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種族進化は……&エリコへ

 100万イーリスと引き換えにレベル65になる

 これだけ覚えれば大丈夫

 ……ようやくです。

 経験値が溜まったため、お楽しみである種族進化の時に差し掛かりしました。


 この楽しみを一人で堪能するのは配信者として大幅に減点されるので、配信を再開させるしかありませんね。


「視聴者の皆様、配信外の戦闘により、ついにレベルが65となりました。種族進化を果たし、また一段階上の階段を踏み進められるのです」


『きたあああああ!』

『ついにだああああ!』

『RIO様おめでとおおおお!』

『88888888888』

『お前らちょいと気が早いわww』

『ぐへへ』

『村人がいないってツッコミは無しか』

『危うく寝落ちするとこだった』

『どんなヴァンパイアになるんだ?』


 多くの視聴者様が視聴再開していました。

 これだけ見物客がいれば、種族進化の儀も沸き立つでしょう。


「さて、ウィンドウを開けてみましょう。視聴者様も、目を凝らしてよくご覧になって下さい」


 そう宣言し、まずは種族進化の一覧を視聴者様にのみ観える位置に移動させます。

 順序は視聴者様が先なのです。私の進路がどうなるかの問題ですが、ウィンドウを操作出来るのは私なので後です。


 暫くの間、コメントを眺めていましたが。


『なんだあれ』

『やばくね』

『バランス壊しにきてるww』

『これはすぐには選べない』

『うわぁ究極の選択』


 だのと表示されていました。

 果たして何を観てしまったのか。


 気になります。

 私の方に寄せましょう。


「……なるほど、視聴者様の通りですね」


 種族先を見定めるためにスライドさせていた指が、思わず止まりました。

 常識として刷り込まれていた光景に、常識外れにも異質なものが写りこんでいる時のように。


 そこには、即決も躊躇われる選択肢が表示されていたのですから。



―――――――――――――――


 進化先A ローグクリムゾンヴァンパイア

 説明:生き血と殺戮を渇望した果てに授けられるは、荒ぶり狂う赫の奔流。

 特徴:守りの力と引き換えに、抜山蓋世なる暴虐の力を手に入れられる。


 進化先B ノーブルレッドヴァンパイア

 説明:血筋の繁栄を渇望した吸血鬼に與えられるは、陽光さえ目を逸らさずにはいられない高潔無比なる永久の貴。

 特徴:戦闘能力は据え置き。

 再生力で相殺可能になるほど日光からのダメージが減少される。


 EX進化 ヴァンパイアロード

 説明:条件を満たした場合のみ進化可能となる真祖の種族

 特徴:全てのステータス値が急上昇し、既存のスキルの性能が強化または変質、そしてヴァンパイアロードのみ使用可能となる"特別なスキル"を入手する。

 条件1∶レベル60以上

 条件2∶カルマ値-10000以上

 条件3∶エクストラエネミー・ヴァンパイアロードに《吸血》を成功させる


 ※退化不能


―――――――――――――――



 そう、今回の進化先は三つあり、その内一つにEXの文字が付いていたのです。


『条件付き進化とか』

『ここにきて退化不能の四文字の存在感が際立つww』

『特別なスキル……特別!?』

『上二つも凄そう』

『日光克服出来るのもあるし』

『エクストラエネミー・ヴァンパイアロードって、この配信でそんなエネミー情報出てたか?』

『出てないから迷ってんだろ』

『今回だけは間違ってもヴァンパイアロード以外選んじゃいかんと、先人達が囁いている』


 視聴者様の意見は、大体出揃っていました。


 ヴァンパイアロードを選べというのは、私の抱く意見と一致しています。

 しかし、エクストラエネミーとは初耳です。もしかすれば、対峙するまでが困難なのかもしれません。


「決めました。これより、ヴァンパイアロードを目指したいと思います。よってリートビュート襲撃の計画は当面の間は保留となるかもしれません」


