肉切り包丁&また試行
主人公だから勝つのではなく、勝った奴を主人公に据えているのだ(キリッ
うっかり平均的女子高生の域から逸れてしまった死闘、視聴者様に魅せられたでしょうか。
『かっけえ』
『ギリギリだったか』
『ほぼソロで倒すなww』
『あの装備RIO様と相性抜群ってどころじゃねえぞ』
『この対応力』
『全部の形態使って勝ちやがった』
『BWO史に残る名バトルなるかな』
『隙が多かったはずなのに隙がねぇ』
『変形は男の子にはたまりませんわ』
『RIO様ってワイルドなキャラになる時あるから困る』
「視聴者の皆様、ありがとうございました。この多彩な変形機構こそ、訳あって購入した武器の性能となります」
魔装鎚をインベントリにしまいながら、カメラに向けて呟きました。
目まぐるしく変わる戦況において、その都度的確に変形先を選ばなければならないのは少々堪えますね。
ぶっつけ本番の実質一発勝負でしたが、この一戦で変形を駆使した戦法に適応出来たのは実りある結果ですね。
これで踏破完了。まずは戦利品となった【リッチの肉切りノコギリ】といういかにもなアイテムを確認します。
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【リッチの肉切りノコギリ】
必要装備換装部位
右手または左手:リッチの肉切りノコギリ
説明:美食家としても名を馳せた巨人王の成れの果てが用いるノコギリ状の剣。
自身を打ち破った者に尊敬の念を表し、奇々怪々なる美食の世界へと誘わせるという。
総合能力
STR+15
DEF-15
AGI-15
特殊効果:この武器で人体の部位を破損させた時、アイテム化してインベントリに収納される。
殆どが役に立たないのは、言うまでもないかもしれない。
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『出たwww死者冒涜装備www』
『ゴミなの引いたなぁ』
『凶悪な即死性能どこいった』
『住民に見せただけでカルマ値下がった実例があるとか』
『人道の面でさえ自由度が高すぎる』
……名称以上にアレな武器が手に入ってしまいました。
俗に言うお遊び系の装備でしょうか。わざわざ人体の部位と指定されているのは、リッチ・ロードから「君も人肉をたらふく食う悦びに目覚めるのだ」と善意で囁かれているみたいですねこれは。
冒険者側の立場からすると、エネミーの部位が採れないのならテキスト通り役に立たないのでしょうが……。
『AIがどうしてRIO様についていけるのか理由が分かった』
『こんなクソアイテムはよ捨てろww』
『でもRIO様人肉食えないだろうけど吸えるぞ』
「……なるほど。アイテム化した部位はお弁当にするのではなく、水筒に入れたジュースとして飲めってことですね。かなり役に立つではないですか」
『お、おう』
『ナチュラルに感性狂ってんな』
『まーたRIO様してるぞRIO様』
『違うそうじゃない』
『いやそうだぞ』
『おやつ感覚で人肉保存する気かww』
「むむ」
視聴者様って、私が吸血鬼であるとは承知しているはずですよね?
ともかく、ボスエネミーのドロップアイテムで有用なものを獲得したのは、まさに運気の流れが来ていますね。
このノコギリもまたテーマに則り試行してみたいという探究心が湧きつつあるのですが、MPをほとほと消費して全力を出せなくなっている以上、相手を慎重に選ばなければなりませんね。
そもそも吸血可能な生物が少ないこのダンジョン。とりあえず大剣へと変形しましたが、まさかこのままじわじわと消耗させられ力尽きてしまうのでしょうか?
