アチラガワラジオ3
イタバサミ、それは人の心と宇宙の狭間にある世界。
現実世界の何処とでも繋がっていて、何処とも繋がっていない世界。
誰もが持っていて、干渉し合わない世界。
これはそんな世界に住むジュウニンの日常
あ、お久しぶりです。ふふふ、またお会い出来ましたね。
ここは、桜の洞窟です。とても広いでしょ。
天井に桜の木が生えてるんです。
このシーズンに、ここに飛んでこれたのはラッキーですよ!
え?いい匂いがする?そうですねこの桜は毎年味も匂いも変わるんです。
人の心と宇宙の間にあるこの場所に、変わらないものは案外少ないんです。
見た目が一緒でも味が違う、味が違っても見た目が一緒。
花びら、一枚食べてみますか?どうぞ。
・・・ふふ、何の味がしますか?紅茶の味がするでしょ。甘くて、しょわりと口の中で溶けるんです。
ここの桜を毎年回収して、みんなに配るのが、このイタバサミの、このエリアに生まれたワイの役目。
これまでに会ってインタビューしたワイは、どんなことをしていましたか?
・・・そうですか、ワイの知らないワイも素敵な日々を満喫してるんですね。
今年の桜は本当にいい香りで美味しいけど、美味しくない時もあるんですよ。
そういう時は、過去の桜が美味しかったのに、とか、この桜嫌だなぁ来年は素敵になればいいのにって、思ったりもしちゃいます。
でもやっぱり、やっぱりワイは、今、この今。
今ある姿が1番好きなんです。
今を逃したら、過去には戻れない。
だから、美味しくなかった桜も、結局は向き合っているうちに好きになりました。無理に好きになる必要なんてなかったんだけど。わいがそうしたかったんです。
インタビューの人は、今が好きですか?
ありのままの自分は嫌いですか。
ワイは今まで、散っていく桜を止めることもできなかったし、蕾を咲かせる桜を止められたこともないです。
どっちも、無かったことにすることはできなかったです。
ワイの中で確かに存在してた歴史だったから。
ワイは生まれた頃からここに居て、桜を見てきました。
ずっと、ずっとそばで。もしかしたら結構古株のジュウニンだったりするのかも。
ワイはきっと、この桜と一緒に枯れていくんですね。
インタビューの人がここにきてくれた事、ワイはすごく嬉しいです。
真ん中の湖が見えますか?あの湖は枯れたことも濁ったこともあるんです。一生懸命話しかけてたら、今はあんなに綺麗になりました。また濁るだろうけど、きっともう大丈夫。
洞窟の壁の光る石は、定期的に交換するんです。溶けたクラゲの液をかけると、光るんですよ。
天井の桜の木々は、少しずつ植えていきました。これにもクラゲの砂を使うんです。
ふふふ、クラゲは万能なんですよ。お星様かけらの粉とか、お花をすりつぶして混ぜたら、ワイたちの傷薬にもなります。
おっきい傷?ああ、足ですか。痕は消えないかもですね。
ワイは心から作られる存在だから、ワイのことを殺そうとするジュウニンも、居ないことはないんです。
インタビューの人も、きっと自分を傷つけたことはあるでしょう。
心に怪我を負うって、きっとこういうことなんだなってワイは思ってます。
あ、そろそろ時間なんですね。
会いにきてくれて、ありがとうございました。
あなたの心を愛してるジュウニンがいること、忘れないでください。
いい夢を。いや、いい命の旅を。




