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飴と鞭の配分1



「違う。何度言ったら分かるんだ!君は集中力が足りない。魔法を使う時、いったい何を考えている?」

「今日の昼食について考えていました」


 正直に答えたら、エリオットは持っていたテキストで私の頭をスパンと叩いた。


「痛い!何をするのですか!今のはあれですよ、私の居た世界ではパワーハラスメントと呼ばれて問題になります」

「この世界では教育の一環だ。このままでは今日の進行分が終えられないし夕食の時間が減るぞ」

「あ、それ!その脅しもハラスメントに……」


 積極的に抗議の音を上げる私は、庭を横切ってこちらに向かって来るニコライの姿を見つけて言葉を切った。


 ニコライは何か大きな花束を持って笑顔でブンブンと手を振っている。マリソルに帰った彼が、久しぶりに遊びに来ると聞いたのはつい三日前のことで、私はその日を今か今かと楽しみに待っていた。



「アリシア!」


 太陽のような弾ける笑顔を見ると安心する。


「ニコライ、久しぶりね。会えるのをとても楽しみにしていたの。急に王都に来るなんてどうしたの?」

「君が王宮に移ると聞いてね。ささやかだけどお祝いに」

「そんな、わざわざ良いのに。それに移るって言ったって何も生活は変わらないわ。ちょっと部屋が広くなったぐらい」

「あれ?君と殿下は婚約を結び直したんだろう?」

「ええ。そうだけど?」

「それってつまり寝室を共にするってことじゃないのかい?聞いた話では閨教育なんてものがあるとか…んぐっ!」


 すごい勢いで伸びて来たエリオットの手がニコライの口を塞いだ。バタバタと両手を動かして苦しそうにする彼を心配していると、その無礼な手の持ち主は小さく咳払いをする。


「ニコライ君も来たし、屋内へ移動しよう」

「あ…そうですね……?」


 先立って歩き出すエリオットを追い掛ける。

 恨めしげにその背中を睨むニコライに大丈夫かと問い掛けると「問題ない」と返って来た。


 あの一連の出来事の後、私たちは再び婚約して関係を継続するという選択を取った。王妃に厳しく罰せられた国王はもうすっかり傷心状態で、何度も私に謝罪を重ねながら「君が望んでくれるなら」と快く了承した。


 ネイブリー伯爵夫妻に関しても娘である私の気持ちを尊重するという意向で、私が家を去る際は二人とも悲しんだものの、笑顔で送り出してくれた。


 アイデン家が住まう王宮に居を移しても、べつに何も変わったことはない。エリオットは自分が選んだという親切なメイドを数人私に付けてくれたし、食事も申し分ないぐらいのご馳走尽くしだった。実のところ、私はたぶんこの王宮に来てから少し太ったように思う。


(アリシアに知られたら怒られちゃうわ……)


 クスクスと一人で笑っていたら、前を歩いていたエリオットが立ち止まって振り向いた。急に立ち止まれない私はまともにその背中にぶつかる。


 そのままジッと見つめられて、私は思わず身構えた。


「な…なんでしょうか?」

「………なんでもない」


 そのまま何もなかったようにまた歩き出すから、私は首を傾げる。後ろで呆れたようにニコライが「不器用だなぁ」と呟くものだから、尚更わけが分からなくて困った。



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