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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第二章 水の洞窟 沈む真実と断罪の継承

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51.水の洞窟③


 鯱が動かなくなったことを確認し、その場に腰を下ろした。


「なんとか、なったぁ……危なかった」

「え? ちょっと、これで倒せるって確信しての行動じゃないの!?」

「いや、全然。そんな余裕があるわけないです」

「ええっ……陸地に誘い出したから勝てたのに……狙ってたわけじゃないんだ」


 いや、それは狙っていたし、上手くできた。

 ただ、体に力が湧いてきたから、より効果的に全身を陸地に上げることに成功した。


 もっと、囮になったことも含めて、褒めてほしい。


「お疲れ様」


 アイオ様が手を差し伸べた。その手を取って、立ち上がる。

 そうだ。まだ、終わりじゃない。


 動かなくなった鯱に近づき、もう一度、胸元を確認する。


「やっぱり、ない」


 教団により魔獣と化すための赤い石がない。

 つまり、この鯱は穢れを大量に取り込むことで生まれた魔獣。


 ゲームでボスだった鯱とは別ということになる。


「どうしたの?」

「いえ、なんでも……」


 ゲームでは最終ステージに現れる鯱。

 てっきり5年前で弱いだけで、ボスだと思ったのに。


 体がぶるりと震えた。

 ボスじゃないなら……なぜ、こんなに穢れが溜まった状態なのか。

 

 何かおかしい。

 早く、先へ進んで戻らないと――神子様がいつ襲われるか、わからない。


「アイオ。そのポンコツの頭小突いて、正気に戻して」

「はい」

「いや、まって、大丈夫だから」


 ルヴィニが向こう岸から声をかけてきた。

 ハッとして立ち上がり、ルヴィニと合流する。


「くしゅんっ……」

「ミオ。風邪ひかないようにしたら? 水を自分の手のひらに集めるようにして、服の水気を集めなよ」

「え?」


 アイオ様が見本を見せるように、「水よ」と言って、濡れた服から水分を集めている。


「え? すごい、便利!」

「馬鹿言ってないで、きみもやるんだよ。風邪ひきたいの?」

「……杖、使わせて」


 確かに。このままでは風邪をひいてしまう。

 アイオ様は杖とか、媒体を持たずに魔力を制御できるようだ。

 でも、私は違う。


 いや、練習はしているけど、まだそこまで出来ない。


「水……」


 杖の先に水球が出来る。これは空気中の魔力から生成した水だ。

 私の服の水を集めるものではない。


「……もっと、正確に……」


 この世界では、魔法は自分のイメージで生み出され、形を変える。

 魔力の量も大事だけど、その制御ができる事が大事。


 集中して、対象は私の服にある水。

 服から集める。

 イメージしながら魔力を体に纏わせる。


「こいっ」


 杖を中心に水がぎゅい~んっと引っ張られる。

 いや、服ごと引っ張られている。

 でも、水が杖の上に集まり、服は軽くなった。


「え? 出来ちゃったの?」


 意外そうなアイオ様の様子に、首を傾げた。

 私が出来ることは意外だったらしい。


「何回か挑戦して駄目なら、風邪ひく前にぼくがやろうと思ってたのに」

「やればできる子なんだよ。カライスと同じで」

「あ~」


 残念そうな顔でアイオ様がこちらを見ている。

 

 何か変なことしたのか。

 尋ねる前に目を逸らされてしまった。答える気はないらしい。


「じゃあ、明日の朝まで待機ね」

「は?」

「凍った状態でやるんでしょ? 凍るのを待つんだよ。夜になれば気温が下がるからまた凍るでしょ?」


 確かに。

 ゲームでは一瞬で復活していたけど、現実的には凍るはずはない。


 だけど、そんなことでゆっくりするわけにはいかない。


「私が凍らせる」

「……ふ~ん? やってみたら?」


 やったことはないけれど、水魔法の一部だろう。

 試すだけでも、価値はあるはず。


 なんとなく、早く先に進まないといけない気がする。

 さっきの鯱がボスじゃなかった。

 違和感がある。


 そもそも、5年前にしては、教団の技術が進み過ぎている。


 ノアによりすでに世界が変化している影響なのか。

 理由はわからない。ただ、良い方向ではない気がする。


 そんな中で、ルヴィニとアイオ様という戦力を水の神子様から引き離している。

 この状況を長引かせるのは良くない。

 水の神子様を失えば、パワーバランスは一気に教団に傾く。


「ルヴィニ様、流石に厳し過ぎじゃ……」

「本人もわかってるよ。早急に育たないと困るでしょ」


 遠くの方で、夜営の準備をしつつ、二人が何か話しているけど聞こえない。


 水を凍らせるイメージ。

 先程の服から水を吸い出した、あの感覚を再現する。


 魔力の波紋みたいなものを感覚的に感じながら、ゆっくりと魔力を池に流し込む。

 その魔力の波紋を池に行き渡らせ、凍れと念じる。


「くっ……きつっ」


 流し込んだ魔力が池の全体に広がる。

 ドライアイスとかみたいに、氷よりも冷たい物質を想像しながら、魔力を制御する。



「あ、あれ?」

「そこまでっ」


 集中して、魔力を流していたら、くらっとした。

 一瞬、意識を失っていて、池にそのまま顔から突っ込む寸前にルヴィニが止めてくれたらしい。

 後ろにグイっと引っ張られた。


「はぁ……自分の魔力の限界くらいは覚えなよ。今日はここまでね」

「いや、もう少しで凍りそうだから……」


 水面は変わらないようだけど、手応えは感じている。


「さっきと違って、浄化されたおかげで、均一に氷が出来てるよ、大丈夫」

「ボスが……早く、なんとかしないと」


 ルヴィニに支えられているが上手く立てない。

 ぽんぽんと軽く背中を叩かれる感触とルヴィニの声が遠くに聞こえた。

 

 出来ているかを確認したいのに、瞼が下がっていく。



 気付いたら、寝袋の中にいた。

 テントから出ると、次の広間がすぐそこに見える。


 寝ている間に、先へと進んだらしい。


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