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要求&質問

 日刊4位に落ちてたじゃと。

 ならもう一度上がればええ。

『なんかRIO様がオシャレアイテム携行してるぞ?』

『開幕地獄』

『うわあああアムルベールがあああ!』

『配信再開したかと思えばなにこれ……』

『むしろ知ってた』

『アムルベール終了のお知らせ』

『パンデミック』

『深夜に観るものじゃねえw』

『なにがなんだかわからない』


 地上に戻ったタイミングで配信を再開しました。

 街は既に眷属達で粗方埋め尽くされており、特に一般住民だけでなくある程度の戦闘力を有しているであろう派遣の兵士まで私の配下となっていたのは大きな戦力アップです。


 運気を押し上げるかのように、眷属達を日光の脅威から遠ざけられる地下街まで発見していたのはまさに至れり尽くせりですね。


「命じます。まず私一人で冒険者ギルドへと襲撃するので、眷属の皆様は待機しつつ、冒険者ギルドの包囲を固めなさい」


「ウギャア! ウギャア!」


「ショウチシマシタ」


「カユ、カユ、カユ、カユ」


「ツマラナイ。血ヲノメナイナンテ、ツマラナイヨ」


 どうしてかは把握できませんが、今回の眷属達はやけに血に飢えている様子ですね。その意気です。


『うげっ! 小さい子までいらっしゃる!?』

『これもRIO様やったん!?』

『血も涙もない』

『↑だから血を吸ってるんだろ』


 おや、不本意ですが子供や赤ん坊まで眷属の一員に加っていました。

 パニラさんみたいな幼少の人間を眷属にしても、戦力に数えられない上に視聴者様から趣味が悪いみたいに印象づけられてしまい良い事ありません。


 私としては、現実世界と繋がりのない命なんて平等に価値が無いというポリシーを裏で掲げていますが、せめてその子の両親であろう眷属にお世話を担当させてあげましょうか。


「失礼します」


 元々の予定でもギルドへ殴り込むつもりでしたが、今頃になって逃げ延びている住民なんて無であるため、肉体操作は使わず率直に戦闘行為がとれるよう傘を魔装剣形態にしつつ正面の扉を開けました。


「また自ら死にに来たな! 雑魚アンデッド共がどれだけ束になっても……げえっ、R……!?」


「はっ」


 まず目についた冒険者の首を即刻刎ね飛ばしました。

 返り血が眼に付着して細かくは見えづらくなっていましたが、ギルドの内装ははじまりの街と概ね同一です。


「うわあああRIOがきやがったあああ!」


「姿をくらまして高みの見物しているんじゃなかったのかよ!?」


 どこからそんな根も葉も無い情報が広まったのですか。連想ゲームの要領でこうなったのですか。

 ロビーで籠城中の冒険者の数は、先程斬り捨てた者を除いて六人。個の力量のものさしとなるランクは外見だけでは不明ですが、相手側から暴き出させる方法はあります。


「要求です。このアムルベール冒険者ギルド内でランクと序列が最も高い冒険者をすぐに呼び出しなさい」


 得物を大剣に変形しながら、これまでで最も高圧的な声で通告しました。


「すぐにって言われたってえ!」


「要求を呑んた暁には、私対この場の冒険者全員とそちら側優位の条件下で殺し合いを行います」


「そんなぁっ。あのRIOと殺し合いできるわけ……」


「拒否する意思を表せば弱い者から順に始末します。眷属達が血の渇きに耐えられず突入してくるまでがタイムリミットとなります」


『平均的女子高生とは思えない口ぶり』

『さっきとは別の意味でこえぇ』

『コイツ……やりやがる』

『この臨場感』

『無慈悲』

『とんでもない威圧感』

『悪役適正がべらぼうに高い』

『どこでそんなやり方を覚えたんだよwww』


 中学生の頃演劇部の部員に穴が空いた際に穴埋め役として任命された経験があるので、威圧感の出し方については熟知しているつもりです。


「い、一番強いヤツはこいつだこいつ!」


「おいてめぇ! ふざけんじゃねえぞ!」


 一人の冒険者の手で、裏口からコソコソ退散しようとしていた方を無理矢理差し出したため、その一番強いヤツとやらはたまったものではないと胸ぐらを掴んでは私を余所に揉め出していました。

