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番外編3 亘希、エルファム、ラディオ

※亘希が帰る前の時間軸です。

 騎士団宿舎の食堂でエルとラディオと朝食を食べている時に、ふと思い出した。


「コーキ、ちょっとそこの布巾取って」


ソースをテーブルに零したらしく、俺に向かって言ったラディオに傍らの布巾を手渡す。


「そういえばさー、俺この前ユークに風呂に連れて行って貰ったんだ」


言った瞬間、エルがぐふっと解り易い音を立てて喉を詰まらせた。偶然だろうがあまりにもぴったりなタイミングに俺が悪いのかと心配になる。


「ちょ、エル、大丈夫!?」

「だ、大丈夫です。失礼しました」


尋ねると、まだ少し苦しそうだがすぐにエルが返事をくれた。どうやらそんなに酷くは無さそうだ。隣りに座るラディオがエルの背中をさすりながらのんびりと言う。


「朝から過激だね~」

「え? 過激って何が?」

「だって風呂行ったんでしょ~?」

「あっ、違う! 街の風呂じゃないぞ! 以前王様が使ってたっていう風呂にユークに連れて行ってもらったんだ。だから二人だけ」


そうだった、この国では風呂は出会いの場なんだった。誤解を解こうと、ちがうちがうと手を振りながら答えたその瞬間、今度は派手な金属音とともにエルがナイフを落とした。どこか呆然とした顔で俺を見ている。


「ちょ、どうしたの、エル? まだ苦しい?」

「お二人で、入ったんですか?」


何故かエルは、お二人で、を強調する。でもすぐに返事があったので、どうやらエルの気管は無事らしい。


「うん。俺のとこでは広い風呂に一緒に入る文化があるんだよ。外にも風呂があって、そこで景色を楽しみながら入ったりもするんだ。気持ちいいよ。いつか二人も一緒に行きたいなー」


 ずいぶん前に北海道旅行で行った雪の露天風呂を思い出し自然と笑みが浮かぶ。出た後が超絶寒くて「風呂の意味!!」ってなったけど、今となっては良い思い出だ。ユークに頼んでみんなで風呂に行きたいけれど、さすがにあそこは王様の持ち物だから難しいかもしれない。


「いやいや、行くなら二人で行ってきて」

「なんでさ?」


ラディオが俺とエルを交互に指さして言う。大きい風呂は大勢で行った方が楽しいのに。口を尖らせていると、エルが何かを決意したように俺を見た。


「あの、コウキ」


エルが来い来いと手招きをする。理由はよく分からないが、とりあえずテーブルを挟んで少し上半身をエルに近づける。耳を貸せ、というジェスチャーにエルの口元に耳を寄せた。


「コウキ、ここでは日常生活で服を脱ぐという行為はまずありません。人前で裸になるというのは、いわゆる『そういうこと』をしようという合図です」


声を潜めてエルが言った。 そういうことって? と一瞬疑問に思ったがすぐに思い当たる。かっと頬に熱が上ったのが自分で解った。


「いや、断じてそんなつもりはなかった!」

「分かっています。ですが気をつけてくださいね……」


エルが困ったように眉を寄せる。

 知らなかったとはいえ、俺は朝っぱらからエルとラディオに公共の場で「やらしい事しよう」って言ってたってことか。それはあまりにも酷すぎる。適当に流してたラディオはともかく、エルは真面目だからちゃんと謝らないと。


「ごめん、本当に。知らなかったとはいえ迷惑だったよな」

「え、いえ、迷惑ではないですよ」

「もう絶対にエルを誘ったりしないから!」

「い、いえ、そんなに全力で否定しなくても……」


なぜかエルの声がだんだんと小さくなっていく。あれ、もしやこの話題自体がダメだった? 下ネタが苦手な人っているもんな。これからはエルの前では気を付けないと。


「ごめん、もう……ふぐっ」

「コーキ、これ以上追い討ちかけるのやめたげてー」


謝罪を続けようとした俺の口を、ラディオが掌で塞いだ。突然の事に驚いたが、周りには他の騎士もいるし、あまりこの話題を広げない方が良いってことか? それももっともなので素直に口を閉じる。エルも困ってるみたいだしな。

 この世界に来て随分経つから、もうすっかり馴染んだ気でいたけれど、やっぱりここは異世界だった。文化の違いは怖いな。思いがけず相手を不快にさせるから気を付けないと。俺はまだまだこの世界の勉強をする必要があるみたいだ。

『コーキのせいで、今日はエルが使い物にならなかったよ~』

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