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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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14.ゲームでの未来


 二人が改めて、真剣な瞳で私を見たので、言葉を続ける。


「まず、私が知っているのは、今から5年後、一人の少女の目線で紡がれるいくつもの選択肢で分岐する物語。おおよそ1年半、復活した邪龍を再封印するまでの間の短い物語――」


 いくつもの選択、行動から導き出される結末の内、最上のエンディングでは世界は救われる。

 ただ、条件は厳しい。

 綱渡りでの成功をより、確実にするために私は世界改変に挑むと決めている。


「この世界で邪龍を討伐出来るようにすることが私の使命」


 決意を込めるように、伝えた。

 その言葉に二人はじっとこちらを見た後に、ゆっくりと頷いた。

 私の意思はわかってくれたのだと思いたい。


 ゲームでは、邪龍を封印して、少しだけ時間を稼ぐエンディングがほとんどだ。

 多くの犠牲を払って、手に入ったのはつかの間の平和。


 推しのアイオ様も死も回避し、世界をより確実に救うため。

 与えられた3回のチャンスと活かしてみせる。


「まあ、今までだって100年に一度、封印が解かれてるから邪龍の復活は驚かないけどね。きみは滅ぼすと言ったね? 本当にそれが可能なの?」


 ルヴィニの言葉にサフィロスも頷く。

 この世界では、邪龍は封印するものという認識なのだろう。

 封印が出来ると考えていて、世界が滅びるとまでは認識していない。


 だけど、実際に、ゲームとこの世界の内容は、結構、乖離している気もしている。

 導き手様なんていう、私やヒロインのような存在が世界に認識されていることも不思議だ。


「このままだと土の大陸か風の大陸のどちらか、又は両方を失った状態になる。半数以上の神子を失い、生き延びた神子の命も長くはない。次の候補のあても……ない」


 私の言葉に、二人の顔が強張る。住む土地が奪われ、神子もいない。

 人々が生きるには厳しいことは伝わったようだ。


 二人とも、自分たちの出身大陸は失った身だから、大陸がさらに失われる。

 私の示唆する未来に、ごくりと唾を飲み込んでいる。


 一気に伝えすぎるのも良くないか、それでも……こんなチャンスはあまりないだろうから、機会は活かしたい。


「100年なんて、保つことはできない。それが、私の知るこの世界の未来。その未来を変えるため、一手として、水の神子様を救うために過去にきた」


 今度は私の言葉に、二人は驚かなかった。

 真剣な表情で私の一挙一動を見逃さないようにじっと見ている。


「君は、水の神子一人生きていれば、倒せると考えているのかい?」


 サフィロスの問いは、低く重い声で聞こえる。少し、震えて聞こえた。

 視線が合ったが、どこか泣きそうな顔をしている。


「少し、違う」


 安心させることができるか、わからないけど。

 サフィロスの手をとって、笑いかける。


「水の神子様に責任を負わせるという意味じゃないんだ。ルヴィニ、神子でないと神子を倒せないって言ったよね?」

「そうだね、言ったよ」

「私もそう思う」


 ゲームでは、神子でないと世界を救えない。

 公式のチートが神子という存在であり、次点で、神子候補や攻略対象。


 そのことがはっきりと描かれている。

 攻略対象達は、ゲームの中で成長して神子になるけれど――力が足りない場合は死んでしまう。


「邪龍や邪龍教団にとって、神子は邪魔な存在。幾度となく、その時代の神子達が復活を阻んできた。だから……強力な神子の力を利用しようと考えた」

「そんなことができるのかい?」

「……赤い石を埋め込み、操る」

「これ?」


 ルヴィニが懐から取り出して、包んでいた布を剥いで、サフィロスと私に見えるように掲げた。

 魔獣退治の時に手に入れた赤い石。しっかりと持っていたらしい。


「うん。教団の作った、獣や人を操るための道具。穢れを撒き散らす厄介な敵を生み出す。ただ、操るのが、神子も例外じゃなかったことが問題」

「なあ……この禍々しい赤い石は、何でできている?」

「公式ではなくて、考察だけど――邪龍の血を固めた物ではないかと。普通の石じゃない」


 血のような色をしているし、これを埋め込むだけで死体が動き出すのだからものすごいエネルギーが内蔵されている。


「それで、水の神子の死体が敵になるってこと?」


 ルヴィニの質問に、目を瞑って、頷く。