 百歩譲って懸賞金目当てでも立ち向かうならばこちらの戦闘意欲も湧いたのですが、所詮第二の街ではその程度のクオリティでしたか。これでは冒険者とは何たるかの一例にもなりませんね。


「私を打ち破り、企画を挫折にまで追い込めば貴方方冒険者の勝利です。それでは覚悟を決めた者からかかって来なさい」


「ちょっと待ってくれ! 俺は【Bランク序列162位・ガバルメバル】だが、あんたの気を障らせたようなことはしてねぇ!」


「通名宣言を行った。それはつまり、冒険者にとって闘争の覚悟を示す形式でしたよね」


「う……!?」


 先手必勝。

 大剣を脳天から股にかけて通し、出目金のようにまん丸な瞳であった冒険者を葬りました。

 Bランク中位、非力なものです。他の冒険者は絶望のあまり逃げようとすらしていないので、もう戦うまでもなさそうです。


『なんかRIO様すげぇロマンある武器持ってるwww』

『あの傘かっけえ』

『早速一人殺りやがったw』

『仲間に優しく敵には冷酷非情、まさに天使と悪魔のハイブリッド!』

『でも悲鳴をあげさせずに殺すだけ有情』

『お前らRIO様に毒されてねぇか?』


 パニラさんお手製の新たな装備品も、後日視聴者様に説明する回を設けましょう。


 この傘はふんだんに変形させるつもりですが、それだと大事な場面でMPが枯渇し、最悪のパターンとして魔装鎚のようなクセの強い形態で固定されかねないので、すぐさま冒険者を《吸血》して減った分を補充しました。


