更なる種族進化&姿形
(5/3)一部名称変更
懸賞金が飛び級で何十倍にも上昇していました。
懸けられている数字の上げ幅は、どれだけの悪事を働いたか、またはどれだけ強力な冒険者を打ち破ったかによって変わるため、もしかするとあのお二方はランクに見合わず実はとてつもない大物冒険者だったのでは? と狼狽しそうです。
無論、賞金首である私が他の賞金首をいくら討伐しようが経緯問わず現行犯逮捕されてしまうと、まるで残念女子高生みたいな結果で終わるのみとなります。
「……もう修飾語の無い吸血鬼の種族名ともお別れですね」
そして経験値までも多量に獲得していたため、『吸血鬼』としてのレベルが上限となりました。
往年のRPGでは限界のレベルが100なので、このBWOにも当てはまるならばこれで折り返し地点間近ですかね。
『黒服騎士さん配信されてるの忘れてた?』
『どどどうする。キャラ崩壊するとこ観ちゃったぞ』
『わからん』
『総集編動画じゃカットされそうな箇所』
『長期間負け知らずのまま序列一位保ってたしな』
『RIO様あんなこと言われて内心怯えてない……?』
『実際勝ち確だったのに一気に転落する敗け方すりゃな……』
『アイアンドリルの方もなんか不穏』
『冒険者専用スレが気になる』
『なんか俺らが一番ビビってるじゃねえか』
『RIO様ブログ垢とかないから炎上まではしないと思う』
……視聴者様はそれどころでは無さそうです。闇雲に冒険者を狩り過ぎて現実でも妙な目に合わされないよう今後の見通しは立てておきましょう。
ともかく、先ずは種族進化です。
もう人外の体質を手にしているのに、まだまだ強くなり出来ることが更に増えるとなると、ほのかに興奮しますね。
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進化先A バトラーヴァンパイア
説明:より勇ましくより華麗な『戦』を追求した中級の吸血鬼。
ここまで進化を重ねると生物として設けられているリミッターが解除され、自身の肉体や血流を思うがままに操作出来る。
特徴:前衛向きのステータス評価となり、それに合致した体質を得られる。
進化先B ウィザードヴァンパイア
説明:より謙虚でより過激な『魔』を追求した中級の吸血鬼。
滞りを知りつつも滞らない知識が備わり、魔法の軌道を遠隔からでも自在にコントロール出来る。
特徴:後衛向きのステータス評価となり、それに合致した体質を得られる。
※退化不能
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こちらで勝手に決めるのは後回しにし、視聴者様に観えやすい位置にウィンドウを調整しましょう。
『お前ら静粛に! RIO様が種族進化始めるぞ!』
『マジで?』
『今回は人間に戻れる選択肢がないな』
『おお、どっちも強そうじゃん!』
『wktk』
『しれっと吸血鬼がヴァンパイア読みになったな』
『どんどん怪物化してゆく……』
『ようやく中級魔族に……あれでまだ中級!?』
『バトラーって執事? 闘士?』
もう吸血鬼とは呼ばれなくなってしまいそうなのは寂しくもあり、尚上位のステージへと進出した実感もありますね。
この選択肢は……要となる戦略がほぼ偏ってしまうので慎重に考えたいですが、前衛後衛と説明されようが私の仲間には現状フラインしかいません。
そのフラインも先程の戦闘で前線で戦わせた結果苦戦を強いられていました。ならば捻くれず、答えは一つ。
「こちらにします」
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《種族:バトラーヴァンパイアに進化しました》
《ステータス評価、HPがA+に上昇しました》
《ステータス評価、STRがSに上昇しました》
《ステータス評価、DEFがD+に上昇しました》
《ステータス評価、AGIがAに上昇しました》
《スキル:ブラッドニードルを獲得しました》
《スキル:血臭探知を獲得しました》
《体質:行動不能耐性+100を獲得しました》
《体質:肉体操作を獲得しました》
《レベルの上限が65になりました》
《カルマ値が下がりました》
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すると突然、視界が雪のように真っ白と化した直後、五臓六腑に至るまで充実感が湧き出したかと思えば、人生経験のような感覚が体内に蓄積されたとしか表現出来ない謎の現象が起こりました。
