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エルマ奪還戦 その3

 行く手を阻む仕掛けや扉があれば魔装槌で叩き伏せて、ラヌシストさんの血臭反応がある場所へと向かいます。

 エルマさんがこの冒険者ギルドに囚われているかの確信が持てなくなった以上は、一挙一動の行動にいちいち制限をかける必要はありません。


 ……地下まで降りましたが、血臭にエラーが無ければこの部屋の先に反応があります。


「はああああっ」


 内側から鍵がかかっていたため、素手でのパンチで石製の扉を破壊しました。


「うわああああっ!!」


 大当たりです。

 多数の木箱が所狭しと積まれた食料庫であろう部屋の角で、うずくまっているラヌシストさんを発見しました。


『追い詰めた』

『追い詰めたぞ』

『チェックメイト』

『隠れんぼオワタ』

『ラヌシストさん終了のお知らせ』

『死神に見つかった』

『もうまともな死に方は出来んやろなあ』

『うわああああっ!!(もはやコピペの反応)』


 しかし、人とは驚いた時の反応がどれも似たりよったりですね。

 人間の恐怖心を嘲笑い糧にするような非人間系の悪役ではないので悲鳴に多様さは求めていませんが、少し落胆した気分です。


「寄るなあっ! 愚鈍で醜い吸血鬼の分際が! デバフ分野じゃ完全無欠の僕に近寄るんじゃない!」


 私が一歩前進する毎に蔑む言葉がぶつけられますが、デバッファーともあろう方が初手で詠唱するのが魔法ではなく罵詈雑言なんて、必死ですね。


「あなたに加担した冒険者は粗方排除しました。抵抗をせず、エルマさんの居場所まで案内するならば、普遍の人間が理想型とする最期、苦痛無き死を与えます」


 まずは、血や汗を流さないで済みそうな要求で参りましょう。

 寛大処置で済ます内に屈してくれれば御の字です。


「無理だ。案内出来るはずがないぃ……」


 しかし、要求を呑めないよほどの理由があるのか、首を縦に振ってくれませんでした。


「一度目は拒否ですか、ならば刃の苦痛を差し入れるしかありませんね。はっ」


「ぎゃああああああっ!! いだっいだっ!」


 彼の腰あたりを半分まで斬り、そこにノコギリを突き刺しました。

 情報が吐き出されるまでは身動きをとれなくするのは私の常套手です。


「言い忘れてました。二度目のチャンスを拒否すれば目潰しが、三度目の拒否で拷問開始、四度目となればあなたの尊厳を欠片も残さずいたぶり、五度目には流血著しい不自由な体のまま死を待つだけとなるでしょう。それでも了承しないですか」


 これから行われる一連の流れを説明して、どうにか頷かせるよう脅しかけます。


「出来ない、僕がRIOに情報を流したと告げ口されてしまう……。そうなれば僕の冒険者人生はおしまいなんだっ!」


「そうですか」


 双剣に変形です。

 彼の碧眼二つに、勢いをつけずゆっくりと差し込みます。


「ああああっ! うがあああああっ!」


 両目に刺して、ぐりぐりとねじってみます。

 HPを極力減らさないよう慎重に力を込め、ある程度押し込めたら引き抜き、また別の武器へと変形です。


「案内が嫌だというのなら視力なんて必要ありませんよね。しかし未だ自白はしませんか、もしかするとやって来るはずもない救援待ちですか」


「こい……つ! なんとかスローのデバフさえ効けば……!」


「っと、そうは問屋がおろしません」


 並べられた木箱の一つに拳を放ち、中から青林檎のような果実を取り出し彼の口内へと強引に詰め込ませます。


「ふーっ! ふーっ!」


 口を塞がれれば魔法の発動は困難でしょう。

 もし彼の精神が負けて話したいと思うようになれば、頭部の仕草で判るので心配ご無用です。


「この武器の変形機構を用いれば、あらゆるバリエーションの拷問を満喫出来るのですよ。どうやらあなたは凄絶な拷問体験を趣味としているようなので、さぞや小躍りしているでしょう」


 お、今の台詞回しは悪役らしかったですかね?