「次です。上層階に居座っているであろうギルドマスターをこの場に招集させなさい」


 頼りの冒険者があっさり破られ、恐慌状態となっているギルド職員に別の要求を突きつけました。


「い、いいえこのアムルベール冒険者ギルドのマスターは只今外出中でして……」


「でしたらこちらから迎えに参ります。眷属の皆様、突入を開始して下さい」


「マ、マスター……! きゃあああ!!」


 こんな惨事に外出だなんて命知らずですか。

 まあ真実だとしても、代理の者から居場所を吐き出させればギルドマスターに近づけます。


 バーゲンセール開始のように欲望全開となって餌を食い荒す眷属達を尻目に、得物を魔装鎚形態に変えながら中核部へと進みました。



▲▲▲



 部屋の内部を《血臭探知》で順に確認し、ギルドマスターがいる最有力候補となった場所の前に着き、ドアへ向かって魔装鎚のフルスイングを放ちました。


「はあああっ」


 この超重量級の形態、S判定のパワーがあっても尚両手で持ち上げなければならないほどでしたが、その分の見返りは絶大なようです。


『ヒェッ』

『ヒェッ』

『ドアが原型を留めてねぇ』

『つおい(小並)』

『まだまだ無双パート』

『アドレナリン大放出』

『これぞまさしく、吸血鬼に金棒』


 私を阻む頑丈な障害物をたった一撃で破壊出来たようですね。

 はじまりの街と同じくドアが頑丈なパターンだと予想してましたから、最もSTRが上昇する形態にしていたのです。

 俊敏な身のこなし以前に走れなくなってしまうまでにAGIが減少していますが、何もしてこず一方的に叩きのめせる標的なら関係ありません。


「……な、なんだ貴様は! この扉は王国一つ焼き払えるドラゴンですら手こずる守備力があるはずだ!」


 居ました。蓮華を彷彿とさせる珍妙な髪型の男性がアムルベール版ギルドマスターですね。


「それなら、私はそのドラゴン以上の破壊力があると証明されましたね。喜ばしい限りです」


「ど、ドラゴン以上がこんな女にッ!?」


 ギルドマスターは憤りや焦燥や様々な感情がミックスされた形相となっていました。

 一番安全だと思われた聖域を容易に突破され、信頼が仇となった心中察するにあまりです。


 それはそれとして、金棒を二つに分裂させて双剣形態にし、瞬間的に距離を詰め、軽量性に任せて何度か斬り結びました。


「ぐあっ! ぐえっ! ぐおっ!!」


 ふむ、短剣のような暗器とテキストに書いてありましたが、刃の全長は二尺前後ありましたので、近接戦闘で敵の攻撃を受け止めつつ反撃するのに向いている形態のようですね。

 はじまりの街では私に痛手を負わせたのがギルドマスターでしたので、念には念を入れDEFの上昇値が最も高い形態にしましたが、もう抵抗すらしませんか。


 ですが、このまま眷属にするのはまだ早いです。


「あなたにどうしても質問したいことがあります」


「があっ……!」


「罪を犯した者から地上で暮らせる権利を奪った後、牢獄などではなく地下街へと収容したのはどのような意図があってのことですか?」


 激痛に悶えている状態で受け答え出来るかは怪しいですが、やらないよりはと聞くだけ聞いてみました。


「ひっ、ひっ、地下街に送り込んだのは何故かだと? わ、我々が慈悲深いからに決まっているからだろうがこのクソ女ァ!」


 おお、私に対して罵倒しながらも答えましたね。ギルドマスターとはどこもかしこも危機意識が欠けているようです。


「では、具体的に教えて下さい」


「本来なら冒険者の制定した法に逆らった愚行は死罪に値するッ。だがしかァし、犯罪者であれど人である。だったらダンジョンだった地形を流用した地下街でならば生活を許すと、この私が考案した画期的な救済措置なのだァ!」


「はぁ。そうですか」


「人外の雌吸血鬼には分かるまいがな。冒険者を崇め讃えよ! 冒険者万歳!」


 なるほど、当初の想像に反して一応彼らなりに優良な気配りはしていたのですね。

 どうやらデスポーンよりも忌まれる永続の生き地獄という概念をご存知ないらしいようで。


「ありがとうございました。もういいので下僕となって下さい」


「……へ? へえええっ!?」


 短刀の一本を喉元へと突き刺し、死亡を確認してから《吸血》と《眷属化》を発動させました。



―――――――――――――――


《レベルが47に上がりました》

《カルマ値が下がりました》

《冒険者ギルドから懸けられた賞金が435万イーリスへと修正されました》

《冒険者ギルドから懸けられた経験値が4,469,445へと修正されました》


―――――――――――――――



『傍若無人』

『結局殺したwww』

『RIO様のスケジュールに半殺しなんて無いぞ』

『懸賞金また増えてて草』

『えげつない』

『案の定眷属化』

『顔色変えないでやることかこれ?』

『これを全部配信する度胸』

『もうすげぇわこのお方』


 こんな下劣な人を眷属化させるのは気が進まないですが、虐殺としてはまだゴールではないので致し方ありません。


「RIO様ァ。この度は私を下僕にして頂き、心より感謝申し上げます〜。まずは忠誠の証としてクツでもお舐めしましょうか〜?」


 女性を侮蔑する暴言を吐けた人格が一変し、まるでゴマをするような態度で、私の靴底をゴムのように異常に伸びた舌で舐め出そうとしていました。


 自我と理性を保てている、悪意有りでしたか。


「……ぎゃああああ!!」


「そこまで忠誠を示したいならば命じます。配信画面から消えなさい」


「あぎゃっ! あぎゃっ! あぎゃっ!」


 魔装鎚形態へと戻し、善人ぶった陰湿さの塊であるこのギルドマスターを殺処分して窓から放り投げました。

 いくら眷属にしたとはいえ、二度目の死を迎えた者の亡骸は下階のアンデッド達には餌扱いでしょう。


 そもそもとして、こんな品性の無い眷属、視聴者様には刺激ではなく梅毒です。


 紆余曲折ありましたがようやくアムルベールは陥落、つまるとこ一段落ついたため締めの挨拶をする頃合いでしょう。


「視聴者の皆様、本日の配信はこれにて終了致します。日光への対策アイテムが手に入ったので次回からの配信開始時刻は不定となります。ご視聴ありがとうございました」


『この惨状で終わらせたwww』

『お、乙』

『ついに次回から日の下でも配信できるのか』

『またね』

『次回も楽しみで寝れねぇぜ』

『乙様!』


 ……ふむ、現実世界では二時ちょっと前ですね。

 勝鬨の唸りをあげる眷属達をまとめて地下街へと避難させ、近場の丘陵地帯のエネミーが少ない場所でログアウトしました。



☆☆☆



「物凄く怠い。いけませんね……」


 仮想世界の出来事だとはいえ、かなり重量のある物を持ち上げていた反動のせいか過去随一なまでに疲れ果て、すぐ微睡みの彼方へ落ちてしまいました。


 体調が回復する兆しがなければ、明日は保健室行きも視野に含めなければなりませんね。

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