『伝説の本』
この本をやろう。
題名は「Book 0」
まずはこれを読むといい。
ここ最近起きた実の話さ。
500円で売るから買いたまえ。
「わかりました。かいます」
よほど有用な本なのか、その本はもうすでに巷で噂をされていた。だが個人出版の代物で、数に限りがあるという。
著者は、「ある程度伝説的な記録としてその本を残す」という言い分らしく、部数を大量には刷っていないようだ。
「これは体験談なのよ。」
隣にいた女性が教えてくれた。
「著者の彼の人生をそのまま本にしたの。基本は起きたことは全てよ。」
350ページもあって、長いと感じていたが、これでも割と添削され尽くした方なのかもしれないと感じた。
「家に帰ってお読み。はなしの感想を待っているよ。」
私はすぐにそのビルから出て、まずはカフェに寄った。
なんというか本をひとりで集中し切って読むのは大変なので周りの視線を借りることにした。
今思えばその行動がさらに読み心地を変化させていったのかもしれない。
ともかくその時の私は席に座るとすぐに内容を確かめたくてしようがなかった。
ページをめくるとそこにはある男性の物語の目次がかかれていた。
1.浪漫
2.本質
3.運命
4.境界
5.創造
6.肯定
7.楽典
7つも目次があり、一つの章に50ページといった配分だった。一章だけならまだしも、これだけ7つのテーマを扱いながら物語が進むのなら読み切るまで二日はかかると思った。
そんななんとも言えない表情のまま1の浪漫を開いてみた。
様々な小説を読むタイプだけど浪漫の話始めは物凄く記憶に訴えかけてくるものだった。
『記憶を繋げて新しい世の中を作り、今までの不遇さすら乗り越える』
それが著者が若い時に強く感じたこの世のあり方だと記されていた。どれだけ不遇なひとでもその心さえあれば悠久の時間を持てるらしい。
私はそれをみて激しく同意したが、同時に記憶や性格の欠損などがひどいから上手くいくとは思えないと考えてしまっていた。
自分は心の傷と記憶の所在がわからないので、普段からとても彷徨っている。ふとした一瞬の気の迷いにやられてしまいそうで毎日が怖い。この本を買った時も伝説として残したいなら出版社に頼んだほうが一時の噂で消費される部数の少ない個人本よりも良いはずだと、かなり疑って買いに来た。
「そういえば、あの女の人、」
確かに疑ってかかった私親切に「好奇心旺盛なのね!」とか言って本についてたくさん解説してくれた。
不快に思う表情だったと思うのにむしろ明るい対応で、どこか気が抜けてしまった私はその時。
なんでも肯定的に受け止めれる人だからつまらない私にも丁寧に寄り添えるのかもしれない。
一章の最後に、『私(僕)はいつも他人と言われのない喧嘩が起きてそれについての責任を負うのだけど、人間は意地っ張りで少しも記憶と時間を大切に扱おうとしない。もっと人間を知ることが世の中を変化させる上で重要さ』とあった。
これを読むと、今回の私の最初の態度もなにかと意地っ張りで疲れるなぁと再考できた。
少しだけ続きがきになったところだけど、少し現実で自分のロマンを楽しんでから2章を読もう!と決断した。
そんなカタチで私はカフェで会計を済ませ、帰路に立った。
つづく
いやー大変でした。
これ全部想定している未来の出来事です。
ストーリー描くならある程度捻りがないと面白くなさそうなので。今回このようなカタチで書きました。
2話まで待ってね。