いざ出発&でしょうね
総合評価20000
ホンマにありがとうございます
(11/15)ちょい修整
急ぎの用事でなくとも、ジョウナさんの待つ第六の街ドルナードへとなるべく早く赴きましょう。
『街に着く頃には0時。つまり3周年か……』
『飛行能力を得てして結局歩くRIO様』
『というより悪魔の羽生やした上で悠然と歩いて欲しい』
『↑なんかすごいわかる』
『↑↑一歩足を動かす度にゆらんゆらんってするのがたまらんよな』
『お前ら息をするように性癖暴露すなww』
『でも長時間飛んでるとバス酔いや目眩みたいなの来るぞ』
『戦いに行くのに酔い潰れちゃえば元も子もないしな』
ジョウナさんは一筋縄ではいかない相手であるのは視聴者様にはご存知ですし、体幹や三半規管なども万全のコンディションで臨みたいですからね。
こうして森林地帯へと差し掛かった時、血臭からプレイヤーの反応をいくつか確認しました。
レベルは70前後のプレイヤー。強化された血臭探知なら相手のレベルさえも正確に嗅ぎ分けられます。
「まてまて、頼むから襲わないでくれ」
すると、相手から一人姿を現し、こちらを宥め賺してきました。
武器らしき得物は握られていないごく平均な男性です。
「どうして敵の言うことを聞かなくてはならないのですか。冒険者ならば弱腰にならないで下さい」
「いや実はだ、オレは戦いに来たんじゃない。あんさんに美味い話を持ってきたんだ」
そう言うが早いがこの冒険者は何やら一枚の用紙を取り出していました。
「本部からなんだがな、これまでの蛮行を水に流して、RIOを冒険者の一員として迎え入れたいんだとの伝言がある。詳しく話すと……」
「消えなさい」
稚拙な冗談は好きではありません。
そもそも、私に武器を無償で授けてくれたパニラさんとの誓いに背くわけにはいきません。
なので大剣ですぐさま相手の首を斬り落としにかかりましょう。
「そうか断るか、この後エリコと共闘出来るとしてもか?」
「……エリコ?」
いけませんね。あの人の名を言われたからには、攻撃に躊躇いが生まれてしまいます。
斬る事だけを考えなくては……。しかし相手の甘言はまだ続くようです。
「要約すると、ジョウナをぶっ殺すまでトライアル雇用のつもりで俺達と組まないかって話だ。その気があるなら正式雇用の打診もオレが代わりに相談する。もし決まりゃ、Sランク上位からの華やかなスタートを切れるぜ」
どうやらよほど私を畏れているのか、かなりの待遇を提示されている模様です。
Sランク上位に到達するには最速でも一年はかかると噂されていますからね。0日でその地位に座せるとすれば待遇の度合いが分かるでしょう。
「それによぉ……エリコと仲間同士で戦いに行けるって気苦労が綺麗サッパリ晴れると思わないか? 本当は殺し合いたくないんだろ?」
まるで同情するような言い草。嘆息が出ます。
同情は最も嫌いな感情なので。
しかし、エリコと戦いたくないと訊かれたら否定しきれないのは事実です。
知ってか否か、心の弱点を突いてくるとはやり手ですね。
率直に答えを述べたいですが、それでは面白みが足りませんね。
「交渉とは、自分の提示した条件を曲げても良いと互いに念頭にあるからこそ交渉と呼べるのです。よって話になりません、丁重にお断りします」
なので理路整然に突き返しました。
「なるほどな、どうしても味方にならないというわけでいいのかな」
「いいえ、『先の戦闘のためどうか手を引いて下さい』という私の要求にあなたが応じなさそうだからですよ。どうせ陰で私を屠ろうと企んでいるのでしょう? 周りにいるパーティメンバーと共に」
五つの血臭反応を頼り、隠れている冒険者達に呼びかけました。
私の声に反応し、いくつか茂みが揺れた音がします。
「あーあ。気づいてたのか。目敏くなけりゃ幸せなこともあるのになぁ。そうとも、もし断られたならお前をぶっ殺しても懸賞金をやるとの伝言もある」
でしょうね。
彼が本性を現したというよりかは、平常時に戻ったように思えていっそ何も感じません。
「全員戦闘準備だ。名乗ってやれ」
そう茂みに隠れている者へと指示を下したこの人。
「あんたねぇ、なに勝手にあたし達のことバラしてるのよ。バカなの死にたいの」
「喋り過ぎるのがリーダーの悪い癖。黙っていれば瞬間的に首を抉り取れたはずだったわ」
「ガハハ! まあいいじゃねえか。不意討ちってのァウチの流儀に反するからなァ」
呼応した冒険者達は、文句をつける者や寛容な者など、続々と姿を現してきます。
