせない方が優しいのだろうけど。


 それでも、彼女なら大丈夫だと思いたい。

 

「経験させる。でも、そのせいでルヴィニを死なせない。ルヴィニとサフィロスが揃っていれば、カライスちゃんがいても平気だよね?」


 出来ないとは言わせない。

 その意志をこめて、じっとサフィロスを見ると両手を上げて、降参といったポーズをして頷いた。


「あの子は水の神官見習い。私の側に置いておくべき子だからな。……君は導き手として生きる覚悟はできたのか?」

「うん……知ってしまったから。なぜ、神がノアでは駄目と判断したのか。ノアが滅ぼした世界、そのままに、今進んでいる。この世界にいれる時間は限られていても、このまま滅ばせる訳にはいかない」

「そうか……」

「サフィロス。本来、死ぬはずだった水の神子を救い、改変をする。その責任は私が負う。サフィロスがすることを肯定する訳ではないけど、損害の責任は共に追うよ。それなら少しは肩の荷が下りるし、寂しくないでしょ」


 この世界は神子の力がないと成り立たない。

 だからこそ、神子のすることの責任はかなり重い。


 それこそ、この地を出ていった結果、風の国は深刻な魔力不足により危険になる可能性がある。

 教団を潰したところで、すでに弱体化し、能力不足な風の国は苦労することになる。


 風の大陸にとって、水の神子が出ていくことでの不満とか、沢山の非難めいた言葉が生じるだろう。その全ては、導き手である私に被せていい。

 私がそうするようにと誘導したのだから。


 だから、力を貸して欲しい。そして……。


「死ぬのは許さない。もう、水の神子として生きることに疲れたのかもしれないけど。5年……今から5年と数か月だけ、力を貸して欲しい。邪龍を討伐できれば、神子はもう必要ない。自由に生きれる」

「……ずるいな。本当に、討伐できるのか? 今までの神子がずっと、再封印することしかできなかったんだぞ?」

「一筋の未来だけど、それが出来た世界を知っている。神子達が亡くなった世界でも出来たなら、神子達が生き延びた世界で出来ないはずがない」


 オブシディアンが教団の使徒となってしまったことは厄介ではある。

 ただ、逆に言えば、闇の神子は生き延びている。

 ここで、水の神子の暗殺を防ぎ、教団の使徒を倒せれば――神子を殺せる使徒を用意できない。


「邪龍は戦力を残せれば、負けない――ただ、並行してノアを何とかする必要がある」


 ノアも自分なりの方法で邪龍を倒そうとはしているのだろうけど。


 協力者を失い、人を信じることが出来なくなり、自分だけが出来ると視野を狭め、人を操る。

 彼女が何を為そうとしているのか、こちらも把握しておきたい。


 アクア・レガリアでは、情報が少ない。

 ノアが何をしたのか、より情報がわかれば、動きやすくなる。

 だからこそ、風の神器ヴェントゥス・レガリアを確認したい。


「サフィロス……私は、神器の記憶を継承する。神の遺物であると同時に神の干渉を受けない。過去の二回の記憶を知り、滅びの道を進ませないための行動を模索する」

「危険だ、そう言いたいんだがな……こっちに比べれば、危険はないか」

「多分ね。ルヴィニはオブシディアンが私を追うと思ってたけど、多分、できない。ちゃんと考えてあるから大丈夫」


 行ったことがある場所にしか移動できない。オブシディアンが風の神器を祀っている場所に行ったことがあるとは思えない。

 私が確信を持って言うと、はぁと小さく吐いた。


「……わかった。君がいなくても、勝手に諦めたりはしない。5年後、君が世界を救うのを見届けるまで、君のために生きよう」

「重い! いや、そこまでは求めてないから。今まで通り、ルヴィニのために神子やってていいよ」


 サフィロスが口をへの字にしている。

 ルヴィニのためだと嫌なの? ルヴィニが死んだら、自殺してるくせに?


「……何か誤解していないか?」

「いや、そういう関係ではないのは理解してるよ?」


 恋人とかそういう関係ではないことはわかっている。

ただ、互いに依存している。唯一無二で手を取り合って生きてきたからなのだろうけどね。


「じゃあ、神器アクア・レガリア渡すよ」

「待った。悪いが正式な場を用意する。導き手から神器を託されたという事実を残したい」

「うん……まあ、それはいいけど」

「そうか。では、一時間後、館に来てくれ」

「わかったよ」


 う~ん。

 正式な場か……裏方がいいというわけにはいかない。

 覚悟、決めないとね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