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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神を殺した世界にて

ミュルとハーシー

作者: ほてぽて林檎

 





 荒れ果てた市街地。鉄骨がむき出しになったビルは、いつ崩れてもおかしくない状態で傾いていた。


 かつて人々の営みがあった場所は、今や静寂と死の気配に包まれている。


 その中を、静かに、影のように動く二つの影があった。



 ミュルとハーシー。



 斥候任務を担う二人は、軽量の装備に身を包み、推進ノズルの消音装置で音を抑え、瓦礫を避けるように滑空する。飛び跳ねず、跳ね返さず、風のように流れる。


 ミュルの片手には高性能望遠鏡。わずかな光を利用して、遠くを索敵する。指先がわずかに動き、数字を刻んだ。



「小型が四機、旋回。大型一機、巡回ルートは時計回り……兵装は三種、背面に補助スラスターあり」


 一方、ハーシーは手元の地形スキャンを睨みつつ、崩れかけた建物の裏手へと回る。


「瓦礫の密度は高い。右に抜ければ死角ができる。東側、抜け道あり。十秒で通過可能」


 二人は無言でうなずき、視線で意思を交わす。


 そのときだった。


 プシュー


 ――空気が、近くで噴き出された。


「……大型だ」ミュルが低く息を呑む。


 “あの音”は、重厚な装甲の隙間から空気を吐き出す、独特の低音。ドローンの巨大な身体が、すぐそこに迫っていた。


 キィィイィィン……


 ハーシーは、喉の奥で息を噛み殺していた。

 浮上してくる大型ドローンの音が、耳の奥を直接えぐるように響くたび、背筋を氷でなぞられるような感覚に襲われる。


 冷静に。冷静に……。



 心臓の鼓動が早鐘のように響く。何度も聞いてで慣らされていようと、「死」の気配を前にしたとき、人は抗えないほどの恐怖を覚える。それはハーシーも例外ではなかった。


 ――けれど、動かない。


 目を閉じれば、脳裏に焼き付いて離れない情景がある。


 爆発音。仲間の悲鳴。赤く染まった瓦礫の山。その中で、救えなかった仲間たち。


「だから、もう繰り返さない」


 自分の足で地形を確かめ、自分の目で死角を洗い出し、自分の判断でルートを決める。それが、あの時、助けられなかった仲間たちへの贖罪だと、彼女は思っていた。


 ミュルはよく動く目を持つ。情報を素早く収集し、正確に数える。それに対してハーシーは、考える時間を奪われないよう、先に「迷う要素」を排除する癖がある。


 無駄な角を曲がらない。踏み抜きそうな瓦礫は避ける。影を最短で繋げ、逃走経路を三手先まで確保する。


 それは、恐怖を乗り越えるための「手順」であり、「支え」だった。


 今この瞬間も、ミュルの影に寄り添いながら、頭の中ではずっと別のことを考えていた。


 ――もし、ミュルが撃たれたら?

 ――逃げるか? 助けに行くか?

 ――ここから狙える?

 ――どこまで時間が稼げる?