『サイコ』

『サイコ』

『最高』

『エルマちゃんで騙した件の憤りが言葉に出てる』

『RIO様なりの立腹の表現方法』

『いやこわいわ』


 視聴者様のコメントはどれも震え上がっているらしいので度が過ぎたかもしれませんが。


「答えますか、はい答えませんね。三度目です」


 さて、魔装杖に変形が完了しました。


「む゛うううううううう!!」


 腹部の裂け目に先端を侵入させ、彼の中身をほじくりました。

 丁寧に正確に、器用な手際を意識して行います。


「答えたくはなったでしょうか?」


「ふううっ……」


「ふむ、腸みたいな臓器が露出しているのにまだ根性を見せられるのですね」


 相手の反応を自己解釈すると、「答えない」だそうです。

 まあ、こんなひたすら肉体に苦痛を与える拷問なんて私の趣味に反しますし、視聴者様にとっては晩酌の肴にはなりませんね。


 なので、違う角度から攻めましょう。


「次の拷問内容は、視聴者様からのリクエストで決めるのも面白そうですね。ではこの配信をご覧になっている視聴者の皆様、遠慮せずどしどし応募して下さい」


『ちょwwこっちに振るなwww』

『また突拍子も無く視聴者参加型企画しやがったww』

『ひでぇ(いいぞもっとやれ)』

『草』

『楽しくなってきたwww』

『俺らRIO様からどんな期待されんだよww』

『RIO様のご命令だ! 眷属のお前ら! 喜ばせられる案出すんだぞ!』


 私とは別の人から苦痛のメニューを考案される。これだけでラヌシストさんの鉄壁の精神力に重圧をかけられます。


「ふーーっ!!」


 ラヌシストさんは鼻水を噴きながらも意地を張っているので、彼からは目を離し、波のような勢いで押し寄せるコメントを注視します。 

 ……相手や私を気遣っているのか簡易的な方法を挙げる方、検索でもしてるのか各国の拷問方法についてのやり方がきめ細やかに打ち込んでいる方など、知識欲掻き立てる案がこれでもかとコメントで流れていて、この時間だけは自白する気にならないで欲しいと思ってしまったほどです。


 これは……、彼の忍耐力を完膚なきまでに壊せそうな名案です。採用しましょう。


「厳選なる審査の結果、黒隠の魔装槌による睾丸粉砕ショーとなりました」


「んんんんんんんんんんんんんんん!!」


 声にもならない声で嫌がるラヌシストさんですが、仮想世界でも男性の尊厳を潰されるのは肝が座っていようとも無理だそうです。

 金的を蹴られる痛みとは、出産の痛みさえも凌駕するとの雑学がありますからね。そのため魔装槌に壊されるとすれば想像を絶する激痛となるでしょう。


『オワタ』

『ちんだ』

『やべぇよ……』

『歴代最悪の神回』

『ただの神回』

『タマがヒュンってなった』

『RIO様までちょっと引き気味』

『俺草生え散らかしてる』

『RIO様に去勢されるなんて羨ま……ご愁傷さまです』

『ラヌシストさんは漢だったよ(過去形)』


 視聴者様は肯定的なので、始めましょう。


「いっせーのせで参りますよ。ショックで失神しないよう、しっかり我を保って下さいね。それではショーの開幕です、いっせーの……」


「んがあっ!! 言う! 言う!! それだけはぁやああああめてくれええええ!!」


 喉を詰まらせながら瞬時に果物を丸飲みしたラヌシストさんが、魔装槌を振り下ろす直前で降参を宣言しました。

 ああ……、実行前に自白する気になってこちらが助かりました。彼の尊厳の部分を粉々に砕いたところで、私は恐らく顔を顰めてしまいますからね。


「五秒以内で答えて下さい。私は時間にうるさいので一秒未満の遅れも許しません」


「エルマの身柄はギルドマスターが預かったんだ! ギルドマスターはここの最上階にいる! 必ずいるはずだ!」


 ……彼の矢継ぎ早に吐き出した言葉に信憑性はあります。

 吹き抜け広間の時は、エルマさんだった者はメタモルフォという冒険者が化けていたため、また彼はエルマさん捜索クエスト発令の中心人物とも言うべき冒険者なので、ギルドマスターとは癒着しているのでしょう。


 それに、敵の親玉を縛り上げ、眷属化させた後案内させるのは予定の内だったのです。彼が答えないまま死を選ぼうと、ギルドマスターがいるだろう最上階に赴くつもりでした。


「ありがとうございました。お望み通り、苦痛を感じさせる間もなく始末します。動かないで下さいね」


「あひひっ……おわった、ギルドから追放処分を言い渡されてしまう……。夢にまで見たSランクの仲間入りを遂げるのも現実的になってきたのに……あひひひひゃひゃっ。のぎゃあっ!!」


 狂ったような笑みを浮かべたラヌシストさんは用済みなので、粉砕対象を頭部に定め、魔装槌の一撃で潰れたトマトに変えました。


「……骨折り損でした。早く、とにかく速くエルマさんの元へと急がなければなりません」


 このギルドは六階建てなため、大急ぎで走れば短時間で最上階まで到達するでしょうが、エルマさんは無事なのか傷物になってしまったか、懸念感は尽きませんね。

 駆け上がりましょう。

 お腹痛い

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― 新着の感想 ―
[一言] むう。撮れ高的には良かったが、結果が手間かけられただけであったか。 おなかだいじに(´・ω・`)
[良い点] ラナシスト…いい奴だったよ…
[気になる点] ずっと見ていて気になったんだけど何でここまでゲームに本気なの特に今回のコイツ たかだかゲームで精神的苦痛を我慢してまでSランクになりたいってなると現実で何かしら金銭でも貰えるとかないと…
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