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82.悪役令嬢とその騎士2◆ニコライ視点



「殿下、僕は隠し事は好きではありません」

「………?」


 訝しむように細められる灰色の瞳を見つめ返す。


 煮え切らない態度を取るこの男の背中を叩くなど気が進まなかったけれど、そうすることでアリシアの幸せに少しでも近付けるなら良いと思えた。そして、こうした挑発に乗ってこないならば、彼はその程度の気持ちだということ。


「僕は…アリシアのことが好きです」


 エリオットはその顔に少しだけ驚きを滲ませた。

 眉根が動いて、僅かに不愉快を露わにする。


「もう親切な友人を演じることにも飽き飽きしています。正直言って、貴方が婚約破棄したと聞いて安心しました」

「……そうか。どうりで気が合わないわけだ」

「そうですね、僕と殿下はお互いの気持ちをよく分かっているようですから」


 当の本人である彼女だけが無知だった。この奥手な王子が魔獣を装ってアリシアと寝床を共にしていると聞いた時はまさかと思ったけれど、姿を明かしたあともアリシアがちっともエリオットの気持ちに気付いていないことにはもっと驚いた。


 自分に対してこんなにバチバチの嫉妬を燃やしている男が、彼女に無関心なわけがない。いち早くその正体に気付き、無口な王太子が抱える小さな恋心にも気付いた。けれども、どういうわけか他人から向けられるこういった感情に一定の鈍さを発揮するアリシアと、言葉足らずで表現下手なエリオットはこのままいっても距離が縮まりそうには見えなかった。


 この男がそれを良しと捉えている風な様子を見せることも、苛立ちの原因だった。手を伸ばせば手に入れられるのに、あと少し届かない。



「殿下、本当に欲しいものは必死にならなければその手に掴むことは出来ません」

「…………、」

「僕は彼女が目覚めたら気持ちを伝えるつもりです。それまでにやるべきことがありますが」

「やるべきこと?」

「聞くところでは、王妃は聖剣を集めてらっしゃるようですね。悪しきものは聖剣で切り裂けば二度と蘇らないと言いますけど、本当でしょうか?」

「………君は、」

「エスティ王妃に話を付けてきます」


 呆然と立ち尽くすエリオットの脇を通り抜けて、部屋を出た。これだけ伝えれば、もう十分だろう。愚鈍な王太子の烙印を押すことは控えたいから、そろそろ行動に移してほしい。


 戻ったときにはアリシアは目覚めているだろうか。


 どうか穏やかな笑顔で迎えてくれますように。

 その幸せを願うことが、きっと自分の役目。



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