 戦場に「信頼」だけを置いてはいけない。だからこそ、あらゆる最悪を想定する。それが自分の生き残る理由であり、仲間を死なせないためのルールだった。


 そしてその裏で、確かに小さな本音も揺れていた。


 ――怖い。

 ――ほんとうは、叫びたい。

 ――こんな音、聞きたくない。

 ――壊れた人形みたいな目で、こっちを見ないでほしい。



 それでも、引き金を引ける指がある限り、ハーシーは自分の任務を全うする。


 殺される前に、殺す。


 見つからなければ、やり過ごせる。


 今日を生き延びたら、きっと明日も生き残れる。


 そう思いたいから、彼女は一歩、また一歩とミュルの背中を追っていった。



 更に進んでいく。


 瓦礫の影。ミュルとハーシーは背を丸め、這うようにして移動していた。地を這う塵が肌を撫で、鉄と油の混じった匂いが鼻腔にこびりつく。


 ――風が、ない。


 そのことに気づいて、背筋が冷たくなった。


「空気が、止まってる……」


 口に出せない代わりに、喉の奥が警鐘を鳴らしていた。

 ミュルの背中越しに、私はほんのわずかに顔を上げる。視界の先、崩れたビルの影から、妙にぎこちなく動くドローンが姿を見せていた。



 照準器がカチリと動き、機体が左右に揺れる。その動きが“人間的”すぎて、逆に不自然だった。


 私の肩にミュルが身を寄せ、無言で指差す。


「……あれ、囮だ」


 確信に満ちたその指の先。見せびらかすように漂う一機のドローン。誘っている。あからさまに。


 私はすぐにミュルの双眼鏡を手に取り、視界を広げた。

 ――地形を読む。

 それが私の役割。


 死角が多い。ビルの骨組み、折れたガードレール、積もった砂――だが、ひときわ開けたスペースがあった。周囲よりわずかに低く、埃が舞い、音が通りやすい。


「ここだ。あそこが狙い所」


 声は低く、抑えた。そこに言葉の迷いはなかった。


「おびき出された相手が、あそこに踏み込んだら……一網打尽にできる」


 ミュルも同時に頷いた。私たちの中に通じ合うものがある。思考と直感が、同じ線上にあった。


 私は伏せたまま視線を滑らせ、周囲のドローンの位置を推測する。小型が複数いる。動きはないが、まるで息を潜めているようだった。まるで、生き物。


 無機物なのに。

 なぜ、こんなにも“意志”を感じさせるんだ。


 そして――ミュルが、再び指を差した。砂地に、わずかな凹み。

 最初はただの窪みに見えた。だが、私の目はそれを見逃さなかった。


「……排気の跡……?」


 ふと、背筋に冷たいものが走る。あの地形――ただの盛り上がりじゃない。


「いる。あそこに、大型が」


 見逃していた。砂に潜む巨体、風も生まない沈黙の存在。間違いない。囮の動きが止まれば、あれが動く。そういう設計だ。


 獲物を狩るための罠。

 生きているような“知性”を感じさせる罠。


 逃げなければならない。でも、記録は残さなければならない。

 ミュルが素早く手帳を取り出して動作と数を記す。私は頭の中で地形を再構成しながら、逃走経路を組み立てる。


 この情報さえあれば、前線の損失を最小限に抑えられる。


 そのために、私たちは“見る”のだ。


 ミュルが近くの瓦礫に白いチョークで×印をつけた。小さなサイン、それだけで十分。


 私は小さく息を吐いた。

「……帰ろう」


 返事はなかった。けれどミュルは静かに頷き、私と同じ姿勢で後退を始める。




 帰還の途中だった。



 ――待て。


 ミュルは短く、通信でハーシーに告げると、推進を切り、滑るようにして物陰へ身を潜めた。視線は前を睨み、身体は自然と遮蔽物へ吸い寄せられていた。


 ハーシーも何も言わずに後を追ってきた。さすがだった。信頼できる。


 問いかけに答えず、ミュルは指先を口元に当てて合図する。


 音がする。


 鼓膜の奥に張りつくような、鈍く擦れるような金属音――ギギギ、キィィィン……。


 大型ドローンの駆動音だ。



 だが何かが違う。音が混じっている。機械の動作にしては不自然な引っかかりと濁り。


 双眼鏡を構えたミュルは、すぐに異常を視認した。


 ――損傷。

 装甲は砕け、あちこちが焦げ、煤けている。流れる赤……血痕。人を巻き込んだ痕跡だ。


「……これは」


 ひとりごちた声は喉奥に沈んだ。随伴ドローンはいない。動きにも規則性がない。これが囮とは考えにくい。


 誰かが戦ったのか。あるいは、自爆を仕掛けたのか。推測はできても、真実は闇の中だ。


「……どうする?」


 ミュルはそれだけをハーシーに言った。


 選択を委ねているわけではない。だが、“逃す”ことの意味を、一緒に考えてほしかった。


 ハーシーは素早く地形を見渡し、遮蔽と接近ルートを描き出す。反応が早い。それだけで、ミュルの腹は決まった。


 双眼鏡をもう一度覗き込み、傷口を確認する。肩部の外装、破損。内部装甲が露出。浮力の調整が不安定――狙える。


 報告するごとに、ハーシーの顔に不安の色が濃くなる。無理もない。


 短機関銃一丁で、大型ドローンとやり合うなんて、普通なら無謀の極みだ。


 それでも。