一口に種族進化と言っても、種によってはまるっきり異なる現象があるようですね。
「ふぅ。ですがこの種族進化、自分の体を許可なく改造手術されているのと似た感触なのに、麻酔でも投与されてるかのように心地よい気分です」
一時的に何も見えなくなった視界が元の状態に戻りつつあり、その間全身マッサージを受けているような快楽を堪能します。
令和の時代もだいぶ経過し、初期は粗製濫造だったとVRMMOユーザーから批評されていたフルダイブ技術の躍進が身をもって感じ取れますね。
「視聴者の皆様、お待たせしました。バトラーヴァンパイアになり……」
視界が開けた瞬間、自分自身に起こっていたにわかに信じ難い異変に気づきました。
なんの原理か、私の声が変声期前の女子にまで高くなっており、数センチほど目線が下がっていたからです。
「ええっと、私の声ですよね?」
これは気の所為ではありません。膝を曲げたりだのとはせず姿勢は進化前と変えず直立しており、なにせ親の顔より慣れ親しんだ自分の声や目線がズレるのはとにかく違和感が激しいので、考えるまでもなく判ります。
まさか視界が白くなっていた間に地盤が沈下していたとか……いえ、こうした事態こそ視聴者様視点から観測された情報が必要です。
『あれRIO様ちょっとちっちゃい?』
『ミスってロリ系の種族進化になったのでは……』
『なんか進化したら童顔っぽくなてね?』
『えっ、キャラメイク後天的にできたっけ!?』
『ヴッ(鼻血)』
『やべすっげかわいい』
『ぶひいいいいいいいいい!!』
『これはRIOちゃん』
『俺らにまた新たな性癖を開拓させるなァ!』
こちらは真面目なのにこうもどうして視聴者様は……そう心の中でげんなりしていた直後、この事象に関する項目が開かれました。
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体質:肉体操作
説明:経験を積んだ吸血鬼が誇る、関節可動域や骨格を無視して体を自在に折り曲げられる体質
これを応用することによって、可能な範囲は狭いが体格や姿形さえも変化出来る。
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「……吸血鬼という名称では無くなった理由が何となく呑みこめてきました。こんな体質ただの妖怪の概念ですからね」
手鏡を所持していないため人相の変化は把握出来ませんが、悪魔将のドレスは小さくなった体にフィットするまでに縮んでおり、両手へ視線を落とせば指が一回り細くなっていました。
この若返り現象は無意識下に発動させてしまった肉体操作体質の影響だと推測されますが――大きくではなく小さくなったのは内心で甘えたい願望があったからだとは思いたくありませんが……、ならば逆に元の年齢以上の外見にも変化出来るかもしれません。
それで、どのようにすれば正解なのか、試しに「大きくなれ」とでも念じましょうか。
『ヌッ!』
『急成長』
『今度はセクシーになってるううう!?』
『これは魔性の女』
『こ、このBWOってこんな機能まであるんだ……』
『RIO女王様ぁ……♡』
『属性盛りまくりんぐ』
『尊い』
『尊死』
『全くRIO様は視聴者を悦ばせるのが上手なこって』
どうやら偶然にも体格がまた別模様へと変化したみたいです。
台に乗っているかのようにこれまでよりも目線が高くなっており、スラっと様変わりした脚から計算すると恐らく身長は170前半もあるかもしれません。
「あ、あーあー。やはり声帯までもが成人女性と遜色なくなっていますね」
仮想世界だとはいえ、こんな特異な現象には仰天するしかありません。
よくもまあ、吸血鬼どころか平均的女子高生からも外れた存在に成り変わりつつあるのに、我ながら表面上は動じていないものです。
道中で鏡代わりになる湖にでも辿り着いたら、改めてどこまで変わるのか探求してみましょうか。
ですがこんなお笑いみたいな体質も、見方によっては恐ろしく有用だと思われます。
現実世界との体の差異により普段通りの戦闘が行いづらくなりますが、肉体操作を駆使して別人のような姿形に偽装すれば、正体を明かしたり戦争を仕掛けずとも韜晦して街へ侵入出来る可能性があると、まさに喉から手が出るほど切望していた能力なのですから。
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