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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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6.天の導き手


「ルヴィニさん。行動を見張るというのは、私について来るつもりですか?」

「そうだよ。放置は出来ないからね」


 放置できないって、私は不審人物か何かかな?


 しかし、いきなり襲ってきた怖い人ではあるけど。

 こちらとしても背に腹を変えられない。


 言動に気を付けよう。

 私の認識とこの世界の常識に齟齬がある。

 間違えれば、不審な人物となる。

 その結果は――良いことにはならない。


「ルヴィニさん。先ほどのイーハンに向かいますけど、いいですよね?」

「うん。ねぇ、ミオ。ルヴィニでいいよ」

「え? ああ、はい」


 唐突に話を変えられた。さん付けで呼んだのが、嫌だったのか?

 呼び捨てでいいと言うなら、そうするけど。

 じっとこっちを観察するように見てくるのが気になる。


「ええっと、ルヴィニ。まだ質疑応答、続けます?」

「う~ん。いいや、聞きたいことがあれば聞くけど、今はいいかな。どうせ、答えられない質問も出てきちゃうでしょ?」


 あれで、信用を掴み取れたというならこっちも安心できるのだけど……いや、殺さないで様子を見るに変わったから、まだましなのか。


「どうしたの?」

「なんでもありません」


 当面の危機は去った。

 だけど、情報を得るためには、こちらの手札を見せないといけない状態になる。


「あの、お昼休憩にしますけど、食事します?」

「うん? 僕のも用意してくれるの?」

「簡易なものしか出来ませんけど」

「うん、いいよ~」


 手持ちの鞄から、冷えたおにぎりを取り出した、

 たき火で軽く温めて、水筒に入っていた塩味の野菜スープを鍋に移して温める。


「簡単に火をつけたね~」

「え?」


 そこら辺に落ちている枯れ枝と、持っていた薪を組んで、火をつけた。

 この体は魔力ありなので、普通に火種と念じれば、魔法は出る、よね?

 

 何か、おかしい?


「えっと、魔力があれば、火を出せますよね?」

「この世界で火だねを出せるほどの魔力持ちの割合、さあ、どれくらいでしょう?」

「えっと……100人に1人くらい?」

「残念、1000人に1人かな」


 顔をルヴィニに向けると、意味深に笑い、頷いた。

 ゲームでは、魔力を持っているキャラしか出てこない。


 だけど、魔力を扱える人は予想以上に少ない。


「ちなみに、僕も魔力出せないから」

「ん? 出せない?」

「そう、出せない」


 出せないってなんだ? 持ってないの間違い? 

 でも、さっき剣を振るったときに、わずかに剣の周りが赤く色づいていた。

 あれは魔力が漏れていたわけではないのかな。


「魔力持ちであれば……」

「魔力持ちでも、だいたいは一つの属性しか使えないんだよね~。もちろん、例外もいる。水の神子は四属性持ちだからね。あ、風の神子様は風だけね? 神子でもそんなものだよ」


