頸&光
自分がジャンル別日刊二位って……上から二番目だぞ……
「おや、そちらもついに勝負に出ましたか」
残りHP五割を下回ったディアボロの行動が変化し、余裕の笑みが消えて無機質な表情となった瞬間、私の首を両手で掴みかかってきました。
そのまま圧迫する力がどんどん強まっているのはつまり、こちらの首から下を再生されないよう絞め殺す手段をとった模様です。
「受けて立ちましょう」
こちらも、咥えていた短剣を引き抜いてディアボロの頸へと押し込みます。
相手が悪魔だとしてもれっきとした生物ならば、頭部を切り落とすだけで残存HPに関わらず即死するはず。
「っ……っ……」
呼吸が阻害されつつあるため私の声がかすれてきました。
ですがこちらの短剣も、ごく小さく浅い切り傷から始まったのが力を込めれば込めるほど着々と傷口を深く広げていました。
至近距離で睨み合い、残る力を振り絞るこの戦況。
首という急所が攻められ続けているのに力が一切緩まない不死身のような互いの生命力。
吸血鬼を追い詰める相手が悪魔だなんて、つくづく皮肉に恵まれていますね。
「っっ……」
『アカンRIO様死ぬ!』
『やっぱりレベル差はデカかったか……』
『絶望』
『あんのトリ野郎!』
そしてディアボロが再びニヤリと嗤い、まだ半分も食い込んでない短剣をチラリと見ては、もう骨髄まで砕けているであろう私の首を完全に分断するため最後の圧迫をかけました。
防御力だけでなく腕力も上回っていましたか。
まあいいでしょう。
「あなたとの力比べには……はなから勝つつもりはありません……」
どうやら勝ちしか直視していないディアボロと異なり、その他の視野が広かったのは私のようですね。
この時まで粘り腰をみせてくれた短剣を離し、ディアボロの傷口の断面へと指先をすべり込ませ《吸血》を発動させました。
外皮が硬いなら内部から生命力を根こそぎ吸収しましょう。
効果のほどは、ディアボロの「バカめ!」が「バカな!?」のようになった顔から容易に推測できます。
「勝負ありました」
こちらの底をつく寸前だったHPは回帰し、ディアボロは絞める力が無くなりぶらんと手を下ろし、そして逃亡しようと踵を返そうとした矢先に膝からくずれ落ちて絶命しました。
負けん気を出して頸の切断に固執していたら間違いなく敗北していましたね。
これもひとえに我を忘れない自制心と柔軟な思考力の二つが勝因です。
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《ネームドエネミー【飛翔の悪魔将・ディアボロ】に勝利しました》
《レベルが38に上がりました》
《10000イーリスを手に入れました》
《初討伐報酬として【悪魔将のドレス一式】を手に入れました》
《称号【飛翔の悪魔将を越えた者】を手に入れました》
《【飛翔の悪魔将・ディアボロ】の眷属化が可能です》
《カルマ値が上がりました》
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『8888888888』
『おめでとう!』
『RIO様が吸血鬼だってこと忘れてたわw』
『正直感動した』
『ブラボー!』
『脳筋戦法ばかりと思ってたら機転も効くとか完全無欠じゃん』
『このネームドエネミーまだ倒されて無かったんか』
『俺は最初から勝てると信じてたぜ(嘘)』
『いっぱいメッセージログきてるし』
『首絞められてる時は珍しく動じてたよな』
『↑マジレスすると声出せてないだけ』
「皆様、多大なる喝采のコメントありがとうございます」
視聴者様は思い思いに賛辞を送っていました。
戦いの邪魔になるだけとの偏見に手のひら返してしまうほど愉快な方々で、こちらとしても気持ちが喜びで満ちています。
しかしネームドエネミーとの危険な賭けはもうこりごりですね。とはいえ賭けに勝利を収めたおかげで報酬を大量に獲得できました。
一つ一つ順序よく確認します。まずは装備の換装からです。
