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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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11.推し


 サフィロスと別れてからもぶらぶらと町を探索していた。


 ただ、その後から、宿を探して町を探索していたら後をつけてくる人が現れた。

 一定距離でずっとついてきている。私にバレるくらいには尾行というにはお粗末すぎる。


「ねぇ、声かけようよ」

「待って、もう少し様子見た方がいいって」

「もうっ! さっきからそればっかり!」


 会話も聞き取れる距離で、ずっと声をかけるか、かけないかを話し合っている。


 後ろを振り返ると慌てて店の影に隠れる少女と少年。

 どうしようか、対応に困る。少女の声は知っている声で、そうなると一緒にいる少年にも心当たりがある。


 仕方ないので、角で曲がって隠れて、追いかけてくるのを待つ。


「あの、何か?」

「うわっ!?」

「きゃあっ!?」


 私が角から現れると驚き、後退ってしまった。

 少年の方が、少女を庇う様に手で庇いながら、こちらを睨んでくる。


「うっ……」


 思わず、口に手を当てて、変な声が漏れるのを抑える。


 可愛い、少年アイオ様だ! 


 まだ幼げだけど、睨んでいる顔は眉間に皺が寄っていて、どことなくゲームでの彼を彷彿させる。

 連れの少女を守るという意志と、世界を救うために動く意志、どちらも内に秘めた強い感情が見て取れる。


 癖のない真っすぐな黒髪に、黒と紫のオッドアイ。私の推し。


 彼は苦悩しつつ、主君である水の神子へと生涯の忠誠を胸に、ただ、成すべきことを――淡々と世界を救うために、邪龍教団と戦い続け、最後は世界の敵として主人公達に殺されてしまう青年。