そして、こちらを取り囲む殺意満々の配置であるとも判明した後、一人目が通名の宣言をします。
「【Aランク序列6位・辻風】。私はAランクだけど、貴女を抉り殺すには十分強い。ここにいる皆もそう、能ある鷹は爪を隠すのよ」
最初に現れたこの冒険者は、二対のトンファーを構える厳しそうな性格の女性。
彼女の言葉を鵜呑みにするならば、あと四名の冒険者達もAランクでありながらSランク相応の実力があると警戒しましょう。
「【Aランク序列4位・ピピット封印】。そ、何時でもランクが上がれるとしても、あえてそのままを維持している冒険者もいるわ。ランクでしか能力を見ていない相手を侮らせるためにね」
次に現れた冒険者は、長弓を背に装着した令嬢然とした女性。
搦め手主体の方と推測しましょう。
「【Aランク序列3位・マリアントオネット】。自慢じゃねェが、ウチらはSランクよりも恐ろしいAランク一団ってヤツだ。うっかり天狗になってるアンタより数段階も格は上だぜェ」
その次は豪放磊落な性格がにじみ出る女性。
む、今一瞬だけ手元から鋼線のような糸が見えましたが、まさかそんな武器らしくない武器で戦うつもりでしょうか。
「【Aランク序列2位・武女子】。ひぇぇん、はぅぅん、これ、配信されているんですかぁ……。は、恥ずかしいですぅ」
またその次は、戸惑ってばかりの女性。どうしてでしょうか、女性の割合が多いです。
破壊力の計り知れない巨大な丸石のハンマーを備えているので、うっかり頭部をもっていかれないようにくれぐれも用心しましょう。
「【Aランク序列5位・ねこねこセラピー】にゃーの尻尾はどんな重傷をも瞬く間に治せるみたいだにゃん。シュッと近づいてモフッて回復させるにゃにゃん?」
最後の冒険者は……猫の着ぐるみを纏った女の子ですか。キャラ作りにしても、よく恥ずかしげ無くぶりっ子出来ますね。
大方、回復役でしょうか。まあそうに違いないでしょう。
「因みにオレサマは【Aランク序列7位・コニーバット】だ。このオレのパーティはお前みたいな賞金首を何人も狩ってきた。もしこの場で誘いを受けなきゃ、ギャン泣きする姿が画面に映るだろうよ」
最初の人は序列が一番下だとはいえ僅差。いえ、同列として見据えなければなりません。
『Aランク最上位連中がついにお出ましか』
『あ、あいつだ! 俺に無実の罪をなすりつけたのは……!』
『出てきちまった。ハーレムパーティ組んでPKKしまくるせいで冒険者内からも悪名高いコニーが。こいつらの顔ぶれを知ってるお前らも結構多いはず』
『ジョウナんとこに行くだけでも一苦労なんだなこりゃ』
『一苦労なんてもんじゃない。RIO様といえど、最悪撤退に追い込まれるのもありうるぞ』
どうやら視聴者様にも顔をご存知の方がちらほらといるほど有名なプレイヤー達のようです。
全員の通名宣言が終わった所で、コニーバットなる冒険者は改まったように口を開きました。
「もういっぺん言うぜぇ! 冒険者ギルドの軍門に降れ。だがすぐには決められんとは思うし、諦めるか死ぬかは大事なリスナー達とじっくり考えてくれや。ヘッヘッヘ」
どうのこうのして、平和的な方法で決戦へと進ませてくれないのか。分かりきってはいましたが。
結局のところ、敵同士が第三勢力相手に無傷で手を取り合うなんて夢物語なのです。
彼の仲間達は、私が断りの返答をすればすかさず袋叩きにすると目で物を言わんばかりの睨みを効かせているため、油断も隙も与えてくれません。
仮にこのゲームの素人から彼らを見たとしても、全員が百戦錬磨のバウンティハンターだと分かるほどです。
ですが、わざわざ視聴者様と相談する必要なんてありませんね。それに返答のために口を開けて喋る必要性すらありません。
「……ひょ?」
なので四時の方向へと向き直し。
「ふえっ?」
すかさず地を蹴って一直線に走り。
「あァん?」
射程内に入れば剣を振れる態勢に移行できるようにし。
「は、はぁ!?」
落下の勢いを加えるために跳んで。
「まさか!! ネコネコ避けて!」
無駄なあざとさに特化した標的の頭部のみが視界に収まったので。
「んんにゃああああああああああああ!?」
大剣を以て、相手の全身や体毛が吹き出る真っ赤な液に染まるまでなます斬りで屠りました。
これが「断る」という表現です。
「ニャハッ……」
「まず一人目。回復役を仕留めたおかげで、消耗戦が格段に楽になりそうです」
むかしにおこづかいいっぱいくれたおばあちゃんがきゅうせいしたため、なきながらしっぴつしていた