 ゲームでは、ボスとしての立ち位置で、何度となく、倒してきた水の神子様の死体。

 本人には自我がないまま、教団の手先として暗躍する。


 死体であることは、事情を知っている一部しか知らない。

 だから、水の神子様の裏切りのように世間では受け取られる。

 アイオ様は主君である水の神子様の汚名を雪ぐために動き、死んでいった。


 死体であり、どうやっても、救うことのできない存在。


 そして、ゲーム中に神子様達の死体は増えていく。

 神子の多くは攻略対象にとっても身近な存在だった。


 不安定になる攻略対象との仲を深めるイベントでもあったけど……実際に、この世界ではあれを繰り返すことはしたくない。


「……水の神子の死後、神子達は次々に亡くなった。理由はわからない人が多い。5年以内に光闇火が死んでる。……多分、関与してる」

「そう、か……」


 サフィロスの声が一瞬掠れていた。

 先程から握っている手も冷えていて、緊張しているようだ。


 よく見ると、顔色も少し悪い気がする。

 やはり、神子様が敵に回るのはショックなのだろう。


「それで、神子達はどうなるの?」

「候補たちが覚醒して、神子となり倒すよ。数人がかりでね」


 敵側になった神子様は、水、光……そして、ゲーム中に亡くなる風と土。火と闇は亡くなったけど、敵方にはいかなかった。


 それでもが神子が敵でいる状態は、かなり厳しい。


 ただ、一緒に行動しているわけではないため、各個撃破できる。数の暴力で主人公達が倒していく。


「そう……」

「…………」


 私の言葉を受け止めた二人は、再び、沈黙する。

 内容を咀嚼し、どう動くべきか、足りない情報は何か、考えているように見える。


 サフィロスが無意識に握る力を強めていて、手が痛いけど。

 それほど大事な存在なのだろう。指摘はせずに我慢して、二人の結論を待つ。



「ねえ。僕は、君の知る物語にはいなかった?」


 しばらく考えた後、ルヴィニが確認のように聞いた。

 でも、いなかったとわかっているような聞き方だった。


「うん、知らない」

「まあ、そうだよね~。僕がいるなら、アイオがそのペンダントを譲り受けるはずがない」


 ルヴィニはいつもの調子であっけらかんと言う。

 張りつめていた空気が霧散した。

 ただ、ちょっと困ったように私に視線を送ったから、サフィロスを心配して言ったのだろう。


「ルヴィニが持つの? まあ、似合いそうだけど」


 ルヴィニの言葉に明るい声で頷く。

 ペンダントを身に付けているルヴィニを想像し、もう一度、こくこくと頷く。


 美形だと、こんな大きな宝石が付いていても、その身を引きたてるアイテムでしかないのが羨ましい。


 年齢を考えれば、ルヴィニやサフィロスの方が上。

 さらに、ルヴィニは意外と従者であることに誇りを持っているので、アイオ様に後れを取るようなことはしないだろう。


 まだまだ、アイオ様もカライスちゃんもまだ幼かった。

 遠くない未来に水の神子様が死ぬとしたら、形見として受け取るには少々未熟だろう。


「いや。このペンダントは水の民が持って、効果を発揮するだろう。ルヴィニやアイオではなく、カライスに受け継がれるのが普通だ」

「それ……多分、カライスちゃんに渡したくないから、アイオ様が奪って、出奔したんだと思う」


 実際、そこら辺の事情は描かれない。

 アイオ様が死んだ後、カライスちゃんがペンダントを入手し、涙するスチルがあるだけだ。


「どういうこと?」


 私の考えに二人とも、疑問符を浮かべている。

 今日の様子を見ると、二人はとても仲が良さそうだった。

 だから、無理矢理奪うということが想像できないのだろう。


 でも、あの二人は、このままでは拗れてしまう。


「うん……カライスちゃん、神子様を殺したと自称する」

「は?」

「え?」


 私の言葉に二人は今までで一番の驚いた顔をしている。

 サフィロスに至っては、驚いて握っていた私の手を放したくらいだ。


 やはり、彼女が犯人であることは予想外であり、また、二人ともあり得ないと思っている。

 それは実力的なものか、性格的なものか……どちらにしろ、あり得ないと全身で驚きを表している。


「その悲劇を……阻止したい」


 どうして、そうなってしまったのか。

 情報が足りないから考察も難しい。


 ルヴィニは魔力を使えないという割には身体能力の高い、強キャラだし。

 そのルヴィニが認めるサフィロスの実力も高いのだろう。


 この二人の力を借りれば、未来を変えられるかもしれない。



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