 もし情報収集した結果、ヴァンパイアロードとやらの出現地が遥か先の街になっているとしたら、先に種族進化を果たさなければ溢れた経験値が無駄となるでしょう。

 旨味が無くなる……のも別に構いませんし、インベントリの許す限りノコギリでアイテム化させれば後々種族進化した時に即座のレベルアップが出来ます。

 最悪、他の種族先を選択するのも有りです。


「本日はここまでです。ご視聴ありがとうございました」


『乙』

『再開して早々終了ww』

『次からのやることは決まったな』

『乙』


 種族進化は果たせませんでしたが、配信は閉廷です。

 すぐさま仮拠点へと足を進めました。



★★★



 ヴァンパイアロードの条件1は言わずもがなクリア。条件2のカルマ値は−30万となっているため、無視で構わないでしょう。


 よって、主目的は条件3のみとなりますね。


「しんどかったぁ……」


「ボスさんも、汚れ仕事ご苦労様でした」


 被害軽微で戻れたのは上々です。

 この仮拠点も、仮であるのに住み慣れてきました。


「残すステップでリートビュートを陥落させたかったのですが、こちらの都合上後にします。それに私はとても眠いです。全員、英気を養って下さい」


「お疲れ様っした!」


 現実世界での時刻は一時を過ぎており、今からヴァンパイアロードについての情報を調べれば、必然的に夜明け以降まで時間がかかり、明日の学業に響きます。

 ボスさんに労われつつ、ログアウトの項目を押しました。



★★★



 眠気を覚えながらも寝付けなさそうなほど目が冴えていると矛盾した状態なので、これからリフレッシュタイムの読書に入ります。


「ふぁ……っむ……」


 体を動かさないだけで早速眠気が上回り始め、椅子の上なのに欠伸が漏れました。


 BWOとは無関係な閑話となりますが、この『ベストフレンドだなんて呼ばないで』というタイトルの漫画は、人生の教科書になり得る名作だと断言出来ます。

 市立の女子校を舞台に、様々な少女達が"好き"の想いを抱きながらも、背徳感により打ち明けられずに過ごすような内容で、恵理子に布教されるがまま購入したのです。

 この作品、心情の描写が何気ない箇所においても細かく、共感のあまりもどかしい気持ちになります。


「恋の形、多様性に富んでいますね」


 率直な感想を漏らしていました。



 視線を本から上に向ければ、デスクの傍に置かれてあるフォトフレームの中に飾られた、恵理子と二人で某テーマパークへ出かけた時に撮ったツーショットの写真。

 恵理子はピースサインを出しながらはしゃいでおり、私はネズミのキャラクターのカチューシャをつけられたまま恥じらっている表情です。


「恵理子」


 本にしおりを挟んで閉じ、写真に手を添えました。


「あなたがいるから、目標をもって頑張れます」


 その写真の中で歯を見せて笑う恵理子に、私の額を触れさせます。


「向こうの世界のあなたと逢うまでに、必ず覚悟を固めます。だから、待っていて下さい」


 ひとつ呟いて、ベットに潜り、意識を朧げとさせました。


 ――その後みた夢の内容は、漫画の登場キャラクターの一人になりきり、そのキャラクターの想い人へ告白するため教室に呼び出していながらも言いよどんでいる自分でした。

 やはり私は役割にのめり込むタイプなのですね。相手が恵理子ならまだしも、登場人物に対しても言い出せないだなんて……夢だとはいえ、予行練習にもなりません。


 なお作中の展開としては、そのキャラクターの想い人は別の人と関係を持つようになるため叶わぬ恋になってしまうと、無情にも報われないサブヒロインとなるのです。


 まあ夢なんてすぐ忘れるように脳が設計されてるので、深くは考えないようにしましょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初のリスナーコメにエリコいたよねw
[一言] また怪しい条件が来たな! 『ベストフレンドだなんて呼ばないで』……気になりますw なんの覚悟かな〜?( ´∀`)
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