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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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54.水の洞窟⑥


「ミオ。カウント、とろうか」

「お願い」

「アイオ。17秒ごと、カウントを。取れるね?」

「は、はいっ」


 ルヴィニはこちらを見ることなく、水龍に視線を固定している。

 今のところ、水龍は全く動かない。

 アイオ様がカウントを取り始める。


「5、4、3、2、1……」

「聖獣召喚! っ、オリオン!」


 シュンっと光が交差したと同時にオリオンを召喚した。

 神器の目の前にオリオンが現れる。


 私の呼ぶ声に、オリオンは指示を出す前に神器を咥えて、こちらに駆ける。


 ゆらりと私の立つ場所に影がかかる。

 水龍が動いた。


 頭を持ち上げ、高い場所からこちらを見下ろしている。

 水龍の凍えるような絶対者の瞳。その瞳の奥に飲み込まれそうな錯覚が起きる。


 胸元の赤い石がキラッと光る。

 操られ、穢れているはずなのに、その瞳は澄んでいるようにも見える。


 キーン


 耳に甲高い金属音が聞こえる。

 何か、自分に伝えることがあるというように、深く、耳に残る。


「3,2,1……」

「結界!」


 アイオ様のカウントにハッとする。

 急いで、オリオンの周囲に結界を張るが、ぱりんと音を立てて壊れた。


 氷の光線の方が強い。

 いや、壊れても、防げただけましだろう。


『かえせ。それはわが主のものだ』


 重く冷たい声が響く。

 言葉を発しただけでも魔力が伝わり、ぺたんと座り込んでしまった。


 その横に、オリオンがすたっと降りてきた。


『返せ』

「きゅ~」


 オリオンが咥えていた神器を私の膝において、私の目の前に立つ。

 はっはっと自分の息が乱れていたことに気付いた。


 気圧されていた。

 オリオンが、ルヴィニが私の前に立ち、庇ってくれている。


 だけど、それだけでは駄目だ。

 杖を使い、ゆっくりと立ち上がる。


「この杖は次の持ち主へ引き継ぎます」

「撤退するよ、アイオ」

「はいっ……闇よ、貫け!」


 アイオ様は闇魔法で水龍の赤い石を目掛けて攻撃した。

 その瞬間、ひょいっとルヴィニに担がれた。


「え?」

「きゅっ!!」


 水龍と目が合う。

 しかし、担がれたまま、すごい勢いで視界が流れた。

 アイオ様もオリオンに飛び乗り、後ろから追いかけてきている。


「ルヴィニ!」

「舌、噛まないようにね」

「んんっ!?」


 ルヴィニが勢いよく飛び上がる。

 突然の浮遊感に口を閉じるが、声が漏れる。



 あっという間に、水と光の回廊の間に戻ってきた。


「オリオンより早いって、ルヴィニどうなってるの?」

「今考えるのは、そんなことじゃないでしょ? 多少の時間は稼げるだろうけど」


 確かに。

 あの水龍をなんとかしないと、この島から出れなくなってしまう。


「ここで戦う。穢れは少ない。水路に降りなければ、水面も無いから足場も問題ない」


 私の言葉に二人は頷く。

 放置はできない。

 何故なら、ここの水路は外の海にも繋がっている。


 島から脱出しても、風の大陸までの小舟で襲われたらひとたまりもない。


「アイオ様、魔法で水龍の体力を削れます?」

「……無理かな。上級魔法でないと、さっきみたいに弾かれておわる」

「わかりました。ルヴィニは?」

「足場がしっかりしているから、接近戦は可能だね」


 水龍への攻撃が可能なのはルヴィニのみ。


「オリオン。牽制役をお願い。ルヴィニが水龍に近づきやすくするために、引きつけて」

「きゅ!!」

「アイオ様、これを」


 私の杖をアイオ様に渡す。


「え?」