 丁寧に説明しつつ、にこやかな顔が「お前は何の属性を使えるんだ?」と聞いている。圧を感じる。


「えっと……水と火ですかね」


 どちらも、微弱だけどね。マッチ位の小さな火を出すのと、ちょろっとわずかに水が出せるだけ。


 こちらの世界に来て、魔法は試したのだけど、使えていない。

 魔力の高い体のはずだから、これは私の精神が入ったことによる弊害だと思う。


「あれ? 風も使えるんじゃない? その髪色と瞳なら当然ね」


 迂闊だった。

 火だねが出せるのを見せるべきではなかった。

 多少使っても問題ないと思ったけれど、見た目と合っていないだけで疑念が湧くとは考えなかった。


「あっ、えっと、ほら、焦げちゃいますから! 食べましょう!」


 質問の追及から逃げるために、焼きおにぎりを渡して、スープを渡す。


「うん、おいしいね~」

「あ、あはは、ありがとうございます」


 受け取ったおにぎりを頬張りながら、うんうんと頷いている。


 先ほどの追及の視線から、ほんわかと美味しそうに食べてくれている。

 少しほっとして、私も食べようとおにぎりを口に含んだ。


「ねぇ、導き手様。きみがちゃんと話してくれるなら、保護してあげてもいいよ、」

「けほっ……」


 口に入れた途端に、話を振るのはやめてほしい。

 喉を詰まらせそうになった。

 咳き込む私に困ったように水を渡してくれた。

 それを一気に飲む。


 胸を軽くたたいて喉のつまりを軽減させて落ち着かせる。


「大丈夫?」

「あんまり、大丈夫じゃありません。それで、急になんですか?」

「ミオ。きみ、導き手様でしょう?」


 名前を呼ばれた瞬間にルヴィニの赤い瞳が光るように感じた。

 体が拒否するようにぶわっと鳥肌がたった。

 なんだろう? 全身が拒否するように、違和感が体を駆け巡った。


 怖い? それはそう……だけど、何か、自分の感覚が狂わされるような気配があった気がする。


「あの……」

「きみ、ちょっとおバカさんみたいだし、誤魔化すのも下手だしね~」

「何がでしょうか?」

「質問を交わすときは上手く誤魔化せていたのに、その後の行動で台無しだよね? いや、でも受け答えでぽろぽろと貴重な情報垂れ流ししたりもしていたかな」


 だけど、あの場である程度は仕方なかったと思うけど。迂闊ではあった。

 じっとりと背中に汗をかいている。

 ルヴィニが何かしたのか……わからない。


「神子に会いたいっていうのも、世界を救うという大層な発言も導き手様ならわかる」

「……みちびきてさま?」

「天の導き手。神がこの世界に送り込む、神の使いのことだよ。邪龍を封印した初代の神子の頃からずっと、世界の危機になると現れる存在……この世界の人間ではないから常識がおかしいのが特徴」


 なるほど。ゲームでは描かれていなかった。

 だけど、今まで、何度もこういうことがあったのか。


 だから、あの神様は転生ヒロインで駄目だと判断した。

 今までの経験に基づく何かがあって、私を送り込んだのかもしれない。


 ちらりと見たルヴィニは、視線が合うとにこにこと笑いかけてきている。その顔はこちらに悪感情はないと言いたげであるけれど、本心はわからない。


 わかることは、彼は私の持つ情報がこの世界から得たものではないと確信している。


 軽いノリと重要な情報を織り交ぜ、そのギャップに私がどう反応するのか。

 一挙一動を見逃さないようにして、わずかな違和感から話を広げていった。


「光の国で色々しているって話は聞いてたけど、一人で風の国に来るなんてね」

「あっ……それ、私じゃない」


 そうだよね! 私一人じゃなくて、ヒロインがすでに動いている。

 そっちの動きも考慮して、私がやることを考えないといけないのか。


 光の国はゲームの開始時点でもあるし、ヒロインが育った場所。多分、間違いないだろう。


 昔からあるという、天の導き手という肩書も、使えるなら利用するのは当然か。


「違うの?」

「説明が難しいかも……そっちはどうして、私だと思ったんですか?」


 この世界の常識がわからない。

 導き手が二人いることは問題ないのか。


 むしろ、偽物としていきなり捕らわれたりしないよね?


「遠目で確認した、神器だよ。各国で持つの神器とは別に、導き手が持ってるからね」


 受け答え関係ないじゃん! 

 こっちに近づいてきた時点で、目星つけてる。

 いや、多分、ボロを出すかも含めて、探ったのだろうけど。


 やっぱり、この杖は神器だよね。たぶん、デザイン変えられないのだろうけど。


「導き手は伝承として脈々と伝わってるからだよ。神子や王家にだけ……僕は、水の神子の従者だからね。存在を知っているし、流石に放置もできない。で、どういうこと?」


 重要な存在ではあるらしい。

 だけど、何となく、この人は導き手に良い感情を持っていない。だからこそ、怖さがある。


 もう一人の存在を明かすか、否か。


「水の神子の従者、その証明は出来ますか?」

「難しいね~。僕としても、まだ、きみを完全に信じた訳じゃないから、神子の前に連れて行くことはできないよ。でも、きみの知識は変だからね。知っていることが世間と乖離し過ぎていて、危うい。世界を救う鍵となる可能性があるなら、野垂れ死にさせるわけにもいかない」


 真剣な声色だった。嘘ではない。そう、思わせる響きがある。

 彼にとって、私は放置できず、それでも信頼できる存在ではない。


 では、私は? 水の神子の従者を名乗る彼を信じて、全てを明かすべきか。

 ゆっくりと自分の胸に手を当てて考える。


 しばしの沈黙。

 私なりに考えても、今、全てを打ち明けることは出来ない。


「あなたは先ほど、話してくれるなら保護すると言いました。私も神子様に伝えることはあります。でも、まだ、全てを明かすには私も足りない。せめて、証左がある方でないと……言えません。騙され、情報を開示した結果、失敗するわけにはいかない。それに、神子様の従者が魔力を出せないのもおかしい」

「なるほど。そうすると、困ったね~」


 困ったねと言った。

 一瞬だけ、声色がわずかに低くなったように感じる。


 動作だけなら、これっぽっちも困ったような態度ではなかったけど。


 彼の正体が事実だとしたら、だいぶ、目的には近づいた。


 共に行動をしながら、互いが信頼できるか――見定める時間が必要だ。

 彼が、敵か、味方なのか。



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