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60.悪役令嬢は宴に行く


 王妃エスティ・アイデンの誕生日を祝う会合は夕方から夜にかけて開かれるということで、私たちは太陽が傾きかけた頃合いを見計らってネイブリー邸を出発した。


 私は髪を夜会巻きにして、白いマーガレットの花を飾りに付けている。ドレスは控えめにとお願いしたけれど、母であるモーガンは張り切ってふわふわのお姫様のようなピンク色のドレスを用意してくれた。こんなお姫様ドレスを自分が着る日が来るなんて、という驚きを感じながら膝の上で手を擦り合わせる。


「アリシア、すごく綺麗だね」


 隣に座るニコライが嬉しそうに褒めてくれるので、私はくすぐったい思いを隠すように下を向いて礼を伝えた。


「なんだか不思議な気分だわ。私がアリシア・ネイブリーとして王宮へ足を運ぶって信じられない」

「君はアリシアのファンなんだから、楽しんでその役柄を演じれば良いんだよ。その方が殿下も喜ぶだろうし」

「どうしてエリオット様が出てくるの?」

「殿下は君の婚約者なんだろう?」

「そうだけど…彼は今、他の女の子を王宮に囲っているのよ?それに彼自身が恋心を暴露してたわ」


 どうだろうね、とニコライは曖昧な相槌を打って、窓の外に目を向けると黙り込んでしまった。私は急に訪れた気不味い沈黙に首を傾げながら鞄の中身をチェックする。


 貴族令嬢というものは、あまり多くのものを持ち運ばなくても良いようで、小さな小さなそのハンドバッグの収納力はあまりに頼りない。お化粧直し用の口紅に、縁にレースが付いたハンカチ、サラにもらった御守りのネックレスもなんとなく着けて来てしまった。クロノスいわく術者が死んだら魔力も消えてしまうらしいから、もう追跡も不可能なはずだ。


 偽物だというそれに何の力もなくても、サラが私のことを思ってこれを渡したのではなくても、気休めぐらいにはなってくれるから。現に今まで死なずにここまで来ることが出来たし、験担ぎじゃないけれど、何かの役に立ってくれるのではないかと思っていた。リナリーがどんな反応をするのかも気になる。



 考えごとをしていたせいか、車はあっという間に王宮に到着した。時代が違えば「血税の無駄遣い」と非難されそうな豪華な門構えを潜って、綺麗に整えられた庭の脇に停車する。


 先に降りたニコライの手を取って私は車から降りた。一足先に出発していた両親は既に建物の中に入っているようで、見当たらない。夜になるとライトアップするのか、並んだパラソル付きのテーブルには小さなキャンドルが置かれていた。


「緊張している?」

「当たり前でしょう、もうバックバクよ」

「それは良くないね。君は稀代の悪役令嬢なんだから、胸を張って威張り散らさないと」

「ふふっ、確かにそうね」


 二人で笑い合って入り口へと続く階段を上る。

 あの扉を開けたら、そこにはリナリーやエリオットが居る。リナリー・ユーフォニアは驚くだろうか。それとも例の穏やかな微笑みを見せてくれる?


 知りたい答えは、もうすぐそこまで迫っていた。



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