「浄化と結界が使えます。魔法攻撃が出来ない分、浄化でデバフをかけてください」

「……ミオさんは?」

「神器は神子様でなくても、一応、使えます」


 ぎゅっと神器アクア・レガリアを握る。


「私とアイオ様でデバフを。ルヴィニ、攻撃をお願い」

「相手はその杖を狙ってくるんだけど?」

「だから、アイオ様ではなく私がもつ。危険な役目を押し付けることはできない」


 私の言葉に大きなため息が返ってきた。


「助ける余裕はないよ?」

「ルヴィニの役目は、あの水龍を倒して、神器を水の神子様に届けることだよ」


 お互いの視線が絡み合う。

 逸らすことは出来ない。


「救いたい人がいる。そのために私は出来ることをする。必要なのは私の無事じゃない、ルヴィニとアイオ様が無事に神器を持ち替えること」

「……そうだね」


 ルヴィニが視線を反らした。

 アイオ様に視線を送る。少し挙動不審な様子だったが、わずかに頷いた。


 あの未来に向かわないように。

 未来に、ルヴィニとサフィロスがいて欲しい。


 神器に魔力を最大出力で放出する。


「浄化」


 わずかに漂っていた紫の靄が消え去る。

 流石、神器。

 神子様が振るえば、大陸中の穢れすら祓えるという効果は絶大だ。


「邪魔にならないようにここにいて」


 ひょいっとルヴィニに抱えられた。

 ついたのは、祭壇側から一番遠い、南側の高台。


 あの大きさの水龍なら、高さは関係ないだろうけど。

 ここまで水が来ることも無い。


「ありがとう」


 キーンという甲高い音がまた聞こえる。

 音が鳴っているのは、この神器だ。


「集中して。くるよ」


 ルヴィニが正面に構える。その横には、オリオン。

 

 東側の高台に視線を送る。アイオ様がこくりと頷いた。


「「浄化!」」


 私とアイオ様が同時に水龍に浄化を放つ。


『小癪なっ』


 ぶんっと体全体を使って、薙ぎ払う。


 だんっ!!!


 ふわっと風を感じると同時に、背中に痛みが襲う。

 風圧に吹き飛ばされ、壁に勢いよくぶつかったらしい。


「もっと……魔力を」


 キーンっと甲高い音が杖から鳴り響く。

 まるで、止めろというように。


「ルヴィニが、危なくなるっ……今、やらなきゃ意味がない!」


 弱体化させ、ルヴィニが止めをさせないなら――どちらにしろ、終わりだ。

 言うことを聞けと神器を床に突き刺すようにして、魔力を叩きつける。


 軽い眩暈がする。

 魔力の使い過ぎだ。


「はぁっ!!


 中心の開けた場所で、ルヴィニが水龍に向かって斬りかかっていた。

 しっかりと助走をつけて飛んだ先は、水龍に埋め込まれた赤い石が見える。


 パキンッと大きな音が響き、砕け散る。


「流石……」


 ルヴィニがやってくれた。

 しかし、ぱかっと水龍が大きな口を開けた。


 狙いは私だ。

 まずいなと思いながら、避けるだけの力が残っていない。


 水龍から放たれた水のブレスが目の前まできている。


「ミオさん! くっ……」


 ブレスが当たると思った瞬間、目の前にアイオ様が立っていた。

 私の杖を使い、結界を張っている。


「もうっ……無茶しないでよ! ぼくやルヴィニ様が女性一人守れない軟弱者って責められるでしょ」

「アイオ様?」


 水龍の攻撃が止んだ。

 アイオ様も流石だった。結界を張り続けて私ごと守り切った。


「ミオ! アイオ!」

「……いこう。様子が変わった」


 それを確認して、ルヴィニの元へと向かう。


 わりと体が悲鳴をあげてる。

 殴打した背中もだけど、魔力切れ寸前でだるい。


 でも、赤い石が砕けた水龍は、こちらを優しく見ている。


 どうやら、正気に戻ったらしい。


『すまぬ。正気を失っておった』


 私に対し、謝罪する水龍は穏やかに凪いだ瞳をしている。

 そして、私達に話があるという。



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