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【悪魔将のドレス一式】
必要装備換装部位
頭:悪魔将のピアス
体上:悪魔将のワンピース
体下:悪魔将のスカート
体下:悪魔将の靴
説明:飛翔の悪魔将・ディアボロを初討伐した者に授けられるノーブルなドレス。
薔薇を彷彿とさせる美しさはまさに蠱惑的で、その紅い華に潜む棘のように禍々しい彩色は目にした者を畏れ慎ませる。
総合能力
DEF+80
AGI+35
INT+60
DEX+50
セットボーナス
魔法《闇の気弾》使用可能
体質《暗視》獲得
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情報ではドロップ製の装備は全体的に性能が控え目だとのことですが、暫くは事足りるステータスアップです。
その中で魔法を使用できるようになったのは収穫ですね。
ここで気づいたのですが、私には一対一に最適の攻撃手段しか無く、複数の敵を同時に始末できる能力が低いので、この魔法がもし範囲攻撃だったら欠点が一つ解消できますね。
ディアボロの気弾と同じ魔法なら単体攻撃ですけれども。
装備の換装はインベントリから直接操作して行うので、早速変更しましょう。
「おお、着心地抜群です」
一瞬でふわりとしたカジュアルなドレスに包まれました。
体上の部位だけ着ても変ではないようにするためか便宜上ワンピースとなっていますが、紅や黒を基調としたノースリーブの上着の下にフレアスカートを履いたようなもので、丈が長めなドレスは足の動きの邪魔にならないよう前側の開いたものとなっており、気品と動きやすさを両立した見栄えある装備です。
それに加え新たな体質として《暗視》が追加されたので、遥か遠くとなったはじまりの街まで見渡せるようになりました。
草原には到底似つかわしくない一本杉も近場に見つけられましたよ。
『ふつくしい』
『でもかわいい』
『今頃エリコ鼻血噴射してそう』
『黙っていれば王侯貴族』
『訂正、何も動かなければ常人』
着こなしの評価としては上々です。視聴者様は視聴しに来ているのですから、外見は特に意識すべきでしょう。
後から知りましたが、プレイヤーの性別によってドロップアイテムが変化するようです。個人的にディアボロにはドレスより紳士服が似合いそうですからね。
では次に《眷属化》でディアボロを蘇らせましょう。
エネミーはレベルが高いほど消滅が遅まりますが、ドレスに見惚れてないでディアボロの死骸が健在している間にスキルを使うのが得策です。
「さあ。気分の方はいかがですか」
羽ばたきながら立ち上がったディアボロに反応を求めてみます。
【ハハハハ! オレの最強の気弾に敵はない!】
おっと、戦闘中は徹頭徹尾無口だったのに仲間にした途端流暢に喋りましたね。
そうです。エネミーが仲間となれば心が通じ合う故に定形文から参照したセリフを聞けるみたいです。
アンデッド化してるのかすら不明なほど見た目に変化がないようですし、これはまた愉快な者が加わりましたね。
その後ディアボロが何をするかを観察してましたが、どういうわけか即座に小さな赤い宝石のような球体となって私の胸へと吸い込まれました。
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《スキル:血の契りを獲得しました》
スキル:血の契り
説明:自身の手で自分のHPを10%以上削り、眷属化させている仲間エネミーを一体召喚させる。
召喚されたエネミーは召喚主のレベルに応じたステータスとなる。
HPが尽きるか帰還命令を下すまでは近くで待機し、自由に指示を受け付ける。
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突然新しいスキルを獲得しました。
種族進化や装備換装以外の方法でも、隠された条件をこなせば手札を増やせるようですね。
この血の契り、いくら吸血鬼の配下でも生物によっては無償では協力に応じないようです。