 ミュルは無言で双眼鏡を渡した。ハーシーが覗き込んだ先にあるのは、既に死にかけた“殺し屋”だ。


 ギィギィと鳴るその音は、まるで怨嗟の声のようで、血に染まった機体は、まるで人のように“痛み”を抱えているようにも見える。


「……仲間が、追い込んだんだ」


 ミュルの声は、感情を抑えていた。

「誰かの戦果奪うとかどうとか、そういう話じゃない。逃せば、また誰かが死ぬ。だから、やる」



 それが、ミュルの信念だった。斥候は目撃者であるだけじゃない。戦況を変える“一手”であっていい。


 けれど、不安も消えてはいない。


「……ただ」


 ミュルは再び視線を戻し、可能性を挙げ始めた。



「コーリングシグナルをうたれたら終わりだ。仲間を呼ばれる。確率は低いがゼロじゃない。あと……」


「ミサイルポッド…」


 ミュルはうなずいた。

「消音装置は推進力に欠ける。誘導式なら、まず振り切れない」


 挙げればきりがない。だがそれでも、ミュルは引き下がらなかった。


 ハーシーは息を吐いて、言った。


「お前が死んだら、帰るよ。私ひとりじゃあ、やれない」


 ミュルは少しだけ笑った気がした。いつも通りの無愛想な顔で。


 ――それで、いい。


 生きて帰れる道は、最初からこの目で見ておく。死ぬつもりなんて、ない。




 ノズルの口を絞り込むように、推進装置がわずかに火を吐く。加熱した圧縮気流が地面を舐めるも、その音は掠れ、風音に溶けていく。


 ミュルとハーシーは、音なき滑空でゆっくりと影へ潜り込んだ。砂の粒が肌に触れる音すらも疎ましく感じるほどの静寂がそこにあった。


 目と鼻の先に、異音を撒き散らすドローンがいる。


 ギギギ……キィィイン……


 プシューッ……


 ガタついた関節。壊れかけの補機。加圧された空気が歪に逃げていく呼気音のようなそれは、まるで生き物の呻き声だった。 


 恐怖が、皮膚の内側を這う。

 不気味な音は鼓膜を揺らし、心臓を掴む。

 背筋を汗が伝い、指先に冷たい湿りが浮かぶ。


 それでも、ミュルは動じない。

 ハーシーも黙って従う。


 作戦は単純だが、隙は一瞬。


 通信を断つ。

 ハーシーが背後から接近し、開口部にアクセスする。

 もし、振動器が残っていれば狙撃して破壊。

 撃たれた音が合図になる。

 なければ、静かに降下して知らせる。


 それからだ。

 2人で交互に注意を引き合い、

 どちらか が破損した飛行制御と吸気口を狙う。

 バランスを崩し、浮力を失わせ、

 地に堕ちたその瞬間、照準ライトを破壊し、

 コアを撃ち抜く。


 成功すれば数十秒。

 失敗すれば、音もなく死ぬ。



「……」


 ハーシーがチャフグレネードを手に取った。

 指先がピンにかかる。


 ごくりと息を飲むミュルの耳に、その金属の擦れる音だけが響いた。


 これが開始の合図だ。



 1…2…


 ピンを引き抜く手の中で、チャフグレネードが少しだけ熱を持った気がした。


 振りかぶって――投擲。

 弧を描いて、鉄くずの空に沈み込む。

 硬質な音が響いた瞬間には、もう私たちの姿はなかった。


 推進装置、ノズル加熱。

 ノイズを最小限に抑えて、私は建物の影を縫うように飛ぶ。

 死角から、一気にドローンの背中を目指す。

 白い煙が尾を引いて、熱が空間を歪ませる。


 近い…あと少し――


 奴の背後上部へ、まるで吸い寄せられるように接近。



 開口部を探す。けれど、ない。

 見当たらない。装甲が密閉され、どこも開いていない。

 ただの薄い鉄板にすぎないのに、なぜか睨まれている気がした。


 ミュルが動く。

 遮蔽から遮蔽へと、わざと“見せるように”動く。


 彼女が囮になってる――



 ドローンが反応する。僅かな起動音――

 あれは戦闘シーケンスへの移行。

 次の瞬間にコーリングシグナルが出されるタイミングだと、私は直感する。

 でも、ハーシーは撃たない。


 奴の背をぐるりと回り、ゆっくりと、慎重に降下する。

 “降りた”ということは、“なし”の合図。


 よし――クリアだ



 だが、息をつく暇はなかった。


 ドドドドッ、パパパパッ!

 空気が裂ける音。数え切れない銃声。

 ミュルの遮蔽が蜂の巣になる。

 コンクリートが弾け、粉塵が舞い、石片が空中で砕けた。


 心臓が喉元まで跳ね上がる。

 ミュルの動きが止まらないのは、教訓の賜物だ。

 止まれば死ぬ。動き続けろ――



 被弾はしていない。でも、当たるのは時間の問題だ。

 私はそれを悟りつつ、再び上昇した。


 脳裏には、ミュルの報告が浮かぶ。

「損壊部は…飛行制御機関と吸気口」


 目視で探す。見えた。あそこだ――!


 心拍が加速する。

 頭の中が、無音になる。

 ただ、自分の呼吸さえ忘れて、指に力が入った。


「しぃねぇえええええ!!!」


 銃声が、世界を貫く。

 短機関銃の連射が、傷んだ装甲に叩き込まれる。

 音が跳ね、金属が裂ける。

 奴が呻くような異音を上げた。


 離脱。空中でマガジン交換、追い撃ち。

 次の瞬間――




 爆発。



 破片が火花とともに四方へ飛び、

 片側の推進装置が燃え上がる。


 やった…!