 今は成長期前で、声変わりもしていない。

 面影はあるけど、ころころ表情を変える普通の少年だった。


 彼の後ろに庇われている少女も見覚えがある。

 主人公の親友枠になる少女、カライス。水の神子に仕える神官姉妹の妹。


 ゲームでは、水の神子を暗殺したとされるこの少女は、とても悲壮な決意を秘めていてあまり感情を見せないクール系の親友枠。

 こちらも今はアイオ様に守られて、楽しそうに笑っている。


 二人とも、ゲーム上での辛い背景などない。とても楽しそうな雰囲気がある。

 アイオ様は14歳とカライスちゃんは12歳。

 ゲームでは互いに別々の道を歩み、敵対する二人が仲良しであることが尊い。


「……想像以上すぎる」


 見たいと思っていたアイオ様の少年期がこんなあっさりと見れると思ってなかった。

 やばい、嬉しい、幸せを守りたい。


「尊い……」

「は?」

「何か言った?」


 つい、口から洩れてしまった言葉は二人とも聞き取れなかったらしく、首を傾げている。


「あ、えっと」

「アイオ、下がって!」

「ちがっ……」


 カライスちゃんがきっと私を睨み、鋭い声でアイオ様を引き戻した。

 誤解させてしまったと慌てて説明をしようとするが、目を吊り上げてこちらを睨んでる。


「ちょっと、危ないよ」

「アイオ、ダメだよ。この人、アイオに向かって言ったよ? 絶対、危ない人だよ! 警邏の人を呼ばないと!」

「え? ま、まってくれない? 誤解だから」


 つい、漏れてしまったけれど。危害を加えたりするつもりはない。

 むしろ、私は二人の仲が良いところを遠くから見ていたい。


 誤解を解こうとするが、じりじりと後ろに下がって、距離を取っている。


「待つわけないじゃん! アイオ、早く! 行くよ!!」

「カライス、まって!」


 カライスちゃんは私を睨んだ後、戸惑っているアイオ様をぐいぐいと引っ張って、去っていた。


 せっかく会えたのにと肩を落とす。だけど、これだけで終わらなかった。


 追いかけるわけにも行かないし、その場を離れようとした――けど、遅かった。


「失礼。然るお方より、不審者という通報がありました。お話を聞かせていただけますか?」

「私、ですか?」


 帯剣している町の見回りをしている人に声をかけられた。

 しかも、ざわざわこちらを遠巻きにしつつ町の人が周囲を囲っていて、逃げられそうもない。


「水の民族衣装を身に纏う女性で、髪の色、瞳の色もお聞きした特徴と一致しています」

「……通報はどなたが?」

「申し上げられません」


 声をかけてきた人とは別に、私が逃げないようにもう一人が後ろに配置されている。


 ここで逃げようと暴れれば、町の人に誤解が生じてしまう。

 少なくとも、私は水の民に人と認識されている可能性が高いので、問題を起こすわけにはいかない。


「わかりました」


 大人しく従うと宣言し、声をかけてきた人の後ろをついていく。


 幸いなのか、手錠とかで拘束されるようなことはなかった。

 そのまま、何の説明も、聴取もなしに牢屋に入れられた。



「いくらなんでも、これはあんまりじゃないかな」


 通報したのは、カライスちゃんかなとは思う。

 あの場から、近い場所に町の警備を担当する詰所があった。


「いいか、大人しくしていろ」

「あの、明日の朝、町の入口で約束をしているので、その人に伝言をお願いしたいのですが」

「知らん」

「ルヴィニという、紫の髪色に赤い瞳の青年です。彼も立場のある方なので、待たせる訳にいかないので、伝えてください」

「ふんっ……」


 牢屋に案内する男は態度が悪い。多分、伝言は握りつぶされるだろう。


「どうしよう……」


 持っていた荷物は取り上げられてしまった。中身は確認されなかったけど、食料やお金はいいけど聖杖はまずい。

 取り上げた荷物を検査をされても困るため、聖杖は、牢屋に入れられた瞬間に念じて、手元に引き寄せた。


 その後も、牢の見張りの様子は変わらなかったから、多分、バレていない。



 女だからか、他の犯罪者たちが入れられている区画を通り過ぎ、奥の牢に入れられた。


 周辺には無人の牢。どうやら、こちら側は私しかいない。


 石造りの頑丈そうな牢に、格子の付いた小さな窓。

 かび臭い匂いがこのフロア全体に充満している。

 暗くて、松明が入口に置かれているくらいで、遠くは見通せない。


 入れられた牢の中には異臭を放つ壺とベッドくらいしかない。


「う~ん……」


 現状、ここから抜け出すことも出来ないし、助けを求めるとしたら、ルヴィニしかいない。

 連絡を取る方法を考えないといけない。

 

「オリオンをこの窓の外に召喚してみようかな。 町の入口に向かわせれば、ルヴィニならわかってくれるかな?」


 オリオンは聖獣だし、町の人に見られると困るけれど。

 あの子は空を駆けることができるし、雷になって、移動できるはず。


 とにかく、ルヴィニが私は逃げたと判断してしまうと、次あった時には問答無用で殺されそうな気がする。そんな未来は避けたい。


「やるだけ、やってみよう」


 誰もいないので、オリオンを呼び出す。小さい状態で呼び出せないかなと試すが、それは出来なかった。


 ただ、色々試した結果、聖獣召喚は、地図機能を使うと、別の場所に召喚可能であることが発覚した。


 明日の朝、町の入口に召喚して、あとはルヴィニを連れて、ここに来てもらえば事情はわかるはず。



 一息ついて、埃だらけの牢に備え付けのベッドに寝転がり、目を瞑る。


 今日、カライスちゃんを見て、確信した。


「水の神子の暗殺、教団が関わっていて、カライスちゃんがやったことじゃない」


 アイオ様と行動を共にしていた。

 可愛く笑っていたことからも、神子様の暗殺を考えているようには見えない。


 彼女は教団を憎んでいた。

 教団にはめられた可能性がある。

 それなら、この先、教団からの接触をさせなければ、彼女は暗殺をしようとは考えないのではないか。

 悲劇が起きなければ、あの二人は笑っていられる。


「う~ん。カライスちゃんが神子様を殺そうとした事情が、はっきりと描かれていないんだよね」


 神子が暗殺された。だけど、何が起きたのかはわからない。


 神官と神子様の間に何かがあったとして、そこを利用されたとは考えている。

 アイオ様もだけど、教団が暗躍して重要人物が死んでいく状況は、何とかしないといけない。


「そういえば、考察では、姉神官のことを責められた神子様の自殺というのもあったんだよね」


 神子様は規格外の強さだから、一般人に毛が生えた程度のカライスちゃんでは勝ち目がない。


 暗殺犯の本命は、ラズボスである邪龍を復活させることを目的とする教団。

 

 次に風の国の上層部。

 水の国が滅んだ後、風の国に移住した水の神子様だけど、アイオ様の回想では風の国と揉めていた描写があった。


 一つの国に一人の神子。それが原則。

 そもそもが、その国ごとに属性の影響を大きく受ける。


 風の国は草原が多く、風が強い地域が多い。服装や文化は中華風で描かれている。

 土の国は砂漠でアラビア風、光の国と闇の国は同じ大陸で光の大陸となっていて、洋風で描かれている。


 風の国で、水の魔力が強くなることも大陸のバランスを崩すことになるということで、神殿と揉めることはありそう。


 神子様を救うと決めたけど、その背景もしっかりと把握しておく必要があると改めて決意する。



「神子様に伝えるだけでも、違う結果になると思ってたんだけどな……ううぅ、涙出てきた」


 実際は、推しからも不審な目で見られ、神子様に会うことも出来ず、牢屋の中。


「はぁ…………迂闊だったな……」


 相手からどう見えるのか、考えていなかった。つい、幸せそうに笑う二人が嬉しく、感情が溢れてしまった。


 推しを守るつもりでこの世界に来たのに……現実は、不審者。


 折角会えた推しに良いところをみせるどころか、散々な結果。

 不審者扱いに心が痛い。それでも……何としても、悲劇は阻止しないといけない。



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