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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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12.ルヴィニ (ルヴィニ視点)

(ルヴィニ視点)


 イーハンの町について、ミオと別れて、急いで宿に戻ったのに目的の人物は出掛けていて、大人しく待つこと数時間。


 仕方なく、酒を片手にゆっくりと今後について考えを纏めていたら、上機嫌な様子で待ち人は帰ってきた。


「遅いんじゃない? 何してたの?」

「ああ、町を見て回っていた。例の子は面白い子だな」

「彼女と会ったの?」

「共に買い物を楽しんできた」


 たまたま市場で会ったこと、服屋に行ったこと。

 金銭面での世話にならないと拒否されたが、一緒に買い食いをしてみたことなど、町での話を聞かせてくる。


 耳を傾けながら、新しいグラスを用意し、飲んでいた酒を注いで渡す。


「サフィロス。別にそういう話を聞きたいわけじゃないんだけど? どうするの?」

「私は気に入った。いい子じゃないか、協力する方向でいこう」

「……本気?」

「気に入らないのか?」


 サフィロスの言葉に、どう答えるか迷う。


 ミオと名乗る少女と出会って数日。

 持っている杖や聖獣、知識。どれを取っても、今代の導き手様であることはもはや疑っていない。彼女と協力し合うことの必要性もわかっている。


「迂闊すぎる。やるべきことの優先順位も理解していない。役に立つの?」

「厳しい意見だな。100年に一度の危機、神子は使わされる“天の導き手”とともに、難局を乗り切るのは今に始まったことじゃない。君だって、一応は水の神子の従者だろう?」

「導き手であるなら、まずは国の庇護を得るべきでしょ。許可なく勝手に動いて、危険に首を突っ込むのもだけど、死んだらどうするつもりなのか。僕の上に立つべき人間じゃないよ」


 立場としては、導き手様は神子と同格。

 いや、むしろ、現・神子より立場は上だろう。神子では対処ができないと判断したときに、神が送り込んでくる存在。


 だけど、あの子は知識も度胸もあるけれど、考えが足りない。あれの指示に従って動いていたら、命がいくつあっても足りない可能性もある。


「導き手様の決断が全て正しい訳じゃないのは、サフィロス。きみだって知ってるでしょ?」

「火の大陸の消失は導き手様の判断って話な。だが、それは200年前の話だ。彼女は関係ないだろう。風の王と神子の庇護ではなく、滅んだ水の庇護を得ようとする理由はわからないが、少しくらい歩み寄ってもいいはずだ」