 でも、墜ちない。まだ浮いてる。

 制御が偏っているだけ。終わってない――


 ミュルはまだ撃たれている。

 このままじゃ、彼女がやられる。

 今度は私が囮になる番だ。



 距離を取って、次のタイミングを計ろうと、振り返ったその瞬間――





 見えた。




 損壊していない側の上部装甲が、音もなく展開。



 6つの、等間隔の穴。



 一目で理解した。






 ミサイルポッド。



 しかも、私の方に向けて開いている――





 時間が、止まった。




 音が消えた。





 思考が凍った。










「死ぬ」











 それだけが、はっきりと胸に刻まれた。


 時間の流れが、止まった気がした。


 目の前の世界だけが異様にゆっくりと動いている。

 思考は凍りつき、脳がシャットダウンする。



 通信は、自分でチャフで遮断した。

 だが今は、ミュルの判断が欲しい。声が欲しい。

 ……聞こえない。

 ならば、自分で考えろ。自分で選べ。

 だが、選べる術はない。

 退けない、高度が高すぎる、遮蔽もない。

 逃げ道など、どこにもない。

 どうすればいい。どうすれば——


 ああ。

 やられるんだ。

 私の番なんだ。ここで、終わる。


 その瞬間——

 脳内に強く響くように、声が届いた。



「急降下!!こっち!!少しでも来い!!」


 ミュルの声だった。


 思考が追いつく前に、体が先に動いた。

 胸が苦しい。呼吸ができない。重力が、時間が、全部敵に回ったように感じた。


 ミュルは遮蔽から身を乗り出し、機銃の乱射をかいくぐるように、信じられない軌道を描いてこちらへと向かってくる。

 上下、左右、コの字に蛇行し、弾幕の合間をすり抜ける。


 ハーシーの地表へ、なにかが撃ち込まれる。

 それは、ふわりと空中で形を成していく。


 ——デコイだ。


 遮蔽にはなり得ない。ただの囮。だが今の彼女にとっては、それが唯一の希望だった。

 もう選んでいる余裕などない。ただ、それを信じて突き進む。


 鼓動がうるさい。

 心臓が邪魔だ。呼吸すら、いまは邪魔でしかない。


 そして背後——

 プシューッ、と乾いた音が6つ、連なって響いた。


 ミサイルポッド。発射音。

 死が、等間隔で迫ってくる。


 ——死ぬ。

 ハーシーの視界が白くなる。恐怖が神経を支配し、足が止まりそうになる。 



 一方、ミュルは止まらない。


 乱射の中を駆ける。


 照準の精度は恐ろしく上がり、目の前をかすめた弾丸が風圧で頬を裂く。

 その衝撃に思考が引き剥がされそうになるが、彼女は止まらない。


 この程度で、怯んでたまるか。



 蒸した推進装置の出力を切り、慣性に体を預ける。

 重力を逆手に取り、体を折り畳むように宙で回転し、口でスタングレネードのピンを引き抜いた。


 ——やれる、私なら。



 仲間を見捨てて逃げた過去。

「逃げて」と言われて、恐怖に負けて逃げた。

 その結果、生き残った自分が、今ここにいる。


 くそったれだ。

 けどもう、同じ過ちは繰り返さない。



 バースト全開。重力に逆らい、ブースターを噴かす。

 狙うは、ミサイルの誘導回避——一か八か、スタングレネードの熱に賭ける!


 そして——



 炸裂。





 閃光が空を裂く。



 視界が真白に塗り潰され、世界が一瞬音を失う。

 次の瞬間、地鳴りのような爆音が連鎖し、地面が揺れた。


 デコイは消え、砂利が吹き飛び、爆風が荒れ狂う。




 ……ハーシーは!?


 ミュルが目を凝らす。視界の先、焦げた地面の上に、何かが倒れていた。


 ——ハーシーだった。

 煤けた制服、ひっくり返った体。だが……息をしている。

 むせながら、苦しそうに、けれど確かに呼吸している。


 助かった。安堵で、膝が崩れそうになる。



 だが終わっていない。ミュルの視線が、再びドローンへと移る。




 制御を失いかけた機体が、ゆっくりと降下している。

 もはや戦意は感じない。静かすぎるほどに、落ちていく。



 ……しかし、まだ照準のライトは消えていない。


 生きている。

 生きているなら——終わらせなければならない。


 ゆっくりと、ハーシーの傍へと歩き寄り、彼女を支えながら前へ出る。



 照準ライトが二人を捉えた。

 機体が、かすかに動く。命乞いのように……いや、単なるノイズか。もう関係ない。



 ミュルとハーシーが並んで、短機関銃を構えた。




「——撃つよ」


「ええ」



 タタタタタタンッ——



 乾いた銃声が空気を裂く。


 照準ライトが砕け散り、ドローンが完全に沈黙した。


 すべてが終わった。

 終わったのだ。

 

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