それともネームドエネミーとしてのプライドがあるのでしょうか。
ゲーム的な意見として考えるなら、召喚はサモナー系の冒険者の専売特許だと思われるので、一介の吸血鬼が扱うにはそれなり以上の代償が必要なのかもしれません。
『ディアボロ引っ込んだ』
『RIO様の装飾品と化した元ネームドエネミー』
『うらやまけしからん位置に……』
どうやら宝石は胸元にピッタリと不自然なく装着されたようです。
こんな全長2メートル以上あるエネミーなんて常に連れていれば住民から糾弾されてもこちらに非がありますからね。
ついでに名前変更も可能だったので、"フライン"と名付けてみました。
『安直』
『安直だ』
『飛翔の悪魔将ディアボロ→ふらいん』
『ダジャレみたいな通名だらけの冒険者からすればむしろ相対的にネーミングセンス良い件』
『何気にフライン(宝石)がシクシク泣いてるようにみえるわ』
視聴者様は口々にそう言いますが、呼びやすさ第一にすれば何でもいいのです。
その次はどれをチェックしますかね。
称号なんてただの称号であり、それ以上でも以下でもないのであまり自慢気に紹介するのもやぶさかと……。
『なんか明るくなった』
『これで配信が見やすく』
『RIO様画面の明度調整した?』
『あ、この時間は』
『ヒャッハア夜明けだァ!』
『やwwwばwwwいwww』
一息つけて眠気が襲ってきたのにもう朝ですか?
悪い予感に従い東の空へ目を凝らしてみれば、闇夜をかき消す光源の塊である太陽が緩慢に昇っていました。
「グギャアアアアアアアア!!」
「RIO様ァァ! アバアッ!!」
眷属達のけたたましい悲鳴が鼓膜をつんざきます。
これはアンデッド体質の者が太陽光に晒されて炎上している現象ですね。
私はいち早く危険を察知して《暗視》で発見していた一本杉の木陰へと身を隠せましたが、ここまで連れ添った勇敢なる眷属らを救えなかったのは何とも口惜しいものです。お世話になりました。
『RIO様の貴重な配下が!』
『危うくRIO様までデスだった……』
『おいギルドマスターも焼け死んでるぞ』
『ほんとだ、というか後半空気だったな』
『見てたけどRIO様見捨てて逃げる準備してたぞ』
『銃あんだから加勢しろよwww』
『そいえば保身優先だったな』
『主君の勝利を信じないやつは残当』
あの方のみに対して罪悪感が半減されたのは気のせいでしょうか。
しかしこの私にとって今一番致命的なのは、もうリアルでは深夜の三時に差し掛かっている点につきます。
睡眠時間は最低六時間との自己ルールを決めているため、急ですがこれにて配信を終わらせましょう。
「今日はここまでにします。続きはまた明日に。ご視聴ありがとうございました」
『おつ』
『乙』
『りょ』
『悪役ロールプレイの割には楽しませてもらった』
『またね』
『アンチには気をつけろよ』
視聴者様へ別れを告げ、ログアウトを終えて現実世界へと戻り、すぐに睡魔に自主降伏し就寝となりました。
これでも手探り状態だった今日の配信、恵理子は喜んでくれるのでしょうか。
序盤が終わりかけてるんで現在のステでも
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名前:RIO
種族:吸血鬼
所属組織:無し
レベル:38
所持金:10100イーリス
カルマ値:-750
ステータス評価
HP:A(満タン)
MP:B(満タン)
STR:A+
DEF:D
AGI:B+
INT:B+
DEX:A
LUK:E
スキル
《吸血》
《眷属化》
魔法
《闇の気弾》
体質
《アンデッド》
《光属性弱点極大》
《肉体自動再生》
《HP自動回復》
《暗視》
称号
【飛翔の悪魔将を越えた者】
装備
右手:初心者用の短剣
左手:無し
頭:悪魔将のピアス
体上:悪魔将のワンピース
体下:悪魔将のスカート
体下:悪魔将の靴
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