「立場を考えなよ。風の王と風の神子の顔色を窺わないといけない立場で? 味方のふりをして、背後から討つことになるかもよ?」


 ぐいっと持っていた酒を煽り、脳裏に浮かぶ頼りない姿に笑みが浮かぶ。


 重要そうな情報をぽろぽろと零すくせに、肝心な目的についてはあいまいで、詳細を語ろうとしない。動きはどんくさくて、戦闘面には不安が残る。


 魔力の扱いも素人同然のくせに、何故か、結界と浄化だけは一流。

 ちぐはぐな言動に振り回されている自覚があるだけに、このままでは駄目だろう。


「可哀そうでしょ?」


 自分の言ったことにハッとするが、その言葉ににっと笑ったサフィロスに苦い思いがこみ上げる。


 あの子は騙されやすそうでもある。裏切るくらいなら、最初からこちらを警戒するようにしてやった方がいい。

 騙されたことに憤り、動きが鈍るようでは困るのだから。


「心配してるのかい? なんだ、君も気に入ってるんじゃないか」


 サフィロスの言葉に眉間に皺が寄った。気に入っているなんて言ったつもりはない。

 目の前に座るサフィロスと視線を合わせるとふぅっとため息を一つ吐いた。


「サフィロス……」

「ルヴィニ。彼女をどう思う?」


 先ほどまでの楽しそうに、友達だと言って庇う姿から一転。真剣な瞳で問われた。僕の言葉次第で対応を考えると態度で示している。


「そうだね。あれは豆狸かな」

「ほう?」

「そう。別に頭が悪い訳ではないけど、活かしきれてない未熟さ。おっとりしていて、平和ボケ。見ている分には動きが面白いけどね」


 タヌキは知的で適応力も高く、臆病で警戒心も高い。穏やかで人当たり良い社交性に好奇心もある。

 ミオはこちらを警戒しつつも、敵対しないように穏やかに振舞い、こちらの警戒心を下げる。こちらの意図を察し、言ってはいけないことは黙ることも学んでいった。


 ただ、動きは鈍いし、危なっかしい。肉食獣には簡単に狩られてしまうことも予想できる。

 狼や狐のような天敵の前に出すべきではない。


「狸か。可愛いな……だが、それこそ、君がフォローすればいいだろう」

「きみは狐だよね」

「ん? なんだ?」

「べつに。僕は神子の従者であって、導き手様に侍る存在じゃないでしょ」


 嘘か本当か――いや、あの子の中では真実なのだろう、神子の暗殺。

 その可能性を示唆されているのに、神子から離れて、フォローするなんて出来るはずがない。


「一度、一緒に話を聞きに行くか。それ次第で考えよう」


 それは使えない場合には、切り捨てるという意図が含まれている。

 この世界のために、ミオをどうするか。


「本気で言ってる?」

「ルヴィニ。まだ、何も起きてない。だが、水の大陸が一気に形勢が変わりで沈んだように……何が起きるかわからないなら、動いてみるのも悪くない。その結果、道を違える可能性があってもな」


 信頼させ、全てを話させた後に、裏切ることもあり得る。

 そのことを否定しない。

 お互いの立場が違う。

 背負うものが違う。


 付かず離れずでいる方が気が楽だとわかっていて、信頼させて、情報を得に行こうという提案をしてくる。


「君が一人で嫌なら、私も付き合う。二人で騙してでも、話を聞きだす。それならいいだろう? 私も君も、この世界のために生きるのが義務だ」

「それ……嘘じゃないよね?」

「ん? もちろん」


 にこりと笑う顔は、男も女も惑わすような美しさがある。

 本人にその気があるかは知らないが、こんな笑顔のときは、相手にそれ以上言わせないための顔だ。

 物心がついたときには一緒にいたからこそ、わかる。本当に、嘘つきだ。


 世界のためと言いながら、すでに風の国への不信から世界がどうなってもいいという願望を持っていること、知らないと思っているのか。



「あの子の言ってることが出鱈目なら良かったのに」

「ん? 嘘が得意なタイプじゃないだろう」

「そうだよ。でも、どうやって話すつもり? 僕ら二人で会うなんてできないでしょ」


 女性一人が泊まる宿に押し掛ける訳にもいかない。

 サフィロスがどうしようかと考えているところで、年少者の二人が帰ってきた。

 

「ただいま~」

「ただいま戻りました」

「うん、お帰り。二人とも」

「ああ。アイオ。カライスもお帰り。遅かったな?」


 町の様子を見に行くと言ってから、だいぶ時間が経過している。暗くなる前に帰ってくると思っていたが、もう日は完全に沈んでいる。


「うん、その……ちょっと、詰所で話をしていたら、遅くなっちゃってごめんなさい」


 アイオが目を伏せて、頭を下げる。どうやら、遅くなったことにはちゃんと申し訳ないと思っているらしい。


「詰所? どうかしたのか?」

「ちょっと、変な人がいたから詰所にお引き取り願っただけ! 何もなかったの」

「カライス。あの人、別に何もしてなかったでしょ? 警戒し過ぎだよ」

「だって、怪しかったもん! もう、水の民なんかいないんだよ!」


 サフィロスと顔を見合わせる。水の民ではない、水の民に見える不審者なんて、一人しか思い浮かばない。


「それ、詳しく聞かせて」


 アイオとカライスに事情を確認する。

 勝手に怪しいと付け回したあげくに、通報したらしい。ミオが牢屋に入れられた後に、事情を確認されていたという。


「はぁ……何もされてないんだろう? 何をやってるんだ」

「でも、あの人のアイオを見る目つきが変だったの! 本当に!」

「ないよ」

「ないだろう」


 カライスはアイオが危なかったと主張しているが、どう考えても、早とちりだろう。ただ、そのまま牢屋に捕まっているというなら、放置するわけにも行かない。

 

「迎えに行ってくるよ」

「ああ。いや、私も行こう。カライスとアイオは待機していてくれ」


 二人に留守番を命じ、当然のように付いてくるつもりのサフィロスにため息が零れる。

 残れと言っても聞かないことはわかっている。諦めて、剣を腰に差すのとは別に、暗器を隠し持つ。

 何事もないとは思うけど、用心するに越したことは無いからね。


「どうするつもり?」

「詰所に向かうさ。金で済むなら、金を積んでみる。会うだけ会って、釈放が難しいというなら、明日の朝、町長宅にお邪魔する」

「問題起こすと、また煩そうだけどね……僕が交渉するから、黙っててよ」

「ああ、わかった」


 最悪は、荒事で解決するつもりだが、出来るだけ、穏便に済ませたいところでもある。金で靡いてくれれば、簡単に解決するのだけどね。



後書き失礼します。

明日から更新時間を20時30分に変更します。引き続きよろしくお願いします。


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