表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/73

2.神との交渉

ミスは許されない。

 それなら、せめて少しでも情報が欲しい。


「えっと、確認させてください。その転生した子に、主人公のスキルツリーが受け継がれているんですか?」

「否。其方と同じように3つの能力を杖に付与したのじゃ。その者が空間転移を望み、すでに与えてしまった」

「たかだか、3つの能力で、あの主人公と同じように脳筋になれるの!?」

「信者である其方が操ると効率厨の脳筋になっておるだけじゃぞ」 


しっかりと計算して、必要な物だけを取った結果、戦闘と移動能力に特化した脳筋主人公になる。効率がいいのに、なぜか責められた。


「えっと……では、彼女はゲームと同じようにスキル取得できるんですか?」

「あれは遊戯がわかりやすくしておるだけじゃ。本人の努力なく、スキルを覚える訳がなかろう。知覚できるものでもない」


 神が何度も言うように、その世界の現実。数値化され、知覚出来ると考える方がおかしいのか。


 では、私はどうやって、世界を救うべきか。

 ここが肝心だ。

 


「とにかく、同じ能力は与えられん。他の能力を……」


 しばらく考え込んでいる私を急かすように神が声をかけてきた。


「では、神器と同じ能力を」

「ふむ? 具体的には?」

「浄化と結界。穢れた土地や魔獣を浄化する。また、簡易な結界を張ることで、同じ場所がすぐに穢れてしまわぬように保護することができました」


 ゲーム内での仕様。使うのは制限があったけど、それでも最終局面まで、何度となく世話になった能力だ。


「遊戯と全く同じは難しいのう。浄化をする場合も、結界を張る場合も、相応の魔力を消費することになるのじゃ。同等かそれ以上の力が加われば、破壊。一定時間は絶対に壊れないという仕様にはならんのじゃ」


 ゲームと現実の違いは仕方ないか。それでも時間稼ぎにはなる。

 同等だと壊れるなら、自分より弱い場合は壊れないなら、逆に使い勝手がいいかもしれない。


「わかりました。それで構いません」


 結界の能力は、ゲームの仕様と違うと考えて、色々と試しておこう。


「良いのか? お主ならば、神器も自分で入手できるじゃろう?」

「だからです」


 すでに転生しているヒロインがいるなら、神器だって奪われている可能性もある。

 そうでなくても、神器は神子様達が使う。私は不足を補えばいいし、他の人でも使えるという点では悪くない。


「互いに足の引っ張り合いになり、世界が救われないということは絶対に避けるべきで、自分でその能力を持っていた方が効率的です」

「……そうか。二つ目の能力を付与しよう」


 一瞬、言い淀んだ気がする。なんだろう? 何に反応した?


 杖の周りを本が公転する様子を見ながら、考える。

 

 互いの足の引っ張り合い、かな? お互いに明らかなイレギュラー。

転移性ヒロインを神が見放したこともだけど、何かある。協力し合うことがないと神が理解している?


 味方と考えるのは危ういか。敵対する可能性もありそう。


「最後の能力はどうするのじゃ?」


 あの世界は、広い。徒歩での移動では厳しい。

 空間転移が駄目だったなら、やはり移動能力か。


 だけど、戦闘能力も無しに、あの世界に行くのも不安が残る。


「その前に確認させてください。本人の努力があれば、簡易なスキルの取得は可能で間違いないですか?」

「剣をずっと振っていれば、誰でも強くなるというものでもなかろう? 其方の才と努力次第じゃな」


 なるほど。戦闘能力に目覚めることは諦めよう。


 私の精神が入った時点で、戦闘が優秀になるとは到底考えられない。

 戦闘能力よりも危険から遠ざかる逃げ足が欲しい。


「最後の能力は聖獣召喚で」

「うむむ……やはり、遊戯仕様か?」

「遊戯仕様にすると聖獣の元を訪れて入手するという手間がかかります。できれば、この場で私専用の聖獣を手に入れておきたいです」

「おお、そうか。その方が助かるのじゃ。よしよし、其方専用の聖獣を用意しよう」


 何故か、神様も乗り気だった。

 今までの能力は渋られたのに、ここはすんなり渡してもらえるらしい。


「もしかして、聖獣の性能、色々と詰め合わせとかできます?」

「うぬぬ。あまり無理を言うでない」


 いや、今までと変わらなかった。胡乱気にこちらを見ている。無理なものは請求するなということだろう。


「遊戯の仕様では、お主に与える体では魔力が足りず、聖獣を入手することは叶わぬ。じゃが、この場で一匹の聖獣と契約させるなら可能じゃ」


互いに魔力を共有でき、自分の分身のような存在。懐いてくれるし、絶対的な味方だけど……失うと精神的だけじゃなく、身体的にも影響があるのが難点だった。私まで死ぬことはないはずだけど。

 