▲▲▲
今朝調べたのですが、人間と戦う時のコツは、相手を人間だと思わないことなのだとか。
「うわああああっ!! やめっ! やめええっ!」
中層まで戻った時、探索の最中であろう冒険者一行の内三人を斬り捨て終えました。
どうやら会遇する前から向こうも消耗していたようで、四人同時に相手しているにも関わらずこちらが一方的に立ち回れたのです。
『やっぱり』
『案の定』
『躊躇ねぇ』
『ボス戦はかっこよかったのにこの落差』
『いるだけで死を振りまくRIO様』
『虐殺タイムキター!!』
『Bランク名乗ってたがこんなとこにBランク来るのか……』
『RIO様にガチで勝ちたいならAランク呼ばなきゃ』
私の姿を一目見た途端それぞれ攻めかかって来たため、探索ついでに運が良ければ賞金首を狩れるとでも思ったのでしょうか? 事実私のMPがほぼ空な今こそ最大のチャンスではありますが、甘かったようですね。
それに、当然私だって出口に辿り着くまでむざむざと倒される訳にはいかないのです。
「ぐあ!? なにす……」
「あなたには少々お付き合いしたい事情があるので、まだ勝手に死んで頂かないで下さい」
仲間三人を《吸血》されて戦意喪失した残りの冒険者を大剣で串刺しにして束縛し、【リッチの肉切りノコギリ】に持ち替えて四肢を切り落としてみます。
不詳点が解ける絶好の機会が訪れたのなら即試行。基本です。
「先に生きた人間に対して試行してみたかったので。ふむ、問題無くアイテムになるようですね」
「ぐ……げ……ご……」
この方のHPが高くDEFが低いおかげで、作業がスムーズに進みます。
とりあえず全ての部位を落とした後インベントリを覗いてみれば、【プレイヤーの右腕部】、【プレイヤーの左腕部】、【プレイヤーの右脚部】、【プレイヤーの左脚部】、と四つのアイテムがいつの間にか加わっていました。
こんなモラル無視なゲームにも、申し訳程度のプライバシーがあるためにプレイヤー名は表示されないのか。ただプレイヤー自体が平等に一括されてるだけかもしれませんね。
「ふうっ。不明点が解けるのは爽快ですね」
漸く一仕事終えていい汗かきました。吸血鬼なら汗ではなく別の体液かもしれませんが……やっぱりどうでもいいです
……ふと気づけば拷問みたいな展開となってしまったため、この辺りでやめましょう。
達磨となり四肢が全てアイテム化したならこの冒険者はどのみち不要なので、指での刺突で息の根を止め、ついでに生者と死亡済の者とは違いがあるか首を切断してみました。
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《レベルが49に上がりました》
《カルマ値が下がりました》
《冒険者ギルドから懸けられた賞金が455万イーリスへと修正されました》
《アイテム【プレイヤーの胴部】【プレイヤーの頭部】がインベントリに送られました》
《冒険者ギルドから懸けられた経験値が4,709,445へと修正されました》
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おお、どうやら両方アイテム化したようです。しかも生死問わず同じようなアイテムとなるので、無理に生かさず先にキルして四肢を削いでも回収可能となりますね。
そんな長考には耽らず、すぐカメラへと顔を向けます。
「すみません。皆様へ配慮するため極力悲鳴をあげる暇を与えず始末したかったのですが、探究心に負けてしまいました。私もまだまだ未熟ですね」
『未熟って何がだよ』
『視聴者への飴と鞭が過激』
『RIO様の新たな一面見た後だってのにこれよ』
『配慮ってRIO様に良心あったのかw』
『もうネームドかボスエネミー化しとるやろこいつww』
『急に人間性戻るのなんか草』
『化け物じゃ……』
『どんどん精神がモノホンのサイコに染まってゆく』
ですから、猟奇的な趣味からくる快楽のためではなく今後のために行っているのであり、……好きに言わせましょう。
こちらの世界での私は人間ではないのは言い逃れ出来ない事実なので、どれだけ化け物と揶揄されようが頷くだけです。
解体が終わったので、インベントリからそれぞれ取り出してみましょう。ショッキングな画面となりそうなので視聴者様への警告は忘れずに。
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【プレイヤーの右腕部】
説明:プレイヤーの右腕部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
【プレイヤーの左腕部】
説明:プレイヤーの左腕部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
【プレイヤーの右脚部】
説明:プレイヤーの右脚部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
【プレイヤーの左脚部】
説明:プレイヤーの左脚部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
【プレイヤーの胴部】
説明:プレイヤーの胴部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
【プレイヤーの頭部】
説明:プレイヤーの頭部。インベントリにある場合は腐敗が進まない。
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特にデフォルメされず、分割された体のままでした。
部位一つから《吸血》で回復出来るHPMPの量は良くて一割らしいので、これを使い捨ての回復アイテム代わりに持ち歩くのは心許ないかもしれません。
『グロ』
『グロ』
『ぐっろ』
『くろ(断面が)』
『テーマの被害者』
『エ○ゾディアでも召喚するのかよww』
『RIO様冒険者をアイテムにしてまうとか感心するわもう』
それはリッチ・ロードに物申して下さい。
そして何とか地上まで足で戻れたため、早いですが本日は配信を切り上げました。
プレイ時間が短めだったため、疲労は少なく快調のまま睡眠へと持ち込めたおかげで明日が楽になれそうです。
衰え過ぎた体力をほどほどに付けるまでは、節度をもってプレイしたいものです。
少しずつ体調良くなってきました