「この卵ならば其方の望む聖獣が生まれるはずじゃ」


 虹色の卵を渡された。

 ゲーム内では、卵の色がそもそも攻略対象の属性に合わせた色だ。

 これはどの属性にもなれる可能性があると考えていいのか。


「私が望む形?」

「そうじゃ。魔力を送ると良い」


 説明が足りない! イメージが大事だ。


 条件は最低限、馬並みの速さは欲しい。ただ、移動する場所は平地とは限らない。

 山に登れたりするとなると鹿とか? 水辺とかに弱いのも困る。

 空を飛べると便利だけど、鳥系は夜とかの移動に困りそう。


 ここは念入りに考えよう。気合をいれて、両こぶしを握る。


「なるほど……ちなみに、魔力はどのように?」

「後ほど、説明するのじゃ。先にお主の仮の体についても決めねばならん」


 神様でも一から体を作ることは難しい。

 一つの世界に同じ人がいてはならないという理があるため、すでに亡くなった人を使う。


「体じゃが……希望は聞くが、叶えられるかはわからぬぞ」


 なんだか、「無茶な要求をするな」という圧が込められている気がするのは気のせいだろうか。推しと世界を救うために、必要なことをお願いしているのに。


「女性であれば、構わないです。中身が私だと、戦闘に期待も出来ないので気にしません」

「そうか。では、こちらで用意してよいか?」

「はい」


 神様がうんうんと唸りつつ、宙を見つめている。


 何か、作業をしているようだけと、私には何もない空間にしか見えない。時折、神の姿が薄くなったり、光が途切れたりと大変そうだ。


 しばらく待っていると目の前に女性の体が突然現れた。


「どうじゃ?」


 自分と似た背格好の体が、目の前に浮かんでいる。

 髪の毛の色は少し暗めの青緑色で、肩くらいまでの長さがある。

 瞳の色はブルーグレーで、顔は美人系だ。


 おそらく、水の適性がある感じかな。風や闇の適性もあるかもしれない。

 女性の体をじっと観察してみるけど、自分よりも意思が強そうな瞳をしている。


「この者でよいか?」

「はい。あの、どういう基準で選んだのですか?」

「背格好が似ていることと、出来る限り魔力の高い者を選んでおる。魔力が中級上、其方次第では上級下まで伸びる可能性がある」

「上級に伸びる可能性があるって、神子候補に入るのでは?」

「本来はもう伸びる可能性はないが、其方次第で変わる。それと、精神と体の異なりは、無理をして力を使えば使うほど大きくなる。その異なりは、自分に返ってくる。心せよ」

「どういうことですか?」

「そのままの意味じゃ」


 いや、だから、説明不足だって! この神様、説明が足りないよね。

 声を出さずに抗議の視線を神様に送るが、ゆっくりと首を振られた。


「わかりました。心の隅においておきます。私はどのくらいの期間、あちらの世界にいられるのでしょうか?」

「……其方がなにを成すか、それ次第だ。そのために必要な期間を与えることになるのじゃ」


 必要な期間か。

 ミッション内容も帰還も結構融通を利かせてくれるというなら、可能性が広がりそうで助かる。


 私のプランとしては、先代神子様達を生かしたまま、ゲーム開始時間軸までもっていく。最後の三回目のミッションで邪龍討伐、これが最強の布陣。

 最後が重要であって、そこまでに有利な盤面を作る――彼の死を見ることがないように整えよう。


「仮に、水の神子様の暗殺を阻止することにします。水の神子様が死んだ時期ははっきりとした時期は描写されていません。この場合、どれくらいの期間、あちらにいることが可能ですか?」


 私がミッションを決め、期間を確認すると、またもやうんうんと悩み始めた。


「うむむ……例えばの話じゃ。其方がミッションを定め、この時期に転移すると定める。もし、転移した時点ですでに水の神子が死んでいた場合、そこでミッション終了となる。また、本来事件が起きる日よりも前に、暗殺が阻止されたと確定すれば、その時点で終了となる」


 散々悩んだ末の神の答えは、結構厳しいものだった。

 その内容をゆっくりと内容を咀嚼するように考える。

 

 時期を間違えれば、貴重な1回のチャンスが無くなる。

 自分でミッションを決め、それが成功か失敗が確定した時点で、あの世界からここに帰還する。


 神子様は助けたいが、その間にも大陸が滅びないように龍脈を安定させる行動もしたいが、両立は厳しいか。


「もう一つ、聞きます。ミッションを失敗した場合に再挑戦は?」

「不可。理がある」


 無意識に握った指先が冷えている。喉が渇くのか、つばを飲み込んだ。


ふっと息が漏れる。

一度きり、やり直すことは出来ない。予想どおりではあるけど、条件としては厳しいな。


「わかりました。私が成長する時間は無さそうということも理解しました」

「うむ。だからこそ、初期能力が高い者を選んだつもりじゃ」


 重々しく告げる神の瞳は少し揺らいでいた。


 事情はわからないけど、この神様は世界を救ってほしいけど、関われる部分に限りがあるように見える。


 極力自分で決めさせるようにしているし、重要な情報は言えない。何か制限があるもかもしれない。簡単に切り捨てることは、ない、かな。


 それなりに、要望も聞いてくれている。

 聖獣に魔力を送るため、少し離れる。すると、神は光の球に戻っていた。


 話しやすいように、人の姿を取っていたらしい。

 わからないことは多い。ただ、疑い続けても仕方ない。あちらの世界に行けば干渉されることも無い。


「体と能力は与えたのじゃ。あとはそなたの判断で、世界を救ってほしいのじゃ」

「わかりました」


 私の方針は、攻略対象には接触しない。力のある先代の神子達が死なないように助ける。これでミスをした場合でも、攻略対象が予備戦力として残る。


 さらに転生ヒロインがいるわけだし、そっちは何とかするはず。

 人材が多ければ、それだけ邪龍戦は有利になる。


 転機は、4~5年前に暗殺された水の神子。そこを起点にして、成否によって、次を考えよう。


「目的は水の神子の暗殺阻止をします。時期は、ゲーム開始の5年前の春にします」


 アイオ様の過去イベントのスチルを確認する限り、冬ではない。

 ただ、「暗殺されるから気を付けて」と伝えるだけで帰ってくる可能性もあるけど。


「健闘を祈るのじゃ」


 神の言葉と共に、周囲が眩しく光輝き、思わず目を瞑った。

 光が収まったので、目を開くと、一面草原の世界……風の大陸にいた。


 ここが始まり。世界を救ってみせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